仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ 千年超越大戦 ツルギ×マイヤ   作:大ちゃんネオ

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超越

 僕が意識を失った後、メタロー達魔人教団が時を越えるための巨大なゲートを開いたらしい。

 それで喜多村さんは大急ぎで僕達にそれを伝えに来たと。

 そして、美羽さんは意識を失った僕を二人に預けて「自分達の時代に帰れ」……。

 結果、三人とも無事に現代へ帰ってきた。

 

「魔人教団は組織だからね。今回の計画は失敗と判断して兵を撤退させたんだろう。夜舞薫とそのおばあさんも今はもうなんともない。君達はしっかり役目を終えて帰ってきたんだ」

 

 射澄さんは僕達を労い、そう言ってくれた。

 僕達は、守れたんだ……。

 未来を、美羽さんを。

 

「失礼いたします」

 

 思わず、立ち上がった。

 ノックをし部屋に入ってきたのは、小柄な少女。

 紺色の地に蝶が舞っている着物を着た、赤い瞳の────。

 

「君が……」

「はい……。夜舞薫と、申します。この度は、我ら夜舞家を守護していただきありがとうございました。剣義様……」

 

 やはり、この子が。

 現代のマイヤ、夜舞薫。

 美羽さんが、未来を繋いだ証────。

 

「あの……」

 

 気が付くと、薫さんを抱き締めていた。

 困惑する薫さんと周囲。

 いや、僕自身も頭の中では結構困惑している。

 だけど、こうしたくなってしまったのだ。

 それと……。

 

「ありがとう……」

「え……」

 

 そう伝えて、ごめんねと添えながら薫さんから離れ、ベッドに座り込んだ。

 なんだろう。

 こうして、ようやくちゃんと現代に帰ってきたという実感が湧いてきた。

 ずれていたものが、直ったような感覚。

 ああ、そうだ。

 美羽さんは、過去の人なんだ……。

 

「とても、辛い戦いだったとお聞きしています。ゆっくりとお休みになってくださいませ。何かありましたら、屋敷の者へお伝えください。それでは、失礼いたしました」

 

 薫さんは僕に気を遣ってくれたのか、何か用があった風だったけれど部屋から出た。

 そして、射澄さん達も同様に部屋を出て残ったのは美玲先輩だけ……。

 

「燐」

「はい……」

「美羽って人と、何かあったんでしょ」

「えっ」

 

 これは、質問ではない。

 既に美玲先輩の中では何かあったということで決めつけられている。

 そして、何かあったかと言われると……。

 

「あの、美玲先輩……」

「怒ってないから、別に」

「え……。そう、なんですか?」

「質問したら怒るから」

「は、はい……」

 

 どこかでやったようなやり取り。

 とにかく、僕は美玲先輩に聞かれたことに対して答えた。

 自分自身の気持ちを整理するために。

 

「あの……。せめて、ちゃんとお別れしたかったんです……。こんな、こんなの急だし、事情は分かるんですけど……」

 

 美玲先輩は黙って聞いてくれた。

 そして、ため息をついて……。

 

「分かるわ、美羽の気持ちが」

「え……」

「貴方と別れられる最後のチャンスだったのよ。きっと」

「え……」 

「貴方を愛してしまったから……。違う時代、違う世界の人間である燐を……。だから、この別れ方を選んだのよ。これ以上愛してしまえば、別れたくなくなってしまうから……」

 

「あなたもよ燐。あなたも、あなたの今を精一杯生きて」

 

 美羽さんの言葉を思い出した。

 僕の今はここで、美羽さんの今は違う。

 美羽さんは僕にとって過去だから。

 だから、美羽さんは……。

 

「美羽さん……」

「燐……」

 

 優しく抱き締められる。

 暖かい……。  

 美玲先輩の熱が、伝わってくる────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつもの着物に着替えた薫は一人、暗い夜の闇の中へと向かおうとしていた。

 

「薫」

 

 呼び掛けると、驚いた表情を見せて私の方へと向かって歩いてきた。

 そんなに意外だったかな?

 

「咲希……。てっきり、お家へ帰られたかと……」

「そのつもりだったんだけど、薫が戦いに行くって聞いたから、屋敷で待ってようと思って」

「そうでしたか……」

 

 薫は私の手を取って、おでこを私のおでこにつけた。

 薫の顔が近い。

 すごく落ち着いているようだった。

 そして、とても優しい声で話し始める。

 

「咲希……。心配をかけてしまってごめんなさい」

「ううん。薫なら大丈夫だって信じてたから」

「ふふ、そうですか。では、その信頼に応えるためにも……。必ず帰ってくる。信じて待ってろ」

 

 薫め、いきなり男の子を出すんじゃない。

 ドキッとしちゃうじゃん。

 

「うん……。待ってるね」

「ああ、行ってくる」

 

 名残惜しく、薫が離れていく。

 宵闇に消えるその小さくて大きな頼もしい背中を見送って、私は屋敷の中へ戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗い森の中、蛇達が集まり女の体を為した。

 先の戦いから回復に努めていたバケマムシだ。

 

 魔人教団……。

 早々に手を切ったのか。

 

『腑抜けめ……。こうなれば、私一人で……バケゲンブ様の復讐を! マイヤの一族を根絶やしにいたします!』

 

 先の戦いでの傷も癒えた。

 今宵こそ、マイヤを討つ。

 我が恩讐を刃として、絶対に、絶対に────。

 

「見つけましたよ。バケマムシ」

 

『なに……!?』

 

 闇の中、燃える血の炎が二つ。

 忌々しき、その目は……!

 

『舞夜!』

 

「山の中探し回った甲斐があったぜ!」

「樹羅ちゃんお疲れ様です。最後の一仕事といきましょう」

「おう!」

 

 夜舞だけでなく蜥蜴擬きまでも……!

 

「オン・ビシャテン・テン・モウカ 舞え、マイヤ……」

「オン・バサラ・ソウシン・ソワカ 唸れ、リンガ!」

 

『変身!』

 

 紫光を放ち、蝶が舞う。

 忌々しい、忌々しい!

 蝶など!

 蝶など!

 

『我が怨嗟の毒牙で噛み付いて差し上げます……!』

 

 

 

 

 バケマムシの腰部の蛇達が地を這う。

 毒の牙を剥き、怨みと穢れを流し込もうと。

 

「樹羅ちゃん」

「ああ!」

 

 マイヤとリンガは宙へと跳び上がり、蛇達を回避する。

 マイヤは滞空し、リンガは木に張り付いた。

 

『馬鹿ですね!』

 

 蛇は宙を舞うマイヤ、リンガを追跡する。

 リンガは木々の間を縦横無尽に飛び交い、逃れていく。

 

「どこまで延びんだよこいつら!」

 

 そろそろ逃げるだけは飽きたとリンガは木に止まり方向転換。腕の鱗を逆立て刃として迫る蛇達を見据える。

 ここだと狙いを定め、木の幹を蹴り蛇達に向かって翔る。

 

「だあぁぁぁ!!!!」

 

 通りすぎ様に蛇達を切り裂き着地。

 リンガの背後にぶつ切りとなった蛇が落ちた。

 

 

 

 一方、マイヤは名の通り舞うように蛇達を掻い潜りバケマムシと格闘戦を繰り広げていた。

 琵琶に仕込まれた刀を白刃取りし、そのまま刃を下へと向けさせる。刃の腹を膝で蹴り、刀を折ると刃を投げ捨て頭部目掛けて回し蹴り。更に、足を着くことなく鋭いヒールでバケマムシの顔面を蹴りつけた。

 

『ガッ!?』

 

「バケマムシ。お前の怨みが私……。いえ、私達マイヤ……夜舞の血脈、絆を滅ぼすことなど出来ない!」

 

『いいえ……! 私は為さねば成らぬ! バケゲンブ様のために!』

 

 穢れを強め、マイヤへと殴りかかるバケマムシ。

 そこへ、リンガが飛び掛かり二人は地面を転がる。

 

「薫!」

「樹羅ちゃん、ありがとうございます。……オン・ビシャテン・テン・モウカ・マイヤ……ボウゲツ! 超/蝶変身!」

 

 美麗なるマイヤを、月が包む。

 銀色の堅牢な鎧を纏いし怪力と闘気の月のマイヤ。

 マイヤ・ボウゲツ────。

 

「いくぞ、バケマムシ。お前の千年分の怨み、このマイヤが刻んだ千年の想いで殴り飛ばす!」

 

『いいでしょう……。どちらの千年が強いか、勝負ッ!』

 

 駆け出す二人の拳が今、ぶつかり合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜舞邸の表玄関に若い男の平装士がいた。

 夜も更け、見回りと門や各出入口の施錠などのために外にいた彼に、幼い少女の声がかけられた。

 

『ねえ、ここにパパがいるんでしょう?』

 

「ん……!? 何者だ!?」

 

 闇夜の中に光る緑火。

 白き殺戮の凶剣Tマーダー。

 

『ねえ、いるんだよね。パパに会わせてよ』

 

「し、知らない! 誰か! 誰かいないか!」

 

『そっかぁ、じゃあいいや。お邪魔しまーす』

 

 男などどうでもいいとTマーダーは屋敷の中へと入ろうとする。

 だが、このような異形を中へ入れるわけにはいかないと男はTマーダーの前に立ち塞がる。

 

『邪魔しないでよ~。斬るよ~』

 

 Tマーダーは太刀を取り出し、その白刃を見せつけ男を脅す。

 圧倒的な剣気を放つTマーダーへの恐怖から、男は尻餅をついてその場から動けなくなってしまった。

 

『ふふ~ん。ティーの剣を最初に濡らすのはパパの血って決めてるの。だから今は見逃してあげる。パパを斬ったらお兄さんも斬ってあげるね❤️』

 

 バイバイと男へ手を振り、Tマーダーは屋敷へと侵入。

 しかし、男の声を聞いて駆けつけた平装士達がTマーダーの行く手を阻む。

 5人の中年の平装士達が術を放つ。

 

『なにこれ~!』

 

 Tマーダーは結界に包囲され、身動きが取れなくなる。

 最初こそ驚いたTマーダーであったが、楽しげに笑い出す。

 異形から響く不釣り合いな少女の笑い声は奇怪で、平装士を恐怖が飲み込む。

 

『あはは! おじちゃん達みたいなのでも集まればそれなりになるのね! ……まあ、それなりなんだけど』

 

 軽く、一振り。

 太刀により容易く切り裂かれた結界に平装士達は驚いた。

 こうも簡単に、実力者とされる五人の力で作った結界を破られるとは。

 

『う~ん。流石にちょっと邪魔かも。斬りはしないけど~』

 

 Tマーダーはそう言いながら太刀の刃を返す。

 

『峰打ちなら大丈夫かな~』

 

「ひっ……!」

 

 平装士達に斬りかかろうとするTマーダー。だが、そこへ鋼が飛来した。

 鋼の正体は槍。

 投げ付けられた槍を峰で叩き落としたTマーダーの元へ、女が更に迫る。

 

「はあぁぁぁッ!!!!!」

 

『ッ!?』

 

 女の飛び膝蹴りがTマーダーに直撃。

 Tマーダーは玄関の扉を巻き添えにしながら外へと弾き出された。

 

『……何者~?』

 

「家に土足で上がるなと、教わらなかったか小娘」

 

 赤い瞳、うっすらと赤い長髪。

 鋼の槍を肩に担いだ赤紫色の着物を着た若い女がTマーダーの眼前に立ちはだかった。

 

「せ、先々代!」

 

 平装士の一人が叫ぶ。

 そう、彼女は夜舞薫の祖母、夜舞セン。

 夜舞家に伝わる秘術により若返り、夜舞家を荒らす敵を屠らんとする。

 

「お前達は下がっていろ。非戦闘員を連れて避難だ」

「は!」

「……さて、どこの誰かは知らんが剣の腕は相当なようだな」

 

『もちろん❤️ だってパパの娘だもん!』

 

「パパ?」

 

『そう。私はツルギのデータから生まれたTマーダー! よろしくね、槍のお姉さん❤️』

 

「剣義様の……。それは、面白い────!」

 

 センの瞳がギラと輝く。

 伝説の剣義様を模して生まれた存在。ならば加減など必要はなく、全力をもって相手しなければならない相手。

 

「Tマーダーと言ったな。私は夜舞セン。お姉さんと言われて悪い気はしないが……貫く」

 

『きゃ~❤️ お姉さん強そう! 楽しもうね、お姉さん❤️』

 

 両者、構える。

 センは槍をTマーダーへと向け、Tマーダーは太刀を脇構えにして……同時に駆け出した。

 恐るべき速度で繰り出される互いの技。

 常人の目では捉えきれず、鋼と鋼がぶつかり合う音だけが夜に響き渡る。

 

「私達も!」

「おう、行くよ!」

「リベンジマッチ!」

 

 二人の戦場へ、センの加勢にとヴァール、グリム、レイダーが駆けつける。

 四対一。

 数の不利に立たされるTマーダーだが、それでも楽しい、楽しいと笑う。

 

『あはは!!! お姉さん達が遊んでくれて嬉しい! だから~こっちもそれなりで行くね❤️』

 

 剣速が跳ね上がるTマーダー。

 四人を圧倒し、高らかに笑う。

 そんな様子を、避難しようとしていた咲希が目撃した。

 このままでは四人が負けてしまうと、咲希は屋敷の中へと戻った。

 ツルギを、呼ぶために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 疲れて眠りについていた時、慌てた様子の美玲先輩が部屋に入ってきて叩き起こされた。

 

「燐、あなた達が千年前に戦ったっていう白い奴が来てる!」

 

 白い奴……Tマーダーか!

 現代にまで来るなんて……。

 

「今、外で射澄達が戦ってる。避難するわよ」

「避難って、僕も……!」

「怪我してるのよ! そんな身体で戦ったら……!」

 

 けど! ……そこまで言って、思い出した。

 僕はツルギの力を、バケゲンブ封印のために使ったのだ。

 そして、そのデッキも……。

 身の回りを探してみる。

 ない、ない、ない。

 

「デッキが……」

「燐……。あなた、まさかデッキを……」

 

 デッキは、千年前に……。

 

「美玲さん! 燐さん!」

 

 部屋に入ってきた少女。たしか、咲希さんと言ったか……。

 勝人という男の子も一緒だ。

 

「その、白い奴が強くて薫のおばあちゃんも射澄さん達も苦戦してて……。だから美玲さんと燐さん助けてあげて!」

 

 仲間が助けを求めている。

 けれど、僕は戦うことが出来ない。

 こんな時に、僕は……。

 

「……咲希さん、ごめんなさい。僕は、ライダーの力を……デッキを失くして……」

「え……」

「……私が行くわ。あなたと燐は避難して」

「美玲先輩……!」

 

 戦いに行こうとする美玲先輩を呼び止める。

 振り向いた美玲先輩は「大丈夫」と微笑むと部屋を出ていってしまった。

 

「燐さん、行きましょう!」

 

 腕を掴まれ、部屋から出る。 

 僕は、僕は無力なのか……?

 戦い、傷つく仲間達を助けることは出来ないのか……?

 いや……。

 

「咲希さん、君達だけで逃げて」

「えっ……。燐さんはどうするの!?」

「あいつ、Tマーダーは僕を殺すために造り出された。だから、僕が囮になって……」

「駄目だよそんなの! ライダーの力っていうの失くなっちゃったんでしょ!」

「ああ……。けど、戦えなくても僕に出来ることをする。戦う力がなくても!」

「戦う、力……」

 

 部屋を飛び出る。

 僕が囮になって、みんなが少しでも回復なり奴を倒す方法なりを思い付く時間さえ稼げれば……。

 

「あ!」

「待って!」

 

 追いかけてきた咲希さんが僕の腕を掴んだ。

 振り払おうとしたけど、咲希さんの希望を見るような目を見てしまい、振り払えなかった。

 

「あるかもしれない。戦う力」

「夜舞神社!」

 

 咲希さんと勝人くん二人で話が進む。

 困惑する僕をよそに。

 

「え……?」

「ついてきて!」

 

 言われるがまま、咲希さんと勝人くんの後をついて走る。

 裏口から外に出て、山道へと入った。

 

「戦う力があるかもって、どういうこと?」

「剣義様伝説の最後、剣義様がこの地を去る時に剣義様の剣が夜舞神社に奉納されたって書かれてるの! だからもしかしたら剣があるかもしれない!」

「剣……?」

 

 僕の、剣……?

 いや、剣なんて奉納した記憶はない。

 一体どういうことだ?

 とにかくついて行くしかない。

 ただの後付けされた話かもしれない。けど、もしかしたら夜舞神社に……。

 

「希望が、あるかもしれない……」

 

 とにかく、前を向いて走る。

 今はまだ何も見えないけれど。

 とにかく、走るしかない────!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 五人との戦いの最中、Tマーダーはあるものを感じ取った。

 己が殺すべき、御剣燐。

 標的が、移動していると。

 

「あ~。パパ待ってよ~❤️」

 

 五人のことなど忘れたかのように、Tマーダーは燐を狙って移動を開始する。

 

「あいつ燐くんのことを狙って!」

「行かせない……! ガナーウイング!」

 

 アイズがガナーウイングを喚び、その背に装着させて夜空へと飛び立つ。

 飛翔能力を得て、機動力を増したアイズは上空から矢を放ちTマーダーを牽制。

 しかし、そんなもの大した障害にはならないとTマーダーは矢を切り裂き、進行は止まらない。

 

「くっ……! それでも!」

 

 頭上の優位は取っている。

 とにかく矢を放つアイズは、ようやくTマーダーに意識を向けさせることが出来た。

 

『も~、うざい。やっちゃえワイバーンエッジ』

 

『キュルォォォォ!!!!!』

 

「なに!?」

 

 突如として現れた機械の飛竜がアイズを狙う。

 幸い、小回りはアイズの方が効くので攻撃は回避することは出来たがワイバーンエッジはしつこくアイズをつけ狙う。

 Tマーダーへの攻撃どころではなくなったアイズは舌を打つ。

 しかし、アイズが稼いだ時間は地上の四人がTマーダーに追いつくのには充分な時間となった。

 

「ふふ~ん! 本気の燐くんと戦ってるって思うと楽しいねぇ!!!!」

 

 レイダーの拳がTマーダーの太刀の腹で受け止められる。

 更にそこへグリムの双剣が叩き込まれる。

 ヴァールとセンの槍もまたTマーダーを貫かんと迫る。

 それでもTマーダーは余裕な様子で太刀を一閃。四人を払いのける。

 

『もうしつこいよ~。お姉さん達はパパを斬った後に斬ってあげるから~』

 

「やらせないよ!」

「ああ。私達の仲間を斬るなんてこと、させるわけがないだろう」

「私の前で人を斬るなどよく言えたな」

 

 仲間を、人を守るとする者達の目は煌めく。

 たとえ不利だとしても、信念を貫く戦士達は立ち向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜舞神社に辿り着いた燐と咲希、勝人は拝殿の中を探し回っていた。

 剣義様の剣を。

 

「あの、奉納されてるって言ってなかった!? 分かりやすく置かれてるもんじゃないの!」

「ほ、奉納されたとは伝わってるんだけど……薫も見たことないって……」

「おれ達も探したけどなかった!」

 

 み、見たことないって……。

 そんなものを探しに来たのか僕は……!

 

「そっちこそ知らないの!? 君の剣でしょ!」

「覚えてたらすぐに見つけ……!」

 

 君の剣という言葉が胸を打った。

 君の剣。

 剣義様の剣。

 剣義様、それは僕のこと。

 僕の剣、僕の……ツルギ。

 見つからない剣。

 デッキはないけど現代にいるドラグスラッシャー。

 

「……そうか、そういうことか!」

「えっ……きゃっ!」

 

 突如、大きな揺れが僕達を襲う。

 近い、Tマーダーが。

 

『パパ見っけ~❤️ 会いたかった~❤️ 斬りたかった~❤️』

 

 拝殿へと足を踏み入れたTマーダーは大剣を構えるブレイキングカリバーという姿から、太刀を扱うスプリームセイバーの姿へ変わる。

 咲希さんを庇うようにして立つと、土煙立つ外から紅い影が飛び込んできた。

 一瞬、美羽さんと見間違えたが違う。

 この人も、美羽さんの……。

 女性は槍でTマーダーを翻弄し、拝殿の外へ叩き出す。

 この人、強い。

 だけど、疲労からか床に膝をついて呼吸を整えていた。

 また、ほんのりと紅い髪に白いものが浮かび上がってきて……。

 

「おばあちゃん!」

「咲希、か……。お前達、ここで何を……」

「剣義様の剣を探しに……」

 

 咲希さんの言葉で、そうだとすぐに行動を始める。

 手近なところにあった椅子を持って神棚の前へ。

 椅子に登って神棚の奥の板を……。

 

「上がった……!」 

 

 手を伸ばす。

 もし、ここにまだあれがあるなら……!

 手探りで探し、触れる。

 固い感触。

 大きさも確かこれくらい。

 引っ張り出す。埃にまみれた、美羽さんの宝箱……。

 

「それは……」

「美羽さんが、大切なものを入れて隠していたんです。もしかしたら、ここに……」

 

 咲希さんと勝人くん、おばあちゃんと呼ばれた女性に見守られながら箱を開ける。

 中には……。

 

「……あった」

 

 紙と共に添えられた、白いデッキ。

 僕の、仮面ライダーツルギのデッキ。

 添えられていた紙を開く。

 すると、何か小石のようなものが包まれていたようで床に落ちた。

 これは……小石なんかじゃない。

 僕が美羽さんにあげた貝紅……。

 紙は美羽さんが記したであろう手紙。

 けど、僕には読めない。

 

「貸せ」

 

 女性が手紙を僕の手から取り、さっと全体を眺めて読み上げ始めた。

 

 

 

 

 

 もし、これを貴方が読んでいるのだとしたら、私は少し複雑な心境です。

 貴方に戦ってほしくはないのだけれど、きっと貴方にはこれが必要だと思うから。

 貴方の今のために、貴方はきっと剣を執ることを選ぶと思ったから、この箱に入れて千年後の貴方に託します。

 貴方が引き受けた分の穢れは浄化してあります。

 あの白い甲冑と刃のように、一点の穢れはないと断言するわ。

 願わくは、これが見つからないことを、貴方が戦わなくてもいい未来を。

 燐、どうか貴方の今を生きて。

 

 

 

 

 

 

「美羽、さん……」

「……歌も添えられているな」

「歌……?」

「ああ、短歌だ」

 

 咲かせども

 目にする者なき

 紅の花

 白雪残る

 紅差し指

 

「美羽様はお前のことを……」

 

 美羽さん……。

 美羽さんの想い、確かに受け取ったよ……。

 デッキを握り締め、胸に当てる。

 美羽さん、貴女のことを僕は決して忘れない。

 貴女の想いを背負って、僕は僕の今を生きるよ。

 生きて、生き抜いて、人を守り続ける。

 人間として戦う。

 

『もう邪魔~!』

 

 外でみんなと戦っていたTマーダーが四人を振り切り、再び拝殿へ。

 女性が相手をしようとするけど、Tマーダー、こいつだけは……。

 

『あはは~❤️ パパもやる気~❤️』

 

「ああ。Tマーダー……お前を斬る」

 

 デッキを構える。

 拝殿の鏡がベルト「Vバックル」を召喚し僕の身体に装着させる。

 居合のように両腕を振るい、叫ぶ。

 想いを籠めて。

 

「────変身ッ!」

 

 デッキをバックルへと装填。

 白きツルギの鎧が舞い踊り僕に重なり、変身する。

 

「これが……」

「剣義様……」

「かっけぇ……」

 

 咲希さん達が背後で感嘆の声を漏らした。

 剣義様……いや、僕は……!

 

「仮面ライダーツルギ……!」

 

 千年の時を越えて、ツルギは蘇る。

 大切な人々を傷つける邪悪を切り裂かんと、白き剣が放たれる!

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