魔法科高校の劣等生~フローラの煌き~   作:春薪 琴音

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第六話

「さて、じゃぁ後はお願いね服部くん。」

「ああ、気をつけて帰れよ?」

「お疲れさま~」

 

生徒会の手伝いがひと段落ついたので、今日はもう帰ろうとまだ残っている生徒会のメンバーに声をかけて生徒会室を出た。

ふと時間を確認して、この時間ならまだ達也と深雪もいるかもしれないとあたりをつけて校門近くで待とうと考える。

決めたら早速行かねば、楓は少し足場やに校門に向かったのだが・・・・

 

「あれ?真由美と摩利さん?」

 

校舎へと戻る二人の姿を見つけて一瞬不思議に思ったが、すぐに二人の表情が楽しそうなものだと気付いて声をかけるのをやめた。

とにかく校門へ向かうと、そこには運良く探していた二人がいることに気付いた。

他にも数人周りにいるのを見て、同じ一年生の友達だろうと検討をつける。

折角だから挨拶を、と思ったのだがどうにも雰囲気がおかしい。

 

「達也、深雪ちゃん・・・・どうしたの?」

「・・・楓」

「お姉様っ!」

 

声をかけられて振り向いたところに立っていた楓を見つけて、二人はそれぞれの反応をする。

首を傾げながらも、楓は二人とそして友人たちと一緒に帰ることにしたのだった。

折角だから喫茶店で何か食べようとという意見になったので、歩きながらそれぞれに自己紹介をすることにした。

とはいえ、ほとんど楓への自己紹介となっている。

 

「私は、2-B椎名 楓。よろしくね。」

「椎名さん、二年生だったんですね。」

「道理で見たことがないと思った。」

 

楓の自己紹介に、同じ一科生なのに見たことがないから不思議だったのだが理由を理解したとばかりにほのかと雫が頷く。

先輩なら敬語と先輩をつけないといけないと慌てた皆に、楓は気にしなくていいと言って、気安い対応を許した。

 

深雪のように見惚れるような美人、真由美のように心奪われる可愛さではないのに、楓の笑みはとても心惹かれる何かを持っていた。

恐らく肩より少し長いぐらいであろう、艶のある黒い髪の毛を結い上げてシンプルなバレッタで止めている。

年齢的にはひとつしか違わないのだろうが、どこか落ち着いた大人っぽい雰囲気を与えている。

その理由は彼女がよりも多くの経験を積んでいるからなのだろうが、知らない彼女たちは不思議な魅力と捉えるにとどまっている。

 

「んぐ、ところで達也くんや深雪と楓の関係って何?」

 

喫茶店で買った軽食を一口食べながら、エリカが早速言われた通り気安く名前を呼んで質問した。

あまりの対応の良さに周りが一瞬驚きながらも、すぐに順応して表情を戻す。

言われた楓も嬉しそうに微笑んでいる。

 

「エリカ、お姉様とお兄様はお付き合いされていらっしゃるのよ。」

「お付き合い?」

「恋人ってことかな・・・」

 

深雪が微笑んで答え、意味を計りかねて首を傾げた美月に楓が少し恥ずかしそうに説明した。

すると、一瞬の沈黙後全員が一つになる。

 

「「「「恋人ーーーっ?!」」」

 

「そんなに驚くようなこと?」

「そんなに驚くようなことか?」

 

あまりにも全員が一致していたので、楓と達也はなんとも言えない表情で示し合わせたように同時に驚いて呟いてしまう。

その後、根ほり葉ほり聞かれそうになったが、時間も遅くなってきていたのでそれは後日ということでどうにかその場は収まり、それぞれに解散した。

三人も家に戻ると、深雪の夕食に舌堤を打ちながら団欒をする。

もちろん会話のメインは、今日あった友人たちのことだ。

 

「それにしても面白い子たちだったね。」

「ああ。」

「皆さん、とても良い人ばかりです。」

 

楓の言う”面白い”は色々な意味を含んでいるのだが、達也には通じたようでしっかりと頷いている。

深雪は気付かないまでも、楓が友人たちを気に入ったのは感じ取ったのか嬉しそうに相槌を打った。

食後の紅茶を飲みながら、ふと楓は思い出したように口を開く。

 

「そう言えば、深雪ちゃん。生徒会には誘われた?」

「え?あ、はい。明日伺う予定です。」

 

言われた通り、深雪と達也は明日生徒会室に来るようにと打診を受けていた。

なぜ自分もなのかと達也は疑問には思ったが、特に意見はしていない。

 

「そっか。生徒会室はお弁当持ち込み可だから、今後は一緒にご飯食べられるかもよ?」

「本当ですか、お姉様!」

 

楓が生徒会の手伝いをしており、お昼は役員と一緒に生徒会室でお昼を食べているのを知っている深雪は嬉しそうに声を上げる。

楓だけでもお弁当を頼むことは出来たが、あまり深雪に負担をかけたくなかったので今まで言わずにいたのだ。

だが、深雪が生徒会役員になるのであれば必然的に達也も一緒になるのだし、お昼を共に出来ると思ったのだ。

 

「では、早速明日から!」

「深雪、まだ決まったわけではないのだからやめた方がいい。」

 

今から下拵えを始めそうな勢いの深雪に、達也がため息を付いて止めさせる。

誘われた初日にいきなりお弁当を持ってきていれば、変に思われてしまうに違いない。

先方から許可が出てからの方がいいという意図を察した深雪は、浮かれた自分を恥ずかしく思い、申し訳ありませんと謝る。

 

「まぁまぁ。とにかく、明日は一緒にお昼食べられるんだからいいじゃない。」

 

落ち込んだ深雪を慰めるように言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「副会長の服部くんを含めたメンバーが生徒会なの。あ、あと一人正規の役員ではないけど、手伝いをしてくれている子がいるのだけど・・・今日はちょっと遅れているみたい。」

 

案の定呼ばれたのは新入生総代を務めた深雪を生徒会に誘う内容で、生徒会長の真由美が役員を簡単に紹介した。

まぁ、難しい話はここまでにしてとにかくご飯にしましょうとお昼時間が終わってはいけないので食べ始めることになった。

深雪はプレートの食事を口にしながら、ふと摩利がお弁当を持ってきているのを見て思い出す。

 

「そういえば、生徒会室はお弁当の持ち込みが可能なのですよね?」

「ん?ああ、よく知っていたな。」

 

視線を向けられているのに気付いて、摩利は女の子らしいお弁当を食べながら返事をする。

今日初めて生徒会室に来た彼女がそのことを知っていることに驚いたのだが、その質問に答えたのは深雪ではなく隣に座っていた達也だった。

 

「ええ、彼女に昨日聞きましたので。」

「彼女っ?!誰なんだ!!」

「司波くん、彼女がいるんですか?!」

「き、聞いてないわよ達也くん!」

 

何故か達也の答えで、鈴音以外の上級生が動揺し身体を乗り出している。

こんなに大きなリアクションがあるとは思わなかったため、達也も一瞬たじろぐ。

それも一瞬で、先輩方の質問に答えようと達也が口を開いたところで生徒会室の扉が勢いよく開かれる。

 

「遅れてごめん!」

 

入ってきたのは、急いできたのがわかるように息を切らしている楓だった。

楓の姿をみた全員はそれぞれに反応を返す。

 

「遅いわよ、楓」

「大丈夫ですよ。」

「問題ありません。」

「お姉様、お待ちしておりました。」

「彼女が俺の恋人です。」

 

遅れたことを責める真由美、大丈夫だと慰めるあずさ、無表情で問題ないと答える鈴音、嬉しそうに笑みを浮かべる深雪、そしてさらりと爆弾発言をする達也。

室内に一瞬の静寂が訪れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、どうして言ってくれなかったの?楓につきあってる人がいるって。」

「どうしてって・・・聞かれなかったから?」

「・・・はぁ。」

 

放課後の生徒会室で、仕事をしながら真由美はぷりぷりと可愛らしく怒って楓を責めている。

楓としては、今まで言わなかったのは聞かれなかったからで自分からわざわざ言うことでもないと思っていたからだった。

深雪に言わせると、こういうところは達也と楓はよく似ているらしい。

わざとではなく本心で言っていることがありありとわかる表情に、真由美は呆れたように大きくため息を付く。

 

「・・・これは、副会長には言わない方がいいですね。」

「そうですね・・・」

 

真由美と楓のやりとりを見ていた鈴音とあずさは、小さな声でそんなことを囁き合う。

副会長である服部は特に生徒会の中でも差別意識が強い上に、楓を意識している節が見えるからだ。

生徒会長である真由美に好意があるのはわかるが、それはどちらかと言えば尊敬や敬愛に近いように取れる。

だが、楓に対しては同じ学年だからなのか親しげで緊張のない好意を向けているように見えるのだ。

そんな意識を向けている楓に恋人が、しかも二科生の生徒が相手だと知ったらどうなることか・・・と、鈴音とあずさはため息をつかずにいられなかった。

だが、そんな事実を知らされなくても達也と服部はいざこざを起こすことになってしまうのだが・・・

 

 

 

 

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