智将古市   作:蠅の王

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花火と喧嘩は石矢魔名物

「貴之、ただいま。男鹿君に連れてかれたらしいが、飛行機代と電車代は………」

「あ、おかえり………」

 

 避暑地から蒸し暑い家に帰ってきた古市一家はリビングの扉を開ける。そこでは、古市がボコボコにされた知らないおっさんを片手で持ち上げていた。

 

(((息子/お兄ちゃんが知らんおっさんボコボコにしてる!?)))

 

 家族ピッタリ心の中で突っ込む様は、流石古市の家族と言えよう。

 

「えっと、貴之………その人は?」

「勝手にこの家に住み着こうとしてるマジシャン」

「………あ! よく見たらお兄ちゃんを連れ去った大きなおっさん!!」

 

 と、唯一アランドロンを目撃していたほのかが思い出し叫ぶ。

 

「この人が体を開いて瞬間移動する手品を使う?」

「そうだよ! この人がお兄ちゃんを連れてったの!」

「まあ黒幕は男鹿だけど…………」

 

 

 

 

「改めまして、今日からこちらでお世話になるバティム・ド・エムナ・アランドロンと申します。今日からここでお世話になります、不束者ですがよろしくお願いします」

「帰れ。こっちは年頃のほのかが居るんだぞ!」

 

 と、ほのかを背に隠しながら叫ぶ古市。中学の娘がいる家におっさんを住まわせる気など毛頭ない。

 

「ご安心ください。私は娘より小さな少女に手を出しません」

「娘居たのか」

「ええ。妻に似て美しく育ちました。私は妻一筋ですよ………女性には」

 

 と、頬を赤くして見つめてくるアランドロン。古市の蹴りがアランドロンを窓の外にふっ飛ばした。

 

「庭の倉庫になら住んで良い。うちの敷居を跨ぐな」

 

 それが精一杯の譲歩だ。

 

「男鹿君に似てきたな…………」

 

 古市父は息子の行動に、息子の友人を思い出し呟いた。

 

 

 

 

 

 男鹿に呼び出された。ベル坊が熱を出したらしい。

 ベル坊の言いたいことをなんとなく理解できる古市に大人しくしてるよう説得してほしいらしい。

 

「暑!?」

 

 男鹿の家のリビングに入ると目茶苦茶暑かった。外より熱い。熱の発生源はベル坊らしいが………。

 

「アゥ………ダイ」

「ベル坊、大丈夫か? 凄い熱だぞ」

「ウィ〜……アウ、ダ。ダイ!」

「ふむふむ…………強がってて何も教えてくれねえ」

「アイ」

 

 むく、と立ち上がりむん、と腕を曲げるベル坊。そのままコロリと転がった。

 

「あれ〜、たかちん来てたんだ。丁度良かった、膨らますの手伝ってよ」

 

 と、ビニールプールを持ってきた美咲。氷嚢が見つからなかったのでこれに氷入れて冷やすつもりらしい。病人を氷水に漬けるのはどうかと思うがこの異様な熱なら一度全身冷ましたほうが良さそうだ。

 

「…………………」

 

 ビニールプールを膨らませながら古市は男鹿とベル坊を見る。魔力のラインが切れている。そのせいでベル坊が魔力を発散できていないのだ。蝿王紋(ゼブルスペル)も消えている。

 

 それが体温に変換され、せっかくのプールの水も一瞬で熱湯になった。

 

 

 

 

「取り敢えず表面の温度は下がったから貼れますね」

「ウィ〜」

 

 魔力を散らす札を冷却シートのように頭に張る古市。

 

「やはり貴様、祓い屋の家系か」

「家系じゃないっす。鍛えてくれた師匠がその手の知識を教えてくれて………まあベル坊相手にあんま意味なさそうですけど」

「ふむ…………」

 

 古市は知らぬことだが、この世界のエクソシストや祓い屋は大きく分けて二通り存在する。一つが魔界から来る悪魔と戦うことを想定している者達。そしてもう一つが魔界での生存競争に敗れ魔界を追われた下級悪魔……その中でも特に力を持たず肉体も持たない俗に悪霊と呼ばれる類を祓う者達。

 

 大半が後者だ。魔界の悪魔と戦う前提の者は、それなりにいるが表向きには後者が多い。いわゆる霊媒師だ。

 古市のそれも、ベル坊はもちろんヒルダでも縛ることは出来ないだろう。

 

 後継に恵まれなかった祓い屋が戯れに技術でも教えたか………少なくとも、この程度の技術なら警戒に値しない。寧ろ今こうして此方の役に立つぐらいだ。それがヒルダの古市への評価。

 

「取り敢えず50枚ほど置いてきますね。追加必要になったら言ってください…………あと、やっぱ魔界の医者でも呼んだほうが良いかと思いますよ」

「うむ………」

 

 はっつけたばかりなのにもう焦げ始めている。魔力は相変わらず内部で渦巻いている。そのせいで、若干気配を感じ難い。これ、暴発して街吹っ飛ばすことにならないよね?

 

 

 

 

 

 

 翌日。

 

「ベル坊とヒルダさんが居なくなった?」

「ああ、朝起きたら綺麗さっぱりよ」

「………………」

 

 魔界の医者にベル坊を見せに行ったのだろうか? だが、男鹿と離れたら泣くベル坊を男鹿から離すのはリスクが高い気がする。

 元気になった途端泣き出したら目も当てられない。

 

「たつみー!」

 

 と、美咲が男鹿を蹴りつけた。

 

「あんた何やってんのよ!? ヒルダちゃんとベル坊が居なくなったって!? あんな出来た嫁さん何処探したって居ないわよ!」

「姉貴……」

「わかってんの!?」

「ちがっ…」

「どーせつまんないことして愛想つかされたんでしょ!!」

「ちょ」

「謝ってきなさい!」

 

 あの男鹿がボコボコにされてる。相変わらずクソ強い。

 結局男鹿はヒルダ達を見つけてくるまで帰ってくるなと追い出された。

 

「相変わらずおっかねーな………」

「まったくだ。こっちはやっと手に入れた自由だったのに…………おい古市、お前ヒルダの時みたいに探せねえのか?」

「隠してたり弱いと見つけにくいんだよ。ヒルダさんは隠せるし、ベル坊は今外に魔力が出てねえからなあ………」

「ちっ、役に立たねえな。あー、あっちー………川原にでも行くか」

「……………」

 

 と、歩き出す男鹿。川原といいえば、ベル坊と出会った場所。なんだかんだ言いながら探すんじゃねえかと苦笑する。

 

「おーい、早く来いよ」

「ああ………」

 

 

 

 

「よ…」

 

 川原につくとサングラスを掛けた男が馴れ馴れしく声をかけてきた。古市は見覚えがないが、男鹿は知っているようだ。

 

「いやー、昨日は悪かったな。先に帰ったりしてよ」

「お前………」

「男鹿、こんなタイミングで悪いんだが、居たぞ………」

 

 と、古市がベル坊の魔力を感じ取る。この男には悪いが後にしてもらおう。と………

 

「東条さーん、来ましたよ東条さーん!!」

「おー、今行く」

「ほーうなる程。お前が男鹿か…思ったより細いな。喧嘩、しようぜ」

 

 現れたのは茶髪に大柄な男。その肩には、緑の髪の赤子………ベル坊が居た。虚ろな目でぼんやりと周りを見ている。

 

「……………」

 

 何故ベル坊があの男………東条と一緒に……魔力の繫がりは感じない。親と認めたわけではないようだが………それより男鹿は? ラッキーとでも思っているのだろうか?

 

「ラ…ラッキー…………」

「…………」

 

 目茶苦茶引きつった顔で冷や汗を流していた。

 

「うへへへ、見たまえ古市くん。なんか知らんがあのガキ東条にひっついているのですぞ。馬鹿だ馬鹿」

 

 ですぞ?

 男鹿はそのまま帰るぞと言いながら何故か川に入る。

 

「おい何処に帰るんだ!? そっちは川だぞ!」

「馬鹿野郎! 川だって人が帰る家だろ!」

「馬鹿はお前だ! 川は人の帰る家じゃねえ!」

 

 そのやり取りを見て東条が吹き出す。

 

「ハハ。おもしれー奴等だな! なあ庄次、ありゃあ大物だぜ!」

「そーっすかね。別に止めやしませんが……俺には、東条さんが相手する程の奴に見えませんけど」

「あん?」

 

 と、男鹿を引き上げながらグラサンを睨む古市。

 

「フッ、そいつはやってみてからのお楽しみだ」

「落ち着け男鹿!」

「落ち着いてるよ!」

「良いから落ち着け! あの人はベル坊の親になっちゃいねえ! そう焦るな」

「……別に焦ってなんかねえ」

 

 本当に天邪鬼だなこいつは、と呆れる古市。東条に視線を向ける。

 

「東条先輩! 一つ聞いて良いですが!? 背中のお子さんについて!」

「あぁ………こいつか? そうだな、俺に喧嘩に勝てたら教えやるよ」

 

 戦闘狂か。面倒くせえタイプだなと古市が眉根を寄せる。この手の相手は一度戦わない限りひかないだろう。

 

「だからほら、こいよ」

「…………ふざけんなよてめー。赤ん坊背負ったまま喧嘩する気か」

 

 何時もお前がやってんだろうが、と古市が心の中で突っ込むなか、東条はベル坊を庄次に渡した。あっさり離れた………東条と一緒に居る理由はわからないが、やっぱり熱に浮かされている。つまり、魔力の発散ができていない。

 

「ふふ、良いね。目を見りゃ解かるぜ。お前も俺と同じ喧嘩好きだ」

「ああ?」

 

 お互い殴り合える距離になり睨み合う。古市は庄次に近付きベル坊の額に札を冷却シートのように張る。

 

「アィ〜」

「気休めだな………」

 

 魔力は貯まる一方。すぐ黒ずんで使い物にならなくなった。

 

「なにそれ?」

「マカオ製の知恵熱冷まし」

 

 マカオって何処だよと聞かれれば、男鹿家が魔界を勘違いした結果としか言えない。まあ魔界製ですらないが。

 

「ほー、良いなそれ。30枚くれ」

「それはいいんすけど………」

「おっと、悪いな」

 

 改めて睨み合う東条と男鹿。

 

「で、なんだったか? ああ、そうそう。喧嘩好きって話だ。だが周りにゃ弱い奴等ばっかりだ、全力を受け止められるやつなんてそうはいねー。俺がそうだ、どっからでもかかってきな」

「………ふざけた野郎だ」

 

 庄次は買い被りとでも言いたそうな顔をする。

 

「いくぜ……」

 

 動いたのは同時。吹き飛ばされたのは、男鹿。川まで吹っ飛んだ。

 

「おいおい、どーした? これで終わりじゃねえだろ?」

「………男鹿が押し負けた?」

「………終わりだな。あの人の一撃をまともに食らって立てるわけねえ。おいお前、救急車呼んでやれ」

「え?」

「あん?」

「男鹿はあの程度じゃ沈まないっすよ」

 

 古市の言葉通り、男鹿が川から飛び出す。ふらつきもせず東条の前に戻る。

 

「いいね、もう一回やろうってか……」

 

 再び振るわれる拳。

 

「………っらあああ!!」

 

 今度は男鹿が押し勝つ。東条が吹き飛んだ。

 

「東条さん!」

「騒ぐな……面白くなってきやがった」

 

 東条もふらつくこと無く歩き男鹿の前に立つ。馬鹿正直に、真正面に立つ。これじゃあ喧嘩じゃなくて殴り合いだ。

 

「いい気分だ、続きと行こうぜ」

 

 ゴキャ、と今度は同時に拳が相手に当たる。どちらも仰け反り、先に態勢を立て直した東条が拳を振るうも男鹿が受け止め、反対の腕で殴るも東条は手首を掴み受け止める。

 

 そして同時に頭突き。息ぴったりだ。

 

「ムカつく野郎だ。マネすんじゃねーよ!」

「ん? ああ………男鹿つったか。下の名前は?」

「ああ、辰巳だぼけ」

「そうか、礼を言うぜ男鹿辰巳………」

「ああ?」

 

 何を急にと訝しむ男鹿は、しかし何かを感じ取り距離を取る。魔力ではない。その人間が持つ威圧感に、辺りの鳥も逃げ出す。

 

「そうそうそこのガキな。ありゃあ俺の子じゃねえ……昨日拾っただけだ。なんだか知らねーが迷子でな、親が見つかるまで面倒見ようってわけだ」

「聞いてねーよ。勝手に答えんな」

「…………まさかお前が親か?」

「聞いてねーって、言ってんだろ!!」

 

 東条の頬をぶん殴り、そのまま拳を連続で叩き込む。元々それなりに強い神崎や姫川と2年の………変わった奴等も一撃で沈める威力を何発も食らう東条。

 

 そのまま服を掴みぶん投げようとするも、先に服が破けた。そして、()()を見て男鹿が固まる。

 

「ふー……」

 

 ゼブルスペル……やはりベル坊との魔力の繫がりは感じない。というか魔力そのものを感じないが、隠しているのか……?

 

「礼を言うぜ。お前のおかげで、少しは本気を出せそうだ………いくぞ」

 

 ゴキッと鈍い音が響く。男鹿の空高く舞い上がる。古市も庄次もあんぐりと口を開けた。

 

「ふむ………こんなもんか」

「………い、いやいやいや!! ありえないっすよ東条さん! なんすか今の!? ギャグ漫画でしか見ないような吹っ飛び方でしたよ!?」

「ん?」

「お星さまみたいに消えました!」

 

 とんでもねえ威力だ。ゼブルスペルを見て驚いて防御が間に合わなかったとはいえ、あの男鹿をあそこまでふっ飛ばすなんて。

 

「心配するな。川に落ちただけだ………よお、これってどう使うんだ?」

「え? ああ、一気に使うと逆に落差でダメージおうかもなんで、30分に一回ぐらいで」

 

 と、追加の札を渡す古市。東条からは魔力を感じない。つまり、純粋な身体能力で人をあそこまで吹き飛ばひたのかこの男は。

 

「ついでに彼奴に伝えておいてくれるか? 楽しかったぜってな」

「え、いやっす」

「え………」

「そういうのは、喧嘩が終わってから言ってくださいよ」

「……………ほう」

 

 と、楽しそうに笑う東条。

 

「そうだな、じゃあ………楽しみにしてると伝えといてくれ」

「それなら………お〜い、男鹿〜!」

 

 古市は去っていく東条に背を向け川に飛び込む。

 

「いいダチ持ってんな、彼奴」

「諦めが悪いだけじゃねーっすか。確か、男鹿の腰巾着ですよ?」

「男鹿の傍にずっと居るんだ、ただのイソギンチャクじゃ、彼奴とずっといるなんて出来ねえよ」

「……………腰巾着っす」

「む?」

 

 

 

 男鹿を引き上げ、東条からのメッセージも伝えた。さて、後はどうするか?

 このまま寝ても良いのだが、男鹿の事だ。何もなければ明日………早ければ今夜にでも再戦するだろう。ベル坊も東条にくっついたままだし。

 

「…………学校行こ」

 

 何となく、石矢魔の最強を決めるならそこだろうと予想できる。もし違ったならそれで良いか。

 

 

 

 

「当たるもんだなぁ、俺の勘」

「お、ふるちん」

「古市っす」

 

 校庭で夜風にあたっていると東条が眼鏡の男を連れてやって来た。

 

「知り合いか、虎」

「こいつ医者なんだ。すげーんだぞ、こいつのくれた湿布でガキが気持ちよさそうにすんだ」

「学生っす」

 

 悪意とかを感じない。強さは申し分なくても、やはりベル坊の親にはなり得ないだろう。

 

「ところでそこに埋まってんのは?」

「ああ、空気読まなかったので殴って………」

 

 壁に突き刺さった5人組をみてほぅ、と古市に獰猛な笑みを向けてくる東条。

 

「よし、喧嘩しようぜ」

「え、いやっす」

「よし、喧嘩しようぜ」

「聞けよ人の話! ドラクエか!?」

 

 これは喧嘩するまで言葉が変わらないパターン?

 

「だいたい、俺は喧嘩嫌い………苦手なんすよ!」

 

 喧嘩嫌い、とは言えなかった。初代烈怒帝瑠の抗争に巻き込まれ、ワクワクしたし楽しかったのは事実だし。

 

「む? 強いのにか?」

「栄養あるからって苦いものは食いたくねーでしょ」

「好き嫌いはいかんぞ古市」

 

 例えを間違ったようだ。

 

「とにかく、俺は売られた喧嘩か必要な喧嘩しかしませんからね!」

「そうか………じゃあする気になったら何時でも言ってくれ」

 

 この男は………。

 

「くそ……男鹿から鞍替えしてたのか」

 

 と、復活したMK5が東条達と話す古市を見て悪態をついてくる。フォーメーションがどうのと言っていたが、まったく通じなかったのにまだ敵愾心を持てるのは感心する。

 そのままどっかに行った。

 

「悪いな……古市だったか? 虎は昔から馬鹿なんだ」

「まあ、馬鹿の付き合いには慣れてますけど……ベル坊も、熱に浮かされてるのに似たような奴を選ぶなよなー」

 

 寧ろ熱に浮かされて東条が男鹿に見えているとか?

 

「こいつベル坊ってのか………男鹿の子供なんだろ?」

「ちょっと複雑ですけどね………ベル坊はあだ名ですけど」

「本名は別にあるのか」

「知りたいんすか?」

「親が付けた名だろ? しっかり知っとかなきゃな………」

「カイゼル・デ・エンペラーナ・ベルゼバブ4世です」

「…………か」

「カイゼル・デ・エンペラーナ・ベルゼバブ4世」

「………………」

 

 東条はフッと笑う。

 

「よろしくな、ベル坊!」

 

 名前を覚えることを諦めたようだ。

 

「ん?」

「どうした、かおる?」

「いや、なにか妙な爆破音が………」

「爆発音? まだ火つけてねえぞ」

「そっちじゃなくて……」

 

 ところで、煙火筒って個人が持って良いものだっけ?

 

「いやー、びびったびびった。こんな時間に花火やるとか言うから来てみたら、何すかあの人だかり」

「人だかり?」

「あ!? ちょ、それ! 花火って、本物じゃないっすか! 一体何処で!?」

「バイト先でくすねた」

「「犯罪っすよ!?」」

 

 二人揃って突っ込んだ。そのまま無言で見つめ合い、ガシッと手を繋ぐ。

 

「なんだ?」

「気があったみたいだな………それより庄次、人だかりってのは?」

「ああ………」

 

 何でも手柄を立てたら東条の部下になれるという噂が流れ全校生徒が集まってきたらしい。男鹿に勝てないから東条につこうとしてるのに?

 ちなみに噂の発生源は東条らしい。「頑張ったらいーよー」という適当な感じで。あと花火するから見においで、と。だからMK5がいたのか。

 

 決戦の空気を察せずワクワクと席を取ってた。

 

「てきとーっすね」

「そうなんだよ、この人………」

「まあ良いじゃねえか。どのみちうちはそういう学校だ………全員集めて喧嘩して、最後まで立ってた奴が大将。それでいいだろ?」

 

 その言葉に、全員固まる。

 

「派手に行こうじゃねーか。花火も喧嘩も………」

 

 煙火筒にマッチを放り込み、光の線が闇夜を切り裂く。

 

「……………」

 

 古市は校庭の端に移動し、木の上に居たヒルダに声を掛ける。

 

「医者は連れてこれたんですか?」

「ああ。問題はあの男の方だったのでな、薬を処方してもらった」

「へえ………」

 

 ドォン! と空に炎の花が咲く。これ絶対近所迷惑だよな。そんな元凶の東条は、一人の男を睨む。

 

「なあ、男鹿辰巳」

 

 東条と男鹿。石矢魔最強を決める喧嘩が始まる。

 相変わらず自分は蚊帳の外だが、今回は別にそれでいい。

 小5の時と同じだ。ワクワクする。

 

「ふ。貴様も坊ちゃまの家来にふさわしい顔をするではないか」

「………?」

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