錬成の悪魔   作:お父様

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 ブラクロ二次もっと増えてもいいんですよ?
 マジで感想1つ付くだけでめちゃくちゃ救われる。


ページ2.契約

 その存在を知る者は、クローバー王国の中でも極僅かしかいない。

 こことは違う世界に生まれ、そして膨大な力を持って生まれる生物。

 人間を弄ぶことを至上の悦楽とし、ただひたすら悪意をばら撒き、皮肉にも魔法に愛された存在。

 それが――

 

(おばあ様が昔教えてくれた…間違いない、あれは悪魔…!)

 

 朧気に霞むかつての記憶。

 魔と栄光で彩られた温室の中、優しい陽の光の下で、アシエ・シルヴァがかつて耳にしたその話。

 はるか古代に生まれた魔神と、そして初代魔法帝の栄光と伝承。

 その中で唯一、幼子故の恐怖を感じた――

 

「皆、早く…!今のうちに――」

 

 魔導書を授かって3ヶ月。

 王族故の充実した教育と鍛錬、そして何よりアシエ自身の弛まぬ努力と才能によって、齢15でありながら並の魔導士にも負けない実力を手にした。

 壁はあった、だから今までに、何度もそれを超えてきた。

 だというのに、目の前の怪物という名の壁は――

 

「錬成創成魔法・虚魔の花」

 

 アシエの言葉を遮り、サタナキアの一言がその場を支配する。

 魔力の起こり、魔法の予備動作すら存在しない超絶技巧のその一連の流れ。

 咄嗟に武器を構えた時には遅く、アシエを含む全ての魔導士たちは、濃密な魔力の壁そのものに閉じ込められた。

 

「……っ…!」

 

 ――次元が、レベルが違いすぎる。

 サタナキアが今行ったのは、最初にアシエの魔法を分解した時に見せた、魔そのものへの還元。

 しかし、魔そのものに還ったとはいえサタナキアの魔法を受けたことに変わりはなく、本来大気に漂い飽和するはずの魔の支配権を解かず、こうして見えない壁として再利用。

 魔導士の中でも限りある者しか行えない魔そのものの干渉、魔法という媒体のみでそれを行い、並の封印魔法を鼻で笑う超高性能の結界を作って見せたのだ。

 そして、何よりも恐ろしいのは――

 

(この悪魔…魔導書(グリモワール)を持っていない…それなのにこんなハイレベルな魔法を…!)

 

 人間は本来簡易的な魔法を除く、創成や攻撃といった高度な魔法の発動、そして魔力そのものを高めるために魔導書を必要とする。

 それが与えられるのは、齢15。

 アシエ自身も例外ではなく、3ヶ月前に魔導書を授かるまでは、サタナキアに最初放ったのと同じような、攻撃用の創成魔法は使えなかった。

 

 悪魔は例外ということか――

 

 生物としての格の違い。アシエはそれに悔しさを覚える。

 

「受肉は問題なし…冥府の門も、()()()()()()()もないが…枷としては丁度いい」

 

 その背に生える翼が、力強く躍動する。

 たったそれだけで、結界内に鳥肌が止まらない程の恐ろしい魔力が渦巻く。

 サタナキアは動かない、ただ静かに目前の少女を見つめ、そしてその動きを待っている。

 

「舐めるんじゃ…」

 

 悪魔の魔が渦巻く、魔力もロクに練れない空間だというのに。

 

「――ないわよ!」

「…!」

 

 アシエの右手に形成された鋼鉄の槍、そして同時に飛ぶように走り出して突き付けられる。

 まずは右頬、しかしガチン…と鈍い音を立てて、跡すら残さずに弾かれる。

 サタナキアは、何もしない。

 何もせず、突っ立ったまま視線を動かし。

 

「次は?」

「……っ!」

 

 言葉ではなく、行動でアシエは答えた。

 次は右腕、肩から裂く勢いで槍先を突き立て、両腕で思いっきり振り下ろす。

 傷すら付かず、サタナキアは再び首を傾げて。

 

「次は…?」

 

 心臓を穿つため、無防備な胸へ一突き。

 そして、弾かれる。

 

「……っ」

「次」

 

 傷跡は無い。

 再び距離を離してから今度は足。

 それも、一切の傷を与えることはなく。

 

「…………はあああああっ!!」

「次――」

 

 アシエ・シルヴァは天才だ。

 そもそもの話、いくら制限された状態であるとはいえ、悪魔の魔で溢れる空間下で、しかも齢15の人間の子供が魔法を使えているということが異常事態なのだ。

 しかも相手は、はるか古代のその古代…既に代替わりしたとはいえ、かつては冥府の最深に一度、その身を置いた実績もある。

 決して誰も悪くない、ただ理不尽が平等に、不平等な現実がどうしようも無い力の差を持ってきただけ。

 ただ、生き物としての覆せない差異があるだけだ。

 

「何故、お前たちは諦めない?」

 

 サタナキアは問う。

 精神が、心が摩耗しそうな程の長い年月。

 ずっと向こうを見てきた、誰よりもその価値を理解し、そして意味を未だに理解出来ていないからこそ、サタナキアは必要以上に相手を害さない。

 ただ知りたいだけなのだ、人間が何を思い、そして背負って自分の前に立てるのか。

 その、心の意味を知りたかった。

 

「そんなの…決まってるでしょう…!」

 

 慣れない環境下で魔法を使った反動だろう、最初にあった膨大な魔力は既に枯渇し、今にも消えようとしている。

 だがそれと反比例するように、アシエの表情はより、美しく気高いものへと変わっていった。

 

「私が王族でも…選ばれた者としての自尊心を守るためでも無い…私は、私だからよ…!」

 

 最後の足掻き。

 アシエが全魔力を消費し、右手に再び鋼鉄の槍を作るのを見たサタナキアの評価はそれだった。

 文字通り槍に、全ての魔力を集中させて尚、それでもサタナキアの肉体を傷つけるには至らない。

 

「………」

 

 そして結局、その肌を傷つけることも出来ずに槍が突きつけられる。

 圧縮、凝縮された魔力であろうとも、元々の実力があまりにも離れすぎている、仕方ないことだ。

 これでは悪魔を倒せな――

 

()()…」

 

 自分自身のその言葉を、他ならぬサタナキア自身が否定する。

 サタナキアは知っていた。この、()()()()()()()()()()――

 

 

 

 

「マナ…」

 

 

 

 

 魔導士は本来の身体能力に加えて、肉体へ強化魔法を施すことで更に、俊敏に空間内を動けるようになる。

 その中でも更に上の技術、強化だけにとどまらず、常に一定の魔力放出を行い、同時に無駄な魔力の乱れを消し去り、鎧として…矛として輝く技術、それがマナスキン。

 ――そして、その更に上。

 

「ゾーン…!」

 

 マナスキンを超え、一帯の魔すら支配する極地、その片鱗。

 たった一瞬、槍に込められた魔力、そしてその最奥にカモフラージュとして隠し、放った奇襲の力。

 たった一瞬、しかし確かにその一撃は、サタナキアの魔力の壁を超えた。

 サタナキアの頬を抉り、軽い出血を引き起こし。

 たった数センチではあるが、悪魔の肉体に傷を作って見せたのだ。

 

「……嗚呼、そうか」

 

 瞬時に再生し、頬が元通りになる。

 全力の更に全力を引き出し、絞り尽くした少女。

 もはや指一本も動かせない疲労。そして敗北を前に、アシエは眠るように意識を失った。

 サタナキアは同時に、悪魔としての力を押さえ込み、最初に見せた人間形態に戻ると共に、その身体を支え、抱きかかえる。

 

「やはり面白いな、現世(ここ)は」

 

 そう呟くと共に、サタナキアの身体を炎が包み込む。

 近くにいるアシエは勿論、とっくの前から気絶していた魔法騎士団の人間たちにも、その炎が広がっていく。

 だが、彼らの肌、そしてその衣服に引火することはなく、サタナキアの作り出す炎は、勢いだけを増し、辺りを包み込む。

 

 サタナキアの錬成魔法は、人間と違ってその組織、構造のあらゆる全てを思いのままに変化させられる。

 

 悪魔憑きと呼ばれる人間は、本来自分の持つ魔法だけでなく、契約した悪魔の魔法を含め、合計二つの魔法を自在に扱えるとされている。

 では、サタナキアはどうか?

 彼は純粋な悪魔だが、召喚に答えた際の儀式魔法の痕跡。贄として拘束された魂の情報、そしてその存在と、先人の知恵によって、今のサタナキアの身体にはある、魔法が刻まれていた。

 錬成魔法はこの世界に存在する全ての物質を変異、書き換える無法の力。

 そしてこれは。

 

「魔炎魔法・魔耗の記憶」

 

 ()()()()()()()すら、()()()()()()()()()()魔法。

 それが、アシエとサタナキア以外の全てを飲み込み、目的のものを燃やし尽くした。

 

 

 

 


 

 

 

 

 王国の外には何があるのだろう。

 王族としての礼儀作法、魔法の教育を受けていた時、ふとそれを思った。

 同じ人間の中にある壁、王族と貴族、平民と下民…同じであるはずなのに、ただ生まれと魔力量の全てがそれらを区切る。

 見てみたかった、自分の目でありのままの世界を。

 あえて隠された王国の闇も、その中で輝く人間の優しさも。

 だからあの日、アシエ・シルヴァは身分を隠して平界にまで足を運んだのだ。

 ――そして、出会ってしまった。

 

「うっ……」

 

 酷く強い倦怠感、昔一度経験したことがある、魔力切れによるものだ。

 一体何が、それを考えるよりも先に、身体が勝手に動いた。

 

「っ…ここは…!?」

 

 咄嗟に立ち上がり、目の前に広がる空間にアシエはただ困惑するしかできなかった。

 先程自分が眠っていた場所、そこには簡素な作りではあるが確かにベッドがあり、家の中というのが言いようのない不信感をこれでもかと煽る。

 そもそも、自分はさっきまで――

 

「目が覚めたか」

 

 あの声がする。

 

「っ…あなたは…!」

「そう気を立てるな、殺すつもりなら、もう既にそうしている…だろう?」

 

 アシエの視線の先、先程までは何も無かった空間に、いつの間にかテーブルとイスの二つが置かれていた。

 そして同時に、そこに座って優雅に紅茶を飲んでいる白髪の少女…だが、その見た目に騙されはしない。

 

 サタナキア。

 

 現世に降臨し、自分を打ち負かした超常の存在。

 アシエは警戒心を強め、聞く。

 

「…なら、悪魔らしく契約でも持ちかける気?それなら殺さないことにも意味ができる」

「そうだ。なら話は早いな?他に聞きたいことはあるか?」

「…あの人たちは」

「魔法騎士団…か?あれらは既に、私たちに関する記憶だけを消した。心配しなくとも危害は加えていない。今日あったこと、それを知るのは私たち二人のみだ」

 

 現世に来て、サタナキアにはある目的ができた。

 以前から持っていた知識欲、そして真の意味で人間と関わり、触れて、その欲求は止められない。

 悪魔なのは変わりない、ただ意欲的でないだけで、サタナキアは自分の邪魔をする者が現れたら容赦なく相手を殺すだろう。

 これは、唯一の好奇――

 

「魔法騎士団、そう先程は聞いた」

 

 人間の強さとは意志、人間の価値とは心そのもの。

 だが個人だけでは弱く、脆く生きることなど、ましてや自分に傷を付けることなどできはしない。

 あの瞬間、あの一連の中で、誰も真の意味で心が砕けなかったのは、あのローブがあったからだろう。

 そう、サタナキアは推測する。

 

「あのローブ、魔法騎士団…それがお前たち人間を強くしていた、私はそれが知りたいのだ」

 

 サタナキアのその言葉を、アシエはただ静かに聞いていた。

 悪魔には悪意しかなく、そして同時に人間を弄ぶ悦楽もあり話は通じない。

 しかし利害の一致、契約は別だ、悪魔にとって契約は命綱であり生命線、この状況を打破するには――

 

「アシエ・シルヴァ、お前に契約を持ちかけよう」

「…内容は」

 

 最悪、ここで自分の命を散らす覚悟もある。

 死ぬのは勿論怖い、だがそれ以上に今のアシエにあるのは王族として、将来の魔法騎士団としての意地。

 サタナキアは静かに、覗き込むようにアシエの目を見つめ。

 

「私の望みは一つ、それは…」

「……それは?」

 

 アシエは、負けじと目を逸らすことなく、サタナキアを見つめ返し。

 そして。

 

「私も魔法騎士団に入るにはどうすればいい?」

「は?」

 

 これまでの短い人生の中で、一番の驚愕した声を漏らした。




 アシエ・シルヴァはどれだけ盛ってもいいんです
 属性不利でアネゴレオンに無敗、若かりしメギキュラコンビを出産後の弱ってた時期に撤退させたってマジ??
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