錬成の悪魔   作:お父様

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 ちなみに作者の好きなブラクロキャラは以下の通りです。
1位.ゼノン 2位.ネロ 3位.ルチフェロ
 ifのユノいいよね…
 それじゃあ、お待ちかねの無茶苦茶魔法の時間です。


ページ11.おしおき

 錬成魔法とは本来、対象を他物質に変換するだけの魔法。

 シンプル。故に奥が深く強力で、長い年月を生きると共に、蓄えられる悪魔の知恵と組み合わさることで、無限の成長性を持つ魔法。

 だがあくまでも、それは相手の魔法すら変えられる力…言い方を気にせず評価を下せば、所詮は『それだけ』でしかない。

 言葉にした現象を具現化する言霊魔法、そして言わずもがな、生物であるなら決して抗えず、逃げられない重力や空間、そして時間といった高次元の魔法には劣る。

 

 だが、サタナキアが古代…冥府の頂点に立てた理由。

 

 それこそが。

 ――彼が到達した、(マナ)の真理。

 

「錬成羅針盤魔法」

 

 火・水・風・地。

 魔法を構成する基本的な(マナ)はこの四つであり、人間一人につき魔法は一属性、これが基本。

 硝子や鋼。宝石等の魔法も全て、この四元素が絶妙な配合で組み合わさることで、一つの魔法属性として成り立っている。

 一人につき、基本は一つ。

 

 ――だが、目の前でうねるこの魔法たちは。

 ――浮遊する無数の羅針盤、その上で旋回を続ける、光の魔法は。

 

 ヤーゴスは、目の前の光景がせめて。

 幻覚魔法が見せる偽物であって欲しいと、そう切実に思う。

 何故なら、目の前で展開されている魔法の――

 

(複数の属性魔法を同時に…!?こんな無茶苦茶な事が…!しかも…!)

 

 その属性は。

 

「錬成()()()…」

 

 ――光魔法。

 クローバーの、それこそ大陸全土を探しても、滅多に存在が確認されていない希少な魔法属性。

 歴史上で確認された数ならば、『闇魔法』よりも数が少なく、データが少ない。

 だが光。その凄まじさは魔法の世界に足を踏み入れた者なら、初級の魔導士でも理解出来る。

 

 最速にして、最大の威力。

 早く、速く、疾い――

 

 魔法の発動、詠唱の一瞬すら、戦場では命取りになるこの世界で。

 単純明快な、速度という強さは――

 

「一応言っておく。少しでも動けば、羅針盤を止め、光の矢がお前に向かうぞ」

 

 今も尚、絶えず速度を増し続けている光魔法の攻撃。

 それを羅針盤の力で、無理やりその場に留めることで、いつでも発射できるように備えているのだろう…その予想は、当たっていた。

 まるで当たり前のように、「もしかしたら足が飛ぶかも」と付け加えた、その姿からは、ただただ悍ましさしか感じない。

 

 戦士としての警告。それとは違う。

 まるで、遊びの延長線で、蟲の身体を千切って笑う。――そんな、無邪気故の恐怖。

 

 ヤーゴスの顔に、冷たい汗が流れた。

 

「お前たち、降参するなら今のうちだぞ」

 

 ――こいつは、魔法騎士団団長よりも。

 ヤーゴスは、目の前に立っている得体の知れないモノ…もはや人間とは思えない、人の形をした何か。

 それが、ただ使命と共に力を振るう、クローバー王国の守護者とは違う、『異質』であると見抜く。

 太陽光を反射する、純白の長髪と、身を包む真っ黒なワンピース。

 恐怖心など覚える筈のない、造形の整ったそれらの情報すら、今のヤーゴスからすれば、正体不明の恐れという名の、焚き火に薪をくべる要素でしかない。

 そんな、化け物の呑気な言葉を聞く。

 

「私は種ぞ…こほん。出身柄そういうの(悪意)には敏感なんだ。お前たちが悪いやつなのは、ひと目でわかる」

「………」

「こっちも手加減は疲れるし、大変だし。素直に私の言う事を聞いてくれ。お前たちだって、痛いのは嫌だろう?」

 

 ――冗談じゃない。

 震える身体を、怒りで必死に押し留めながら、ヤーゴスは不敵に笑う。

 

「…エッエッエッ。まさかクローバーに、こんな隠し玉が居たとはのう」

「…?」

 

 役に立たない密偵め――

 どうしようもない、行き場のない恨みを込めながら、ヤーゴスは内心でそう愚痴る。

 しかし、たとえ得体の知れない化け物が相手だろうと、自分は誉ある、ダイヤモンドの"八輝将"の一人なのだ。

 既に、服の内側に忍ばせた通信装置から、異常事態が発生したことは、既に伝えている。

 後は、援軍が来るのを待つだけ…

 しかし一方で。

 少女はヤーゴスの言葉に、疑問符を浮かべ、こてんと首を傾げながら。

 

「…?降参するのか?しないのか?しないなら痛い目に合わせるぞ」

「何、もう少――」

 

 話に付き合ってもいいだろう。

 ――その言葉は、最後まで続くことはなかった。

 

「し…?」

 

 ザッ――

 鈍い、何かが貫かれたような、痛々しい音が一つだけ、辺りに響く。

 その直後、ヤーゴスの神経を刺激する、凄まじい痛みの奔流。

 ――その発生場所は、右足。

 右足の、太股を貫く光の矢。それによって、ヤーゴスの言葉は止まる。

 

「あ、ガっ…!?」

「?言っただろう――」

 

 ――痛い目に合わせると。

 少女の赤い瞳。その中央に確かに見えた、真っ黒な光。

 

(こ、こいつは不味い…!一番不味い!一番厄介な…!)

 

 ――重要なところで食い違う、一番相手にしてはいけない狂人…!

 ヤーゴスは、痛みすら忘れる程の――戦慄と逃走本能に身を任せ、全力の魔法を展開した。

 己の周りにいる、今も尚動けていない、情けない部下など既に、頭の中から消えていた。

 自分の命。そして身体を第一に。

 ヤーゴスは味方を一切守ることなく、自分の身を守る為だけの魔法を使う。

 

「ッ――粘液創成魔法ッ!」

 

 再び、ミュカスネイルを再展開し、ヤーゴスは守りの為の壁を作ろうとする。

 相手の(マナ)を蝕む魔力の粘液。それは何重にも発動することで、あらゆる魔力弾を弾く、対魔法に特化した盾となる。

 今まで、これを防げた者など、一人もいない。

 撃たれた右足から中心に、円形に広がる粘液が、ヤーゴスの身体全体を――

 

"乾け"

 

 だが、それをサナ――サタナキアの言霊魔法が許さない。

 赤く、黒く、グロテスクにひび割れた口元。

 そこから紡がれる、魔力を込めた言葉が、少女の望む光景を、現実に投影する。

 ヤーゴスの身を守る筈だった、粘液の盾は充分に形成されるよりも先に、言霊魔法が引き起こす現象。

 その強制力に負け、あっという間に動きを止め、粘液は跡形もなく消えてしまう。

 

「は?な、っ…!?」

「言霊魔法だ。もしかして、ここ(現世)ではあまり見ないのか?」

 

 先ほどまで視認できた、羅針盤魔法や光魔法とも違う、全く別の魔法。

 ヤーゴスはその、三つ目の魔法属性という、ありえない現象に震えるしかない。

 魔法学会の、それこそ人類の歴史に刻まれるであろう、特異な光景。

 思わず、ヤーゴスは聞いた。

 

「貴様…もしや混血(ダブル)か…!?」

 

 混血(ダブル)。それは文字通り、二つの異種族が交わり、生まれた子。

 魔法の根源である魔力、そして魔力を構成する(マナ)、人それぞれの個性である属性を司るのは、魂か?それとも血液か?

 あまりにも前例がなく、ダイヤモンドの魔法学会で幾度も議論が交わされ、そして結局進展がないまま終わる…それが、混血児の魔法属性問題であった。

 既に滅びたとされているエルフ。未だその存在を確認できていないドワーフ。

 それらの歴史的文献を漁り、歴史書の細かな修正と、新規情報の追加をしていくだけの、退屈な時間。

 ヤーゴスも何度か、魔法学会の様子を見たことはあるが、どれも興味を唆られず、自然と頭から抜け落ちていた。

 

 ――だが、今目の前にいるのは、もしかしたら…

 

 そうだ、それしかありえない。

 驚愕。しかし同時に、ある種の納得と共に、ヤーゴスは震える声でそう問うた。

 しかし。

 

「…?いや違うが?」

 

 ――そう、違う。

 確かに世界中を探せば、もしかしたら、二つの魔法属性に目覚めた、混血の魔導士がいるのかもしれない。

 ヤーゴスの考察も、決して間違いではないし、決して近くはないが、遠くもない結論なのだ。

 少女は、混血児などよりも、更に希少で類を見ない。

 この世界で唯一の、かつての王であり、最古の――

 

"来い"

 

 再び、言霊魔法によって引き起こされる現象。

 その対象は、ヤーゴスの背中に向けられていた。――ダイヤモンドの残兵。

 少女――元魔王、サタナキアの興味がヤーゴスに向けられている隙に、彼らはみっともなく、上司を見捨てて逃げようとしていた。

 十数名という、魔力の質も量もバラバラで、魔法の対象にするのにも一苦労な筈の、同時転移。

 それを難なく行えるのも、彼が悪魔という、理外の存在であるが故。

 ――しかし。

 ダイヤモンドの兵士も、そして"八輝将"たるヤーゴスも、サタナキアからすれば、興味の対象ではない。

 唯一の好奇。それは自分に、人間の可能性を見せた――

 

「さて、殺しはユリウスから禁じられているからな…」

 

 羅針盤魔法を解除し。

 サタナキアは、今自分が頭に思い浮かべた少女の、既に『解析』を終わらせた魔法を発動する。

 

「錬成鋼魔法…"摩訶鋼鏡(ミラ・ミラー)"」

 

 サタナキアの背後に降り立つ、三面の鋼。

 傷や汚れが一つもない、まるで鏡のようなそれが、サタナキアの麗しい容姿を、二方面から映し出す。

 そして、発動するもう一つの魔法は。

 ()()()()の魔力を解析し、会得した魔法。

 それにより――

 

 

 

 

「錬成()()()

 

 ――サタナキアは増える

 

「"虚像三位相(ビジョン・サード)"」

 

 次の瞬間。 

 ヤーゴスの目の前に映る。視界全てを埋め尽くす、光魔法の反応。

 後ろに立っていた、ヤーゴス以外のダイヤモンドの残兵は、既に意気消沈し、恐怖で震えることすらできない。

 三人のサタナキアは、それぞれ順に。

 欠伸を噛み殺し、腕を伸ばしてリラックスし、首を傾げて。

 

「死にたくなければ動くなよ」

「加減は難しいんだ」

「元居た場所に帰してやる」

 

 錬成魔光魔法。

 錬成光魔法。

 錬成真光魔法。

 

 

 

 

「…………」

 

 言葉が出ない光景。

 凝縮された光。それが放たれる寸前に、ヤーゴスは何とか、喉から声を絞って出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――この化け物め」

 

 その瞬間。

 ヤーゴスたちの身体に、凄まじい突風が叩きつけられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三位一体で放った、光魔法の砲撃。

 それが僅かに、狙いを下にズラしたことで、ヤーゴスを含む、ダイヤモンドの魔導士全てに、衝撃波のみを与えた。

 直接的なダメージはないものの、常人なら、吹き飛ばされる際の空気抵抗や、着弾時の砂利によって、決して軽くない傷を負うことだろう。

 だが、サタナキアは彼らなら大丈夫だと、そう確信を持ったからこそ、遠慮なく衝撃を与えた。

 彼らは決して、弱くはない。

 僅かに傷は負ってはいる。しかしあの程度なら、簡単な魔力操作による、身体能力向上と、防御力の上昇で、上手く凌げるだろう。

 だが……

 

「……あ」

 

 サタナキアは、しまったという顔をして。

 

「…あいつらの名前、聞くの忘れてた」

 

 そもそも、自分も相手に名乗っていない。

 相手側の事情を、論理的に知るのではなく、ただ悪魔としての本能、直感で悪意を感知し、甚振ってしまった。

 これでは、いくら相手が悪人だからとはいえ、悪意を感知できない人間には、到底納得できない話だろう。

 サタナキアは、僅かに落ち込みながら。

 

「…ユリウスになんて説明しようか」

 

 最初の頃とは違い。

 あっという間に、現世に適応…もしくは人間らしくなってしまったサタナキア。

 彼女は初めて、今『ホウレンソウ』とやらの重要性を、身をもって学習したのだった。




錬成魔法の再現条件
 錬成魔法は本来、物質を別物質に変えるだけだが、サタナキアは属性の元となっている四属性の魔、それの配合を"錬成"で変えることで、擬似的に魔法を"再現"している。
 サタナキアが他者の属性を使うには、対象の魔法を『分解』し、魔の比率を『解析』しないといけないため、重力魔法のように、そもそも『錬成』自体ができないものは『解析』ができず、再現できない。
 光魔法の解析情報はどこで手にしたって?
 …こっそり城に侵入し、どこぞの王様から魔力を拝借して解析…そして光魔法を使えるようになる必要があったんですねぇ(RTA並感)。

模倣魔法との違い。
 錬成は再現、模倣はコピーという違い。
 錬成魔法では重力魔法を再現できないが、極論魔導書に触れただけで、その人間の魔法をコピーできる模倣魔法なら、ダンテの魔導書に触れさえすれば、『魔王の御前』等の重力魔法も使えるようになる。
 ただし、錬成魔法は魔法をコピーしている訳ではなく、属性の再現なので。
 模倣魔法はコピーした技しか使えないが、錬成魔法なら、自分オリジナルの技を作ることが出来る…という利点がある。
 …なお、これはサタナキアの『解析』能力が進化したら話は別なので、重力魔法もいつかは…?

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