仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ 千年超越大戦 ツルギ×マイヤ 作:大ちゃんネオ
リュウノタチを召喚し、構える。
Tマーダーもまた太刀を構える。
空想戦。
イメージする剣戟。
その果てに、Tマーダーは己が勝利を見たらしい。
『あははッ❤️』
一瞬で間合を詰めて斬りかかるTマーダー。
だが。
「ふっ……」
『えっ』
Tマーダーの太刀は空を切る。
そして、リュウノタチが炸裂する。
袈裟に斬り上げ、Tマーダーは吹き飛び拝殿から追いやられ地面を転げた。
『なん、で……。ぐっ!』
自分の剣は避けられ、ツルギの剣が直撃したことにショックを覚えるTマーダーだったが即座に立ち上がり、拝殿から出てきたツルギへと斬りかかってくる。
一、二、三、四……五度、斬り結び、左へと斬り流す。
これをTマーダーは受けるが、それはフェイント。
ツルギは右足で回し蹴りを繰り出し、Tマーダーを蹴り飛ばす。本命はこちらであった。
『チッ……! モード・キリングリッパー!』
太刀では駄目だとTマーダーは短剣を扱うキリングリッパーへと姿を変える。
二刀で間合を極至近距離に詰めて斬の連続。
それらをツルギは冷静にバックステップで回避しながら、腰に差したスラッシュバイザーへとカードを読み込ませる。
【SWORD VENT】
召喚されるドラグダガー。
一本はベルトのハードポイントに装着させて、右手に構えた一振りで二刀を流していく。
『なにその余裕な感じ!!!』
余裕な感じ。
そうだろう。
なぜなら、今のツルギにはまるでTマーダーに負ける気がしないからだ。
ツルギの首筋を狙ってくる二刀をそれぞれ弾き飛ばし、隙だらけとなったTマーダーの胸部にバツ字を描く。
Tマーダーを蹴り飛ばし、腰にマウントしていたもう一本のドラグダガーと共に投擲。
真っ直ぐとTマーダーの胸部目掛けて飛ぶ二刀だったが、これはTマーダーが大剣を扱う堅牢な鎧の姿に変化したことにより弾かれてしまった。
『吹き飛べぇぇぇ!!!!!!』
凄まじいパワーで振り下ろされる大剣。
このままでは、ツルギは真っ二つだ。
【SWORD VENT】
飛来する、ドラグバスターソード。
握ったドラグバスターソードで大剣を受け止め弾く。
そして、ツルギは飛び上がりながら横回転しドラグバスターソードを振るう。
「ぜあぁぁぁぁ!!!!!」
『なっ!?』
大剣で防御するTマーダー。だが、大剣にヒビが入り砕け散る。
吹き飛ばされたTマーダーはブレイキングカリバーからスプリームセイバーの姿へと戻り、叫んだ。
助けを呼んだ。
『来てワイバーンエッジ! ワイバーンエッジ来て!』
『キュルォォォォ!!!!!』
ツルギの目の前へと降り立つ機械の飛竜ワイバーンエッジ。
鋭い鋼の牙でツルギに噛み付きを繰り出すも、ツルギはバックステップで距離を取りながら、叫んだ。
契約を交わし、共に闘う仲間を。
「ドラグスラッシャーッ!!!」
『ゴアァァァァァ!!!!!!』
白き聖剣の飛竜。
ドラグスラッシャー。
ドラグスラッシャーは千年前のリベンジマッチだと意気込んでいるようで、勢い良くワイバーンエッジの首に噛みついた。
二体の飛竜は空中で激しく争う。それに重なるように、ツルギとTマーダーの闘志も熱を増す。
ツルギは剣をリュウノタチに戻し、Tマーダーへと向けて歩き出す。
『っ……! やぁぁぁぁぁ!!!!!!』
叫びながら迫るTマーダー。ツルギは冷静にその剣を見据えて、斬り結ぶ。
上段、下段、斬り上げ、袈裟斬り、流れる。斬の流れ。
淀みはない。
緩やかな小川のようでもなく、激流とも違う。
静かに、ただ、流れる。
ああ、心は静かだ。
だが、燃えている。
この胸に灯された想いの火は確かに、力強く燃えている────!
『速さが上がっ……!?』
「……ッ!」
Tマーダーの剣速は最速に達したであろう。
────見切った。
『え────』
Tマーダーの右脇腹に当てられるリュウノタチ。
まったく、Tマーダーは当てられるまで気付いていないようだった。
そして、リュウノタチは一閃。
右脇腹から左へと斬り抜き、Tマーダーへと背を向ける。
『痛、い……!? なんで、なんでぇぇぇ!!!!!』
背後から斬りかかるTマーダーの顔面に鋭く肘がぶつけられる。
怯み、後退した隙にツルギは振り返り袈裟懸けに斬りつける。
切り裂かれたTマーダーのボディから大きな火花が咲いて、夜を照らす。
更に、左へと一閃。これは躱されてしまう。
『ここだッ!』
その瞬間、ツルギは落胆していた。
ああ、掛かるのか。
躱させたのに、気付かないのか。
先の斬はフェイント。
本命は、刃を返して今放たれる。さっきのよりも、こっちのが速いぞ。さあ、躱せるか?
来た道を戻るように刃が流れてTマーダーの胸部が切り裂かれる。
『きゃあぁぁぁぁ!!!!!!』
吹き飛ぶTマーダーにもう余力はない。
それは向こうの方がよく分かっているだろう。
『なんで、なんで!? なんで勝てないの!? 私はパパのデータから造られたパパの上位互換なのに!!!』
「このツルギには、千年の想いが籠められている。想いを託されたツルギが……負けるわけがないんだよ!」
『う、うわぁぁぁぁ!!!!!!』
Tマーダーから強いエネルギーが放たれる。
最後の、切り札。
詰った手札を、晒すことしか出来なかった。
白いオーラを纏い、宙へと浮かび上がるTマーダーの背後にワイバーンエッジが侍る。
「こっちも行くよ、ドラグスラッシャー」
『ゴアァァァァァ!!!!!!!』
【FINAL VENT】
スラッシュバイザーを抜き、剣舞。
空へとドラグスラッシャーと共に舞い上がり、その身を研ぎ澄ます。
己を、剣として。人として。人を守る戦士として。
仮面ライダーが受け継ぎし技。ライダーキックを、放つ!
『やあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!』
Tマーダーがワイバーンエッジの斬撃を纏い、放たれる。
ツルギもまた、ドラグスラッシャーが放つ黄金の斬撃を身に纏いドラグスラッシャーと共に行く!
空中で斬撃纏いし蹴りが鍔迫り合う。
拮抗する二つの力。
突き出し、ぶつかり合う右足には強い負荷がかかり今にも破裂してしまいそうだ。
けれど、このツルギには────。
「……燐」
暖かいものがツルギを、燐を包んだ。
ああ、負けないよ美羽さん。
僕は、人を守るために今を戦い続ける!
「ぜあぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!!!!!」
『や────』
轟音が夜空を震わせた。
一瞬、赤く染まる世界。
夜空に燃え上がる爆炎を切り裂き、その炎を背にツルギが降り立った。
Tマーダーとワイバーンエッジを切り裂き、蹴り貫いたツルギの勝利だ。
「燐!」
夜空を見上げていたツルギに声がかけられる。
そこには、ボロボロではあるが笑顔を浮かべる美玲達がいた。
ツルギもまた変身を解き、燐として仲間達に笑顔を送るのだった。
マイヤ・ボウゲツとリンガの二人はバケマムシを圧倒していた。
堅牢、怪力を誇るマイヤ・ボウゲツにはバケマムシの攻撃は響かない。
マイヤ・ボウゲツの拳を受けたバケマムシが山中の斜面を転がり、怨嗟を更に強める。
だが、敵わない。
マイヤに、夜舞家が連ねし千年に。
『く……! あれ、は……』
「おい薫! あれ!」
「あれ、は……」
バケマムシと二人が見上げたもの。
夜空を焦がす炎。
ツルギとTマーダーの決着の炎だ。
『感じます……。あの炎の中から、怨念を……! その怨念、私と共に晴らしましょう……!』
「あいつ何を!」
「ッ! バケマムシ!」
トドメを刺さねばとマイヤ・ボウゲツが拳を握り締め殴り掛かる。
だが、バケマムシは天高く飛び立ち爆炎へと向かっていく。
『その怨念、私の身へと移すのです! 私と共に復讐を遂げましょう!』
バケマムシの身に、爆炎が吸い込まれていく。
火球に包まれたバケマムシは地上へと降り立ち、マイヤ・ボウゲツとリンガの前にその姿を現した。
熱波と共に、蛇は進化を遂げる。
黒き身体に溶岩のような怨念が流れ、炎を滾らせる。
その手には大鎌を持ち、まるで死神のよう。
ヴェールのようなもので顔を隠すその姿はあたかも未亡人。
「なんだよ、あれ……。バケマムシなのか!?」
「いや……あれはもうバケマムシとは呼べない。バケマムシとは比べ物にならない穢れだ!」
『そう……。私はもうバケマムシではない。私の名は!』
怨蛇焔姫バケオロチ────。
『焼き斬れろ、御伽装士!』
振るわれる大太刀から紅い炎の斬撃が放たれる。
あれの直撃を喰らうのはまずいとマイヤ・ボウゲツがリンガを庇う。
しかし、そのあまりの威力に庇われたリンガですら変身が解除されるほどである。
「くっ……ボウゲツの防御力ですら……」
非常に高い防御力を誇るマイヤ・ボウゲツすら一撃で変身解除に追い込む威力を放つバケオロチの攻撃に、薫と樹羅は内心追い込まれる。
なんとか二人は立ち上がり、怨面を構えてバケオロチへと立ち向かう姿を見せる。
「薫!」
「……咲希!」
遠くから、薫を呼ぶ咲希の声。
そして、駆け付ける燐、美玲、射澄、美也、遊の五人。
薫達の隣に並び立ち、バケオロチへと鋭い視線を向けた。
「燐さん……」
「あいつ? 今回の騒動の発端は」
「ええ……。強いですよ」
「そっか、でも今の僕は負ける気しないからさ」
力強く返事した燐に薫は勇気を貰う。
樹羅もいる、別の世界の戦士達もいる。
ならば、自分も負ける気はしないと。
「薫! 」
「お婆様……。」
「僕も全力だ。行こう!」
「ええ」
「終わらせよう」
「これが最後!」
「強い奴と戦うのは本望だよ!!!」
「オレだってまだやれる!」
戦士達、仮面ライダー達の目には光が灯っている。
希望を見つめる瞳がバケオロチを射貫く。
「みんなー! やっちゃえ!!!」
「いっけー!」
「オン・ビシャテン・テン・モウカ! 蝶力朝来!」
「オン・バサラ・ソウシン・ソワカ! 唸れ、リンガ!」
『変身ッ!!!!!!!』
七人の声が重なる。
朝日が昇るかのように眩しく輝きの中、嵐と共に仮面ライダーが現れる。
仮面ライダーツルギサバイブ。
仮面ライダーマイヤ・アカツキ。
仮面ライダーアイズ。
仮面ライダーヴァール。
仮面ライダーグリム。
仮面ライダーレイダー。
仮面ライダーリンガ。
七人の仮面ライダーがバケオロチの前に並び立ち、それぞれの得物を構える。
「行きましょう、剣義様! いえ、仮面ライダーツルギ!」
「ああ!」
ツルギサバイブはスラッシュバイザーツバイを、マイヤ・アカツキは禍穿天照槍を構えバケオロチへと立ち向かっていく。
『数だけいたところで……! ハッ!』
大太刀の斬撃波が七人に向けて放たれる。
だが、先陣を切るツルギサバイブが斬撃波を切り裂く。更には、スラッシュバイザーツバイの纏う風に斬撃波の炎を乗せて撃ち返す。
「ぜあぁぁッ!」
『ぐっ……!』
大太刀で打ち返された斬撃波を受け止めるバケオロチへ、アイズの矢とヴァールの水流が直撃する。
「火には水じゃないかい美玲?」
「……爆風消火ってやつよ」
「ふふっ、爆風になってないよ」
「水なら私だって!」
【SQUALL VENT】
局地的に降りだす豪雨。
雨の中、双剣で斬りかかるグリム。
雨粒弾きながら、濡れた刃でバケオロチを斬る!
『その程度! かすり傷にもならない!』
「速っ!?」
大太刀という巨大な得物にも関わらず、その剣は神速に達するかというほどであった。
グリムは双剣を交差させ防御するも、容易く弾かれ剣戟に乗った炎がグリムを襲う。
そこへレイダーとリンガが飛び掛かる。
泥の中に飛び込み、壮絶な肉弾戦が繰り広げられる。
「泥んこ遊びなんて久々だよ!」
「泥に沈めてやる!」
泥を撒き散らし、殴り、引っ掻き、叩き、とにかく本能赴くままの戦闘。
まさに、獣の闘い。
『汚らわしい! はあッ!』
「ぐっ!」
「チッ!」
バケオロチが放つ衝撃波により吹き飛ぶレイダーとリンガ。雨も止んだところで、入れ替わるようにしてツルギサバイブとマイヤ・アカツキがバケオロチへと駆ける。
「はあッ!」
マイヤ・アカツキが禍穿天照槍
大太刀で槍を払うバケオロチだが、二人の間にスライディングして割って入るツルギサバイブがバケオロチの胴を切り裂く。
「そこ!」
『くっ……!』
後退るバケオロチへ空かさず槍を突き出すマイヤ・アカツキ。
穂先はバケオロチの左肩を突き、二人の間に入るツルギサバイブはマイヤ・アカツキの槍捌きを背で感じ取りながら斬りつける。即興のコンビネーションでバケオロチを追い込んでいく。
マイヤ・アカツキの槍の邪魔にならぬよう、ツルギサバイブの斬の妨げにならぬよう。
そして、互いの攻撃に最適な位置へと敵を誘導していく。
「ぜあぁぁッ!!!」
「はあッ!!!」
太刀と槍の斬撃が交差し、十字の傷がバケオロチに刻まれる。
しかし……。
『この程度!』
バケオロチについた傷が炎となって消えていく。
脅威の回復力に驚愕するライダー達。それが隙となり、バケオロチはマイヤ・アカツキに襲いかかった。
『貴様達がどれほど勢いづこうと、我が怨みの前には塵に等しい!』
「くっ……!」
『まずバケゲンブ様を殺したマイヤを討ち! ツルギも!
ライダー達を燃やし尽くしてくれる!』
大太刀が炎を纏い、マイヤ・アカツキを攻め立てる。
激しい憎悪の前にマイヤ・アカツキは窮地に陥っていく。
「薫!」
それをライダー達が黙って見過ごすわけはない。
救援に入ろうとするリンガ達だったが、ライダー達に空から降り注ぐ火球が襲いかかる。
「なんて攻撃!?」
「回避に専念して!」
「ッ……!」
他のライダー達が回避に専念する中、ツルギサバイブは迫る火球を斬り捨てマイヤ・アカツキのもとへ駆ける。
『小癪な!』
「ぜあぁぁぁッ!!!」
ツルギサバイブと斬り結ぶバケオロチ。その剣速は次第に速さを増していき、間に割り込むのは困難を極めるほど。
「この剣……!」
『そう、貴様が斬った魔人のものだ!』
「チッ……ぐあっ!?」
Tマーダーの剣技とバケマムシの恐るべき憎悪が合わさり生まれたのがバケオロチ。
相乗効果でその剣はTマーダー以上のものとなっていた。
ツルギサバイブへと強化変身している燐と同等。そこにバケオロチの復讐の炎が加わることで、ツルギサバイブを上回ってくる。
「こいつ、強い……!」
「ええ……」
スラッシュバイザーツバイ、禍穿天照槍の切先はバケオロチに向けている。
たとえ、バケオロチがどれほどの強敵であろうと。その得物を下ろすことは決してない。
『お前達がどれだけ束になってかかろうと無駄! 無様に死ね!!!』
バケオロチより放たれる紅き斬撃に、ツルギサバイブとマイヤ・アカツキは勇猛果敢に立ち向かっていった。
「うおぉぉぉぉ!!!!!!」
「はあぁぁぁぁ!!!!!!」
滾る闘志の鼓動。
人を守るという意思。
ツルギとマイヤの心は一つであった────。
それが、奇跡を生む。
共鳴するツルギとマイヤの力。
二つの力が融け合い、眠りし力を呼び覚ました。
『なに……!?』
バケオロチの放った斬撃が、一点へと収束。
そして、斬撃が今度はバケオロチへと返っていく。
バケオロチは大太刀で斬撃を斬り払い、ツルギとマイヤへと目を向ける。そこにあったのは、巨大な鏡であった。
「これは……」
「この気は……退魔道具……?」
ツルギサバイブとマイヤ・アカツキの眼前に現れた鏡が姿を変えていく。
鏡は刃へと鍛えられ、二振りの刀へと変貌した。
一振は太刀、一振は小太刀。
純白と金の絢爛な拵えの二振りを、ツルギサバイブとマイヤ・アカツキは手にした。
ツルギサバイブは小太刀。
マイヤ・アカツキは太刀。
二人は鞘を抜く。その刃は鏡。
小太刀の刃にはマイヤ・アカツキの姿が映り、太刀の刃にはツルギサバイブの姿が映し出された。
すると、鏡の刃からツルギとマイヤの虚像が躍り出てマイヤの虚像はツルギサバイブへ。ツルギの虚像はマイヤ・アカツキへと重なる。
二人の新たなる変身。
ツルギは蝶を象りし紫の陣羽織を纏い、マイヤは竜を描きし純白の陣羽織を羽織っていた。
『その、姿は……!?』
「仮面ライダーツルギ・千蝶……!」
「仮面ライダー剣ノ舞夜……!」
鏡刃を煌めかせる二人の剣士。
仮面ライダーツルギ・千蝶。
仮面ライダー剣ノ舞夜。
『そのようなものを羽織ったところで……!』
鋭く、間合を詰めたバケオロチが大太刀を振り下ろす。
ツルギ・千蝶に直撃する大太刀が切り裂いたのは、無数の蝶の群れであった。
『なに……?』
ツルギ・千蝶はバケオロチの背後に回っていた。
光の蝶を引き連れて、小太刀でバケオロチに斬りかかる。
『小癪な!』
「……!」
大太刀が小太刀を弾く。
がら空きとなった胴を貫かんと、バケオロチは大太刀を突き出す。が、ツルギ・千蝶はその一撃を回避してみせた。
その様は、バケオロチには奇妙に映った。
ひどく、ゆったりとした緩慢な動きのように見えて、あたかもツルギ・千蝶が分身したかのよう。
そんな幻影ごと切り裂かんと大太刀が振り回される。
しかし、当たらない。
奇妙なリズム。
ツルギ・千蝶の動きは美しく、変幻自在。
翻弄されるバケオロチ。その動きの正体を、リンガは気付いていた。
「あれは薫の……マイヤの動きだ!」
蝶のように舞い、舞って舞って舞う。
バケオロチを惑わし、数多繰り出される斬を掻い潜る。
そして、斬る。
『ぐっ!?』
たじろぐバケオロチに、今度は白の陣羽織を翻しながら剣ノ舞夜が斬りかかる。
『マイヤ……! 剣など使えぬであろう!』
マイヤの本来の得物は槍。
退魔道具にも刀剣の類いはなく、剣技においてはTマーダーと融合している自身に分があるとバケオロチは迎え撃つ。
斬り結ぶ、剣ノ舞夜の太刀とバケオロチの大太刀。
幾度か打ち合い、バケオロチは目を見張った。
マイヤの姿に、ツルギの姿が重なる────。
「あれは……燐の剣……」
『馬鹿な、それは!?』
剣ノ舞夜がバケオロチを斬り払い、後方へと飛び退き言い放った。
「そう! これはマイヤに剣義様の力を。そして、剣義様にマイヤの力を与える退魔道具。銘を、鏡界の龍刃!」
その言葉に応えるかのように輝きを放つ、鏡界の龍刃。
輝きは無数の鏡となって、バケオロチの周囲を取り囲みその姿を映し出した。
「行こう」
「ええ、行きましょう。────退魔覆滅技法!」
二人から溢れる、千なる蝶の群れ。
そして、ドラグスラッシャーが二人の背後に舞い降りる。
鏡界の龍刃を手にし、駆け出す二人の仮面ライダー。
飛竜と蝶と共に、バケオロチへと立ち向かう二人はやがて光となり────それぞれ、鏡の中へと吸い込まれていった。
『なにを、する気だ……! ッ!?』
バケオロチを正面から襲った閃光。光はバケオロチの後方の鏡へと吸い込まれ、今度はまた別の方向から光が迸り、バケオロチの身体に傷を刻んでいく。
「さあ、舞いましょう。剣舞を」
姿は見えぬが、たしかにマイヤの声であった。
その声を合図に、鏡より現れるツルギとマイヤの斬撃が閃く────。
あまりの速さに、それは光に見えていた。
しかし、たしかにツルギ・千蝶と剣ノ舞夜がバケオロチに斬撃を見舞っていた。
溢れる蝶がバケオロチの反撃を阻害し、ドラグスラッシャーもまた鏡から鏡へと飛び回り、バケオロチを切り刻んでいく。
幾千の剣閃がバケオロチを切り裂き、そして─────。
「退魔覆滅技法」
「────龍蝶ノ剣舞」
バケオロチを背に立つ、ツルギ・千蝶と剣ノ舞夜。
二人が静かにその技の銘を告げると、バケオロチは静かに背から倒れ……爆発。
巨大な爆炎が、夜空に向かって燃え盛る。
「よもや、こんな退魔道具が存在するとは……」
バケオロチを倒したと、一息ついたマイヤが鏡界の龍刃を見つめ呟いた。
薫はマイヤとして戦い数年。マイヤになるための修行は十年前より行っていたが、鏡界の龍刃という退魔道具に関して薫は聞かされていなかった。
おそらく、薫の祖母センも存在を知らないだろう退魔道具。
「……美羽さん……?」
ツルギは鏡界の龍刃を改めて見直すと、意図せず美羽の名を口にしていた。
この剣から、美羽を感じ取ったがゆえであった。
『おのれ、こうなれば……!』
ひどく恐ろしい声がした。
地の底より響いたような、倒されてなおまだ死んでたまるかと現世にしがみつく怨念の声。
「バケオロチ……!?」
「なにを……!」
バケオロチが倒れ伏した場所より現れる巨大な穢れ。
穢れは巨大な黒い影となり、その名の通りオロチのような姿へと転じた。
「なっ……!」
『私だけでは死なん……! 貴様達も地獄へ連れていく!』
月は消え、夜空が赤く染まる。
暗天。
穢れが満ちた世界にライダー達は引き込まれる。
さらに、バケオロチが発生させた穢れの渦から次々と化神が生み出されていく。
『お前達など塵にしてくれる!』
「おいおいマジかよ……うわぁ!?」
バケオロチの口から放たれる火球がライダー達を苦しめる。
ライダー達は怨念の炎に包まれてしまった。