仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ 千年超越大戦 ツルギ×マイヤ 作:大ちゃんネオ
ある晩、美羽様は夜舞神社で舞踊られていました。
化神バケゲンブの封印をより強くするため、毎日欠かさずに。
しかし、その日はバケゲンブの仇を討とうとする配下の化神達が襲いかかってきたのです。
神社の中、美羽様は変身する間も与えられず窮地に立たされてしまいました……。
蝋燭の火だけがその巫女を見つめていた。
彼女の名は夜舞美羽。
この地を荒らしていた化神バケゲンブを封印した御伽装士である。
『美羽ぇ……。美羽ぇ!!!』
「ッ!? 化神!」
『バケゲンブ様の仇ぃ!!!』
『美羽の首を獲れ! バケゲンブ様への手土産とするのだ!』
拝殿の中に続々と押し入る無数の化神。
美羽は舞夜の怨面を手にするが、バケガエルの舌が怨面を弾き飛ばしてしまった。
『やれぇ!!!!』
「くっ……」
次々と襲いかかる化神。
怨面を拾おうとするが、乱戦の渦中にある怨面はどんどん美羽から離れていく。
それでもと美羽は怨面を追うが、それは化神達にとって絶好の隙だ。
バケエビの鋏が美羽の頬を打ち、バケガエルの舌が美羽の首を巻き取った。
「ぐあっ……! あっ……」
『はっはっはっ! 美羽なんぞ取るに足りん』
『卑怯な手を使ってバケゲンブ様を騙し討ちしたに過ぎん!』
『真っ向からの勝負では我等には手も足も出んのだ!』
化神の笑い声が夜に響き渡る。
村の人々を恐怖させるには充分過ぎるものだ。
こうして、美羽は処刑される寸前にあった。
そんな中、神棚の鏡が光を放ち……。
鏡の中から戦士が現れたのです。
『なんだ!?』
「眩し……」
美羽はその光に目を瞑った。
化神達は光を警戒し、身構える。
やがて光が収まると……そこに立っていたのは白い鎧を纏った剣士達であった。
「ここ、は……? ッ!? お前達は一体!?」
『それはこちらの台詞だ!』
白き剣士は周囲を見渡して状況を把握。
異形の怪物達と、それに襲われている巫女が一人。
白き剣士は人を守りし者。
なにをするべきか即座に理解し、剣を抜いた。
「ッ!」
『ゲコッ!?』
神速。
化神達は剣士の速さをそう表現するしかなかった。
一瞬にして間合を詰めた剣士はバケガエルの舌を断ち切り美羽を救うと、美羽の肩を抱き寄せ剣の切っ先を化神達に向けた。
「ちょっ……!」
「大丈夫です。僕が守ります」
美羽を安心させるように剣士は力強く宣言した。
『なんだ、こいつは……!』
『こいつも御伽装士とかいう奴なのか!?』
「私もいるよ!」
「君達ははじめましての怪物だね! こんばんはの拳だ!」
剣士の仲間の二人も化神を攻める。
紅い鎧の者はギザギザとした刃を持つ双剣で化神に斬り込んでいく。
緑の鎧の者はその身ひとつで化神を屠っていく。
そして剣士は……。
『女守ったままで勝てるなんて思っちゃいねえよなぁ!?』
バケエビとバケガエルが白の剣士に迫る。
だが、白の剣士に焦りはない。
「は、離しなさい!」
「……」
『でりゃあ!!!』
鋏を振るうバケエビ。その鋏の下を潜り抜けた剣士は後ろ蹴りでバケエビの背を蹴り飛ばすと続くバケガエルを足払いで転ばす。
『ゲコォ!?』
「……」
うつ伏せで倒れたバケガエルの背中を踏みつけ、その背に逆手で持った剣を突き立てる。
まず一体、滅。
『貴様!!!!』
激昂するバケエビが迫る。
だが、剣士はそれを脅威には思わない。
冷静に突き立てた剣の籠柄に当たる部分を開閉する。すると翼を開いた竜のような意匠となり、そこへ札を一枚挿入した。
【SWORD VENT】
謎の声が発せられると、どこから途もなく白き太刀が剣士のもとへ飛来。それを掴んだ剣士は自身に叩き付けられる鋏よりも速く、太刀でバケエビの胴を一閃。
斬の勢いのままにバケエビに対して背を向ける。
『なにかしたかぁ?』
ニタリと笑うバケエビ。
剣士の斬などまるで意にもしない様子。
だが、剣士は背を見せたまま。
『舐めやがってこい……あ……?』
そんな剣士に怒り、再び鋏を振り上げるバケエビ。
だが、振り上げた瞬間だった。
ずれた。
身体が。
下半身が力なく倒れ、転がる上半身。
二体目、斬り捨て。
「すごい……」
一瞬にして二体の化神を葬った剣士の技に感嘆する美羽であったが、すぐ近くに落ちている舞夜の怨面に気付き、剣士の腕の中から飛び出て怨面を拾い上げた。
「やってくれたわね化神! オン・ビシャテン・テン・モウカ! 夜に舞え、マイヤ!」
変身────。
光の蝶が美羽から溢れだし、その身に戦闘装束を纏う。
煌びやかな夜の蝶、御伽装士マイヤ。
「はっ!」
目の前の化神バケザルに向かい、飛び膝蹴りを放ち後退させる。
さっきの仕返しをしてやると戦意に漲るマイヤに化神達は怖気づいた。
『ひいぃぃぃ!!! に、逃げろぉぉぉ!!!!』
「あ! こら逃げるなぁ! 骨なしぃ!!!」
マイヤと剣士。そして、その仲間の戦いぶりに恐れをなした化神達は敗走。
夜舞神社には四人だけが残った。
「仮面ライダー……?」
剣士がマイヤの姿を見てそう呟いた。
マイヤは変身を解き、美羽の姿に戻ると……。
剣士達に向かって跪き、頭を垂れた。
「私は夜舞美羽。またの名を御伽装士舞夜。この地に住まう神々とお見受けいたしました。助けていただき誠に……」
美羽がそう言うと、剣士達は揃って驚いた様子で美羽の言葉を否定した。
主に、「神」の部分を。
「神々!? ち、違いますよ私達!」
「うんうん。れっきとした人間」
「しかし、鏡から現れるなんて……」
「僕達は人間ですよ」
白き剣士がそう言うと鎧は消失し、鎧を纏っていた者の姿が明かされる。
人懐っこい笑みを浮かべた、温厚そうな少年。
それが、あの剣士の正体であった。
そうして、剣義様とそのお仲間は美羽様と数日の間ともに戦うことになりました。
しかし突然、剣義様はこの地を去ることになりました。
去り際に剣義様はご自分の剣を美羽様に託したといいます。
その剣は夜舞神社に奉納されたと伝えられております。
「剣義様かっけー!」
「へぇ。鏡の中からやって来た白い鎧の剣士ってなんかロマンチック。鏡の国の人なのかな?」
剣義様のお話を終えるのと同時に、屋敷へと続く長い石階段を昇り終える。
咲希があれこれと考察しますが、このお話には謎が多いためなんとも答えることが出来ません。
「そうですね……。伝えられているお話の中では、剣義様の正体には触れられていないのでなんとも……。あんもーじーこの一種かもしれませんし、御伽装士だったのかもしれません……」
「そっかぁ……。ねえねえ最後、剣義様の剣が夜舞神社に奉納されたって言ってたよね! 見てみたい!」
「それなのですが……。実は、見たことがないと言いますか……」
「そもそもないんだよな、剣なんて」
樹羅ちゃんの言葉に頷く。
幼い頃、ちょうど今のように樹羅ちゃんに剣義様のお話をして、剣を探そうと夜舞神社中を探し回った。それはもう、一日かけて。
しかし夜舞神社には剣の「つ」の字すらなかったのです。
「おばあ様にも聞きましたが、夜舞神社には刀剣の類いはないと……」
「うーん……。あ! もしかしたら隠されてるのかも! 探すのリベンジしよ!」
「おれも探す!」
「よし、勝人行こう! 薫も!」
咲希は笑顔で私の手を取り走り出す。
夜舞神社の方へと。
「おい! 待てよ!」
樹羅ちゃんも後を追って走り出す。
まったくもう。
そろそろ、日が暮れるというのに。
夜舞神社へ向かって走り出した瞬間であった。
『────』
「ん?」
ふと、周囲を見渡す。
何か、鳴き声?みたいな音が聞こえた気がしたんだけど……。
「どうしたんだよ。走り出したり止まったり」
「ん? なんでもない! 行くよ!」
やっぱり、なんでもないよなと再び走り出す。
空耳か何かだろう。
そうして、咲希達が去っていったすぐ後のこと。
『ゴォォォ────』
庭園の錦鯉泳ぐ、白い月を浮かばせた池の水面に巨大な白い影が映り込んでいた。
同時刻。
公民館1F図書室。
剣義様の話を読み進める美玲と射澄は本に集中していた。
二人が気になったのは剣義様には、紅き甲冑を纏う少女「紅梨武様」と緑色の暴れん坊の猿「霊打様」という仲間がいたという記述。
「お団子君だね、紅梨武様は」
「ええ、そうね……。そして……」
「「緑色の暴れん坊の猿……」」
「はっくしょん!!!!」
「うわっ! おっきなくしゃみ……。風邪ですか?」
「いや、体調はグッドだよ。きっと誰かが噂したんだ」
戦いが終わった夜舞神社に、遊の大きなくしゃみが響いた。
燐達三人は並んで座り、美羽と向かい合っていた。
美羽は未だに三人のことを神の類いと信じているようで、じっと覗き込むように三人を観察している。
「神もくしゃみをするの……?」
「いや人ですから本当に。正真正銘、人です」
「いや、やっぱり信じられない……。鏡の中から現れるなんて……」
「そんな信じておくれよ~。君だって変身してたろ? つまり私達と同じ仮面ライダーってことでしょ?」
「仮面……? 私はその仮面なんたらではないわ。御伽装士よ」
美羽は仮面ライダーという言葉を知らないようであった。
それも当然だ。
なんせ、千年前の人物なのだから。
また、燐達も御伽装士という言葉を知らなかった。
御伽装士とは燐達の世界とは別世界の仮面ライダーたる戦士を指す言葉である。
「その、とりあえずここはどこなんでしょう……? 何県とか……。聖山市、ではないよな……」
「けん? けんとは何の事か分からないけれど、ここは陸奥国。亀ヶ沢という名の村よ」
「……むつのくに?」
「なに? 知らないの? ということはやはり神ではない?」
「知らないしさっきから神じゃないって言ってるでしょ~」
「いや、あえて知らないからこそ神ということもあり得る……?」
「あ、あの難しく考えすぎないでください! とりあえず、僕達は人間、ということでお願いします」
まだ納得のいかないという顔でしぶしぶ分かったという美羽。ようやく納得させることが出来たかと、燐は胸を撫で下ろした。
それと同時に何やら外の方から物音が聞こえてきた。
ぞろぞろとそれなりの人数の足音。やがて力強く襖が開かれ、とても時代がかった姿の男達が拝殿へと入ってきた。
その手に、鍬や斧を携えながら。
「美羽様! 神社がなにやら騒がしかったのでお助けに参りましたぞ!」
「そやつらが美羽様を襲ったものどもですか!?」
「むう、見るからに怪しい奴等だ」
男達は口々に燐達を怪しい奴等だと言って殺気立つ。
そんなものを当てられて、この女が黙っているわけがなかった。
「おー! 喧嘩か! 殺し合いか! 全員相手にしてやるよ!」
「ちょっと駄目ですって!」
「てかこの人達なに!? 時代劇の撮影!?」
喧嘩なら買ってやるという遊を燐が羽交い締めにして押さえる。
そうでもしないと神社の中でまた乱闘になるところだ。
それも人間相手に。
美也も美也で現れた男達の格好から時代劇を連想したが、やけにリアル過ぎて混乱していた。
「陸奥国……。それに、この格好……。まさか……!」
「よしなさい! 彼等は私を救ってくれた恩人。手を出すことは許さない。それに、そこの男はかなり剣の腕が立つわ。束でかかっても返り討ちにされるだけよ」
「は、はあ……」
美羽の鶴の一声で、男達は武器を下ろした。
「あのひょろっちいのがそんな強えんだべか?」
「そうは見えんけどなぁ」
「ともかく、今夜は帰って。さあ、帰った帰った」
「へ、へぇ……」
美羽は男達を帰らせ、境内は静けさを取り戻した。
やれやれと疲れた様子の美羽は話の続きをと、再び三人と向き合う。
「悪いわね。村の人達は心配性なのよ……。私に何かあるとすぐああだから」
「慕われているんですね」
「ええ。こんな私を慕ってくれる、良い人達よ」
「その、ところでなんですけど。僕達のことで一つ」
「なに?」
「あの、信じてもらえないかもしれないんですけど……。僕達は、未来から来ました」
パタンと、射澄が本を閉じた。
読み終えた、剣義様という伝承はかなりの確率で燐達のことであった。
他の本も読んでみたが剣義様に関することなどで新しい情報は得られず、少し行き詰まった感じ。
「どうするの、これから」
「そうだね……。ここで得られる情報はもう無さそうだ。それに、1000年前にタイムスリップする方法もないしね」
たしかに、タイムスリップする方法があれば楽に燐達を助けに行けるのだがそういうわけにもいかない。
アリスの時間を巻き戻す力を私は知っているが、1000年前に行けるのならとっくにあいつはやっているだろう。
だって、あいつも燐のことを……。
「……よし。それじゃあとりあえず身体を動かそうじゃないか」
「珍しいわね、そんなこと言うなんて」
「さっきも言ったけど本で得られる情報はこれ以上なさそうだからね。もうこうなったらフィールドワークしかない。それに」
「それに?」
「ここの図書室の利用時間がもうすぐ終わる」
窓の外を見ると、日が落ちかけている。
射澄は集めた本を棚に戻して、一緒に図書室から出た。
「フィールドワークするって、どこへ行くの」
「それならもう決まっているよ。剣義様伝説の始まり、夜舞神社さ。現存しているようだ。一応、この町の観光スポットのようでもあるからね、歴史的資料なんかもあるかもしれない」
射澄は鼻歌交じりで歩く。
やっぱりこいつ、趣味に走ってるな……。
この町の観光マップを手に取り、丸める。
先を歩く射澄に小走りで追いついて、私は射澄の頭を丸めた観光マップで叩くのであった。
夜舞神社の中をあれこれ探すも剣なんて出てこない。
まあ、こうなるとは思っていましたが……。
「本当にないのかな~?」
「だから剣なんてないって言ったろ? 帰ろうぜもう」
「まだ探してないとこいっぱいあるじゃん!」
「まだ拝殿しか調べてないでしょ~? 本殿とか~」
「あの、流石にそこまではあれなので……。一応、文化財に指定もされてますからここ」
咲希は「は~い」と間延びした返事をして探索は終了。
もう日も落ちてしまったので、お家まで送ってあげましょう。
拝殿を出て、まばらに光る星を見て視線を落とす。
────すると、参道に女がいた。
琵琶を携えた花魁のような女。
人ではないと、本能も理性も叫んでいる。
樹羅ちゃんもあれを、化神を警戒していた。
「咲希、勝人。拝殿の中に。あれは化神です」
「化神……! わ、分かった!」
咲希と勝人が拝殿に入ったのを見て、樹羅ちゃんと共に怨面を手にする。
「何用だ化神。ここは聖域。お前達がいるべき場所ではない」
『舞夜の一族の者よ。消え行く運命にあるとはいえ、バケゲンブ様の仇たる貴様だけはこの手で討たねば気が済まない……』
バケゲンブの仇。
奴は確かにそう言った。
笑わせる。化神が仇などと!
「仇討ちなんて返り討ちだ」
「ええ。行きましょう、樹羅ちゃん」
「おう!」
「オン・ビシャテン・テン・モウカ 舞え、マイヤ」
「オン・バサラ・ソウシン・ソワカ 唸れ、リンガ!」
『変身!』
夜に舞う蝶の群れの中から現れる御伽装士マイヤ。
逆立つ鱗が静まり、蒸気を放つ御伽装士リンガ。
二人は変身を完了するとそれぞれの得物である槍と鉈を装備し、女と相対する。
『来なさい、御伽装士……シャアァァァッ!』
女の姿が異形へと変化する。
黒い体色に赤が乗る色彩は、溶岩を思い起こさせる。
十二単を思い起こすように腰部から垂れ下がるものは全て蛇。
首に太く巨大な蛇をストールのようにかけ、琵琶から仕込み刀を抜いたこの化神の名はバケマムシ。
復讐に毒牙研ぐ妖姫。
「いかにも毒持ってますって感じだな!」
「ええ、警戒していきますよ」
「ああ、噛まれないようにする!」
リンガが跳び上がり、バケマムシへと斬りかかる。
大振りの上段。隙だらけに見えるリンガへと腰部の蛇達が迫る。
だが、リンガは囮。
本命は、マイヤ。
「たあッ!」
槍を宙に投げ、オーバーヘッドキックで蹴り飛ばす。
高速で飛来する槍の防御に腰部の蛇はリンガの迎撃を中断する。
蛇達と槍がぶつかり合い、衝撃が木々を揺らす。
拮抗する槍と蛇達。
だが、上空からはリンガの斬が襲いかかり、マイヤもまた更なる攻めの一手を打つ。
「だあああ!!!!!」
『くっ!』
リンガの鉈を手掴みで受け止めるバケマムシ。
だが、リンガは臆せず果敢に攻める。鉈を掴まれたのなら、そのまま押し切るとリンガ得意の力比べ。
力ではリンガに軍配が上がりバケマムシを後退させる。
そして、マイヤの次なる一手。
大地を蹴り込み横回転しながら跳ぶマイヤは足底で槍を蹴る。ローリングソバットだ。
これにより蛇と槍の均衡は砕かれ、蛇達は弾かれ槍はバケマムシの胸部に直撃。
バケマムシは参道を転がる。
「仇討ちだか宣うわりにはその程度か!」
「トドメを……ッ!?」
槍を落とすマイヤ。変身は解除され薫は膝を付き、苦しみ悶える。
「おい薫! どうしたんだよ!」
「ううっ……」
「こ、これは……」
薫にノイズがかったかのような現象が起きる。
見たこともない現象にリンガはたじろぐのみ。
『……始めましたか、魔人教団』
「なに……? お前の仕業か! 薫に何をした!」
『言ったはずです。舞夜の一族は消え行く運命にあると……』
「どういうことだよ……! ッ!」
バケマムシへと詰め寄ろうとするリンガであったが、空より新たな化神が飛来する。
バケワシである。
鋭い脚の爪を用いて、リンガに斬りかかった。
バケワシの爪はリンガの胸部へと直撃。
倒れるリンガ、バケワシは腕を組み優雅に舞い降りる。
「ぐあッ!」
『御伽装士、覚悟せよ』
「こんの……! ガッ!?」
今度は強烈な水流がリンガを襲う。
三体目の化神、バケクジラ出現。
『御伽装士を殺す。ワクワクするよ』
『そのトカゲはどうぞ。私の狙いは舞夜ですので』
『了解した』
『ふむ、たっぷり痛めつけてから殺そうか』
迫る三体の化神。
リンガは薫を庇い、三体の化神を相手にしようとするが内心では焦るばかり。
数の不利。
薫を守りながらの戦い。
自分が薫を守らなければというプレッシャー。
全てがリンガの、樹羅の心に重くのし掛かる。
圧倒的な窮地。
もう、自棄になって化神に立ち向かおう。樹羅が愚考した瞬間であった。
【SHOOT VENT】
【STRIKE VENT】
謎の電子音声が響き、化神達は振り向くと青い炎の矢と超高圧の水流が襲いかかった。
「なん、だ……?」
リンガが見たもの。それは御伽装士に似て非なる青き二人の戦士。
仮面ライダーアイズ、仮面ライダーヴァール。
「射澄。あれ、なに?」
「私に聞かないでくれ。けど、状況から察するに人を襲おうとしていた。つまり、モンスターと変わらない存在だ」
「そうね。人助けするつもりはないけど、邪魔になりそうだから倒すわ」
「……素直じゃないねぇ」
アイズは弓を上下に分離させて双剣とし、ヴァールも召喚機である三叉槍を構え化神に立ち向かう。
『御伽装士ではない……。何者ですか?』
「それはこっちの台詞よ蛇女」
バケマムシと斬り結びながらアイズは問う。
コミュニケーション可能な存在であると知り、内心驚きはしていたが。
『私は化神バケマムシ。私の復讐の邪魔をしないでもらいたい……!』
「ご丁寧にどうも。私は仮面ライダーアイズ。一応、名乗り返しておくわ。それと、一般論だけど……」
バケマムシの蛇を斬り捌き、後退しながら双剣を弓へと戻すアイズはバケマムシに矢を放つ。
胸部に直撃し、青い爆炎がバケマムシの身を焦がす。
「復讐なんて、やめたら」
『ぐっ……! おのれ……!』
「なるほど、君達は化神というのか。興味深いね」
バケワシとバケクジラの二体を相手取るヴァール。
槍を巧みに振り回し、化神を翻弄していく。そんな最中、ヴァールはリンガに声をかけた。
「ちょっとそこの君。手伝ってくれないかい? 私、戦闘は美玲……あっちのとは違って不得手な方だからね」
「え……あ、分かった!」
「私だって得意なわけじゃないんだけど」
ヴァールの言葉にアイズが食ってかかるもヴァールはどこ吹く風といった様子。
現在の状況に呆けていたリンガも戦線に復帰し、バケワシに跳びかかってマウントを取った。
『私の邪魔をする奴には消えてもらわないとな』
「面白いことを言うね。悪いけど、倒されるのは君の方だよクジラくん」
バケクジラの身体に巻き付くホースが蠢く。
そして、右腕の口から高圧水流が放たれる。
奇しくもヴァールもストライクベントで召喚したクジラを模した手甲を装備しなおし高圧水流を発射。
ぶつかり合う水流は中央で爆ぜ、瞬間的な豪雨が二人の間に降り注ぐ。
『ぐっ……!?』
怯むバケクジラ。
だが、ヴァールは豪雨のカーテンを突き破って接近。
バケクジラは迎撃しようと右手を構えるが、ヴァールが左手に持った槍に払われる。
そして、バケクジラの腹に手甲が当てられ。
「君の戦力は読み終えた」
『なっ!?』
高圧水流がバケクジラを貫く。
そして、爆散。
リンガのパワーでバケワシは地に押さえ付けられ、脱け出せずにいた。
マウントを取られたバケワシは殴り続けられ、いよいよ意識が消えかける。
「鳥も地に堕ちりゃこんなもんだ! 退魔覆滅技法! 邪貫爪ッ!」
リンガの右手の手甲の鱗が逆立ち、伸びた親指、人差し指、中指の爪でバケワシを貫く。
爪を抜き、バク宙でバケワシから飛び退くリンガ。
着地と同時にバケワシは爆発し化神二体目撃破。
残るはバケマムシのみとなった。
戦闘の音が次第に大きくなっていくのを、拝殿の中から咲希は聞いていた。
勝人を守るように抱き締めながら。
「薫……。大丈夫だよね……」
心配になり、戸を開けて外の様子を見た咲希の目に映ったのは化神と戦うリンガと見知らぬ二人の青い戦士。
そして、拝殿の前で倒れる薫の姿であった。
「薫!?」
「師匠!」
拝殿から出て、薫に駆け寄る咲希と勝人。
薄れる意識で咲希が近くにいることを感じた薫は力を振り絞って口を動かした。
「薫! どうしたの薫!」
「来て、は……だめ……」
咲希は薫を抱き起こし、拝殿の中へと戻ろうとする。
薫を守るために。
『おのれ……! よくも!』
バケマムシの蛇達が荒れ狂う。
狙いを定めずに、周囲を破壊しながらリンガ達に襲いかかる。
「くっ……! って、あの馬鹿!」
リンガは咲希と勝人が薫を運んで歩くのを目撃。
そしてそれをバケマムシも見ていた。
『舞夜だけでも!!!』
「くそぉぉぉ!!!」
「くっ……」
「間に合わない!」
蛇が、牙を剥く。
咲希と勝人、二人もまとめて薫の命を奪わんと。
「えっ……」
咲希は蛇と目があってしまった。
蛇に睨まれた蛙とは、このことか。咲希は身動き出来なくなり、その命を終えるのを待つのみ。
「咲希ぃぃぃ!!!!」
リンガが叫ぶ。
月浮かぶ池の水面が揺れる。
その水面、いや鏡面から何かが飛び出した。
そして咲希達に迫る蛇を翼で切り裂き、三人を守るようにしてそれは大地に降り立った。
『なにッ!?』
「え……?」
「あれは……」
翼につく鋭い爪を持つ前肢と後肢で地に立ち、緑色の瞳がバケマムシを睨み付ける。
白亜の刃のような体躯に金色の三本の角を持つ飛竜。
その名は……。
「ドラグスラッシャー!」
『ゴアァァァァ!!!!!!!』
竜の咆哮が夜を震わす。
剣の飛竜の登場が、戦場に一石を投じるのであった。