歩幅70cm   作:梦猫

2 / 3
2話

太陽の傾きと体内時計から、大体13時といった所か。

 街壁によって囲まれたこの街は大分大きいようで、ノースティリスの王都パルミアを思い起こす。

 壁の上に点在するガードの存在からも、この街が国にとって重要な場所である事を示しているようにも感じる。

 さて、壁の上のガードに先んじて気づいたあなたは現在、コソコソと隠れるように街の周辺を覗いていた。

 街には4箇所ほど大きな関所があり、そこから街へ出入りしているのが確認できた。当然ガードが立っており、不審な人やモノを確認しているようである。

 また、何かを手渡しているのも確認できた。

 これはとても奇妙なことであると、あなたは感じていた。

 

 あなたも当然、物を誰かに渡すことはある。だが、手渡しなどという非常識なことはしたことが無い。ものを渡す時には相手の足元に放り投げるのがマナーであり常識でありルールである。

 流石に異世界と言えどそんな所まで変わっているとは思えないが、だとしたらあの行為は一体なんだったのだろうか。

 

 しばらく待ってみたが出入りをする人は居ないみたいで、ただじっと待つだけの時間が流れている。

 あなたは街の中へ入りたいという好奇心とガードに追われる危険性を天秤にかけ始めた。

 

 あなたはノースティリスでは罪人である。

 カルマ値はしばらく正の値を示したことは無く、必要に感じたら免罪符を買って罪を帳消しにし、用事が済んだら罪人に落ちるを繰り返す模範的なノースティリスの民である。

 街中にいることがバレればカルマ値を察知できるガードに追い立てられ攻撃され、その全てを跳ね返し街諸共更地にするのがあなたである。

 

 しかしここはノースティリスでは無く、街中に入るのも実利を求めた観光が目的だ。よって戦闘は避けたい。

 

 あなたの中にはプランがいくつか浮かんでいる。

 

 1つ目はインコグニートの魔法で変装し、罪人であることをバレずに関所を突破するプラン。

 しかしコレはこの世界の常識を知らないあなたが実践するにはリスクがある。ガードとの会話で不審に思われたらアウトだ。あるいは黙っていても通れるかもしれないが、先程の謎の手渡しの件も含めて採用度は低い。

 

 2つ目はバレないように街壁に近づいた後、テレポートの魔法で侵入するプラン。

 コレも街中がどうなっているか分からず、またテレポートの魔法はテレポート先が有効範囲のどこになるかがランダムである点がネックだ。壁の上に出るかもしれないし、街中の危険な場所にテレポートするかもしれない。

 

 3つ目は時を止めてその間に関所を突破するプラン。

 これが一番確実かもしれない。しかし時止め対策をしている強者がいたら最悪である。速攻で知覚され、ここら一体がクレーターになるまで戦いが続くだろう。あなたは過去に起こしたあなたの友人とのじゃれ合いを思い出す。

 

 1つ目は却下、残るどちらを採用するかだが……。

 あなたは少しの間悩み、そして決断する。

 

 あなたは静かに、素早く、誰にも見つからないように特殊な歩行によって街壁へと近づく。その姿を見たものはあまりの奇っ怪な動きに目を話せなくなるだろうが、誰にも見つからない歩き方なので問題は無い。

 少し近づくと壁の近くは深い堀になっている事に気がつくが問題は無い。効果範囲内にあることを確認し、あなたは急いでテレポートの魔法を唱える。

 

 フッとした独特な感覚とともに視界が切り替わる。直後に素早く周囲を確認する。

 どうやら誰かの家のようだ。すぐに家を出ようとするが足音が近い。出口もどちらか分からず時止めも使えない。

 ガチャリとドアが開き、家主と目が合う。まずい、ガードを呼ばれる。

 

 「……どちらさ」

 インコグニートの魔法!

 

 「なんだあんたか。まぁゆっくりしていってくれ」

 

 あなたはため息を吐いた。縛りプレイというのは適度な緊張感をあなたに与える。

 さほど窮地でもない窮地を脱し、あなたは玄関を目指す。

 扉を開けると綺麗に舗装された大きな道にそこそこの人々が行き交う道路に出る。どうやらこの家は大通りに面しているようだ。

 人々の服装や格好に特段目立つものはなく、間違いなく溶け込めるだろうとあなたは思っているが、人々はあなたをギョッとした目で見ている。

 あなたはいつもの事なのでスルーしているが、ノースティリスとここではギョッとする箇所が違うことにあなたはまだ気がついていない。

 

 大通りに出たあなたは眠気を感じていた。要睡眠と言った所だ。まだ赤になる気配はないが早いうちに寝ておきたい。

 あなた次の目標を定めた。

 

 大通りの先、街の中央に見える城。

 そこにはパルミアと同じなら王様ベッドがあるだろう。いや、もしかしたら幸せのベッドや見知らぬそれ以上のランクのベッドがあるかもしれない。

 あなたは快適な睡眠を求めて、王城へと歩き出した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。