歩幅70cm   作:梦猫

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3話

あなたが歩き始めて数分経ち、あなたの距離感覚が狂っていた事を自覚し始めていた。

 ベッドにつられて大通りを一直線に歩みを進めているあなただが、目的地である城が思いの外遠かった。

 あなたの知る中では、ノースティリスの王都パルミアが1番の街であり、城もそこでしか見たことは無かった。

 しかしここの城と街はパルミアのそれよりも大きく、もうしばらく歩かないと城には着かない事に気がついた。

 

 冷静になったあなたは辺りを見回す。

 ここら辺は商店街となっているようで、先程の住宅街よりも人通りが多くなっている。

 そしてガードも彷徨いていた。

 ギクッと体が強ばるあなただったが、あなたを追いかけて殺そうとする素振りはない。

 あなたは念の為確認するが、もちろんカルマ値は最低の大犯罪者である。

 

 あなたの頭脳は回転を始める。

 仮設1、この世界のガードは犯罪者を検知できない。

 思えば関所でガードが旅人に対して何やらチェックをしていた気がする。あれはひとえに犯罪者かどうか確かめる術がない故の苦肉の策なのではないか。

 

 仮設2、この世界とノースティリスでは罪が違う。

 この世界はあなたの常識とは少し離れた世界のようだ。よってあなたの思う罪とこの世界の罪は違うのかもしれない。ならば、この世界のガードが反応しない事にも説明がつく。

 

 仮説3、あれはガードでは無い。

 確かに全身鎧を着てガードのように見えるがよくよく見たらノースティリスのガードとは所々装いが異なる。つまりあなたのアレはガードだというのが思い込みで、ただの一般市民ないし別の職業であるため、襲いかかってこない。

 

 どれも一定の説得力を持っているように思える。

 どうにも、この世界のことを知らなすぎるようだ。

 

 ふと、あなたの目にフクス書店という文字の看板が映る。

 見知らぬ店だが、店内は本を沢山置いていて、明らかに周りの店とは装いが変わっている。

 もしや魔法書専門の店なのだろうか。魔術師ギルド内でも無いのに存在するとは。

 

 少し近寄ってみてみると本当にたくさんの本が棚に所狭しに並んでいる。大きいツヤツヤした本にボロボロの灰色の本、そして赤い表紙の本。

 

 赤い表紙の本!

 あなたは思わず口に出す。

 赤い表紙の本は博物館運営マニュアルやハーブの効用、迷子の兵士に送るマニュアルなど、生活に必要な知識を教えてくれるものが多い事をあなたは知っている。

 ここの店で赤い本を買うことが出来ればこの世界の常識を知ることが出来るだろう。

 

 ガードが何も反応してこない以上、あれこれ杞憂していても仕方がない。

 意を決して店内に入ったあなたは、他に客はおらず店主だけなのを確認する。

 早速店主に品揃えを見せてもらおうとするが、

 

 「えと、そこの本棚から欲しい本がございましたら、こちらに持ってきていただけると購入頂けます」

 

 どうやら周りの本が商品らしい。店主が商品を持ち歩いていないのは驚いたが、こんな狭くては窃盗している所を店主に見られるだろう。

 何にせよとりあえず正規の手段を学ぼうと考えたあなたはその場から離れ、周りの本棚から片っ端に赤い表紙の本を取り出す。

 その途中で文字は同じなことに改めて気付きながら、あなたは30冊ほど赤い表紙の本を持ち店主の所へ戻った。

 

 「こ、これ全部お会計でよろしいでしょうか」

 

 何やらオドオドした様子の店主を見ながら、あなたは首肯する。

 30冊は非常識だっただろうか。しかしあなたは文字通り山ほどの金貨を持っている。例えここの物価がものすごいことになっていても、収穫の魔法で天からお金を生み出すことが出来るあなたにはなんの問題もなかった。

 

 「1冊500ゴールドなので、32冊で16,000ゴールドになります」

 

 あなたは言われた通り本の乗っているカウンターの上にお金を置く。

 

 「っ、はい、丁度お預かり致します」

 

 お金を回収した店主はその後、本を丁寧に麻の袋に詰めてあなたに渡した。

 確かにこれなら持ちやすいがどういうことだろうか。

 

 「お買い上げありがとうございました!」

 

 急に元気になった店主から袋ごと本を貰い、お辞儀しているのを横目に店を出た。それと同時に袋ごとインベントリにしまう。

 謎は尽きないがともあれ目的の本を買うことが出来た。ならばいずれこの謎も解明出来るかもしれない。

 とりあえずあなたは本を読む場所を探すことにした。

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