錬成の悪魔 作:お父様
1位.ゼノン 2位.ネロ 3位.ルチフェロ
ifのユノいいよね…
それじゃあ、お待ちかねの無茶苦茶魔法の時間です。
錬成魔法とは本来、対象を他物質に変換するだけの魔法。
シンプル。故に奥が深く強力で、長い年月を生きると共に、蓄えられる悪魔の知恵と組み合わさることで、無限の成長性を持つ魔法。
だがあくまでも、それは相手の魔法すら変えられる力…言い方を気にせず評価を下せば、所詮は『それだけ』でしかない。
言葉にした現象を具現化する言霊魔法、そして言わずもがな、生物であるなら決して抗えず、逃げられない重力や空間、そして時間といった高次元の魔法には劣る。
だが、サタナキアが古代…冥府の頂点に立てた理由。
それこそが。
――彼が到達した、
「錬成羅針盤魔法」
火・水・風・地。
魔法を構成する基本的な
硝子や鋼。宝石等の魔法も全て、この四元素が絶妙な配合で組み合わさることで、一つの魔法属性として成り立っている。
一人につき、基本は一つ。
――だが、目の前でうねるこの魔法たちは。
――浮遊する無数の羅針盤、その上で旋回を続ける、光の魔法は。
ヤーゴスは、目の前の光景がせめて。
幻覚魔法が見せる偽物であって欲しいと、そう切実に思う。
何故なら、目の前で展開されている魔法の――
(複数の属性魔法を同時に…!?こんな無茶苦茶な事が…!しかも…!)
その属性は。
「錬成
――光魔法。
クローバーの、それこそ大陸全土を探しても、滅多に存在が確認されていない希少な魔法属性。
歴史上で確認された数ならば、『闇魔法』よりも数が少なく、データが少ない。
だが光。その凄まじさは魔法の世界に足を踏み入れた者なら、初級の魔導士でも理解出来る。
最速にして、最大の威力。
早く、速く、疾い――
魔法の発動、詠唱の一瞬すら、戦場では命取りになるこの世界で。
単純明快な、速度という強さは――
「一応言っておく。少しでも動けば、羅針盤を止め、光の矢がお前に向かうぞ」
今も尚、絶えず速度を増し続けている光魔法の攻撃。
それを羅針盤の力で、無理やりその場に留めることで、いつでも発射できるように備えているのだろう…その予想は、当たっていた。
まるで当たり前のように、「もしかしたら足が飛ぶかも」と付け加えた、その姿からは、ただただ悍ましさしか感じない。
戦士としての警告。それとは違う。
まるで、遊びの延長線で、蟲の身体を千切って笑う。――そんな、無邪気故の恐怖。
ヤーゴスの顔に、冷たい汗が流れた。
「お前たち、降参するなら今のうちだぞ」
――こいつは、魔法騎士団団長よりも。
ヤーゴスは、目の前に立っている得体の知れないモノ…もはや人間とは思えない、人の形をした何か。
それが、ただ使命と共に力を振るう、クローバー王国の守護者とは違う、『異質』であると見抜く。
太陽光を反射する、純白の長髪と、身を包む真っ黒なワンピース。
恐怖心など覚える筈のない、造形の整ったそれらの情報すら、今のヤーゴスからすれば、正体不明の恐れという名の、焚き火に薪をくべる要素でしかない。
そんな、化け物の呑気な言葉を聞く。
「私は種ぞ…こほん。出身柄
「………」
「こっちも手加減は疲れるし、大変だし。素直に私の言う事を聞いてくれ。お前たちだって、痛いのは嫌だろう?」
――冗談じゃない。
震える身体を、怒りで必死に押し留めながら、ヤーゴスは不敵に笑う。
「…エッエッエッ。まさかクローバーに、こんな隠し玉が居たとはのう」
「…?」
役に立たない密偵め――
どうしようもない、行き場のない恨みを込めながら、ヤーゴスは内心でそう愚痴る。
しかし、たとえ得体の知れない化け物が相手だろうと、自分は誉ある、ダイヤモンドの"八輝将"の一人なのだ。
既に、服の内側に忍ばせた通信装置から、異常事態が発生したことは、既に伝えている。
後は、援軍が来るのを待つだけ…
しかし一方で。
少女はヤーゴスの言葉に、疑問符を浮かべ、こてんと首を傾げながら。
「…?降参するのか?しないのか?しないなら痛い目に合わせるぞ」
「何、もう少――」
話に付き合ってもいいだろう。
――その言葉は、最後まで続くことはなかった。
「し…?」
ザッ――
鈍い、何かが貫かれたような、痛々しい音が一つだけ、辺りに響く。
その直後、ヤーゴスの神経を刺激する、凄まじい痛みの奔流。
――その発生場所は、右足。
右足の、太股を貫く光の矢。それによって、ヤーゴスの言葉は止まる。
「あ、ガっ…!?」
「?言っただろう――」
――痛い目に合わせると。
少女の赤い瞳。その中央に確かに見えた、真っ黒な光。
(こ、こいつは不味い…!一番不味い!一番厄介な…!)
――重要なところで食い違う、一番相手にしてはいけない狂人…!
ヤーゴスは、痛みすら忘れる程の――戦慄と逃走本能に身を任せ、全力の魔法を展開した。
己の周りにいる、今も尚動けていない、情けない部下など既に、頭の中から消えていた。
自分の命。そして身体を第一に。
ヤーゴスは味方を一切守ることなく、自分の身を守る為だけの魔法を使う。
「ッ――粘液創成魔法ッ!」
再び、ミュカスネイルを再展開し、ヤーゴスは守りの為の壁を作ろうとする。
相手の
今まで、これを防げた者など、一人もいない。
撃たれた右足から中心に、円形に広がる粘液が、ヤーゴスの身体全体を――
「"乾け"」
だが、それをサナ――サタナキアの言霊魔法が許さない。
赤く、黒く、グロテスクにひび割れた口元。
そこから紡がれる、魔力を込めた言葉が、少女の望む光景を、現実に投影する。
ヤーゴスの身を守る筈だった、粘液の盾は充分に形成されるよりも先に、言霊魔法が引き起こす現象。
その強制力に負け、あっという間に動きを止め、粘液は跡形もなく消えてしまう。
「は?な、っ…!?」
「言霊魔法だ。もしかして、
先ほどまで視認できた、羅針盤魔法や光魔法とも違う、全く別の魔法。
ヤーゴスはその、三つ目の魔法属性という、ありえない現象に震えるしかない。
魔法学会の、それこそ人類の歴史に刻まれるであろう、特異な光景。
思わず、ヤーゴスは聞いた。
「貴様…もしや
魔法の根源である魔力、そして魔力を構成する
あまりにも前例がなく、ダイヤモンドの魔法学会で幾度も議論が交わされ、そして結局進展がないまま終わる…それが、混血児の魔法属性問題であった。
既に滅びたとされているエルフ。未だその存在を確認できていないドワーフ。
それらの歴史的文献を漁り、歴史書の細かな修正と、新規情報の追加をしていくだけの、退屈な時間。
ヤーゴスも何度か、魔法学会の様子を見たことはあるが、どれも興味を唆られず、自然と頭から抜け落ちていた。
――だが、今目の前にいるのは、もしかしたら…
そうだ、それしかありえない。
驚愕。しかし同時に、ある種の納得と共に、ヤーゴスは震える声でそう問うた。
しかし。
「…?いや違うが?」
――そう、違う。
確かに世界中を探せば、もしかしたら、二つの魔法属性に目覚めた、混血の魔導士がいるのかもしれない。
ヤーゴスの考察も、決して間違いではないし、決して近くはないが、遠くもない結論なのだ。
少女は、混血児などよりも、更に希少で類を見ない。
この世界で唯一の、かつての王であり、最古の――
「"来い"」
再び、言霊魔法によって引き起こされる現象。
その対象は、ヤーゴスの背中に向けられていた。――ダイヤモンドの残兵。
少女――元魔王、サタナキアの興味がヤーゴスに向けられている隙に、彼らはみっともなく、上司を見捨てて逃げようとしていた。
十数名という、魔力の質も量もバラバラで、魔法の対象にするのにも一苦労な筈の、同時転移。
それを難なく行えるのも、彼が悪魔という、理外の存在であるが故。
――しかし。
ダイヤモンドの兵士も、そして"八輝将"たるヤーゴスも、サタナキアからすれば、興味の対象ではない。
唯一の好奇。それは自分に、人間の可能性を見せた――
「さて、殺しはユリウスから禁じられているからな…」
羅針盤魔法を解除し。
サタナキアは、今自分が頭に思い浮かべた少女の、既に『解析』を終わらせた魔法を発動する。
「錬成鋼魔法…"
サタナキアの背後に降り立つ、三面の鋼。
傷や汚れが一つもない、まるで鏡のようなそれが、サタナキアの麗しい容姿を、二方面から映し出す。
そして、発動するもう一つの魔法は。
それにより――
「錬成
――サタナキアは増える。
「"
次の瞬間。
ヤーゴスの目の前に映る。視界全てを埋め尽くす、光魔法の反応。
後ろに立っていた、ヤーゴス以外のダイヤモンドの残兵は、既に意気消沈し、恐怖で震えることすらできない。
三人のサタナキアは、それぞれ順に。
欠伸を噛み殺し、腕を伸ばしてリラックスし、首を傾げて。
「死にたくなければ動くなよ」
「加減は難しいんだ」
「元居た場所に帰してやる」
錬成魔光魔法。
錬成光魔法。
錬成真光魔法。
「…………」
言葉が出ない光景。
凝縮された光。それが放たれる寸前に、ヤーゴスは何とか、喉から声を絞って出す。
「――この化け物め」
その瞬間。
ヤーゴスたちの身体に、凄まじい突風が叩きつけられた。
三位一体で放った、光魔法の砲撃。
それが僅かに、狙いを下にズラしたことで、ヤーゴスを含む、ダイヤモンドの魔導士全てに、衝撃波のみを与えた。
直接的なダメージはないものの、常人なら、吹き飛ばされる際の空気抵抗や、着弾時の砂利によって、決して軽くない傷を負うことだろう。
だが、サタナキアは彼らなら大丈夫だと、そう確信を持ったからこそ、遠慮なく衝撃を与えた。
彼らは決して、弱くはない。
僅かに傷は負ってはいる。しかしあの程度なら、簡単な魔力操作による、身体能力向上と、防御力の上昇で、上手く凌げるだろう。
だが……
「……あ」
サタナキアは、しまったという顔をして。
「…あいつらの名前、聞くの忘れてた」
そもそも、自分も相手に名乗っていない。
相手側の事情を、論理的に知るのではなく、ただ悪魔としての本能、直感で悪意を感知し、甚振ってしまった。
これでは、いくら相手が悪人だからとはいえ、悪意を感知できない人間には、到底納得できない話だろう。
サタナキアは、僅かに落ち込みながら。
「…ユリウスになんて説明しようか」
最初の頃とは違い。
あっという間に、現世に適応…もしくは人間らしくなってしまったサタナキア。
彼女は初めて、今『ホウレンソウ』とやらの重要性を、身をもって学習したのだった。
錬成魔法の再現条件
錬成魔法は本来、物質を別物質に変えるだけだが、サタナキアは属性の元となっている四属性の魔、それの配合を"錬成"で変えることで、擬似的に魔法を"再現"している。
サタナキアが他者の属性を使うには、対象の魔法を『分解』し、魔の比率を『解析』しないといけないため、重力魔法のように、そもそも『錬成』自体ができないものは『解析』ができず、再現できない。
光魔法の解析情報はどこで手にしたって?
…こっそり城に侵入し、どこぞの王様から魔力を拝借して解析…そして光魔法を使えるようになる必要があったんですねぇ(RTA並感)。
模倣魔法との違い。
錬成は再現、模倣はコピーという違い。
錬成魔法では重力魔法を再現できないが、極論魔導書に触れただけで、その人間の魔法をコピーできる模倣魔法なら、ダンテの魔導書に触れさえすれば、『魔王の御前』等の重力魔法も使えるようになる。
ただし、錬成魔法は魔法をコピーしている訳ではなく、属性の再現なので。
模倣魔法はコピーした技しか使えないが、錬成魔法なら、自分オリジナルの技を作ることが出来る…という利点がある。
…なお、これはサタナキアの『解析』能力が進化したら話は別なので、重力魔法もいつかは…?
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