許嫁幼馴染が弟に純愛寝取られたので、俺は変わることにした。   作:wakaba1890

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青鷺 奈緒子(あおさぎ なおこ)

 

「ーー・・おはよ、清澄くん。」

 

「あぁ。」

 

 教室に着き外の景色をぼーっと眺めていると、久留米から朝の挨拶を受けた。

 

「あのさ..聞きたいことがあるんだけど、ちょっといい?」

 

「...構わんが、場所変えるか。」

 

「あ、うん。」

 

久留米のことだから、何を言い出すかわからないため、教室から出て話を聞くことにした。。

 

 人気の無い踊り場についた彼は、足を止め久留米に向き合った。

 

「・・で、聞きたい事とは」

 

「あ..うん、その...ね。」

 

 何か言いにくそうに体をもじもじさせているが、そこそこの付き合いのため、そのパフォーマンスはただの冗談であることを知っていた。

 

「いいから」

 

「ふふっ...騙されないね。普通男子高校生がこの状況で、胸が高鳴ったりしないのかい?」

 

「..!..はぁ...帰る。」

 

あるはずないのだが、一瞬彼女が俺がこの世界の人ではないことを勘付かれたように思った。

 

 が、そんなわけもなく、前置きが長い事から大した話ではないと結論づけ、その場から離れようとした。

 

「わっ..ちょ、待ってよ。ごめんて、嘘嘘。」

 

 彼女は慌てて、行きそうな彼の腕を掴んだ。

 

「....冗談は好かない。」

 

仕方なしに彼女に向き直した彼は、それだけ言って話の続きを促した。

 

「ごめんて....えっと、それで、不躾な質問かもしれないんだけど....」

 

「....。」

(やっぱ、なんか勘づかれたか...)

 

彼の中で、彼女が何かに気付いたかもしれない可能性が拭えなかった。

 

「...前行った海道くんのお家って、親のじゃないよね。」

 

「....あぁ。」

 

(なんだ、そんなことか..)

 

一抹の不安は杞憂に終わり、若干張っていた彼の空気は弛んだ。

 

「もしかして、海道くんのだったり...」

 

「あぁ。」

 

「いや、まさかねー....って、ほんと?!」

 

両親が資産家で小遣いが多い学生くらいならいるが、自立して尚且つ不動産を持っていると言うのは、まず普通身近にはいないものである。

 

「いやいやいや...あのお家って土地含めたら数億は...」

 

「それは、まぁ。」

 

 そういえば、サウナとジムを敷設させた事でまぁまぁかかったなと悠長に考えていると、久留米は彼のふざけたステータスに頭が眩んでいた。

 

「...はぁ...海道くん。無茶苦茶よ。」

 

平気でヤバめな不動産を買えてしまう財力、日本人離れした膂力、強面だが男らしい面、物事を俯瞰できる冷静さ、どこを切り取っても隙がなく、どのステータスもカンストしていた。

 

 

 

 

その後、久留米からは先の事を楢崎、ソフィア達以外に伝えない事を約束させられた。

 

「....何だったんだ。」

 

 彼女が言いたかったのは、金目当ての女に気をつけろって事なんだろうが、総資産5兆円のIT長者が離婚調停で半分持ってかれたなど、そんな事は前世で嫌に知っていた。

 

 それに、運よく、変に色々獲得したおかげで久留米や楢崎、ソフィア、白木...って、白木は入ってるのか?...ともかく、そのおかげで何の気なしに彼女らに踏み入っていけないもの事実か。

 

 他方で、困らないくらいの金を得たら、今以上にもっと気楽に生きれると思ってたんだが、実際そうでもないな。

 

いくら、この世界が前の世界より良い世界でも、金という力を得たことで同時に責任が生じてしまった。

 

 この金を私利私欲に使うのか、まぁ、もう使っちゃってたけど...とかく、それをどうやって人の為に使うのかどうか。

 

 といっても、ギャルゲーゆえなのかこの世界は至って平和で、虚像染みた社会問題も割とマイルドというか、 もちろんゼロではないが極端に酷い目に遭う人が少ないことがニュースやメディアを見てわかった。

 

 まぁ、この力の使い道は、追々迷走しながらも考えていくか....それまで、出来るだけ増やしておこう。

 

 

 

 

そうして、ホームルームが終わってもなお反芻的に考えに浮かんでいると、教室のドアからチャラそうな英語の先生が教室に入ってきた。

 

 

ガラッ

 

「Good morning!!everyone!」

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

そうして、彼は口直しをするかのように、授業とは関係ない漫画を読んでいると遅れて誰かが教室に入ってきた。

 

「ーー・・すみません、遅れました。」

 

そいつらは篠蔵と彼の友達らしき知らん奴だった。

 

「おいおい、授業始まって結構経つぜ〜you、お前ら2人でナニしてたんだyo〜?」

 

「いや、それは、」

 

公の場で言うのは憚られるような事らしく篠蔵らは黙り込んでしまった。

 

「お〜い、怪しいなぁyouたち、もしかして〜出来てるじゃあないのかyo〜?」

 

「は?!違っ..」

 

 

「「「ぷっはははっはは」」」

 

 

彼の下らない冗談に教室は笑いの渦に包まれ、篠蔵たちは言い返す言葉間も無く、顔を引き攣らせていた。

 

ちょ、ちょっとみんな....

 

笑えない...

 

青鷺や久留米らは止めようとしたり、ドン引きしていたりしていたが、彼らの嘲笑によって掻き消され一向に冷めることはなかった。

 

 

 

「....うるせぇな」

 

丁度良いシーンに差し掛かってきた所を読んでいた海道は、雑音に邪魔をされてかなり不機嫌にそう言い放った。

 

 

「「「......。」」」シーン

 

さっきまで動物のように騒いでいた奴らは、餌の時間が終わったのか息の詰まる静寂に包まれていた。

 

 

「それに"youたち"って直訳で"あなた達たち"っつう意味だろ、you guysの方が自然。」

 

加えて海道は英語の先公に英語の単数複数形の基本を教えた。

 

 

「..ぷはっ」

 

「..確かにそうか。」

 

「あり得なくない?」

 

「てか、あのキャラキモかったし。」

 

すると、彼の指摘を反芻した生徒達は次々に先公をコケにし始めた。

 

 

「え...えぇーっと、さ、再開します。」

 

そして、先公は顔を真っ赤にしプルプルと肩を震わせながら、キャラを捨てて授業を再開した。

 

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

無事?に授業は終わり、海道に篠蔵たちが駆けてきた。

 

「ーー・・ありがとぉよぉー海道ぉぉぉ!」

 

「おい、寄るな。」

 

すごい勢いで感謝の気持ちを表現する篠蔵を退ける様に、海道は彼を横に弾いた。

 

「本当にスカッとしたよ。ありがとう。」

 

そして、篠蔵と一緒に入ってきた男の方にはまともな感じで感謝を伝えてきた。

 

「あぁ、気にするな。」

 

それを受けた彼は篠蔵に若干害された機嫌を少し直し、さっさと教室を出ようとしたが、タイミングよく久留米が待ち伏せしていた。

 

「海道くん結構やるわね。私もスカッとしたよ...」

 

 そして久留米はなぜか偉そうな風体で、彼の肩を叩きながら褒めていた。

 

「あぁ。」フイッ

 

一方、褒められ慣れていない彼は少し気恥ずかしかったのか、みなまで聞かずどこかへ行ってしまっていた。

 

 

「....あれ、どこ行ったのかしら?」キョロ

 

 久留米は音もなく消えてしまった彼をキョロキョロと探していた。

 

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

「メジャーで完封2HRとか、漫画にしてもやり過ぎだな、」

 

二限開始のチャイムがなる頃、学校で一番静かな屋上のベンチに座って漫画の続きを悠々自適に読み耽っていた。

 

 

 

 

「....スゥ...」

 

そうして、校内の声が響き始めた頃、いつものように天気が良く、気温も過ごしやすかったため、彼は鼻提灯を作りながら気持ちよく寝落ちしていた。

 

すると、校内全面禁煙であるはずの屋上から、煙の匂いが香って彼を起こした。

 

(..なんか煙くさいな..)

 

 彼はあくびを噛みながら、もしかしたら火事かもしれないと思い渋々起きた。

 

 

「スゥ...パァー...」

 

煙の根源は結構近そうで、ちょうど彼のベンチから死角になっている日当たりのいいところだった。

 

「....ん?」

 

試しにいつも昼食をとっている場所を覗くと、青髪を三つ編みにした優等生らしき女子生徒が陽の光に照らされ、壁に寄りかかりながら煙草を吸っている姿は、まるで傑作映画の名シーンを切り取ったかのように映った。

 

 

「...午後サボりてぇなぁ...」スパァー

 

彼女の見た目にそぐわぬ素の様子から、思い違いであったことを顧みながら彼は彼女からすぐに身を隠した。

 

サッ

 

「....ん?誰か...って、いるわけないか...」

 

 一瞬バレそうになったが、運よく彼女は見逃してくれた。

 

 

(あいつ...いや、まさか...とりあえず後何分..)

 

パッと見ながら、どこかで見覚えのある姿に記憶を巡らせながら、昼休みの終了までの時間を確認しようとした所、視聴途中だった動画が再生されてしまった。

 

(...あ)

 

『にゃーお』

 

「っ!?」

 

結構な音量で再生されてしまい、先の女も気づかれたように思えた。

 

(やっば、バレたか...)

 

 

「...猫...ちゃん!おいでー、にゃーお...にゃー」

 

 それは彼女の変なスイッチを押してしまったようで、女の声は彼へ近づいていた。

 

 

(やばっ...)

 

 咄嗟に目の前のフェンスが目に入り、飛び越えて下の階に降りようか迷っていると、その様子をモロに見られてしまった。

 

 

「「.....。」」

 

 猫の真似をしている女と、一見飛び降りようとしている彼の目が合う。

 

「なっ?!海道くんー!早まらないでー!!」

 

「おい、違うからな。勘違いだっ!って、マジで落ちる・・ーー」

 

 綺麗に勘違いした彼女は、彼の足を掴み屋上の方へ引き戻そうとし、一方で彼はなんとか弁明しようとしていると本当に落ちてしまった。

 

 

「....ぇ。」

 

 目の前で本当に人が落ちる一部始終を見てしまい、彼女は愕然としていた。

 

 

 しかし、それは直ぐに覆された。

 

「ーー・・あぶねぇ...」

 

「え!?」

 

タンッ

 

「....。」

 

 彼は4階のベランダのような所に着地しており、再び飛び越えた柵までジャンプして屋上に復帰した。

 

「うわぁ!?生き返った?!」

 

「だから違う。」

 

 終始勘違いしっぱなしの彼女の正体は、青鷺 奈緒子。俺のクラスの委員長だった。

 

 

 

 

 

 その後、 何とか誤解が解けた所でようやく静かな屋上が戻っていた。

 

「ーー・・心臓止まるかと思いましたよぉ....」

 

「わ、悪い。」

 別に無理に逃げなくても良かったことに気づき、素直に謝った。

 

 そして、先の事以前の彼女の事を見逃すことなくジャブを入れた。

 

「..ライターいるか?」

 

 さっき拾ったライターを差し出された彼女は、慣れた手つきで煙草を取り出そうとしていた。

 

「あっ..ありがとうございます...って!これは...違いますからぁ!」

 

やはり、彼女は喫煙者のようで、よく見ると拳には殴りタコが見て取れた。

 

煙草、両拳の殴りタコ、さっき足を掴まれた時の女子ならざる握力から鑑みて、答えは一つだった。

 

「お前、元ヤンか。」

 

「ち、違いますよぉ〜。ヒュー..ヒュー..」

 

 わかりやすく嘘を誤魔化すため、とってつけたような下手な口笛を吹いていた。

 

 

 そして、そんなことで誤魔化せないとわかっていた彼女はあっさりと白状した。

 

「ーー・・私、実はもともとやんちゃしてまして...」

 

「まぁ、どっちでもいいが。」

 

 これ以上秘密を共有されたくない彼は、そこで話を終わらせようとしたが、一人で抱え込むのはしんどいのか彼女はむしろ話たがっていた。

 

「まぁまぁ、聞いてくださいよ。昔、私が家族旅行で迷子になってた時に、レディースのお姉さんに助けられたことがありましてね。その時、あねさんがお仲間の方たちをかっこよく指揮して、両親を探してくれて不安で心細かった時に聞いた、あの本能的に高揚させる重厚なエンジン音が忘れられなくて....」

 

「..暴走族になったか。」

 

「へへへ...昔の話ですよぉ〜」

 

暴走族という単語は、彼女にとって褒め言葉らしく頬を赤くしながら照れていた。

 

「なんでやめたんだ?」

 

 もういっそ全部吐き出させようと、彼女を促した。

 

「...尊敬していた、あねさんが交通事故で亡くなりまして....暴走族はやめて、普通に職場に通勤してた時だったんです。それ以来バイクに乗るのはやめました。なんか、迷惑かけた分の罰みたいで...」

 

彼女にとってその出来事は、未だ心の傷口を抉っており、徒然と語るものの言葉端は辿々しかった。

 

 彼女が感じている、深夜にバイクで颯爽と市街地や公道を走り、多大な人に迷惑をかけたバチが当たったというのが、本当かどうかはわからないが、ただ厳しいが仕事で疲れて寝ている人や、子供をあやしている人に迷惑をかけたのは事実だろう。

 

 だから、安易にフォローはできなかった。

 

「....そうか。」

 

「....はい。」

 

 

「「.....。」」

 

 想像以上にかなり重い話に言葉を失い、先の彼がやった紛らわしい行為を心から反省したと同時に、彼女の行き場のない気持ちが少しでも出せればと思った。

 

「...暴走族と喫煙って関係あるのか?」

 

 そして、流れを掻き消すように、そういえばと気がかりな点を彼女に聞いた。

 

「えぇ、バイクに乗ってる途中は邪魔なので、みんなは吸わないですが、ねぇさんがバイクに腰掛けながら吸ってる姿がかっこよくて...」

 

「あー...」

 

 その憧憬が容易に思い浮かび、確かに盛んな年頃で尊敬する人が絵になるような人だったら、少しでも近づきたいと思うものかとどこか腑に落ちていた。

 

 実際、俺も強くかっこいいジィさんに近づくために、稽古を付けてもらっていた時期があった。まぁ、その時は一月と持たなかったが...

 

 思えば、ジィさんに近づきたいと思えど、その先は考えていなかったな。青鷺にはそういうのあるのだろうか。

 

「なぁ、青鷺は何故その人のような人に近づきたいと思ったんだ?」

「うーん...難しい質問ですね。」

 

なぜそうなりたいか、そうなってどうしたいか、上辺だけの言葉ならいくらでも取り繕えるが、真にそれに答えようとする彼女のような者にとっては彼の質問は少々意地悪だった。

 

「...悪い。」

 

「いえ、少し考えさせてください。」

 

 彼女も言われてみればと、真剣に考えようとしていた、

 

 

 

「「.....。」」

 

 

彼女らの間には、どこか心地の良い空気がゆっくりと流れていた。

 

 そして青鷺は空を見上げながら何かを考え、または何かを思い描いていたように見えた。

 

 他方で、海道くんは目を瞑り、ただの変わらず蒼き空に耳を澄ませていた。

 

 

チュン....チュン....

 

 すると、彼女らの視線の間に空をかき分けるように青い鳥が飛んでいた。

 

 

「ーー・・ねぇさんの見ている景色が知りたかった。から、ですかね。」

 

そうして、青い鳥に導かれたのか、彼女はどこか憑き物が取れたかのような、爽やかな顔でそういった。 

 

「っ!....そうか。」

 

 彼女が出した今の答えは、必ずしも彼に当てはまるとは限らないが、憧れとその先への明光が見えた気がした。

 

 

「あ...確認なんですが、私のこと..誰かに言いふらしたりしない...」

 

 そして、今更ながら青鷺は秘密を守るように請願しようとした所、食い気味に了承された。

 

「しない。」

 

 短い了承だったが、嘘偽りなく彼の意思は彼女へ伝わっていた。

 

「っ!...なんか、海道くんって不良に見えないですね。」

 

 義理堅い彼の性格を感じた彼女は、彼が予想してなかった事を口走った。

 

 

「....はぁ、お前な。俺は・・ーー」

 

彼はやれやれと頭を抱えて、最低限の弁明を展開していた。

 

今更ながら、どうやら彼女がこうもペラペラと身の上を話していたのは、彼が不良だと思っていたためであった。

 

 

 

 

 





青鷺 奈緒子(あおさぎ なおこ) 153cm 48kg
青髪、三つ編み。
海道くんのクラスのクラス委員長。
成績優秀。真面目。
実は元ヤン。

【挿絵表示】
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