艦隊これくしょんの二次創作です。
続編を書くかどうかは完全に未定です。
ここは佐世保鎮守府。
佐世保鎮守府といえば、それなりの規模の鎮守府ではあるが、新米提督である私が担当している海域などたかが知れたもので、出撃など少なく、基本的な仕事といえば書類との格闘である。
そんなある日、いつも通り目の疲れと腰の痛みに耐えながら書類とにらめっこしているとコンコン、というノックの音が。
「どうぞー」
今日は来客の予定もなかったと思うし、艦娘の誰かだろうか?
「すいません、提督。ちょっと相談があるのですが…」
執務室に入ってきたのは、1週間前に私の艦隊に入隊することになった艦娘だった。
特徴的な赤い袴に、大きな胸当て。
鴉の濡れ羽色の髪といった表現がしっくりくる、痛みのない綺麗な長髪。
整った顔立ちで、一言で表現するなら…そう『美人』だ。
それにしても、相談とはいったいなんだろうか?
ウチの艦隊は御転婆娘が多いからな…面倒なことでなければいいのだが。
「相談、ですか…。なにか問題でもありましたか?」
「問題…というか…その…。まだどうも馴染めない艦隊の人が数人いまして…」
「馴染めない…ですか?まさか誰かと仲違いでもしたんですか?」
「いえ、そういうわけでは無いのですが…その…。言葉がまだその…わからなくて…」
「言葉がわからない?」
ウチの艦隊には海外艦の子はいないし、言語による壁を感じるようなことは無いはずなのだが…。
「例えば、あのぅ…北上さんの言っていることが理解できないことがあってですね…」
北上さん?ああ、なるほど。そういうことか。
ようやく合点がいったので、赤城さんの相談を本格的に聞こうとした矢先に、扉を勢いよく開ける音が執務室に響いた。
やれやれ…噂をすればなんとやら、か。
「執務室は相変わらず、よそわしかねー?こがんしょーもなかもんとっとーてもしょうがなかやん?要らんもんばいつまでも捨てれんけんいっちょん綺麗にならんとさ(執務室は相変わらず汚いねぇ?こんなしょうもない物を持っていてもしょうがないじゃん?要らないものをいつまでも捨てれないから全然綺麗にならないんだよ)」
「そがんこといわんで下さいよ、全部いるもんやけん、とっとーとです。この部屋に要らんもんとかなかっちゃけん、触らんどってくださいよ?(そんなこと言わないで下さい、全部必要なものだから保管してあるんです。この部屋に不要なものなど有りませんから触らないでくださいよ?)」
ウチの鎮守府の北上さんは昔、先輩の艦隊で働いていた子だ。
私が新米提督として着任した時、私のサポートとして配属された艦娘である。
そして、船であった頃と艦娘として生を受けた時、両方佐世保で生まれた子である。
…まぁ、艦娘に『生まれる』という表現が正しいのかどうかはともかく。
そしてウチの北上さんは基本的に佐世保弁で喋る。
というか標準語を苦手としている。
標準語が話せない若者ってどうなんだろう…とは思うが、私も佐世保生まれの佐世保育ち。
コミュニケーションは普通に取れるし、不便だと思ったことがないので特に気にしていなかった。
「あー、赤城さんやん。どがんかしたと?(あー、赤城さんじゃん。どうしたの?)」
「いや…あのぅ…その」
「そがんかしこまらんっちゃよかって、なんか困ったことがあったらすぐ言わんばよ?ウチの提督は気が効かんけん、口に出して言わんばわからんとさ」
「ちょっと北上さん?なんば言いよっとですか?あんまそがん事ばっか言いよったら私はぶてますよ?(何を言ってるんですか?あんまりそんな酷いことばかりいってると私、拗ねますよ?)」
「勝手にはぶてとけばよかやん?むしろいっつもすぐのぼせ上がるっちゃけん、たまにははぶてとるぐらいでちょうどよかっちゃない?(勝手に拗ねてればいいじゃん?むしろいつもすぐ調子に乗るんだし、たまには拗ねてるぐらいで丁度いいんじゃない?)」
「どうしよう…?二人が何を言っているのかまったくわからないわ…」
だんだんヒートアップしていく二人を見ていて赤城は頭を抱えた。
自分はこの鎮守府でやっていけるのだろうか、と。