仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ 千年超越大戦 ツルギ×マイヤ 作:大ちゃんネオ
夜舞家の屋敷。
戦いから生還した戦士達が屋敷に上がり、広間に通されると同時に緊張の糸が切れたのか全員爆睡。
布団も枕もないが、深い深い眠りについた七人。
後程、真姫や女中達が起こさぬようにと注意しながら毛布はかけられた。
そうして、彼等が次に目を覚ましたのは昼過ぎであった。
風が吹き抜ける。
夜舞神社の石段の前から、いつもと変わらぬ日常を営む町を眺める燐の姿があった。
「こちらに、いらっしゃいましたか……」
「薫さん。おはよう、じゃなくて遅よう?」
燐のジョークに、薫は笑みを浮かべて返事をした。
「はい……。遅ようで、ございます……」
挨拶を返した薫は燐の隣に並び、同じように町を眺める。
穏やかな昼下がり。
人々は夜から明け方にかけて、恐ろしい戦いがあったことなど知る由もない。
だが、それでいい。
「……燐さんの目には、どう映っておられますか?」
「え?」
「千年前と、今……。二つを知るのは、燐さん含めたお三方だけですから」
「そうだね……」
町を見つめ、燐は薫の問いに対する言葉を探す。
そうして答えを探している間、薫は言葉を紡いでいた。
「小さな町です。この、広い世界からしたら……ほんの爪の先ほどの小さな町。ですが……良い場所であると、私は思っております……」
「うん」
「私は任務のため、全国あちこちへ行くようになりました……。東京のような都会を知り、憧れもあります……。ですが、私が帰る場所はここ……。ここなのです」
見つめる町。人々の営み。
薫が守る町。薫の母が、祖母が、先祖代々守り続けてきた土地。
外なる者である燐から見て、自分の町がどのように映るのか。薫はそれが知りたかった。
「……美羽さんも良い場所だって、言ってた」
「……」
「千年間も護り続けてきたんだ。これって、すごいことだよ。本当に。途中で投げ出さなかった……理由があるのは分かってるけどさ……」
燐の脳裏には封印を破り復活しようとしていたバケゲンブの姿が浮かんでいた。
美羽が、夜舞家がこの地を守護してきた理由。
この封印があるからというのは大きな理由だろう。
「それでも、どこかでこんな場所のことなんてもう知らない! なんてことも、あり得たかもしれない。だから今日まで、そしてまたこれからも護り続けていく。小さな町だとしても、それだけの大きな価値があると僕は思うよ」
僕も護れて良かった。
笑顔を薫に向けて、燐は答えた。
「ええ……。そう言っていただけると、私も嬉しいです。ご先祖様」
「ちょっ、それやめてよ。本当に違うんだから」
「ふふ……。私は燐さんがご先祖様でも一向に構いませんが」
「僕が構うんだって」
茶目っ気たっぷりに微笑む薫に燐はほとほと困ったと天を仰いだ。
誤解は解けたようだが、これからも何かと言われ続けてしまいそうだと後々のことを考えると憂鬱な気持ちにならざるを得ない。
「だから、これからはご先祖様じゃなくて……友達。友達ということで」
「友達……。男友達ということで、よろしいでしょうか」
「え、まあそりゃ、僕は男だし」
「ふふ……。私、あまりお友達が多くないもので。まして同性のお友達となりますと……」
「そうなんだ……ん? 同性?」
「はい」
「えっと、名字は違うよ?」
「そちらの同姓ではなく……。性別が同じということです」
「は? え? は?」
「私、男でございます」
その瞬間、燐の脳は活動を停止した。
この見た目で、実は、男?
自分と同じ性別?
視覚から得られる情報と聴覚から得られた情報がぶつかり合い、燐の脳はバグった。
バグったので、とりあえず、全てを受け入れることにした。
「ふふ、男友達……。良い響きでございます……」
「……あ、ああ……そうだね……」
「男の友情……。それでは友好の印としてピシガシグッグッなど……」
「なにそれ」
「ご存知ないですか……」
シュンとした表情を浮かべる薫。
しかし、すぐに切り替えて薫はニヤリと燐を見つめた。
「ではちょっと一緒に男子トイレへ行きましょう」
「え、なんで」
「男友達というのは事あるごとにトイレに集まり情報やブツの交換などを行うと聞きましたので!」
「男友達にどういうイメージ持ってるの!?」
キラキラとした目で興奮気味に語る薫に燐はつっこまざるを得なかった。
「違うのですか?」
「そんな頻繁にトイレに集まったりしないって」
「では男友達はどこに集まるのでしょう?」
「どこって……普通に教室とか」
「そんな大胆な……」
「大胆もなにも……」
何が、どうして、こうなったのか。
この目の前の深窓の令嬢と思っていた男子は、何かこう、色々と男子というものを間違えている。
燐は頭を抱え、やれやれと首を振った。
当の薫はというと、嬉しげに笑っていた。
「ふふ……。こうして、おしゃべり出来たことが何よりも嬉しく……」
「うん、そうだね」
「お別れは寂しいですが……。またいずれ、どこかで……」
「今度は戦いとか関係なく会えるといいね」
「はい……。ですが、もし……お力が必要な時は微力ながら、お手伝いさせていただきます……」
「ははっ、その時はよろしく。こっちも、何かあったら駆けつけるよ」
そう言って燐は拳を薫へと突き出す。が、薫は意味が分からず首を傾げた。
「ぐーたっち」
「ぐーたっち……はっ」
燐に言われてようやく気付いた薫は恥ずかしげに燐の顔を見上げながら、軽く燐の拳に小さな自分の拳をコツンと合わせた。
「男友達っぽいです……!」
「そんな嬉しい……?」
たしかな友情を築いた二人。
燐達は自分の世界へと、薫は屋敷へと帰っていくのであった。
無数に広がるスイーツの荒野に立っているかのようだった。
「美玲……。本当にそれ全部食べるのかい……?」
「ん、食べきれなかったらよろしく」
「うっ……見てるだけで腹がもたれそうなのに……」
ドーナツを頬張る美玲先輩。
マシュマロ、ケーキ、シュークリーム、アイスクリーム、エトセトラエトセトラ……。
若い女性客が多い。ここは聖山駅直結の商業ビル内のスイーツバイキングの店。
「いやー射澄さんゴチになりま~す」
「君の分は持たないよ」
「えーケチぃ! 先輩なんですから後輩に奢るぐらいいいじゃないですかー! ねえ、燐くん!」
「あ、僕は自分で払うんで」
「先輩に頼りきりにならない。良い後輩だねぇ」
「うぅ……裏切り者~!」
美也さんが裏切り者呼ばわりしてくるが仕方ないだろう。
あまり甘えるわけにはいかない。
ただでさえ甘いものが溢れるこの空間で、まだ何も口にしていないのに胃もたれを起こしかけている射澄さんに迷惑をかけるのは忍びない。
「来たのに何も食べないのは流石に損だね……。コーヒーゼリーでも食べよう……」
「あ! じゃあわんこコーヒーゼリーとかどうですー?」
「何が"じゃあ"なんだい……?」
射澄さんと美也さんが席を立つ。
残った僕と美玲先輩の間に会話はない。
というか、あっちの世界から帰ってきてから美玲先輩との関係は若干ギクシャクしている……。
だから二人になると、気まずい。
美玲先輩は何も気にせずパクパクしてるようだけど……。
「……あの、美玲先輩……」
「……」
へ、返事がない……。
うう……沈黙が辛い……。
「……ふう、ちょっと休憩」
美玲先輩のスイーツ爆食い第一波は終わったらしい。
今なら話してくれるだろうか……?
「燐」
話しかけようとしたら、美玲先輩の方から声をかけてきたのでちょっとビックリ。それと安堵。
怒ってる時の声ではなかったからだ。
「は、はい」
「流石に取って来すぎたから、手伝って」
「て、手伝っ……」
「はい、あーん」
フォークでショートケーキが運ばれてくる。
ちょっと、一片が大きすぎる気もするけど精一杯口を開けば……。
「あ、あむ……」
「美味しい?」
「美味しいです」
「よし。はい、あーん」
「え、あ、あーん……」
「ふふっ……」
「射澄さん見てください。イチャついてますよ」
「あれはイチャついているというより、餌付けしているように見えるよ……」
「私達別の席に行きます?」
「ま、そうしてあげるか……」
ケーキを咀嚼していると、美玲先輩のフォークには既に次弾装填されている。
このまま永遠に食べさせられ続けるんじゃないかと思ってしまった。
『大変ですねー燐くん』
僕の右隣の窓硝子に、キョウカさんが映っていた。
優雅に紅茶を楽しんでいる。
「キョ……アリス……」
「なに、邪魔しに来たの」
『いえ、私もスイーツを食べに来ただけです~』
「他の席に行けば」
『えーここ眺めがいいんですよー。燐くんのお顔が一望出来る特・等・席☆』
「ふざけないで」
『ふざけてませんが?』
一触即発。
このままではまずい。なにより、端から見ると美玲先輩が鏡と話してるやべー人みたいになってしまう……!
「そ、そういえばさアリス。あの戦いの時、しばらく姿が見えなかったけどどこ行ってたの?」
『え? あ、あー……あの時は少しお話をー』
「話? 誰とよ」
『それはそのー……』
どこかの海辺に佇む寂れた洋館。
朽ちゆく屋敷の中で死奏剣の一人、アロンダイトはまだ静かにグラスを傾けていた。
だが、突然グラスから茨がアロンダイトの顔面目掛けて突出。涼しい顔で茨を回避したアロンダイトは、グラスに向けて言葉を発した。
「随分な挨拶じゃねえか」
『そんなことはありませんよ。あなた方のせいで私達は迷惑してるんですから、これぐらいされても何も言えないんじゃないですかねー』
グラスに映るアリスはアロンダイトに笑顔を向けていたが、決して好意は向けていなかった。
そこにあったのは、敵意。
「はっ、小娘が。酒が呑める歳になってから出直しな」
『まあ怖い。女性を女性として扱えない粗暴な魔人さんなんですね~』
「悪いな紳士じゃなくて。それで、何の用だ」
『私達の世界から手を引いてくれません?』
「断る」
即答であった。
「数多の世界に喧嘩を売った魔人教団が嬢ちゃんのお願いなんかで手を引くとでも思ったか? お前さんらの世界、確かに他の世界に比べりゃライダーの数が多くてなかなか抵抗してくれちゃいるが、そんな余裕ぶった面、いつまでしてられるかな」
『ふふ~ん? 今回の計画、失敗しといてよくそんなこと言えますね~。負け犬がキャンキャン鳴いてるようでみっともないです』
「なんだと?」
『ま、とにかく魔人教団の首魁にはこう伝えなさいな。鏡はどの世界にもある、と。ふふふ、あはは!』
アロンダイトを嘲笑する笑い声が屋敷中の鏡というか鏡から響き渡る。手にしていたグラスを握り潰したアロンダイトは酒瓶を払いのけ、アリスの笑いを咆哮でかき消した。
「小娘が! 魔人教団を侮ればどうなるか、思い知らせてやる……!」
憎悪の炎が滾る。
怒れるその瞳は、必ずや奴の世界を征服すると誓いを立てる。
仮面ライダーを打ち倒すと闘志が叫ぶ。
次なる魔人が牙を剥く時は、そう遠くない────。
『ま、なんてことない雑談をしてきただけですよ~』
「なんか余計なことしてない? 大丈夫?」
「いや、絶対したでしょう」
美玲先輩と共にキョウカさんに疑いの眼差しを向ける。
すると突然、店内で大声が響いた。
とても、聞き覚えのある。
「あ! いたー!」
「この声は……」
「バ ト ル !」
銀髪を靡かせ、僕らのテーブルに駆け寄ってきたバトルジャンキーに僕達は辟易としていた。
「さあさあバトルの時間だよ! 戦いの時だよ!」
「だから戦いませんて」
「なんで! ライダーなんだから戦わないと! アリスも戦えって言ってたよね!」
『いや、今は休止中なのでライダーバトルはNGです!』
「いやだバトル! モンスターとかメタなんとかの相手はやっぱりつまんないって! やっぱりヤるならライダーとだよ!」
「どんだけ戦いたいのよ……」
「ああもう……。この人だけ千年前に置いてくればよかった……」
きっと、この人は生まれる時代を間違えてしまったのだろう。
戦国時代あたりに生まれていれば、歴史に名を遺す女武将になっていたかもしれない。
「ほら! 甘いものも良いけど私と戦うのも良いよ~!」
「ちょっ! 引っ張らないでくださいよ!」
「なに燐を連れて行こうとしてるの!」
「いだだだだ!? 美玲先輩も腕引っ張らないで!」
身体が裂けてしまう!
ああもう!
なんでこんな目にあうんだよ!!!
夜舞家が所有する山の中。一見すると普通の山だが、御伽装士が修行するための道具や仕掛けなどが山ほど存在している。
そんな中、開けた場所では薫が勝人に稽古をつけている真っ最中。咲希、真姫、樹羅の三人はその様子を眺めていたのだが……。
「えいっ! やあっ!」
「……勝人。今は棒術の稽古中ですが」
「おれ、ツルギ様みたいに剣がいい!!!」
木製の棒を、剣のように振り回す勝人。
そんな勝人の言葉と行動に薫はショックを受けていた。
「うう……。私ではなく燐さんを"りすぺくと"して……」
「か、薫……大丈夫だよ! えーと、薫もかっこいいし可愛いよ!」
「うう……」
「それにほら、男の子は剣好きだから!」
「そうそう。だから落ち込むなって薫。そのうち棒の良さも分かるようになるって」
咲希と樹羅が薫を励まし、元気づけていた。
そして、真姫は勝人を叱りつけていた。
「こら勝人! エンラには剣なんてないんだ。真面目に棒の稽古を受けろ!」
「えー! じゃあ剣を増やしてよ!」
「御伽装士用の武器を作れる人間は現代にはいない!」
「じゃあししょー! あの剣貸してよ! 二本あるし一本貸して!」
「む、それはなりません」
落ち込んでいた薫であったが、剣……鏡界の龍刃を貸してという勝人には毅然とした態度で接した。
「あれは美羽様が燐さんを想い打った刀です。おいそれと使うことは許しません」
「ちぇー」
「そういえば、その刀は結局どうしたの?」
「夜舞神社に奉納いたしました。あれは、夫婦剣でしょうから」
夫婦剣?と聞き慣れない言葉に咲希が首を傾げると薫が説明を始めた。
雌雄剣とも呼ばれ、正確には刀剣にそのような部類のものは存在はしないのだが長い方を雄、短い方を雌とする一対の剣。
また、太刀を装備したマイヤがツルギの力を得て、小太刀を手にしたツルギにマイヤの力が備わったことから美羽は鏡界の龍刃にそのような意味を持たせたのではないか。
ゆえに、夫婦剣と薫は呼んだ。
「ロマンチック~!」
「いや、重くないか?」
「どういうことー?」
咲希、樹羅、勝人は三者三様の反応を見せ、薫は微笑んだ。
「それに、これで剣義様の剣が奉納された……。ある意味、伝承の通りになりました」
「あーたしかに!」
「さて、雑談は終わりにして、稽古しますよ」
「はーい」
「樹羅もだぞ。私がサポートしてやる」
「うへぇ、真姫姐さん厳しいからなぁ」
「私はいつも通り見学してま~す」
いつもの日常に回帰していく。
紡がれた千年の先にいる薫は、次なる時代に繋がる新たな戦士を育てている。
こうして、時代は繋がり続けていく────。
『本当にいるのか? 化神を蘇らせる化神が?』
丑三つ時。二体の化神が闇夜に身を潜めながら、かつてバケゲンブとの戦いが行われ更地と化した土地に足を踏み入れていた。
カタツムリを思わせる姿の化神バケマイマイが化神バケリスに怪訝そうに声をかける。
『ああ。最近そいつの封印を解こうとしてる奴がいるんだ。んで、頼まれたんだよ。バケゲンブ様とバケマムシの残滓を集めろって』
『なんだよ残滓って』
『知らねえけどよ。なんでも、こいつ持ってバケゲンブ様が討たれた場所にいれば勝手に集まってくるってよ』
そう言って、バケリスは渡されたという種子のようなものをバケマイマイに見せた。
『なんだこりゃ? こんなんで本当に集まるのか?』
『分かんねぇって。でもよ、もし本当だったらバケゲンブ様復活! 今度こそ御伽装士も人間も殺し尽くせる! 俺達化神の極楽浄土が出来る!』
『おお、そりゃいいな! バケゲンブ様達を復活させよう!』
二体の化神が息巻く。
その時であった。
「それ、違法です……」
夜闇に紛れ、黒衣で身体を覆った何者かが化神達の前に立っていた。
声から察するに、その者は少女のようであった。
『な、なんだお前は!?』
「なんだお前は、ですか……」
俯き気味だった少女の顔が上げられると、黒衣の奥に潜む銀月のような双眸が化神の姿を真っ直ぐ捉え、黒衣の上から黒いベルトを巻き付けていた。
《ボディ 蜘蛛男》
少女は折本に細筆で文字を書き込んでいた。
蜘蛛男とおどろおどろしい声が響くと、黒衣は消えて少女の姿が露となる。
銀の瞳にかかる銀の長髪。陶磁器のような白い肌。目鼻立ちがはっきりとした顔立ち。
黒衣に隠されていた存外女性らしい肢体を際立たせるような肌に密着した黒と橙のスーツ。
化神達は存ぜぬことであるが、このスーツはとある世界で人々を恐怖に陥れた蜘蛛男の力を宿したものである。
《アーマー アナザーアギト》
再び、折本から戦士の名が告げられる。
少女は折本を両手で閉じ、瞳も閉ざした。
その様は、墓前に手を合わせるよう。
そして、その言葉を口にする────。
「変身……」
折本をバックルに装填。
装填された折本は屏風のように開き、書き込まれた蜘蛛男、アナザーアギトの文字が浮かび上がる。
《蜘蛛男×アナザーアギト》
《始まりの死 魂の遺志 怪奇強襲!》
《仮面ライダーハカイブ アサルトゴシック》
緑色のオーラが少女の姿を揺らがせる。
少女の背後には蜘蛛の巣が現れ、少女を包み込むと……暗緑の戦士が誕生した。
暗緑のアーマー。右腕のみ明るい緑となっている。
背には風に流れる羽根のような橙のマフラー。
赤い複眼状の瞳。額には黄金の翼のような角が備わり、中央には長円のクリスタルが嵌め込まれていた。クリスタルを囲むように蜘蛛の八つの瞳が怪しく、赤く、化神達を睨み付けている。
『御伽装士なのか!?』
『構わねえ! やっちまえ!』
バケマイマイとバケリスが戦士、仮面ライダーハカイブへと襲いかかる。
躍動する化神。それに対し、ハカイブは堂々と鎮座するかのように構えていた。
「すぅぅぅ……」
息を吐くハカイブに、バケマイマイのカタツムリの身体に似た右腕が襲いかかる。
ハカイブは上体を軽く逸らすだけでこれを回避し、バケマイマイの鳩尾に拳を一撃。
これだけで、バケマイマイは吹き飛んでいった。
『バケマイマイ!? おのれぇ!!!』
「あっ、仲間意識とかあるんですね」
『馬鹿にするな!』
バケリスの打撃をバックステップで軽々と躱し続けるハカイブ。避けるだけでは当然終わらない。
勢いよく迫るバケリスの足を引っ掛ける。前傾姿勢で向かってきていたバケリスは当然転倒。
倒れたバケリスの背をハカイブは踏みつけると同時に、バックルから折本、キセキレジスターと筆を取り出すと何かを悩み始めた。
「うーん……何にしようか……」
『この野郎ふざけやがって!』
「あ、そうだ……。仮面ライダー……シ、グ、ル、ド……」
キセキレジスターに書き込み終えると再びバックルに装填。
《ウェポン シグルドウォール》
キセキレジスターがアナウンスすると、ハカイブの目の前に分かたれた巨大な岩壁が現れる。
『な、なんだこりゃ!?』
「よっと……」
踏みつけていたバケリスを蹴り飛ばすハカイブ。
バケリスは岩壁……シグルドウォールへと向かっていく。
『な、なんだ!? 壁が!? 壁が吸い込んでき……!』
蹴り飛ばされたことだけでなく、シグルドウォールがバケリスを壁の裂け目へと誘う。
即座にバケリスは、まずいと察した。
逃れなければ、逃れなければ。
しかし、シグルドウォールはバケリスを逃がさない。
『やめろぉぉぉぉ!!!!!』
裂け目に吸い込まれるバケリス。
バケリスを飲み込んだ岩壁は、その裂け目を勢いよく閉ざした。
ボンッ!と爆発の音がして、岩壁の隙間から黒煙が染み出る。
『バケリス……うわぁぁぁぁ!!!!!!』
バケリスの死に目を見たバケマイマイは恐れをなして逃げ出した。
それをみすみすと逃すハカイブではない。
虚空を回し蹴り。すると、足先から小さな白い塊が放たれる。
塊はバケマイマイの背に命中すると一瞬で蜘蛛の巣状に開き、バケマイマイを拘束。
踠けば踠くほど糸は絡まり、バケマイマイを捕えて離さない。
『なんなんだよ……! なんなんだよお前はぁ!?!?』
バケマイマイの踠く姿を見つめながら、ハカイブはバックルのキセキレジスターを操作。
一度閉ざしたキセキレジスターを勢いよく開放。
キセキレジスターから死刑宣告が流れる。
《怪奇強襲! 怪奇強襲!》
《アサルトゴシックブレイク!》
「すぅぅぅ……」
拳を握り締め、構えを取るハカイブのクラッシャーが現れる。鋭い牙が並ぶ口の側面には、蜘蛛の牙も生えていた。
足下には蜘蛛と羽根を合わせたような紋章が現れハカイブの脚へ収束。
地面を蹴り、飛び立つハカイブ。
マフラーが空中での姿勢制御を担い、必殺の右足を突き出し加速。
バケマイマイの背を穿つは仮面ライダーハカイブ アサルトゴシックの必殺技。
アサルトゴシックキック。
キック直撃の反動で宙返りし、ハカイブはバケマイマイを横目に着地。
吹き飛ばされたバケマイマイが倒れ、爆発すると同時に爆炎へと背を向けた。
「私は、仮面ライダーハカイブ。あなた達の墓標です……」
そう呟くとハカイブは変身を解除。
黒衣の少女へと戻ると、少女は周囲に人目がないことを確認すると頭に被るローブを下ろし、顔を出した。
「にへへ……先行登場、きまった……! 儚に惚れる読者爆釣れ間違いなし……!」
いい笑顔で良くないことを言う少女の名は儚。
しばらく勝利とこれからの人気に浸り、ニヤニヤと怪しく笑っていたが自分の役目を思い出し、職務に戻った。
「倒されたのに居残り続ける魂の回収……めんどくさい……」
仕事の愚痴を吐きながらも職務には忠実。
キセキレジスターを開き地面に向けると、黒い魂が吸い込まれていった。
「あ、結構容量ある……。まあ、あとはあっちの仕事だし……。帰ろ……」
仕事を終え、儚は立ち去る。
にやけた笑いを浮かべながら。
先行登場が上手くいったと。
「にへへ……」
ちなみに、これは先行登場ではない。
「えっ」
「そう、本当の先行登場は────」
《ボディ 蜂女》
《アーマー 仮面ライダーカイザ》
《蜂女×仮面ライダーカイザ》
《蜜に毒を 罪に罰を 怪異呪縛!》
《仮面ライダーグレモリー ストレンジカース》
逆光の中、戦士は立つ。
Χと蜂の触角を思わせる仮面。複眼は緑光が妖しく輝き、二本の黄色のラインが細身の青い身体を駆け巡る。
胸部のアーマーは蜂を思わせる黄と黒で彩られた同心円が二つ並び、ベルトからは黄色い腰布が垂れ下がっている。
背には薄く青い羽が生え、手には黄に輝く光の刃を持つサーベルが握られていた。
仮面ライダーグレモリー ストレンジカース。
ハカイブとグレモリー。
二人のライダーの登場が、物語に新たな色を添える────。
嘘予告!
「被告、夜舞薫は英霊の不正使用の罪に問われています」
「墓場の秘宝の鍵は……死んでるのに生きてる人間。条件に合致したのが御剣燐ってわけ」
「儚、裁判員に選ばれた……!」
「裁判員制度あるんだ!?」
「証人、夜舞美羽」
「だから私達は私達の意思で薫に手を貸してるの! お奉行になんか言われるような筋合いはない! あと燐も返しなさい!」
「思わぬ、再会……」
「牢屋で再会するとは思わなかったね」
「君達は選ばれたんだ! 仮面ライダーに選ばれたんだよ! びやぁおぅ!!!」
「誰!?」
「結城荘は男子禁制。神聖な女の園よ」
「それは、失敬いたしました……。私は他所に宿を取ることにいたします……」
「え、なんでよ」
「私、男でございます……」
「「「「「「え?」」」」」」
「千佳姐! 空から美少年が!」
「なんですって!?」
「あ、じゃあ女装してくれたら君も泊まっていいよ」
「美少年をメイクするチャンス~?」
「安心して! 可愛くしたげるからさ!」
「うああああああ!!!!!!」
「戦士の墓場に眠る力よ! 我に力を!」
「りぃぃぃぃぃん!!!!!!!!」
「負けるものかよ!」
「夜に舞う蝶でございます……」
「儚だって墓守……!」
「「「変身ッ!!!」」」
仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ
ツルギ×マイヤ×ハカイブ
被告人は薫!?走れ儚、墓場裁判所!
~失われた燐~
戦士の墓場の大決戦!
「戦士の墓場で、何かおかしなことが起きてる……!」
「戦士の墓場って、いっつもおかしなこと起こってる場所じゃないの?」
「それは、そう……!」
公開予定なし!