魔法科高校の劣等生~フローラの煌き~   作:春薪 琴音

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九校戦編~
第十話


そわそわ

そわそわ

 

生徒会室で生徒会の女性陣がいつものように仕事をこなしていたのだが、その中に一人だけいつもと違う様子の人物がいた。

そわそわと身体を動かし、ちらちらと室内の時計を確認しては落ち着かない様子で作業をしている。

落ち着かない効果音まで聞こえてくるほどの彼女に、ついに我慢出来ずに楓が声をかける。

 

「深雪ちゃん、少し落ち着いて。」

「っ!!も、申し訳ありませんお姉様・・・」

 

楓に声をかけられ、びくっと肩を揺らしてからしゅんっと目を伏せて深雪が謝る。

落ち着かない様子だったのは深雪だったのだ。

普段では見られない様子の深雪に、真由美は何かあったのかと心配そうに尋ねてきた。

 

「どうも達也が職員室に呼ばれたみたいなの」

「おそらく試験結果のせいですね。」

「あ、見ましたよ!司波君すごいですよね!」

 

深雪が落ち着かなかったのは、先日の試験結果がよくなかったからではなく、達也の筆記試験結果が良すぎたからだった。

二科でありながら一科の深雪を大きく離して主席という結果は、困惑と同時に疑惑を抱かせる。

つまり・・・

 

「実技に手を抜いているのではないかと疑われているのでしょう。」

「お兄様はそんなこと致しません!」

「まぁまぁ、深雪さん。それはみんなわかってるから。」

 

やはりどうにも達也のこと(楓のことでもだが)になると、普段お淑やかな深雪は一変してしまう。

今にも職員室に駆け込んで抗議でもしそうな深雪に、真由美は苦笑して落ち着かせる。

ここにいる深雪以外は学年が違うのだが、ほかの学年の成績もチェックはしていた。

でなければ生徒会への勧誘も難しいので当たり前なのだが、同じように達也の成績には驚いていた。

ちなみに楓は、いつも学年トップ10には入っている。

真由美に落ち着いて、と宥められるがそんなことで深雪の気持ちが収まるわけもなくそわそわとするのが止まらない。

これでは仕事にならないと真由美が楓に視線で助けを求めると、はぁっとため息をついて深雪の背後に立つ。

ぐっと揺れ動く肩を押さえつけて、少しきつめの口調で言い放った。

 

「これから始まる九校戦の準備で忙しいんだから、今は諦めなさい。」

「・・・・・・・はい。」

 

楓にそう言われてしまえば諦めるしかない深雪だった。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

「服部?おい服部!」

「っ!桐原、なんだ?」

 

すぐ隣から自分を呼ぶ声が聞こえて来て、服部は飛んでいた意識が一気に戻ってきたのを感じた。

動揺しているのを隠すように平静を装って声を変えてきた人物、桐原に返事を返すが彼は誤魔化されない。

明らかに心ここにあらずだったのを見て、訝しそうな表情を浮かべている。

 

「さっきから呼んでるんだけど?一体どこ見て・・・ははぁん。」

 

真面目な服部にしては珍しいミスだなと思いつつ、彼が見ていたであろう視線の先を見て納得する。

何とも悪い笑みを浮かべて服部の肩に腕を回して、耳元に近づいて囁き、わざとらしくからかってやることにした。

 

「椎名、いい身体してるよなぁ」

「っ!馬っ・・何をっ?!」

 

思った通りかっと顔を、耳まで真っ赤になった服部が大袈裟な反応を返してくる。

桐原はにやにやする口元を止めず、更にからかうために口を開く。

 

「結構着やせするタイプなんだな、あいつ。」

「き、桐原っ?!」

「いやぁ、つい目が行っちまうのもわかるぜ?」

「お、俺は別に!!」

 

そう、服部の視線の先にいたのは体育の授業でテニスをする楓の姿だった。

シャツにスパッツとラフな格好で、普段は制服で隠れている身体のラインが今はよくわかる。

桐原が言うとおり楓は着やせするタイプのようで、制服からはわからなかったがスタイルが良かった。

ラケットを振る度に揺れる柔らかそうな胸、細い腰、引き締まったお尻、白く伸びる足。

服部だけでなく、周りで見ていた男子生徒の視線をも釘付けにしていた。

 

壬生という愛しい彼女がいる桐原は楓に興味があるわけではないが、服部が楓を意識しているのを知っていてわざとそう言ったのだ。

案の定服部は真っ赤になって大慌てする姿を、桐原は楽しそうに見ていた。

 

二年生がそんな男同士の下世話な会話をしている中、ところ変わって同じように体育の時間を迎えていた一年生も変わらない会話をしていた。

エリカが時代遅れの体操着でやってきた騒動が落ち着いたところで、まだ顔の火照りが引かない幹比古が達也を見る。

 

「落ち着いているね達也は。」

 

恥ずかしいくらい慌てた幹比古や、いらんことを言って蹴られたレオとは違い達也はとても冷静だった。

あんな足丸出しの姿を見せられれば、健全な高校生男子はもっと動揺するものだ。

だから不思議になって聞いた幹比古の疑問に答えたというか、勝手に解釈したのはレオだった。

 

「まあ、達也には立派な彼女がいるからそれ以外には目がいかねぇんだろ。」

 

達也に彼女がいる、という思いがけない事を聞いて幹比古が目を見開く。

 

「え?達也、彼女がいるの?」

「ああ。おかしいか?」

「いや、そういうわけじゃないけど・・・」

 

何故だろうか、最初に楓を紹介したときのように信じられないような表情を浮かべる幹比古に達也は苦笑する。

そんなに自分に彼女がいることが想像つかないのだろうか。

疑いを隠さない幹比古に、同じように最初は驚いていたはずのレオがフォローを入れる。

 

「想像つかないよな?でも、結構ラブラブだぜ?」

「・・・・ラブラブ・・・」

 

その死語を交えたフォローに、更に難しい表情を浮かべた幹比古は頬をひきつらせていた。

にやにやと笑うレオと引き攣った顔の幹比古を見ながら、達也はため息を付く。

とにもかくにも、この年代の男子はどこも同じような会話になるということだった。

 

 

 

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