許嫁幼馴染が弟に純愛寝取られたので、俺は変わることにした。 作:wakaba1890
旅館に着いた彼は保健医の先生を呼んで、保険医先生の部屋で芝春を寝かせた。
「ーー・・うん。一時的に気絶してるけど、そろそろ目を覚ますと思うわ。まぁ、事情は聞きたくないけど、何があったの?」
「...っ...」
事情を聞かれたのは、彼であったが、桜楼は言わなければならないが言えずにいたため、彼は見かねて大雑把に説明した。
「まぁ、ガラの悪い奴らに絡まれてな。」
「うーん、物騒ね...この辺は、虎野さん関係の人が多いのに...」
ここでも、虎野家の影響力あるのかよ。と驚き以上にむしろ感心しつつも、一旦は飲み込んだ。
「とりあえず、今は安静ね。えっちなことしちゃ、めっ!よ。」
「いやっ、しないですよ!」
「ふふっ、若いわねーっ、はっははっはっ!じゃあ、少し離れるから見ててねー!」
気を使ったのか定かではないが、保健医の先生は処置を終え、そそくさと部屋から出ていってしまった。
「...あの、清澄..私、見ていているから...」
これ以上彼に迷惑をかけたくないのか、彼女は言いずらそうにそう言ったが、即座に返答された。
「いや、俺が見てる。」
「え、でも...」
「芝春は責任感が強い。お前を守れなかった事で、かなり堪える。」
そう、芝春はいくら相手に非があろうと自らに責任を負ってしまう。そういう奴なんだ。
「....わかったわ。」
それ以上言わなくとも、芝春の幼馴染の彼女は理解してくれ、部屋を出ていった。
そう、芝春は心配になるくらい良いやつだ。昔っから、困っている人がいたら真っ先に助けるし、助けを必要とする人を見て見ぬふりができない。
そして、そんな奴は決まって、自分にとことん厳しい。
だから、そんな奴が大事な人を守り切れなかったら、自分のことを一生許さないだろう。
「...芝春。お前は頑張りすぎだ。」
芝春は確かになんでも持っているように見える。
しかし、俺がゲームやポルノ、SNSや趣味にどっぷり浸かっている中、芝春は人の為になるよう自らを高め、他者に貢献しようと努力していた。
ゲームをプレイしている時は、単なるプレイヤーの入れ物としか思っていなかったが、目の前の彼は金や人気、名誉、地位なんか、鼻から見えていなくて、人に、他者に、次の世代に尽くそうと努力を積み重ねていた。
正直、俺はメタ的に見れば芝春という人間の事を、ただヒロインとハーレムして、その後も順風満帆に勝ち組人生を謳歌していて、こいつだけ人生イージーモードですやん。としか思っていなかった。
しかし、今では、目の前の彼は真にソレに見合う人間だった。
だから、やはり....
「・・芝春。お前は、幸せにならなきゃならない人間だ。」
彼はそう言って、気絶している割にはスヤスヤと、あの頃と変わらない寝顔を浮かべている芝春の、変わらず撫で甲斐のある頭を優しく撫でた。
ギィっ
「あらっ、彼女さん。帰っちゃたのね...」
「...俺もそろそろ、帰ります。芝春の事お願いします。」
素早く手を引っ込めた彼は、保健医の先生に改まってお願いをして、部屋から出た。
「..えぇ、わかったわ。」
実は初めて彼と関わった保険医の先生は、目の前の威圧感のある男は噂で聞いていたような人ではなく、案外誠実な一面もある事に驚きながらも、彼の切実な願いを了承した。
バタンっ
静かにドアの閉まる音が鳴った後、実は少し前から意識を取り戻していた芝春は、寝返りをうって窓に映るかつて見た同じ空に、未だ届きそうにない兄を呼んだ。
「...兄さん。」
部屋に戻った彼は着替えを持って、貸切状態の大浴場の露天風呂へと向かった。
大人数でしかも男と風呂に入るなんぞごめんだと思っていたため、入っていなかった大浴場であったが、芝春が危険な目にあった手前、幸運と言っていいか分からないが、幸いなことに大浴場を寡占して存分に堪能できていた。
「ーー・・ふぅ。極楽極楽...」
居室のプライベート露天風呂も良かったが、やはり視界一面に京都の景色を眺めながら、源泉掛け流しの露天風呂に浸かるというのは、極楽杉内だった。
京都の街並みを眺めていると、所々に灯りがつき始めており、夕焼けも沈み切りそうだったところから、とあるアニメ映画でのワンシーンを思い出した。
「...ふっ...このまま、こちらの飯を食わなければ消えてしまうかもな...」
仮に今、自分が主人公の状況であれば消えてしまうと想像し、思わず一人で笑っていた。
「...確か、台湾だっけな....あ。」
そう言えばと、その映画のモデルとなった街並みが台湾にあったなとぼんやりと考えていると、前の世界では特に興味がなかった旅行というものに興味を帯び始めていた自分に気がついた。
「...そりゃ、金持ちは旅行するわな。」
時間と金が自由に使えれば、確かに旅行に傾倒するかと妙に納得していた。
「....。」
などと、ぼんやりと何でもないことを考えていたが、やはり先の出来事を思考から払拭することは叶わなかった。
「...俺はなんとか10歳あたりから、あいつから解放されたが....芝春は今の今までずっとあいつと関わってた訳だからな....」
5年くらいの桜楼懲役を喰らっていたが、芝春の場合はそれの倍桜楼懲役を経験しており、やはりそれは想像すればするほど、背筋が凍るものであった。
俺の場合は、桜楼からの本当に無茶なお願いは上手くはぐらかしていたり、最悪鮎川さんの家でやり過ごしていたが、芝春は違いそうだった。
もし仮に、芝春がそういったブレーキがないのだとしたら、俺の時よりもエスカレートしたお願いをハイスペックな彼ならやり遂げられてしまうせいで、更にエスカレートしたお願いや頼み事が横行していたのだろう。
そして、その歪みが今回の事案につながったといった所だろう。
「.....。」
露天風呂の極楽では癒せないほどの、懸念と怒りが湧き上がり、奥歯が軋む音が響く。
「....ふぅ...まぁ、最悪あれを...いや、それは本当の最終手段だな。」
まぁ今感情を発散したところで、何か解決するわけでもないと息を吐き、切り札を想起したが、未だ解決しそうにない彼女らの歪んだ関係をただ憂いていた。
「....あれ、もしかしてストーカーとかも、桜楼の鼻に付く態度のせいじゃ....ぶくぶくぶく」
ニュートラルになった頭から、ふと引っかかっていた事柄の真相が見えそうになり、張本人を思い浮かべたが、今はそれごと露天風呂に沈める事にした。
一方その頃、久留米さんたちは雰囲気のいい茶屋にてJOSHIKAIに花を咲かせていた。
「ーー・・もう、ほんと海道くんは自由なんですからっ!」
致し方ない理由とはいえ、彼が逸れてしまったのは彼のせいでもあり、そのため久留米さんは収まらぬ気持ちをを吐露していた。
「まぁまぁ、彼だって悪気があったわけではないですしっ」
それにみかねた青鷺は、宥めるように茶菓子を彼女のお口に頬張らせた。
「..むくっ..ぅ...まぁ、それはそうですが」
素朴で自然な甘さに御された彼女の気持ちは、少しばかりマイルドになっていた。
「ふふっ、清澄はそういうところも可愛いわよね。」
「「「.....。」」」
他方で、ソフィアは好感的な事を呟き、周囲はキョトンとした様子で彼女を見つめていた。
「え...何よ?」
特に障りない事を呟いたつもりが、会話を止めてしまったことから、ソフィアは何かまずいことでも言ったのかと思っていた。
「...いえ、やっぱり付き合ってるんだなぁと」
すると、青鷺が一昨日の件と今の彼氏を愛しむような発言から、導き出された感想を呟いた。
「えっ?!いや、だから....」
「ちょっと、無理があると思いますよ。明らかに恋人を思うような発言です。」
「...そう、なんだ...。」
否定しようとする彼女だったが久留米は殆ど確信めいており、白木はなんとも言えない面持ちだった。
「あの、だから...あっ..清澄の弟さんは大丈夫なの?」
あわあわと弁明しようとしたが、いつものように久留米に好き放題愛でられると思って、彼の弟さんに話を移した。
「えぇ、まぁ...少し体調が優れないようですが、海道くんも一緒なので大丈夫でしょう。」
からかい損ねた久留米だったが、一応班の皆にも話したほうが良いと思い説明した。
「...確か、清澄の元イイナズケ?と付き合ってるんでしょ?...清澄は気にしてなかったけど、やっぱり..酷い話ね。」
ソフィアもぼんやりとではあるが、何となくその辺りの事情を知っていた。
「えっ?!そうなんですか?!...初耳です。」
青鷺は委員会で何度か会っており、そう言った情報は初に知っていた。
「....僕も」
彼はあまり身の上話であったり、自分のことを語ることが殆どなく、白木はそれが妙に寂しかった。
「あー...そこまでは知っていたんですね..」
ソフィアが言うように、彼女が思う彼はそう言った事件が起きても、いつもの様に涼しい顔で流しているとは思うが、久留米はそれでも自分から説明していいものではないと思っていた。
「弟さんでどんな人なの?」
「うーん...海道くんに愛想良さを足して、全体的にかなりマイルドにした感じですかね...」
それくらいなら言っても良いかと、簡潔に彼のことを説明した。
「それは...すごいわね...」
「...確かに、言い得て妙ですね。」
彼女の言い様は、まさに彼から社会的な欠点を差し引き、周囲を寄せ付けない雰囲気をとっぱらった様を言い表しており、まさに虎野でいう本来、民の見本たる公人に近い人間のようだった。
「...あんまりピンとこないかな...」
白木にとって海道は海道でしかなく、彼女の例えからは想像し難かった。
「...じゃあ、実は性格が悪かったり?」
許嫁を寝取ると言うのは世間的には、まずよろしくない事から、ソフィアは弟さんが表では人当たりが良くても裏では..と少々勘繰っていた。
「うーん、いや、裏があるようには思えませんね。ね、なーち?」
何万人と多種多様な人間と接してきた久留米から見ても、芝春は絵に描いたような聖人君主にしか見えなかった。
「はい、確かに拳とかは...ちょっとでは付かない結構な拳ダコがありましたが、そういう噂も聞きませんからね..」
話を振られた青鷺は、芝春と相対した時のことを思い浮かべると、怪しいところは確かにあったにせよ、そう言った界隈からでも彼の話を聞くことはなかった。
「....もしかしたら、その件のせいで少し距離があるのかな..」
「....そう、かもしてないですね...」
久留米たちは彼と関わり始めて、そこそこの時間が過ぎたが、彼からはやはりどこか一線を引いているような感じがしていた。
「....。」
「....海道くん。」
それは許嫁に裏切られた事が要因なのか、彼自身の性根なのか、結局、彼から何も話されていない彼女らは知る由もなかった。
「ーー・・芝春くんにお大事にと伝えてください。」
夕方、二日目のしおりを行き終えた彼女らと合流するも、意外にも久留米は逸れた事に何か強く言ってくるわけでもなく、短くそう言って、すぐに解散した。
「ーー・・っと、もうこんな時間か...」
「あー..そうだね。」
そして、昨日寝落ちするまでウマブラをプレイしていたにも関わらず、ウマブラ熱の冷めていない彼らは、ついには消灯時間まで遊んでいた。
「..今日はこの辺にしておくか」
流石に二日連続寝落ちするまで遊ぶわけにはいかないので、キッパリと切り上げた。
「うん、流石にだね。へへっ」
白木も意外と体力があるにせよ、連日続くと堪えるようで、はにかみながら賛同した。
(...しら可愛い。)
白木の笑顔には、何か魔力が宿っているのか、海道くんの中にまた別の熱が帯びそうになった。
(...あれ、待てよ...今夜は白木と一緒の部屋で寝るって事か?)
今夜は、寝落ちするまでウマブラをしていたわけではなかったわけでなく、ある意味今回はシラフで、白木と一緒の部屋で、白木の隣で寝る事を変に意識してしまっていた。
(...少し、時間を空けねば)
そう思った彼は、妙に頭が周り、その頭を少しでも冷やすために窓際の椅子で、暖色の間接照明を軽く焚いて小説を読む事にした。
「ーー・・...。」
暖色の間接照明が、かすかに部屋の隅を照らす中、彼が静かにページを捲る音だけが程よい間隔を開けながら、静かに鳴っていた。
『ーー・・寝ないの?』
『..今日は三日月だから、少し見ていたいんだ。』
『...そっか。』
この状態に収まるまで、白木からそう甘い誘いが囁かれたが、なんとか下らん方便を駆使して乗り切ったが、その時の白木の表情がどこか寂しげで、かなりの損害を負った。
それはともかくとして、今はただ未だ冷めそうにない、空を掴むような熱を冷ますために、ただ草臥れた古い小説に耽った。
一方で、実はチラチラと彼の事を見ていた白木は、月夜に照らされ、どこかミステリアスに伏せ目で小説に読み耽っている彼のスッと描かれた横顔に、ただ見惚れていた。
(...かっこいいなぁ)
すると、オールバックにした髪の横袖から、髪が少し前に流れ落ち、名画のワンシーンの絶頂を切り取ったかのような、彼の横顔に造作もなく、しな垂れた。
「...ぁ..っ」
おそらくこれから更に成長期が来たとしても、辿り着けるかわからない、彼の雄の色気にもろ当たってしまい、彼にまで聞こえているのか懸案するくらい、鼓動の音が鳴り響いた。
「..?」
こちらの視線に気づいた彼は、僕にしか見せない甘く優しく、罪深く微笑んだ顔をこちらに向けていた。
(...あぁ...もぉ..かっこいいなぁ..)
「....寝ないの?」
絶対変な顔していると思い、即座に布団で顔を隠していたが、しばらくして白木は暖色の灯に照らされ、賢者の石でも代替し得ない、赫く煌びやかに輝いている目元だけを少し出し、なんでも叶ってしまうような甘撫で声でそう言った。
「...あーもう少し」
「...そっか。」
まだ気持ちの整理がついていない彼であったが、白木の寂しそうな表情を見て気が反転した。
「まぁ、そろそろか。」
彼はそう言いながら、白木の隣のベッドへと赴いた。
「...へへ..寝よっか。」
(...やばい...色々耐えれるか...俺)
白木の甘い甘い誘いに、彼の理性ポイントは底が尽きそうだった。
「ーー・・....スゥ...スゥ...」
だが、近くに白木がいるお陰なのか、いつもより副交感神経が優位になり変な気を起こす前に眠りにつけた。
そして、しばらくした頃、夢なのか現実なのか曖昧な認識の狭間で、天使が体の上に乗っていた。
「..ぅ...ぁ...ん?」
(なんか、下腹部らへんに何か乗って..)
眠気を散らしながら目を見開くと、そこには浴衣が少しはだけいる白木が俺の腹あたりに跨り、真っ白な白い左肩をさらけだしていた。
「・・..ほんと、海道くんは無警戒だよね。」
「..何いって..」
月夜の明かりで白木の透き通るような真っ白な肌が照らされており、昨日の風呂の時以上にどこか妖艶さえも感じさせられた。
「...海道くんが悪いんだよ、何気なしに優しく頭撫でたり、肩を掴んで抱き寄せたり...それに、僕にしか見せない優しい顔で、微笑んだり...」
甘撫で声に、色っぽさが混ざったその声は、理性とか性別とか常識とか全部どうでも良くなるような悪魔が宿っていた。
このまま、悪魔と契約して永遠を生きるのも悪くないと、醒め切っていない頭で考え、思考の制御がままならなかった。
それでも、なんとか残りカスのような良心は機能していた。
「てか、いつから...」
そして、白木に押し倒され、見下ろされているというそういう状況と、白木が言っている事の意味を承知の上で、なんとか顔を逸らしながらそう聞いた。
「...海道くんと出会ってからだよ...」
「あー...順位発表の時か?」
「ううん、入学式の時。」
始めて互いに認知したのは、確か定期試験の順位発表の時だったはずだったが、どうやら違うようだった。
「...ん?」
(いや、入学式は普通に遅刻して...あ、同じような人がいたような....)
白木のような一度見たら忘れないであろう、天使みたいな人であれば忘れるわけがないと思っていたが、その日は違っていた。
「僕、海外から久しぶりに日本に帰ってきて、初日が入学式で...なんか色々思い出しちゃって...出席したくなかったんだ...」
白木は皆まで言わずとも、見た目が女性っぽい事で色々面倒なからかいなどに遭ってきた事が垣間見えた。
「....。」
白木の話には続きがありそうだったので、静かに待ちつつも、彼は海馬から白木の事を掴むように探っていた。
「...それでね、校内をなんとなく回ってる時に、海道くんにあったんだ。」
『...あんたも遅刻?体育館の場所わかんなくてさ、知ってる?』
『え、あ...うん。』
『まじか...助かったぁ...』
「....あぁ...あの時の?」
その日は半ギレの母に叩き起こされ、急いで登校したせいでメガネを忘れており、ぼんやりとだか白木の輪郭を思い出した。
その時は輪郭くらいしか分からず、なんとなく声で女子だとは思っていたが、友達が一人もいなかったため、別に男だろうが女だろうが対応は変わることはなく、変に畏まることもなかった。
「う、うん。その時、海道くんが普通に接してくれたから...考えすぎだって気づいて...それで...」
「...あぁ、とりあえずはわかった。」
「それで...海道くんの周りには...素敵な女性が多くて、はぁ..二人っきりになれる今しかないと思って..はぁ、はぁ..」
彼が体を起こし一旦話を閉めようとするも、逆効果で、より密着する形になってしまい、これでも自重していた白木の息は途切れ途切れになっていた。
「はぁ...んっ..」
「っ...」
彼の赫い瞳がうるうると、こちらを射抜いてくる。
「はぁ..はぁ...海道..くん..」
とうに覚悟を決めたような声音で、白木の艶やかで発色の良い色っぽい唇に目を奪われる。
「...と、とりあえず...一旦落ち着け。」
耐えきれず顔を逸らし、今にも襲ってきそうな悪魔か天使の方を掴んで止めた。
「っんぅ..はぁ..」
色々と感情が高まっている白木は、肩を掴まれただけで変な声を出していた。
「あっ..っ...悪い。」
またもや頭が眩んだが、痛くしてしまったと思い申し訳なさが勝った。
「うん..大丈夫。ふふ..」
自分のことを心配してくれている優しい彼に触れ、今まで感じた事のないような、何か替えようのない何かが満たされた感覚に触れた。
「..僕のことは、嫌?」
それでも、白木はもう一歩前へと進みたかった。
「...そんなわけない。」
「っ...そっか...へへ..よかったぁ」
また、彼の大きくて優しい手で肩を掴まれびっくりしたが、白木は今はそれだけが聞ければ、十分だった。
「..大事なんだ...だから...」
しかし、彼はまだ終わっていなかった。
そして、彼はどこかすがるように、白木を優しく抱擁した。
これは白木のみに限ったことではなかった、久留米やソフィア、楢崎、青鷺、カレン、白木、虎野、もうすでに、俺にとって大事な人達である彼女らを、やろうと思えば全てを受け入れられてしまうから、だから、そう簡単に踏み込んで行けなかった。
覚悟もそうだが、それ以上に俺なんかを考えてくれる、大事な人たちを傷つけたくなかった。
「・・うん。わかってる。海道くんは優しいからね...」
白木は本当に彼のことを何でもお見通しかのように、いつもは大人びていて、自分たちの事を守ってる優しくも不器用な彼の頭を優しく撫でていた。
「すまない、白木....すまない...」
今の彼はされるがままで、そして、すぐに答えが出せない事への申し訳なさで一杯でただ白木の優しさに溺れていた。
ちょこっと一間。
ーー次の日の朝。
「本当にすまない...昨日はあんな...」
「ううん、そのまた甘えたかったら、いつでもドーンと僕の胸に来てね。」
「....いや、それは流石に...」
「でも、昨日は甘えたさんだったよね?」
「....あぁ、その...頼らせてもらいます。」
「うん、よく言えました。」
(...これからも、白木には敵いそうないな。)
彼は白木に頭を撫でられながら、段々と慣らされていた。