魔法科高校の劣等生~フローラの煌き~   作:春薪 琴音

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第十九話

モノリス・コード予選、第一高校対第八高校。

その試合が今から行われるのを、楓は一高の本部天幕に設置されている大きな画面の前で見ていた。

予期せぬ事故によるアクシデントで今までの選手とは全く違うメンバーで望む試合。

幹比古にレオ、そして達也が一高の二科生であることを知っている一高の生徒は不安そうに、それを知らない他校生や友人達は期待した視線で試合が始まるのを待っていた。

試合が行われるエリアは森林ステージ。

 

「このエリア、八高に有利に見えるけど・・・」

「ええ、達也にとってはうってつけの場所だわ。」

 

苦笑している真由美に、楓は自信満々な表情で答える。

そしてその言葉通り、試合が始まった瞬間八高の選手は達也達に完全に翻弄されていた。

達也の予測不可能な魔法(実際にはただの身体的能力なのだが)、幹比古の知覚不可能な古式魔法、レオの敵の気配を嗅ぎ分ける嗅覚と強力な硬化魔法。

翻弄され試合開始からほとんど時間が経っていないにも関わらず、あっさりと倒される。

瞬間、会場内に鳴り響いた試合終了のブザー。

試合を見ていた全員が一瞬呆然とし、すぐさま大きな歓声を上げる。

本来選手ではないはずの少年達の活躍に、完勝と言っていい勝利に誰もが熱狂したのだ。

一部このチームが即席で、ほぼ行き当たりばったりの作戦で勝利したと知っている人物たちは結構そわそわしていたのだが。

無事八高との試合を勝利した達也たち一高メンバーは、三十分後に予定されていた二高との試合に臨んだ。

事故が発生したのと同じ市街地ステージということも気にしていないのか、達也は冷静沈着に試合を進める。

幹比古の精霊を使い、敵チームのモノリスを探し当て、コードを読みとる。

無駄のない作戦と動きはまさに圧倒的だった。

それは準決勝の九高との試合でも同じ、いやステージの関係上まさに達也と幹比古の独壇場だった。

生い茂った木々や岩場は彼らが身を隠すのに最適で、もはや九高の生徒は試合開始から一度も一高選手の姿を見ることが出来なかった。

残す試合は決勝戦、一高と三高との戦いのみとなった。

最後の試合も直前という頃、楓と深雪は珍しく二人だけで歩いていた。

というのも、達也は師匠に何かを頼んだらしくその受け取りをしてからデバイスチェックをしてもらうからと別行動をしていたのだ。

今は天幕にいるだろうと、部屋で昼食を取った後向かっている最中だったのだ。

 

「次は決勝戦ね。ふふ、楽しみ」

「はい。深雪もとても楽しみです。」

 

二人は楽しそうにくすくすと笑いながら、決勝戦では達也がどんな活躍を見せてくれるかと想像する。

達也が勝つと信じて疑っていない二人にとって、決勝戦は不安なものではなくただ楽しみな試合である。

 

「お姉様、決勝戦は会場でご覧になられるのですか?」

「もちろん、そのつもりよ。」

 

今までの試合はすべて本部で観戦していた楓に、深雪が決勝はどこで見るのかと聞くとそう返ってきた。

決勝の見所は、やはり達也と一条の御曹司の戦いであることは明白だ。

実践経験を持ち、クリムゾンプリンスという異名を持つ一条将輝とカーディナルジョージこと吉祥寺真紅朗。

有名すぎる二人を前に、いくらこれまでの試合で圧倒的な力を見せた達也たちでも勝てはしない、そう誰もが思っているだろう。

確かに本来の力を出すことが制限されている状況での勝利はとても厳しい、わかっているがそれでも・・・

 

「お兄様は、誰にも負けたりしません。」

 

楓の心を読んだかのように絶妙なタイミングで放たれた深雪の言葉に、楓は驚く。

隣に視線を向けると、深雪の目には欠片の疑いもないことがわかる。

なんともらしい彼女に、楓は微笑む。

 

「当たり前よ。でも、そうね・・・深雪ちゃん、達也を激励してきてくれる?」

「激励、ですか?・・・わかりました!」

「よろしくね、深雪ちゃん。」

 

溺愛する妹の激励、それを受けた達也が深雪の期待を裏切ることなど出来るはずがない。

確信犯な楓の笑みに、深雪は嬉しそうな笑みを浮かべて快諾したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、楓も今回はこっちで観戦?」

「ええ、折角だからね。」

 

深雪と一緒に会場へ向かうと、すでに席を確保してくれていたエリカ達と合流する。

現れた楓に、ほのかは頬を紅潮させながら今にも立ち上がって何かを叫びそうな勢いで声をかけてくる。

 

「そうですよね!決勝ですもんね!!」

 

まるで自分のことのように興奮し白熱している様子のほのかに苦笑すると、隣に座っている雫の呆れた顔が目に入る。

どうやら昨日の夜からこんな様子だったようで、散々付き合わされているようだ。

 

「大丈夫、雫?」

「ん、慣れてるから・・・」

「慣れてるんだ・・・・」

 

少し眠そうな雫を心配すると、特に怒るでもない様子で淡々と答える。

どうやら本当に慣れているようだ。

そう言えば、二人は幼なじみと言っていたのでこんなほのかの様子は初めてではないのだろう。

 

「あ、ついに始まりますよ!!」

 

ステージに一高と三高、両方の選手が現れ、空を飛ぶ気球船に設置されている巨大モニターに映像が映し出されるのを見て開始が近いことを知る。

モニターに、達也がこの試合のために用意したものを身につけているレオと幹比古が映し出された瞬間、エリカが笑い転げ出す。

 

「何あれ、何あれ!!あははっ!!」

「エ、エリカちゃんっ」

 

突然大声で笑いだしたエリカに、隣に座っていた美月が真っ赤になって止めようとするがそれは到底無理な話だった。

効果を知っている楓や、他の生徒もあれは一体何なのかと興味津々で笑ったりはしない。

もちろんエリカも達也が無意味なことをする人間でないことは重々承知しているが、それとこれとは別なのである。

レトロなマントとローブ姿は、エリカの笑いのツボを大いにヒットしてしまったようだ。

おそらく着ている本人達も、見られたらエリカが大笑いすることを想像しているに違いない。

年頃の女性としてはちょっとと思われるくらい笑い続け、やっとエリカの笑いが収まった頃、決勝戦が開始された。

 

 

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