大魔族『赤血のリュグナー』   作:禪院魔虚羅

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『赤血』vs魔法使いの弟子と戦士の弟子

 

 勇者ヒンメルの死から28年後。

 北側諸国 グラナト伯爵領にて。

 

 フリーレンの弟子であるフェルンが『リュグナイト』と名乗った魔族と戦闘を繰り広げ、致命傷を負わせた。フェルンが警戒は解かずに勝ちを確信したとき、突如としてリュグナイトが大きな声で笑い始めた。

 

 

「ククッ…ハハハハハ!まさか人間相手に変装を解く羽目になるとはな…やはりつい侮ってしまうのは我々魔族の悪い癖だな」

(姿が変わった…いや、今までのは幻覚…恐らくフリーレン様でさえ区別が付けられないほどの手練…それにしてもこの顔、どこかで…)

 

 

 突如、フェルンの脳内に溢れ出した、確かに存在する記憶

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何を考えてるか分からない魔族?魔族なんてどいつも大抵何考えてるか分からないけど」

「うん…こんな質問した俺が悪かった。なんかごめん」

「…強いて言うなら『赤血のリュグナー』だね」

「『赤血のリュグナー』というとハイター様からも度々聞いたことがありますね」

「確実に殺せるタイミングでもよくわかんないことを言って撤退するし魔力を抑えることにも一切の躊躇をしない……私がいない時にあいつと出会ったらすぐ逃げて私のことを呼ぶこと。戦うことは考えなくていい」

 

 

 

 

「一発食らったアイゼン曰く『見た目は地味なのに速くて鋭くて重い。挙句の果てに傷ができて血が体内に入ってくると動けなくなるから勘で避けるしかない』」

「…その話、俺も聞いたことあるんだけど本当なのか?特に師匠の腕が…」

「……事実だよ。あのアイゼンが一撃で腕を飛ばされた。少なくとも私達がまともに食らったら即死だろうね」

 

 

 今思い返しても眉唾な話だった。フリーレン様やハイター様の話を聞いている限りあのアイゼン様の体の一部を吹き飛ばすなど並大抵の威力じゃない。

 だけど事実だとは思っていた。フリーレン様はこういう冗談は言わないから。

 

 

「特に警戒しなきゃいけないのはあいつの周囲に血でできた小さな球があるときだね。あいつの周りに血の球が浮かんでる最中は─────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『赤血のリュグナー』…!」

「ほう、知っているのか。…百斂(バルテーリエ)

(纏う雰囲気まで変わった。さっきまでとはまるで別人)

 

 

 

 

 

『あいつの周りに血の球が浮かんでる最中はいつ大技が来てもおかしくないからね』

 

 

 

 

 

 

 目の前の魔族…リュグナーが血の球を浮かべると同時に師匠の警告がフェルンの脳裏を過ぎる。

 直後、リュグナーが血の球を両手で挟み込むような構えをつくる。

 

 

(『両手を合わせる構え』!あれがフリーレン様の言っていた…!まずい!)

穿血(バルテーリエ)

 

 

 たった一瞬、されど一瞬。かつて勇者パーティーの戦士の腕を吹き飛ばした音速を超える血槍が、フェルンの眉間を撃ち抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────かと思われたが、実際はフェルンの髪を切り落とすだけにとどまった。それはフェルンが直前に火事場の馬鹿力で動いたシュタルクに担がれていたこともあるが、それ以上にリュグナーに当てる気がなかったからだ。

 だが、シュタルクが振り返ると、『次は威嚇じゃなく本気で当てるぞ』とでも言わんばかりの笑みを携えたリュグナーがいた。

 

 

(ここからフリーレン様を呼びに行くのは距離的にもほぼ不可能…それなら)

「やばいって!あれ絶対俺たちだけじゃ無理だって!!」

「シュタルク様」

「ああもう!やっぱり戦うんじゃなかった!」

「シュタルク様!」

「死んだら呪って出てやるからな、フリーレン!」

「シュタルク様!!」

「痛い!」

「…一つだけ策があります。まず─────」

 

 

 

 杖で頭を小突かれたシュタルクがフェルンの言葉に耳を傾ける。

 

 

「それ、成功率は?」

「……一割もないかと。こうしている今も相手が家ごとあの魔法で薙ぎ払うだけで私たちは死んでしまいますし」

「…分かった。それしかないんならやるだけやろう。もしダメだったら」

「『ダメだったら』?」

「そのときは一緒にフリーレンの前に化けて出てやろう」

「ええ、そうですね」

 

 

 

 

 

 リュグナーが魔力探知でシュタルクの魔力を追跡する。魔力の隠匿が得意なフェルンを追うことは難しい。対照的に戦士であり魔力の抑え方を知らないシュタルクは追跡が容易いからだ。

 

 そしてたどり着いた先はグラナト伯爵の居城に繋がる橋の上だった。

 

 

「橋の上で逃げ場を封じたつもりか?」

「さあなっ!」

 

 

 リュグナーはシュタルクたちのことを舐め腐っている。その証拠に今の彼は百斂を保持していない。その事を確認してからシュタルクはリュグナーの懐へ一歩で接近し全力で斧を振り下ろした。

 急所に当たりさえすれば竜さえも一撃で葬り去る、その怪力によって橋が崩落する。

 

 

「フェルン!!」

「ッ!」

 

 

 フェルンの一般攻撃魔法(ゾルトラーク)はリュグナーではなく、リュグナーの落下予測地点の周りにある城の堀を狙っていた。

 そして、跳ね上げられた水がまるで雨のようにシュタルクとリュグナーを濡らす。

 

 

「…水の浸透圧による血球の破壊か」

「…」

「隠さなくてもいい。私自身この弱点には気付いていた。とはいえこのことに気付けるには人体に詳しい僧侶と私の魔法の仕組みを理解できる優秀な魔法使いが必要だが」

「…」

「無視は酷いな。……だがあえて言わせてもらおう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな分かりきった弱点、対策していないと思ったか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────パン!

 

 

 シュタルクが振り抜いた斧によって巻き上げられた水飛沫でリュグナーの姿が隠れるのとほぼ同時。シュタルクとフェルンの耳に、乾いたものを打ったような音が届いた。

 

 

 

 

 

 

 

穿血(リームシュトローア)

 

 

 

 




 リームシュトローアは『水を操る魔法』とだけ。アニメではまだ出てませんので調べる際はネタバレにご注意ください。

 わざとフェルンたちの策に乗ったまである。
 転生リュグナーがグラナト伯爵領にいる理由とかは次回で。
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