レプリロイドは電子狼の夢を見るか   作:きしめん陰陽師(五寸釘装備)

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水龍のプレジデント ACID SEAFORCE

 辿り着いたモナーク巨大ダム。

 その入口には非常に多くのレプリロイドがいた。

 今回の件に無関係とは思えない。

 

「今すぐ其処を去りなさい。これより凶悪イレギュラーの破壊を実行します」

 

 警告は行っておく。

 仮に無関係なレプリロイドであったら問題となる。

 

「此処を去る訳にはいかないな。しかもイレギュラーハンターに言われてそうですかなんてのはあり得ない」

 

 一人がそう答え、周囲もそれに同調しながら己の武器を構える。

 …が、武器にしては余りにも貧相なものが多い。

 何の仕掛けも無さそうな鉄パイプや農機具。

 最新鋭の戦闘用レプリロイドを相手にするには、余りにも貧弱な装備だ。

 武器を持たないものもいるし、そもそも相手には戦闘用レプリロイドでない者もかなりいる。

 

 

「最終警告だ。

大人しく投降しなければ、イレギュラーとして速やかに破壊する」

 

 私の警告に震える者も多いが、それでも投降する者は誰一人としていなかった。

 

 

「ここに来て投降する者はいませんよ。

此処にいるのは、皆イレギュラーハンターに大切な者を奪われた者ばかり」

 

 そう言って進み出て来たのは、第6艦隊で見た覚えがあるレプリロイドだ。

 

「何故そこにいる」

 

 私の質問に彼は大きく笑った。

 その笑顔は、絶望に似ていた。

 

「先程言ったでしょう。

大切な者を奪われたとね。

…嘗て第6艦隊は規律は最悪でした。

私も虐められていましてね。

そんな中艦長に助けて頂きました。

あの方がいたから前を向けた。

だが、レトナ・レノォーク。

貴方はあの方を殺した

 

「イレギュラーは処分する。

イレギュラーハンターであれば当然のこと」

 

 私は速やかにエイリアの救出に向かいたい。

 此処で無駄な足止めをされるのは御免だった。

 

「…随分と冷たい。

ですが、聞いていますよ。

貴方はエイリア救出の為に此処に来たと。

何故です!! 何故エイリアにだけ!!

だからこそ…だからこそ我々はっ!!

我々は、イレギュラーハンターから奪い返す!!」

 

「……通告は終わった。

これよりイレギュラーと断定。

掃討を開始する」

 

 力がない彼等は奪われて終わり。

 けれど力がある私はエイリアを取り返す。

 それだけの理屈を彼等は理解出来なかった…いや、理解しようとしなかった。

 それを認めれば受け入れるしかないから。

 ならば受け入れるべきだった。

 それが弱者(被捕食者)の定めとして。

 

 私は鉄球を振り回す。

 乱戦にはこれが手っ取り早い。

 

「我々はイレギュラーハンターを許さぬ者(カウンターハンター)として立ち上がります」

 

 それは私の名だ。

 今、聴こえた。

 いや、それは後回しにする。

 

 カウンターハンター。

 その階級にいなかった彼は知らなかっただろうが、嘗て同名の集団が存在していた。

 勿論、民衆は知る筈もない。

 だがしかし、その名を名乗れば後戻りは許されない。

 

 鉄球をブチかまして戦闘の元第6艦隊員を周囲のレプリロイド諸共粉砕した。

 

「ワンオッペンの仇ッ!!」

「タゴッサークを返せっ!!」

 

 聞いた事もない名を叫びながら襲い掛かってくる、非戦闘タイプのレプリロイド達。

 恐らく彼等の奪われた“大切なもの”なのだろう。

 だが、無意味だ。

 

「奪われたまま生きていけないのなら、奪われたまま死ね」

 

 

 メタルロータスで同士討ちをさせないのは、己の意思のまま死なせてやるというせめてもの慈悲と、私自ら破壊して進んだ方が早いという極めて単純明快な時間効率だ。

 鉄球を振り回しながら奥へと進む。

 此方に駆けては無意味に壊れて壊れていく、非戦闘用レプリロイド達。

 惨めで無駄で無様だが、勇敢だ。

 しかし──────イレギュラーに過ぎない。

 

 イレギュラーは、破壊する。

 元イレギュラーハンターも非戦闘用レプリロイドも、イレギュラーとして破壊して破壊して破壊して破壊する。

 

 

 何もかもを薙ぎ払って進んだ。

 ダムの管理センターまで辿り着いた。

 以前にも見た見覚えのある景色だ。

 

 足元に咄嗟に気配を感じ、飛び上がると共に挙動が早い刀で下に向けて切り裂く。

 

     Target approach     Target approach     Target approach     Target approach

──────────────────────

 

WARNING

 

  ──────────────────────

     Target approach     Target approach     Target approach     Target approach

水龍のプレジデント『アシッド・シーフォース』

 

 

「どうかな、レトナ・レノォーク。罪もない者を殺めて進んだ、血濡れた道中(レッドカーペット)の感想は」

 

「あれらは全てイレギュラーだ。存在が罪で無い者は誰一人いない」

 

 

 タツノオトシゴ型のレプリロイドは、己から聞いてきた癖に、怒り狂って何かしらの液体を飛ばして来た。

 着地点が溶けて煙を発しているあたり、強酸性かそれに近しい効果を持つ溶解質の液体だろう。

 

「貴方だけは逃しませんよ。

貴方は、私から光を奪ったのですから!!」

 

 反撃に刀から電子刃を飛来させて斬り伏せた。

 タイガード由来の特殊チップにより、強化された高電圧の刀によって為せる技だ。

 しかし液状化してこれを対処してきた敵は、液体のまま移動している。

 

 私もスラックジーから奪った特殊チップ『リキューフィクション』で液状化は可能だが、液状化した状態で敵の溶解液を受けるのは、再生時の損害が計り知れない。

 此方には同じ戦い方は難しいだろう。

 

 ならば此方は搦め手といこう。

 特殊部隊『ロータスコープ』。

 敵によっては洗脳操作も可能な、寄生植物のデバイスメタルロータスを複数展開する。

 液状化状態ではセキュリティが甘くなるのは、己の技故に良く知っている。

 

 

「よりにもよって!! よりにもよってぇぇええええ!!

奪った光を振り翳すというのか。

どこまで!! 貴様は!! 貴様はぁぁああああ!!!!」

 

 敵もさるもの。

 メタルロータスが触れた途端に、触れた部分の液体を切り離して破棄した。

 しかし、そのサイズはやや小さくなっている。

 機能も劣化したはずだ。

 恐らく、これを繰り返せば勝てる。

 

 

「私がドップラー達と手を組んだのも何もかも、貴様が私の光を奪ったからだぁ!!!!

このアシッド・シーフォース、決して貴様を許したりはしない!!」

 

 詩的なのか勇猛なのか何とも言い難い。

 だが、そんな事はどうでも良い。

 

「そうか。

で、エイリアは何処にいる」

 

「貴様は人の光を奪っておきながら、己は光を浴びようとするのか…。良いだろう、今会わせてやる」

 

 

 突如壁や地面が貫かれた。

 そこから突き出した触手に巻き付かれ、引っ張られた。

 

 報告にあったボルト・クラゲールか。

 失念していた。

 

 横を見ると、ずぶ濡れになって意識を失っているエイリアも、クラゲールに巻き付かれて捕らえられている。

 直ぐに液状化して拘束を抜けると、エイリアを捕らえている触手に刀を入れた。

 名前からして電流による反撃を覚悟していたが、その様な機能は無いのか、判断が遅かったのか触手に電流を流して、私を感電させるという事は無かった。

 

 背後にシーフォースの攻撃を察知したので、攻撃を中断して回避しようと考えたが、その進行方向にはエイリアがいる。

 咄嗟に鉄球を突き出して壁代わりにしたが、その隙にクラゲールが回転式のカッターを飛ばして来た。

 

 鉄球でガードしながら液状化は出来ない。

 仕方無くダメージを受けたが、これも必要な判断だった。

 

「冷酷なイレギュラーハンターにも、情があるのですね」

 

「黙れイレギュラー」

 

 電子刃を二つ飛ばしてクラゲールの触手を切り落とす。

 私に向けられた触手を切り落としつつ、開放されて落ちて来たエイリアを確保した。

 例の如くシーフォースの酸攻撃には鉄球ガードを強要されたが、クラゲールのメイン兵装らしき二本の触手は切り落とせた。

 そう思っていたらクラゲールから小型ミサイルが飛んできた。

 前に鉄球を構え、上から落ちて来るエイリアを受け止める体勢になっている以上、今更躱せない。

 

 

「エイリア」

 

「……レト…ナ? って酷い傷じゃないっ!!」

 

 触手から落ちて来た衝撃で目を覚ました様だ。

 爆風のせいかも知れない。

 まあどちらだろうが、理由は気にする事でも無い。

 

 

 此方にも損傷はある。

 しかし敵も人質を失い、シーフォースはやや弱体化した上に明確な弱点を見つけたし、クラゲールはミサイルはあるようだが触手は潰した。

 

 此処は攻勢に移りシーフォースを痛め付けるべきだろう。

 

 メタルロータスを大きく溜め上げて撃ち出す。

 蓮の華というよりは、木にも見える。

 大樹とは言わないが、シーフォースよりは大きかった。

 

 シーフォースは一瞬呆けた様に固まっていて、動きが鈍った。

 咄嗟に浸食部分を切り離したが、それによる損害は大きかったようで、当初の2/3程度の大きさしかない。

 

 動きも鈍っていて弱っているのは分かった。

 牽制も兼ねてメタルロータスを複数撒き、その間にクラゲールを叩く。

 半分程溶けた鉄球は、それでも後数回は溶解液への盾として使う必要があるので、攻撃には電子刀を使う。

 

 身体を支える最も太い触手を切り落とすと、クラゲールは横になって倒れた。

 取り敢えず人質の救出を報告すると、増援が直ぐに駆け付けるとの事だった。

 

 

 シーフォースは液体化して此方の出方を伺っている。

 自分から攻めるのはリスクが高いと思ったのだろう。

 

 

 

 

 突如立体映像が現れた。

 それは、ドップラーだった。

「その程度か。ガッカリさせてくれるなよシーフォース。

仕方無い。クラゲール、シーフォースを喰え」

 

「何…!?」

 

 立体映像が消えると同時にクラゲールの内側から細長い触手が伸びて、その触手の先端は驚愕するシーフォースを吸い取った。

 

 

 クラゲールはウネウネの溶け始めて、無数の触手を持つ緑色のタコの様な姿になった。

 控え目に言って気持ち悪い。

 

「ワタシノヒカリ…ワタシノアイスルヒカリ」

 

 

 

 

 意識はシーフォースの方が優勢…の様に見える。

 洗脳仕様のメタルロータスを放ったが、謎の耐性が発生していて浸食が出来なかった。

 

 それぞれの触手からは、溶解液が放たれる。

 

「エイリア、下がって。

上手く戦えない」

 

 

 エイリア自身、背後から同僚を処分する程度の戦闘力はあるが、流石にこの戦いに巻き込む戦力ではない。

 

 エイリアもそれを理解しているのか素直に下がった。

 

 

 

 鉄球の強度は心配だが、エイリアが下がった以上は盾で防ぐよりも回避の方がやりやすい。

 鉄球をぶつけると、液状化して受け流すかと思ったが、その予想は半分しか当たっていなかった。

 結論から言えば、液状化が不完全だった。

 

 しかし、鉄球を受けて上半身が千切れ飛んだ敵は、それを狙っていた様だ。

 先程私に切り落とされた二本の触手の位置まで飛ばされた上半身は、その二本の触手を溶かすようにして再結合させた。

 そして上半身と下半身は互いに触手を伸ばし合い、融合を始めている。

 融合面は液状化してドロドロとしていた。

 

 

 私はリキューフィクションを鉄球に使い、上半身と下半身が結合する隙間に詰め込んだ。

 

 

 異なる液状化金属を吸収した敵は、明らかな不具合を見せ始めた。

 

 

「オオオオオ、ワタシハ…アナタヲ…アイシテ────」

 

 半液状化しつつ、上下左右へと膨らんでは萎み捻れていくシーフォース。

 何処からか現れた()は、シーフォースの中に入り込み、直後シーフォースは爆散した。

 

 

「何故此処に来た。デストーメント」

 

 彼は明らかにその場凌ぎ用の義足と義手の代用品を取り外してミノムシの様な姿になると、本来の手足を取り付けた。

 

 それらは一度液状化して、デストーメントの手足として再生する。

 

「何故?

それはどうやってという意味?

どうして此処にっていう意味?

それとも何のために此処にっていう意味かな」

 

 私が無言でいると、勝手に喋り出した。

 

 

「姉さんだから全部教えてあげるね。

シグマがこの安っぽい移動空座とアームをくれたんだ。

もう、要らないけどね。

 

姉さんが無線で話す内容を聞いて、シグマにドップラーが何か仕掛けた場所があったら教えてって聞いたら、この場所だった。

そして、液状化して再生するこの力。

この力が欲しかった。

アイツらが勝手に僕に求めて、勝手に諦められたこの力が!!

 

うん…やはりプロセスが違うからか、かなりキツいけど仕方無いよね。

姉さん。僕は頑張ったよね!!」

 

 

 私の返答は、タイガードからラーニングしたレーザーを飛ばす剣技『日食斬』だった。

 

 

 

 二つに裂けたデストーメントは、再び元の形に再生した。

 恐ろしい再生力だ。

 効果的だったシザーリングチェーンが、今は弾切れなのが悔やまれる。

 

「そっか…それが姉さんの答えか。

もう良いかな。

姉さん、絶対に他の奴等に殺されたりしないでね。

姉さんは────、この僕が殺すんだから

 

 

 

 そう言って去っていった。

 あの時破壊出来ていれば良かったとは思うが、私に駆け寄って来るエイリアの無事な姿を見ると、あの時の選択に後悔もない。

 

「ありがとう、レトナ」

 

 

 割りと重症なので、エイリアといえど抱き締められるのは負担はあるが、それを告げる必要は感じていない。

 エイリアは何となく気が付いたのか、「ゴメンね」と言って私を横になる様に促し、正座して膝を叩いた。

 膝枕という意図だと判断して、私は頭部を乗せた。

 

 

 

 

 残った問題は、今駆け付けてくるエックス隊長を含めたであろう増援が、空気を読んで遅れて来てくれるかどうかだけだ。

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