許嫁幼馴染が弟に純愛寝取られたので、俺は変わることにした。   作:wakaba1890

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天堂 飛鳥。

 

 

「ーーー・・海道くん。体重差はあれど、容赦はいらない。」

 

「はぁ....」

 

『では.....初めっ!!』

 

何度目かわからない虎野や楢崎が使っている道場にて、海道くんは金髪蒼眼の王子様のような相手と相対していた。

 

 

時は今日の朝まで遡り、掲示板には期末試験の結果が貼られていた。

 

一位 海道 清澄

 

二位 天堂 飛鳥

 

三位 海道 芝春

 

四位 久留米 環奈

 

五位 白木 春

 

六位 青鷺 奈緒子

 

七位 虎野 京奈

.

.

.

 

何気なしにそれが結果が張られている掲示板を一瞥すると、その中の一人に目が行った。

 

(....天堂 飛鳥?こんな奴いたか....)

 

そういえば、前の学期試験でいたようないなかったようなと適当に思い返しながら教室に向かうと、そこには誰もおらず、閑古鳥が鳴いていた。

 

「...あれ。あー、そうか」

 

隣のクラスには普通に生徒がいたため、休みではなさそうであり、時間割を見ると二限は移動教室らしく、皆、すでに視聴覚室へと向かっていたようだった。

 

視聴覚室はここからだと少し遠いため、遅刻する前提でゆっくり向かうことにした。

 

校庭からは、体育まで待てない生徒たちがサッカーに熱中している声が聞こえ、音楽の授業かピアノと歌の発声練習をしている音が鳴っていた。

どれも、高校でしか聞けない音と空気で、授業と授業の合間の何ともない、前の世界で経験してないはずの懐かしめる心地の良い時間が流れていた。

 

「......」

 

気分の良い風が通る窓に立ち止まり、ふと外に目を向けながら深呼吸した。

 

スマホを持たないようになってから、こういった何でもない空の時間が愛おしく、代え難い時間となっており、それもあってか登校途中についつい回り道をして緑豊かな公園を通ったり、時折会う黒猫と戯れてしまうため、最近では遅刻が常習化してしまっていた。

 

「スゥ....」

 

今でも、あともう一つ桜楼クラスの面倒事が増えたら、さっさと高校からフェードアウトして、南の島で誰にも邪魔されずに自分の時間に没頭したいのは山々ではあるが、久留米や白木たちとの時間や、こういった高校でしか感じれらないような空気や時間に浸れるのも、かなり気に入っていた。

 

「.....まぁ、やっぱ出来るなら南の島で...」

 

それでもやはり、夏休みに鮎川さんの仕事を経験するために連れてもらったハワイでの、あのゆったりとした人生上がった奴しか経験できない最高の時間が忘られずにいた。

 

「・・キャーっ!天堂くーんっ!!」

 

「こっち向いてぇぇぇっ!!」

 

「......つぅ」

 

窓から吹き抜ける心地よい風から、ハワイのカラッとした温かい風を夢想していた中、校庭から女子生徒の金切り音に似た鬱陶しい声で、色々台無しになってしまったが、ハワイへの道がグッと近くなった。

 

「.....決めた、大学には行かねぇ。」

 

この世界の日本では、大学の学費や地方からの上京に伴う費用は国が全額負担しており、意志ある者であれば大学へ行けるが、やはりどんなトップの大学に行こうとも、今もああいった耳障りな奴は絶対いるため最低でも高校を出たら、南の島への移住する。と固く決意した。

 

「....ふぅ、ウゼェ....」

 

今だにあの金切り音的な声援は耳に響いており、一旦教室に戻るかこのまま隠し部屋でゲームするかで迷っていた。

 

「ん....あれ、あいつら。」

 

すると、青鷺、楢崎、久留米らが廊下先で何やら校庭の方へ見入っている様子が目に入った。

 

「......ん。そういうことか。」

 

彼女らの視線の先を辿ると、先の金切音の発生源である校庭でサッカーをしている天堂という男へと向いており色々と察した。

 

生物的に強くなった俺の視力は、ここからでも分かるくらいサッカーで無双している当人、芝春系のイケメンこと天堂 飛鳥を捉えた。

 

彼女らはこちらに気づかず、彼を眺めながら色々と彼についての印象を話していた。

 

「...あ、確かに人気はありそうですね。」

 

「うむ、部活には入ってはいないが武の心得があったな。」

 

「天堂くんは変な噂もないですからね。」

 

「....ああいう奴が、良いのか。」

 

彼女らはこちらに気づいた様子がなかったので、久留米と青鷺の間に少しかがみ顔を近づけてそう呟いた。

 

「っ!いや、これは....そのぉ」

 

「違うぞっ、私たちはたまたま見入っていただけで...」

 

「あわっ、え、や....」

 

すると、彼女たちは思った以上に驚いた様子で、浮気を誤魔化すかのような様態だった。

 

「?...まぁ、何でも良いけどよ」

 

「あ、ちょっ.....」

 

「あのっ」

 

イケメンにうつつを抜かす事へ特に咎めるつもりはないため、これ以上邪魔しないように適当な言葉を残し何か弁明しようとしている彼女らを置いて、隠し部屋へと向かった。

 

図書館の隠し部屋についた彼は、さっきのサッカーから連想し未視聴だったプレミアリーグの試合を見ることにした。しかし、初めは熱中して見ていたものの、次第に単調な試合内容もあってかいつの間にか寝てしまい、起きたら二限の授業終了15分前くらいだった。

 

「・・うぅ...っくぅ。散歩でもするか」

 

体をストレッチさせながら時計を見ると、30分位の気持ち良い仮眠が取れたようで散歩がてらに外へ行くことにした。

 

「・・サイドっ!上がれー!」

 

「デフェンスっ!サボるなっ」

 

「天堂を止めろーっ」

 

そうして、中庭などを回っていると、彼は導かれるかのように校庭の日陰でサッカーの試合を観戦していた。

 

「....あれが、天堂か。」

 

「「「「キャァァァっーーー!!天堂くぅーんっ!!」」」」

 

金髪で蒼目をした如何にも御伽話の王子様かのうような彼は、コート上で飛ぶように相手選手を3枚抜きしながら更に加速して、ゴールの左隅にミドルシュートをぶち込んでいた。

 

プレミアの塩試合とは打って変わって、目の前で繰り広げられている天堂無双試合は、女子生徒たちの歓声がどうでも良くなるくらい、かなり熱い試合だった。

「....いいもん見れたな、うぅーっ、はぁ...飯でも...っ?」

 

終盤からだったが、ただで良いものが見れた彼は、体を伸ばしながら満足気にその場から立ち去ろうとしたが、どこからかサッカーボールが足元に迷い込んできた。

 

「.....っと。っ!....くっ、スゥ...」

 

感化された彼は自由自在にリフティングに勤しんでいると、しばらくして、やけに透き通った声に声をかけられた。

 

「・・かなり上手いね。」

 

つい熱中していた中、かけられた声の主は感化された要因でもある天堂だった。

 

「っ....。あ、悪い。返さないとか。」

 

おそらく体育中に迷い込んだボールだったため、ふわっとボールを蹴って彼に渡した。

 

「え、あぁそうだね。っと...君は、確か海道 清澄だよね?初めて話すね。僕は...」

 

受け取ったボールをノールックで校庭のボール置き場に蹴り戻した彼は、どうやらこちらの事を知っているようだったが、確かに対面で話したことはなかった。

 

「知ってる。天堂だろ?」

 

「っ...ははっ、知っててくれてたんだね。」

 

多少彼の噂も知っていた彼は、意外にも彼が自分のことを認知している事に、彼は頬を少し赤らめながら嬉しそうにしていた。

 

「まぁ、知ったのは最近だが」

 

天堂は目立つ見た目をしているが、実際に認知したのは今日が初めてだった。

 

「え、そうなのかい?」

 

もう数ヶ月で一年が終わる中、人気も人望もある自分が知られていないというのは意外だった。

 

「あぁ、てか視界に入ったのは今日が初めてだな。」

 

「っ...む、やはり一番上からでは、下は眼中にないかな?」

 

海道の飾り気ない本音を聞いた天堂は、学業においても、実際に相対しても物理的に上から見下ろされている今が気に食わないようだった。

 

「あ?」

 

「っ....」

 

なんだこいつと思いながら、適当に聞き返すとそれが天堂の堪忍袋を突き破った。

 

「あっいたー!天堂くーん!」

 

「もういつも、どっかいっちゃうんだからー」

 

「あれ、あの人って....」

 

そうこうしていると、天堂を探していた女子生徒たちがこちらに集まり始めていた。

 

「....今日の昼。君に、決闘を申し込む。」

 

言質を保証してくれる聴衆の前で、天堂は海道に挑戦状を叩きつけた。

 

そして、時は現在に戻り、海道は彼を差し置いて昼飯を済ませた聴衆が集まっていた道場にて、天堂と相対していた。

 

「ーーー・・海道くん。体重差はあれど、容赦はいらない。」

 

「......はぁ」

 

 楢崎や虎野の時もそうだったが、体重差が30kg開いている試合なんて有り得ないのだが、それをわかっているはずの天堂がそのような事を言った事に、彼は面倒そうに相槌にもなっていない息を吐いた。

 

「っ!....こちらも容赦はいらないようだね。」

 

そもそもこちらを相手にしていない事を痛に感じた天堂は、加減なしに全てをぶつける事とした。

 

一方、ちょっと目を話した隙に、芝春を除けば学年で一番人気の王子様に決闘を申し込まれた彼の奇妙な縁を、久留米は疑問に思っていた。

 

「....なんで、いっつも海道くんは巻き込まれるんですかね....」

 

「うん、なーちゃんや京奈ちゃんしか決闘なんてしないのにね。」

 

高校生にもなれば、基本的に揉め事になる程他人に興味を持たず、そもそも楢崎や虎野くらいしかこういった武で対決するような決闘は行われないのだが、海道くんの場合は違っていた。

 

「どっちが勝つと思います?」

 

「体重差的にも、海道くんですね。天堂さんがなんでも有りなら、少しは善戦できそうですが」

 

「....うむ、そうであるな。天堂が日本刀を持ってラインに立てるくらいだな。」

 

「俺の時もそうだったが、海道は力の一端すら出してない。私たちは女だったから尚更だったな。」

 

「清澄のオジィちゃんも凄い人だから、多分大体の武術は網羅してそうなんだよね....」

 

久留米の質問に、色々な喧嘩慣れしている青鷺は体重差を指摘し、ソフィアは彼からチラッと聞いた話から、実際に相対した楢崎、虎野は彼の底知れなさから、皆同様に海道の勝利を予想していた。

「なんだ、久留米。」

 

彼女らの予想を聞いた久留米は、全身の筋肉に緊張と弛緩を交互に繰り返して筋肉をほぐしていた彼に近寄った。

 

「.....えーっと、ちゃんと、手加減してくださいね。」

 

「ん?あぁ、わかった。」

 

「っ...うん。」

 

言う事が決まっていると思ったが彼女は歯切れの悪い曖昧なアドバイスを言い、彼がそれを妙に思いながらも了承すると、彼女は彼の肩をぽんぽんと叩いてすぐに帰ってしまった。

 

『では、両者前へ。』

 

「「......」」

『......初めっ!!』

 

「...?」

 

「.....」

 

開幕とともに速攻してくる楢崎や虎野とは異なり、天堂はかなり冷静で受けの姿勢を取りながらジリジリと距離を詰めていた。

 

(カウンター狙いか)

 

時間的にもその一撃に全てを込めなければ、こちらにダメージが通らないと考えているようだった。

 

そんな昼休み丸々使ってまで付き合ってやる意味はなかったので、海道は受けの構えを取っている天堂のすぐ目の前までゆっくり歩き、手をポッケに入れ、ただ見下ろした。

「.......は?」

 

天堂は思ってもなかった彼の行動に一瞬呆けてしまってしまい、彼はそれを見逃すわけもなく、天堂の端正な顔に触れる寸前で右手で覆った。

 

「....っ!」

 

気づいた時には視界は彼の手で覆われており、今ここで突きを打つ前に頭を地面に叩き潰されるのは火を見るよりも明らかだった。

 

『っ...勝負..ぁ』

 

「.....ま、参った。」

 

彼は既にレフェリーに視線を送って、勝負ありで終わらせようとしていたが、天堂はそれを察して自分から負けを認めてその場に座り込んだ。

 

その時、女子生徒たちの不快な歓声は一切なく、海道はその中で気分よく静かに道場を後にした。

 

「・・やっぱり....君だったか....」

 

そう、敗北に浸っているはずの伏せ切った顔から何かを呟く天堂を見る事なく....

 








天堂飛鳥 175cm 60kg
金髪蒼目の王子様。
天堂グループの一人っ子で、常に一番でなくてはならないという時代遅れな家訓に従っている。
成績優秀、運動神経抜群だが、部活には入っていない。人間性も優れている紳士。
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