魔法科高校の劣等生~フローラの煌き~   作:春薪 琴音

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第十四話

 

九校戦がまだ始まってもいないというのに起きたトラブル、しかも人為的と判断できる事件に二人はこれからのことを考えて気が重くなる。

互いに顔を見合せてついついため息をついてしまうのは仕方がないだろう。

 

事故から十分後、警察がやってくるとその場を任せて第一高校の生徒たちは予定通り大会会場へと向かった。

到着した時には予定の時間をかなり大幅に過ぎてしまっために、生徒たちは慌ただしく準備を始めることとなった。

機材を車から降ろしていた所に真由美から声をかけられ、本部として使う天幕での準備を手伝うことになる。

 

「後はお願いね。あと、深雪ちゃんへの説明も」

「わかってる。また後でな。」

 

途中だった作業を止めて、残りを達也に任せると楓は自分を待っている真由美たちの方へと駆け足で向かった。

天幕内にはいくつもの机と椅子が準備されており、それをすでに考えていた通りの状態へと動かす。

持ち込んだ機材、端末やスクリーンを設置して使いやすいように調整していく。

時間が思った以上に減ってしまったが、それでも手を抜かずに入念に準備をする。

 

「その端末はあっちへ。あっ!待って、それは・・・」

「こちらセット完了しました!」

「電源来てません!」

 

問題と指示の言葉が行き交う中、どうにか準備が終わったのはパーティまであと一時間ほどという時だった。

全員が慌てて割り当てられた自分の部屋に戻り、荷物を片づけて会場へと向かった。

楓も簡単に身なりを整えてから会場に入り、喉が乾いていたのですぐにウエルカムドリンクを貰って喉を潤す。

 

「あ、楓こっちこっち~」

 

会場に入ってきた楓に気付いた二年の友人が手を振って声をかけてきたので、そちらへと向かう。

選手である彼女たちは楓より一足先に来ていたようで、手には食べ途中の料理が乗った皿がある。

ただの高校の生徒たちが集まる大会で出るものとは思えない、見た目にも食欲をそそる料理だった。

まぁ、それも当たり前といえば当たり前のことで、魔法を扱える人間に本当の意味で一般人というのはほとんど存在しない。

魔法を使うにはそれ相応の血筋が必要であるため、学校に通うほとんどの人間が上流階級で一般家庭の生徒は本当にごく僅かなのだ。

ましてやここにはその中でも特に成績の秀でたものが集まるのだから、必然的に料理ももてなしも最高級のものになってしまう。

一高での真由美や十文字が優秀血統の筆頭であり、楓や深雪も然りである。

 

「楓も何か食べ物取って来なよ。」

「うん、そうする。」

「いってらっしゃ~い」

 

友人の言葉に、お腹が好いているのも事実なので料理を取りにいくためにその場を離れることにする。

会場の中心は丸テーブルが置いてあり、空いたグラスや皿の置き場になっている。

食事自体は壁際に設置されているので、少し見回して美味しそうなものを探す。

とはいえ、深雪の料理以上に美味しいものを探すのは難しいと思っている楓である。

とりあえずめぼしいものを見つけてテーブルへと戻ろうとすると、後ろから声をかけられる。

 

「・・・楓ちゃん?」

「え?」

 

自分の、しかも下の名前で聞き覚えのない声に呼ばれ、楓は驚いて振り返る。

そこには一人の少年が立っていた。

声を聞いたこともなければ、その少年の顔にも特に見覚えがなくて楓は首を傾げる。

だが逆に少年は楓だと確信したようで、更に近づいてきて嬉しそうな笑みを浮かべる。

 

「やっぱり楓ちゃんだ!」

 

少年は茶色の短髪で、身長は楓と同じくらいで真面目そうな顔をしている。

ナンパとも思えず困っている様子に、少年は楓が自分の正体を把握していないと気付く。

 

「あ~、わかんないよね?僕だよ、仁岡 健司!」

「・・・・・仁岡くん?」

 

自分を指さして名前を言われ、一瞬悩んだ後、楓はやっと彼の正体に気付いた。

彼、仁岡健司は楓が小学生の時の同級生だった。

まだ母親が生きており、二人で慎ましくも幸せに生きていた頃の知り合い。

随分と古い記憶だったので、思い出すのは困難ではあったが名前はどうにか思い出せた。

だが6歳くらいの記憶から現在の姿を見て本人だと認識するのは、はっきり言って無理がある。

むしろ、彼はよく自分がわかったものだと楓は感心してしまうくらいだ。

 

「突然いなくなっちゃったから、心配してたんだ」

 

小学二年生になった直後に、楓は突然当時の小学校を止めて姿を消した。

母親が亡くなって、父親に連れ出され四葉に預けられたからである。

詳しいことを知らされるはずもなく、おそらく家庭の事情云々と言ったに違いない。

 

「母親が亡くなって、父親に引き取られたから・・・」

 

多分な嘘を含みながら、楓は当たり障りのない説明をする。

完全な嘘ではないので問題ないだろう。

事実母親は亡くなってしまっているし、書類上は父親の籍に入っているのだから。

母親が亡くなったことも知らなかったらしく、仁岡は驚いた表情を浮かべている。

不躾なことを聞いてしまったと申し訳なさそうな表情をしてから、それでも笑みを浮かべる。

 

「そうだったんだ・・・でも、また会えて嬉しいよ。」

「うん。心配してくれてありがとう。」

「その制服、一高だよね?僕は三高なんだ。」

 

気まずい雰囲気になってしまったところで、健司が慌てて話題を変えることにする。

楓の白にエメラルドグリーンの色合いで、一高であることを察したようだ。

仁岡はエンジと黒の色合いで三高であることを表している。

楓はその変えられた話題に乗ることにする。

 

「そうみたいだね。仁岡くんは選手?」

「あはは。見ての通り運動は苦手でね。エンジニアだよ。」

 

必然的にここにいるということは、ほぼ選手かエンジニアのどちらかに絞られる。

楓のように手伝いで参加することはほとんど稀だろう。

案の定仁岡もエンジニアとして参加しているらしい。

魔法は体格などはあまり関係ないが、この大会に限ってはやはりそこそこ体を鍛えている人間が選手になるのが定説だ。

だから見たとおりと称したのである。

 

「そっか、頑張ってね。」

「ありがとう。あ、そうだ今度・・・」

「お~い仁岡~!」

 

他校なので必然的に敵となってしまうため当たり障りのない激励をするに止めるが、健司は楓にそう言ってもらえただけで嬉しかったようだ。

頬を染めて頬を掻いた仁岡は、お礼を言う。

更に何かを言おうとするが、それはおそらく彼のチームメイトであろう生徒の呼び声で中断される。

どうやらそろそろ懇親会が始まる時間になっていたようで、姿が見えなくなっていた仁岡を探していたらしい。

楓も今度こそ友人たちのところへ戻ろうと、話はここで打ち切ることにした。

 

「あ、ごめん呼ばれてる。また近いうちに話そう!」

「うん。またね・・・」

 

 

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