事件簿というタイトルではありますが、間違っても本格ミステリーとかサスペンスではありません。
読むのは大好きなジャンルですが、書けません。
そのため続きがありそうな終わり方をしますが、1話限りとなります。
「のう水木、何か金を稼げるいい方法を知らんか?」
「いきなり来て、何言ってるんだ?」
無職を脱出したら会いに行こうと思っていたら、その前にゲゲ郎の奴から会いに来た。
まあ、よく考えればこいつなら無職とか気にしないだろうし、そもそもこいつに対しかっこつける必要も無いだろう。
「実は妻の加減がいま一つ良く無くてな。滋養のつくものを食わせてやりたいんじゃ。それに乳の出もよくない。鬼太郎には粉ミルクを買って帰りたいんじゃ」
「なるほど。まあ、そういうことなら丁度いい話があるぞ」
ゲゲ郎の言葉を聞いて納得した俺は、奴に新聞を投げつける。
「丸を付けたところを読んで見ろ」
「ふむ……これか? 女学生が行方不明と……」
記事を読み上げるゲゲ郎。
「若い娘の行方不明事件なんて珍しいことじゃない。家出に駆け落ち、かどわかし。だがこいつはちょっと普通じゃないんだ。なんせ現場は女子校内、それも裕福な子女の通う名門校の中でいきなり消息を絶ってる」
「なるほど。それは確かに奇妙じゃのう」
ゲゲ郎は俺の言いたいことを察したらしい。裕福な子女の通う名門校、安全の確保や規律には厳しい場所だ。自発的な失踪も外部からの誘拐も簡単に出来るような所では無い。
「ああ、普通の人間には難しい話だ」
「妖怪の仕業じゃと?」
「あるいは、裏鬼道のような奴等かもな」
普通では不可能。しかし世の中には普通では無い存在が実在することを俺は知っている。
予想が当たっているとしたら普通の人間には解決は難しいだろう。しかし同じく超常の力を持ったゲゲ郎の力を借りることが出来れば可能性は大きく上がる筈である。
「じゃが、これと金がどう繋がる?」
「実はな、その行方不明になった女学生の父親である時田氏とはちょっとした顔見知りなんだ。娘を探すのに協力して欲しいと頼まれている。有力な情報だけでも5万*1、見つけだしたら50万と就職の斡旋の約束でな」
「なるほどのう」
納得がいったようだった。俺は分け前について説明する。
「成功したら報酬は山分け。こっちは就職の斡旋もついてる分、金については多少を色をつけてもいい。奥さんの出産祝いも未だだしな。どうする?」
「ふむ、一つ聞いてよいか?真相を知り、もしそれが少女の自発的な失踪であったらどうする? その失踪の理由が沙代ちゃんと同じような理由であったとしたら?」
ふむ、ゲゲ郎の奴はどうやら少女が父親に虐待、あるいは道具として利用されている可能性を危惧しているようだ。個人的な予想であればその可能性は極めて低いと予想している。父親である時田氏は子煩悩で、権力者には珍しいお人よしだ。そもそも普通であれば、俺のような人間にこのような話は明かさない。女性にとって行方不明になったという事実は”傷モノ”という烙印をおされかねないからだ。
だからなるべく内密にするのが普通であり、俺のように現在は無職の人間に等、絶対に明かさない。
それにも関わらず時田氏が俺に相談した理由は恐らく3つ。
1つは俺が買われているから。時田氏とは血液銀行に務めていた時に、仕事で関わったが、その時の俺は多少の運もあり、かなり出来る奴とアピールすることに成功している。
そして残りの2つは時田氏がお人好しであることと藁にも縋りたいからだ。
最も、これは時田氏の表向きの姿を見た予想に過ぎない。実は裏ではどす黒い本性を隠していて、俺が見抜けていないだけかも知れないし、仕事場と家庭内ではまるで違う人物であるかのような話も珍しいものでは無い。
「その時は、まあ、そうだな。失踪の理由が悪い男にたぶらかされたとかでなければ、……二人仲良くただ働きだな」
少女が自分の意思で失踪し、現在不幸で無いのなら無理に連れ戻しはしない、そう意図を込めた俺の答えにゲゲ郎は安心したような笑みを浮かべる。
「それでこそ、わしの親友じゃ。いいじゃろう。人助けじゃし、金も得ることができる。その話、乗らせてもらうぞ」
「頼りにしてるぜ。相棒」
哭倉村でゲゲ郎の奴が俺のことをそう呼んだことがあったなと思い出し、俺はかっこつけて奴を相棒と呼んだ。
「ここがその女学生が行方不明になった学舎か。なかなか立派なもんじゃのう」
「金って奴はあるところにはあるからな」
時田氏に根回しを頼み、俺とゲゲ郎は女学校を訪れていた。ゲゲ郎のことは時田氏には信頼の置ける私立探偵を雇ったと伝えてある。
「行方不明になったのは鏡の間らしい」
「鏡の間?」
「ああ、何でも戦前に寄贈された高価な鏡が飾られているからそう呼ばれてるそうだ。実際は和式の礼拝堂だそうだ」
予め仕入れておいた情報を伝える。予想通り、妖怪の仕業なら、そこからはゲゲ郎の奴に頼ることになる。その分、こういうのは俺の役目だろう。
「ふむ、そのような場所に何のようがあったのじゃろう? 祈りでも捧げに行っておったのかのう」
「いや、単に鏡を見に行ったらしい」
「鏡を?」
「その鏡は美術品としても価値あるらしくてな。その美しい鏡に自分が映るのが好きだったんだと」
「それはまた、ナルシストという奴じゃな」
「なかなか舶来な言葉を知ってるな」
ゲゲ郎の奴は妖怪の割りに人間の文化にも精通しているらしく、結構な物知りだ。
「さて、行くか」
建物の中に入り鏡の間を目指すが、その道中俺達は注目を集めた。
大半は女子生徒達からのものである。許可証はぶら下げているので不審者とは思われないであろうが、落ち着かない。
「何やる見られておるのう」
「女子校だからな。あからさまに部外者の男が歩いていたらそうなる」
「お主が男前だからではないか? 沙代ちゃんもお前さんに一目惚れしたようじゃしのう」
「はいはい、男のおべっかなんて、要らねえよ」
俺をからかってくるゲゲ郎。
しかしそういったゲゲ郎の奴こそ案外モテるのではないかと思う。所謂、美形ではないがこういうひょうひょうとした奴を好む女は意外と多いものだ。
まあ妻一筋のこいつには関係無いだろうが。
「っと、ここだな。どうだ、ゲゲ郎……あ~、聞くまでもないな」
ゲゲ郎の奴の表情が引き締まっている。明らかに何かを警戒している表情だ。後、髪が一本、ピンと立ってる。
「うむ、妖気が漂っておる」
「今更だが、大丈夫か。お前片腕、無くしてるし」
ゲゲ郎は狂骨を鎮める際の代償として片腕と片目を失っている。
今回、金のことを俺に頼ってきたのも半分はそれが理由だ。
これまでは金が必要な時は適当に日雇いの仕事をやってきたらしい。
「うむ、問題ないよ。寧ろ、こいつのおかげで前よりも強くなった位じゃ」
そう言って奴が指差したのはちゃんちゃんこ。
奴の先祖である幽霊族の霊毛で編まれた逸品だ。組紐から変わったことで大幅にパワーアップしたらしい。こいつには俺も世話になった。
「わかった、なら行くぞ」
そして部屋の扉を開ける。そこには情報通り鏡が飾られていた。直接見れば俺にもわかる。こいつは間違いなく妖怪だ。
「雲外鏡、鏡の妖怪じゃ。複数存在し、能力も数多に別れておる。こいつは恐らく鏡の世界へと他者をひきずり込む力を持っておる」
「なるほど、つまり女生徒はこの鏡の中に吸い込まれちまったって訳か。助ける方法は?」
「これを綱にして引っ張り上げる!!」
言うとゲゲ郎の霊毛ちゃんちゃんこが形を変え、ロープのように変化した。
そしてその先端が鏡の中に突き刺さるようにして吸い込まれていく。
その反対側を掴み、ゲゲ郎が左腕一本で引っ張りあげると鏡の中から少女の腕が飛び出て来た。
「よっと!!」
ゲゲ郎が更に引っ張ると鏡の中から少女が出て来た。間違いなく、行方不明になった少女だ。鏡に映る自分に見惚れていたというだけあって、見た目はかなりの美少女だが、今は真っ青な表情をしている。
そして自分が解放されたことに安堵したのか、少女はそこで力尽きたかのように意識を失った。
「グギャアアアコウエタアウェアイジェアイ!!!!!」
しかしまだ安心するのは早かったようである。鏡が人間には理解不能な奇声を発し、俺達に襲い掛かってきた。
「水木!! 下がっておれ!!」
「ああ、任せたぞ!!」
俺は少女を背負い退避する。鏡は触手のようなものをゲゲ郎に向けて伸ばしてきた。
ゲゲ郎はそれを跳んでかわすと、反撃で髪の毛を飛ばす。
「グチャガエアガアアア!!!!」
髪の弾丸を受けて鏡が悲鳴、多分悲鳴と思われる声をあげた。
そして更にゲゲ郎が追撃を仕掛ける。
放たれたのは電撃。それが鏡面に直撃、鏡は見事に破砕されて沈黙した。
「終わったのか?」
「うむ。どうやら雲外鏡の奴、この女子に魅入られてしまったようじゃ」
「魅入る? 鏡が人間の少女をか」
「この女子が毎日自分を見ている内に、相手が自分が好きだと勘違いしてしまったのじゃろう」
「あー、妖怪にも勘違い男みたいのが居るんだな」
少女はただ鏡に映る自分を見ていただけだと言うのに、呆れたものである。
「さてこれで事件は解決な訳だが。どう言い訳するかな」
高価な鏡を割ってしまったことをどう説明するか、弁償となったら幾らになるのか、俺は気を失った少女を抱きかかえたまま頭を悩ませた。
鏡妖怪の事件から数日が経過した。幸いなことに鏡の件は救出された少女の弁護もあり、依頼者である父親が代わりに弁済してくれたおかげで俺達は負債を免れることができている。外装は無事だったので、鏡の部分だけ付け変えて飾り続けるそうだ。勿論代わりの鏡は安全な普通の鏡である。
こうして事件は無事に解決し、俺達は報酬を得ることが出来た。
「うむ、これで妻に美味いものを食わせてやれるな。ところで、お主、どうして就職を断った? わしも直接会っての印象だが、あの者の下で働くのはそう悪く無いのではないか?」
ほくほく顔のゲゲ郎が、ふと気になったと言うように俺に尋ねてきた。
確かにあの社長になら悪く無い待遇で雇ってもらえるであろう。
野心に燃えていた頃であれば物足りなく感じたかもしれないが、今の俺としてはその選択も悪くは無いと思える。
しかし俺には他にやりたいことがあった。
「店をやろうと思ってな。人に使われるよりも一国一城の主になろうかと思ってる」
「ふむ、なるほどな。何の店を、開くんじゃ?」
「将来的には飲食店なんかもいいと思ってるが……。なあゲゲ郎、俺と探偵やらないか? 今回みたいな事件を中心に引き受ける事務所を開いてみようかと思ってる」
俺は思っていたことを口に出した。それを聞いてゲゲ郎は不意を突かれたような顔をしている。
「わしとか?」
「ああ、お前と一緒に働くのは楽しそうだと思ってな」
俺とゲゲ郎は人間と妖怪だ。寿命も違うし、老いは死ぬよりももっと早くくる。一緒に何かできる時間は短いだろう。だからこそ数年程度でも、こいつと何かをやってみたいと思った。
「……いいじゃろう。妻のため、わしももう少し稼いでおきたいしな。何よりお主と仕事をするのは面白そうじゃ」
少し迷ったようだが、ゲゲ郎の奴も同じことを思ってくれたらしい。悪だくみをする子供のような笑みを奴は浮かべた。それを見て、俺は同じような笑みを浮かべ、腕を突き出した。
「それじゃあ改めて頼むぜ。相棒」
「うむ、わしの方こそ頼むぞ」
その手にゲゲ郎が腕をぶつける。
こうして俺達は探偵事務所を開業したのだった。
水木とゲゲ郎の距離感むずい。
原作の偉大さを改めて実感。
かっこいいバディ物書きたいが、無理と悟りました。
後は沙代ちゃんとのデートを書いて完結予定です。