大魔族『赤血のリュグナー』   作:禪院魔虚羅

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大魔族『赤血のリュグナー』

 

 

 転生した。

 

 トラックに轢かれて『あっ、これ死んだな』と思って気付いたら森の中にいた。

 

 

 そんなこんなで右往左往していたら人間に出会った。道を訪ねようとしたらいきなり斬りかかって来たので、『また死ぬのか。剣とか痛そうだな』とか呑気なことを考えてたら、前世では有り得なかった二つのことを知覚した。

 

 

 一つ目が、人間に対する美味そうという感情

 

 

 二つ目が、何故か魔法を使えるという確信

 

 

 

 気付いたら人間は目の前に迫ってきている。死にたくない一心で咄嗟に手を伸ばすと、次の瞬間、俺の腕から赤い蜘蛛の足のようなものが飛び出した。

 人間はそれに反応することもできず首を落とされた。

 

 

「あっ」

 

 

 自分で思っていたよりも動揺は少ない。転生とかいう事実に脳が追い付いていないせいで人を殺したという事実もまだ受け入れてないだけなのだろうか。

 このままではまずいので人間の体を土に埋めてその上に剣を立てて標とする。返り血で真っ赤に染まった身体を洗うために近くの泉に近寄って自分の顔を見ると──

 

 

 金髪

 

 切れ長の目

 

 二本の角

 

 

 前世で散々話題なっていたアニメの中でも特にネタにされることが多いキャラ…の部下であり主人公…ではなく主人公の弟子に殺られる悲しいキャラ…つまりは

 

 

「リュグナーじゃねーか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リュグナーであるということを自覚してからまず始めたのは魔力の制限と魔法の鍛錬だった。魔力の制限はフリーレンみたいな魔族絶対殺すマンみたいなやつに出会った時に逃げれる可能性を少しでも上げる。魔法の鍛錬は言わずもがな。

 

 

 

 その過程でたどり着いた前世で憧れた技。

 

 体外で血を加圧して圧縮。とにかくできる限り小さくする。

 続けて圧縮して小さな球形になった血液を両手で挟み込む。

 

 

血を操る魔法(バルテーリエ)

 

 

 直後、音速と呼ぶにはまだ遅すぎる速度で血液の矢が射出される。その威力もせいぜい木に傷をつける程度。

 俺の魔法の練度のせいで、並の人間なら殺せるかもしれないが冒険者なんかを殺すにはまだ足りない威力の穿血もどきができた。

 

 

「まだ改善の余地ありだな」

 

 

 一年も経てば肉食獣みたいな魔物が全力疾走するよりも速い速度で打ち出せるようになった。

 

 

 次の一年で魔族が全力疾走するよりも速く打ち出せるようになった。

 

 

 音速を超えるのに十年近く要した。それでもなんとか第一目標の穿血と百斂はクリア。

 

 時間だけはたっぷりあったから超新星、苅祓、血星磊なんかもできるように練習しまくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日も今日とて魔物相手に穿血の練習をしようとして百斂を発動した、そんな折だった。()()が来たのは。

 

 

「フリーレン、本当にこんな森の奥に村があるのかい?」

「あるはず…少なくとも前に来た時はあったから」

「ちなみに前って何年前」

「そうだね、300年くらい前だったかな」

「えぇ…」

「大丈夫だと思いますよ。この先に魔力を感じますし、この量なら人間の…」

 

 

 そんな声が聞こえてきたと思った時には時すでにお寿司。前世で見慣れた四人組と思いっきり目が合った。

 

 

「「「「「あっ」」」」」

「えーっと…はじめまして。私の名はリュグナー」

「…」

 

 そんな四人組と声がシンクロしたと思ったら炎が飛んできた。

 

 

「随分な挨拶だな。エルフの魔法使い」

 

 

 ファッ!?

 「こんにちは」って言ったつもりなのになんか変なフィルターかかってるんだけど!

 

 

「へえ、今のを避けるんだ」

「こちらとしては殺し合うのは紅茶でも飲んで話しをしてからでもいいと思うのだがな」(訳「死にたくないしとりあえずお話しない?」)

 

 

 やめろめろめろリュグナーめろ!俺の中のリュグナー様はそんな事言わない!

 

 

「そう言って油断を誘う魔族を何体も見てきた」

「なるほど…そうか」

 

 

 よく見たらフリーレン以外の三人も戦闘態勢に入ってる。こうなったらやるしかない。そんでもって適当なところで逃げよう。

 

 

血を操る魔法(バルテーリエ)

 

 

 手加減したら殺される。そう思ってまずは右腕の半ばから出した血を鞭のようにしならせて薙ぎ払うが、簡単にかわされる。

 

 

 何かが来る。

 

 

 そう思って山勘を張って首の近くに血を集中させて凝固させる。失敗したら死とかクソゲーすぎるだろ。

 

 

 『赤血操術 血星磊(けっせいせき)

 

 

 ここでは血を操る魔法(バルテーリエ)として他の技と一緒くたになるが、硬度だけは手持ちの札でもトップになる。

 

 

「やるな」

 

 

 そう呟いたアイゼンを右肩から生やした血でできた巨大な腕で弾き飛ばす。

 『硬すぎだろ』と言いたくなるのを思わず堪える。めちゃくちゃでかい岩でも殴ったのかと思った。

 

 

血を操る魔法(バルテーリエ)

 

 

 何も見えないで殺されるとか御免なので、ヒンメルが動き出す前に体内の血を操ってとにかく眼の能力を底上げする。その上で血を操って短刀を作り出す。

 

 速い───────がなんとか捉えられる速度だ。

 

 何度か斬り合うとヒンメルが一度下がって三人と合流して何かを話し合っている。視線と剣先は依然としてこちらに向いたまま。こちらが動けば確実に向こうも動く。

 幸いなことに百斂は既に作り出してある。数は五つ。つまり穿血と超新星は合わせて五回しか使えない。どのタイミングでどう使うかがこの窮地を切り抜けるキーになってくる。

 ─────であるのなら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穿血(バルテーリエ)

 

 

 

 

 

 

 四人固まっているこのタイミングで使うのはある意味必然だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穿血(バルテーリエ)

 

 

 

 目の前の魔族が奇妙な構えをしてそう告げた途端、ヒンメルとハイターと自分を庇うように前に出たアイゼンが消えた光景をフリーレンは目にした。

 

 

 

(消えた?…いや、違う)

 

 

 

 目で見えない速度で吹き飛ばされたんだ。その証拠に遥か後方まで木がなぎ倒される音が聞こえた。

 

 

 問題は吹き飛ばされたのがアイゼンだということ。

 パーティーの中で最も力が強く硬いアイゼンをいとも容易く吹き飛ばした目の前の魔族に全員が警戒度を上げる。

 油断をしていた訳では無い。いくら旅を始めた直後とはいえ、パーティー全員が、並の魔族なら簡単に屠れる力を持っていた。そして、目の前の魔族の魔力量は決して並以上とは言えない魔力量だった。そんな相手があのアイゼンを吹き飛ばせるとは思えない。

 

 それが意味することは即ち─────

 

 

「魔力の制限か」

「正解」

 

 

 そう言った直後にヒンメルが魔族に斬りかかり、血の鞭を生やした右腕を落とした。

 

 

「それは悪手だろう」

「ッ!」

「ヒンメル、避け─────」

 

 

 旅を始めて一年未満。未来の勇者には対魔族の経験が足りなすぎた。故に目の前の魔族がニヤリと笑みを浮かべた時には手遅れ。

 

 

超新星(バルテーリエ)

 

 

 剣を振り抜いた直後のヒンメルと魔族の間で血液の球が弾けた。咄嗟に急所を庇ったヒンメルが空中に投げ出され、そのまま重力に従って地面に落ちる。

 その様子を見たリュグナーはヒンメル達を視界に捉えたまま空中に浮かぶ。

 

 

「潮時か」

「待て。どこに行く気だ」

「これ以上戦っても意味が無い。こちらにもそちらにもな。そんなことより戦士と勇者の手当をしてやった方がいい」

「…なに?」

「人外の血が身体の中に入ったんだ。拒否反応が出ない方が不自然だ。今頃戦士も勇者も身体が動かせなくなってるんじゃないか?」

 

 

 

 既にあの魔族の魔法の種は割れてる。魔族の周囲に浮かぶ血の球が鍵になっている。この状況であれを撃たれたら自分は何とかなっても割と本気でパーティーが壊滅しかねない。

 目の前の魔族と魔王を討ち取る仲間、未来のメリットとデメリットを天秤にかけてフリーレンは苦虫を噛み潰したような顔を浮かべながら仲間を取った。

 

 その様子を見た魔族はフリーレンたちに背を向けてどこかへと飛び去っていった。

 

 

 

 

 

 

 その日を境に人間の魔族に関する記録に一人の魔族が追加された。

 

 

名を

 

 

 

赤血のリュグナー




 転生リュグナーの赤血操術はオリジナルよりもかなり強化されてます。
 そもそも転生リュグナーが現代社会じゃ開花しない戦闘の天才だったこと。それからヒンメルたちが旅に出て一年未満で連携も魔王討伐時に比べて拙かったことが転生リュグナー生存の理由です。魔王討伐後だったら普通に負ける可能性の方が高いです。
 ちなみにヒンメルは身体の前面が酷いことになったしアイゼンは腕がちぎれてましたがハイターが何とかしました。
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