修行と実験の日々を送り1年ほど過ぎた頃、俺たちは遂に海に出た。海賊王におれはなる。
「出発したは良いものの、ホントにその兄ちゃんも一緒なのか?結構怪しいと思うんだが...大丈夫かねぇ?ハクさん、モモさん」
「ええ、勿論ですよ。寡黙な彼があんなに熱心に僕たちの歌を褒めてくれたんです。そんな彼からのお願いを無碍には出来ませんよ」
「普段はまじで首を縦に振るか横に振るかしかしないんだぜ。いやー、おっちゃんにも見せたかったなぁ。顔赤くして身振り手振りで必死に感動を伝えようとする健気なザザのこと」
「へぇ〜、そんなにか。まぁ綺麗な顔にあの歌声だ、絶賛する気持ちも分かるがねぇ。んでも、この人が...想像つかねぇなぁ」
「......」
これ以上余計なことを言うとどうなるか分かってんだろうなって目で見てくるザザこと再不斬。桃地再不斬の名は一般人でも知ってる人は知ってるくらいの知名度だからな。安直だが偽名を付けた。
そして再不斬のキャラは、たまたま聴いた俺たちの歌に心底惚れてしまい、是非一緒に旅をさせて欲しいと懇願してきた俺たちの大ファン兼用心棒、という設定だ。
ウケるな。
変化の術で特徴の無い男に姿を変えていた再不斬だったが、見た目と雰囲気のギャップがあり過ぎで逆に不自然だと辞めさせた。
今までは人と関わらなかったから良かったかもしれないが、これからはそうはいかない。
今の顔は普段とあまり変わらない。但し、鼻から首を覆っていた包帯を片目に巻き付け、肌と髪の色を染料で少し変えているが。
切れ長の細く威圧感のある眼と雰囲気がマッチしていて実に殺し屋臭いが、それが逆に腕の立つ用心棒というカモフラージュに繋がる。はず。たぶん。
舟乗りのおっちゃんがあまりにもラフな話し方のせいでホントに効果あるか不安になるが、おっちゃん的には慣れてるらしい。
「海の男どもはどいつもこいつもイカつい顔して態度も声もデケェんだ。それに比べりゃザザさんは背は高ぇが細身だしな、可愛いもんだ!別嬪さん2人をしっかり守ってやれよ!わっはっは!」
「もう、別嬪だなんて。奥様が聞いたら怒られちゃいますよ?」
「おっといけねぇ、母ちゃんにゃ内緒にしてくれよ」
これを可愛いと言えるおっちゃんマジすげぇ。あとハクはハクで楽しんでるな。最初の頃と比べても再不斬とちゃんと話すようになってるし、良い傾向だ。仲良くやれてそうでよかったよかった。
「それに可愛いだなんて。ダメですよ、仮にも僕たちは吟遊詩人なんですから。言葉には厳しいんです。世間一般ではこういう顔は、強面とか暗殺者とか死んだ魚のような眼と称するんですよ」
「やめたげなさいハク」
ここぞとばかりに煽るんじゃあない。再不斬ピキってるから。無言でプルプルしてるから。もうなんか怒りが抑えきれずに白目むいてない?怒髪天ついてない?やべぇよ。
火の国までの数日間、大丈夫かな。
それにしても暇だなぁ。霧が濃くて何も見えない。水銀で作った釣り糸を垂らして海中を索敵しているが、特に敵影も無し。
霧に紛れさせて水銀を散布しているが、そちらも問題なく、ただただ霧が濃いだけの日々だ。
「よっ、一丁あがり」
「ほぉ〜、よくやるなぁ。大したもんだ」
「まーね、釣りは得意なんだ」
糸も針も疑似餌も水銀製だから触覚はある。チャクラで操り魚が近づいた瞬間に針を伸ばし変形させ魚を仕留める、簡単な作業だ。ちなみに竿は無い。糸を手に持って釣りしてる。
俺は毎日釣りをしたり水銀でこっそりアクセサリーを作ったりものを書いたりして暇をつぶしているが、再不斬は日がな1日瞑想している。瞑想し過ぎて寝てるんじゃねぇかって思えるくらいだ。
水銀でイタズラを仕掛けようとしたこともあるが、すぐにバレて面倒くさそうに睨まれた。何故わかったのかこっそり聞くと、音と空気の流れだと。その気配察知スキル欲しいと言ったら修行しろと冷たく突き放された。くそう。
そしてハクはと言うと、再不斬と一緒に瞑想したり、あたかも荷物から取り出しましたと言わんばかりに用意した熔遁のゴム布を縫い合わせて、ウォータークッションやエアークッションを作って舟乗りのおっちゃんに喜ばれたり。俺と一緒に釣りをしたり、夜になれば吟遊詩人の真似事をして俺が書いた適当な文章を歌にしたりと充実してる。相変わらず多才だな。
舟乗りのおっちゃんは元忍者だったらしく、火遁を扱うことが出来た。釣った魚は全ておっちゃんが焼いてくれた。家具や調理器具は巻物にしまっているためここでは使えない。焼くなり煮るなりの簡単調理しかできないのが残念だ。まぁ調味料は複数揃えてあるから、味付けは豊富なんだけどな。
おっちゃんが元忍者だと知ってからは、特に隠す理由もなくなったので俺たちも忍者であることを話した。
んで、再不斬と一緒にチャクラコントロールの修行をしたり、再不斬相手の1vs1で血継限界を用いない戦闘訓練を続けていた。流石に無闇矢鱈と血継限界を見せる訳にはいかないからな。おっちゃんに見せたら、今後はおっちゃんが追い忍に狙われるかもしれないし。
ハクは氷遁を使わずに高速戦闘を可能としていて、土遁 大地転踊で空中に岩礫を浮かせ、三次元的な高速移動術をもって再不斬を苦戦させていた。更に空中の足場を覆う様にドーム状に風の結界を作り出すことで、ハクの土壌を自分で作りあげていた。氷遁を使わない魔境氷晶みたいな感じだ。もう何が何だか分からなさすぎて凄いとしか言えない。語彙力失うレベルですごいと思った。背中に宇宙を背負いながら見ていたぜ。
そして俺は逆に銀遁を使わなかったらあんまりパッとしない感じなんだよな。ハクみたいな派手さは無い。水遁や風遁で足止めを行い、幻術を使いつつ雷遁で中距離攻撃って感じ。近づかれたらチャクラコントロールと雷遁による肉体活性でスピードとパワーを上げてぶん殴るみたいな。特別成長はしてないかな。
まぁ海の上では使ってないけど、瞬閧は派手だ。服が弾け飛ぶくらいには。毎度毎度あられも無い姿を晒していたせいか、ハクが専用のインナーシャツを作ってくれた。まんま隠密機動の装束だ。
再不斬との戦闘で霧隠れの術を使われた時、最初の頃は何も見えずに本当に苦戦を強いられた。こっちは見えないのに向こうからは丸わかりなんだぜ。ただでさえ実力で負けてるのに一方的に嬲られるんだ。
やろう、ぶっころしてやる!!
と何度叫んだことか。気分は2時間ごとに起こされる青タヌキだ。
ほとばしる怒りで逆に冷静になった俺は、全身からチャクラを放出し擬似的な制空権を作り上げることで何とか対応出来るようにした。俺の制空権に入った瞬間に再不斬の身体はくの字に吹っ飛んだぜ。ずっと俺のターンだ。
放出するチャクラも最初は球体だったが、途中で範囲を見切られたから性質変化を使って稲妻状にしたり流水状にしたり風で視認不可能にしたりと工夫してる。まだまだ俺のターンだ。
初めて模擬戦をした時は、見たことも聞いたこともねぇ技ばかりだって言われたから、作ったって言ったら遠い目をしていた。ハクも一緒に遠い目をしていた。
何かを思い出しているんだろうか。
そういえば制空権を作った時も同じ顔をしていたな。
何かを思い出しているんだろうか。
とまぁそんな生活を続けていたある日、もうすぐ木の葉に着くという時に事は起こった。
再不斬が俺とハクに視線を寄越す。俺たちは頷く。
「こりゃ、なんだ?霧が...さてはまたあんたらの仕業か?」
「ちがう!逃げろおっちゃん!」
キキキキキンッ
飛んでくる手裏剣をハクが千本で弾く。ついに見つかったか。
「てめぇは忍刀七人衆の1人...林檎雨由利か」
「はぁい、忍刀七人衆の桃地再不斬。あぁ、ごめんなさいね。そう言えば抜け忍だったかしら?」
好戦的な笑みで犬歯むき出しにしてる赤髪の女は林檎雨由利と言うらしい。忍刀七人衆...分かっちゃいたが、やはり来たか。
「あの刀の名は?」
「雷刀 牙だ。雷遁と相性が良い。雷のチャクラを流すことで刀身の切れ味が増す」
「という事は彼女も雷遁使いという事ですね。相性が良いのは風遁ですか」
水場だから水遁は使い放題。ハクの氷遁も然り。雷遁に相性が良い風遁は俺もハクも得意分野だ。だからと言って油断はしないがな。
生まれて初めて感じる殺気に指先が震える。恐怖か、武者震いか。
それを決めるのは、俺自身だ。
「他に誰も居ない様だが、テメェ仲間はどうしたよ。いつもつるんでいた奴らは」
「はぁ?アンタがそれ聞く訳?水影が今の女に変わってからバラバラになっちゃったわよ。そりゃそうよね、アタシらはアンタらと敵対してた。だって四代目の方がずっとスリリングで最高の殺し合いが出来たんだもの!!」
「雷遁 轟雷の術!」
二振りの雷刀 牙から電撃が発生する。
バヂヂヂヂヂヂヂヂッ!!
千の鳥が戦慄く音が木霊する。敵の攻撃は銀色に光る液体の盾によって防がれていた。
【敵意を感知しました。
ナイスだアファイム。ついでだ、鬱陶しい霧を晴らそう。
「風遁
「なんだい、その銀の液体は?アンタの仕業みたいだねぇ。あら、綺麗な顔してるじゃない。アタシを滾らせてくれるのかしらぁ!?雷遁 雷球!!」
「氷遁 氷陣壁!」
飛び交う雷の球をハクの氷壁が防ぐが、氷に帯電することでヒビ割れ破壊される。
「今度は氷?ちっ、邪魔くさい血継限界ねぇ。アンタら何よ、再不斬の部下?アタシ、再不斬とやるためにわざわざここまで来たんだけど。アンタら2人とも可愛い顔してるけどさぁ、タイプじゃ無さそうなのよねぇ。もっとヒリつくような殺気を頂戴よ」
知らねぇしお前も戦闘狂か。そういうのはもう羅緋だけで間に合ってるっての。
「辞めてくださいよ部下だなんて、虫酸が走ります」
「けっ、こっちのセリフだ」
仲良くしてよ。ハクはもうなんか、俺と話す時と再不斬と話す時でギャップがあり過ぎなんだが。えっ、二重人格とか言わないよね?
「丁度良い、お前らでやれ。こいつ1人程度、俺の力が無くとも倒せるくらいでなくちゃ足でまといだ」
忍刀七人衆って追い忍の中のエリートだろ?再不斬も入ってたはずだし。自分と同レベルのはずの相手をそんな言い方したら、挑発と捉えられかねないぞ。
「...はァ?アンタそれ本気で言ってる?まるでアタシがあんたより下で、あまつさえそんなガキどもに負けるって聞こえたんだけど?」
「そう聞こえなかったんならその耳はただの飾りってこった」
「実力は認めてたけど無口でつまんない男と思ってたわ。アンタそんな冗談も言えるの」
なんか再不斬と話し始めたからこっちはこっちで話してよ。
「ハク、どうする?どっちから行く?」
「...再不斬さんは、僕たち二人でやれって言いたかったんじゃないかな」
「えっ、そうなのか?てっきり1人ずつかと。2人一緒でも良いぞ。安牌とってそうするか」
「随分余裕そうに見えるけど、相手は本物の忍者だよ?僕らも忍術は使えるけど、戦闘経験はお互いの模擬戦と再不斬さんとの手合わせくらいだ。1人でやったとして、モモには勝算があるの?」
「ん?うん、あるぞ。というか割と完封できると思う」
「えっ?」
「ほう、仮にも忍刀七人衆に対して完封とは大きく出たじゃねぇか。面白い、それなら1人でやってみろ」
「おっけー。そういや再不斬に銀遁を見せるのはほぼ初めてみたいなもんだな」
「お手並み拝見といこうじゃねぇか」
そんじゃアファイム、いつも通り頼りにしてるぜ。
【了解しました、マスター。戦闘を開始します】
「っっなっめんなガキがぁ!!雷遁 電雷砲!!」
「
水銀の盾が帯電する。水銀も金属だから、電気自体はしっかり通る。が、空中に浮かせてしまえば問題なく対処可能。
「
さらに。
「
「っちぃ!?アタシの電撃を!なんなんだいこの攻撃はっ」
あえて電気を通しやすい水銀で攻撃を受ける事で帯電させ、そのまま攻撃に転じれば雷遁を纏った銀遁になる。
【手裏剣が投擲されました。防ぎます】
っと、やっぱ一筋縄じゃないな。
「忍法 霧隠れの術」
「これは再不斬と同じ術か」
なるほど、霧で視界を奪い好機を虎視眈々と狙うって訳か。
【水銀を微粒子状に散布しました。霧の範囲内において、僅かな変化も見逃しません。敵影を感知、補足しています】
「残念だったな。俺にはあんまり意味ないぞ、それ」
チャクラ追加だ、アファイム。
「
「ぐぁっ!?くっそ、この霧の中どうやって!?感知タイプかっ」
【斬撃にて捕捉完了。クナイが投擲されました。防ぎます】
いや感知タイプじゃねぇよ。ん?そういえば俺って何タイプの忍びになるんだろ。回復も出来る、感知もまぁできる。戦闘もそこそこ。万能タイプ?
「くっ、アンタなかなかやるじゃあ無いか。ヒリついてきたよ」
「そうか。俺は命の危険を感じて今にも震え上がりそうだよ」
「そんなボケかますなんて随分余裕なんだね。ねぇアンタ、名前は」
「モモだ」
「そう、モモね。アタシの名は林檎雨由利。脳がヒリつくような刺激的な戦いが大好きなんだ!アガって行こうじゃないお互いに!!雷遁 雷化の術!!電光石火!!」
【防ぎます。真正面からの突進です】
「ぐっ!?あっぶねぇなっ。
【左です。真上です。右斜め下からの突きです。剣戟の連鎖が続いています。補足情報として、加速度的に速度が上がっています。このままでは追いつかなくなる可能性が高いと予測します。解決策を模索します】
相変わらず目視じゃ追いつかねぇな。俺と戦うやつはみんな俺よりスピードが早いの何なんだよっ。
「全方位自律迎撃体勢、
「そんな殻に籠ってどうするんだい!アタシの速さにビビっちまったのか!?アタシを完封するんじゃなかったのかい!?もっとヒリつかせておくれよ!!ホラホラホラホラホラホラァァっ!!はっはぁ!針なんて出しても無駄さァ!!」
時間を稼げアファイム。オートモードで迎撃しろ。
【既に26回の迎撃を行っております。敵の攻撃力、速度共に対応可能範囲内です。靴と服がゴム製で良かったですね】
本当にな!ったく皮肉なんていつの間に覚えやがったんだ。成長してやがる、嬉しいぜ!
さてどうする。策はある、が、どうやって捕まえるか...。敵は俺だけを集中的に狙ってるんだ。それならハクとの模擬戦通り、いけるか。
アファイム、敵が殻に接触する直前に合図しろ。
【了解しました。敵の行動パターンを反芻し、次の攻撃を予測します。殻への接触まで4秒、3秒、2秒、1秒】
「水遁 大獄水牢の術!」
「はっ、自分ごと技の餌食とは馬鹿だねぇ!デカさは認めるが、雷化の術は身体を雷そのものにするのさ!水なんて効しゃしないよ!!この程度の術なんてすぐに破壊してやるっ!!」
「遅せぇよ。水遁 超純水」
「なっ、なに!?がばっ、雷が、効かな!?ぐっ、そ、外にっ...くっそ、なんなんだい、この、水圧は...重っがぼっ...ぶ...ふ、風遁っ... 大突破ァア!!!」
ちっ、これで決まったと思ったのにな。だが雷化の術は解けたか。
チェックメイトだ。
「ぐっ、はぁっ、はぁっ...はは、残念だったねぇ。さっきの技で相当チャクラを使ったはずだよ。仕留められなかった自分を恨みなァ!」
「雷遁
「なるほど、このレベルの雷遁の使い手だったとは恐れ入った。その刀が無ければ使えなさそうだが」
「アンタっ、あた、しに...なにをした!?」
「俺の扱う銀の液体、正体は水銀だ。高温で揮発し特定の物質に化学変化することで人体に有害となる。俺があえて水銀で攻撃を受けていたのは、あんたの雷を纏わせる為じゃない。毒による制圧、この為の布石だ。あんたの霧に乗じて俺も水銀を霧散させていた。その上であんたの奥の手、さっきの派手な雷遁だ。そりゃそうなるさ」
「なら、あの水は...何故雷化の術が効かなかったんだい」
「水ってのは本来電気を通さないものなんだ。わずかな不純物さえ交じっていない純水であればな。俺が作ったのは純水のそのまた上、超純水。雷と化したあんたを閉じ込めるための獄牢だよ、文字通りな」
「はは...完敗だね。まさか、本当にアタシが負けるなんてねぇ...あぁ、シビれたよ。参ったな、アンタに惚れそうだ。残念だねぇ、ここで終わりか」
「あんたのお陰で俺は俺の強さを実感できた。火遁と雷遁は俺と相性が良いらしい。殺す気で相対するなら、俺は迷わず水銀を使えそうだ。同情は無い。どうか安らかに眠れ」
「ふふ、忍びに安らかなんて。甘ったるいねぇ、でもまぁ、最期くらいは...悪く、ないね。雷刀 牙、アンタが使っておくれよ」
「そうか。確かに、受け取った」
俺は林檎雨由利が付けていた面と雷刀を受け取った。
【海中に不審なチャクラを感知しました。対処が間に合いません】
「っ!?ハク、再不斬!敵だ、避けろ!!」
「「!?」」
「水遁 水鮫弾の術」
「っちぃ!水遁 水龍弾の術!」
「氷遁
あっぶねぇ...んでも、ハクと再不斬の2人掛りでイーブンかよ。この特徴的な声...流石、尾の無い尾獣と呼ばれるだけのことはある。
「おやァ?既に倒されているんですか。アナタ、中々やりますねぇ」
「今度はてめぇか、干柿鬼鮫」
「お久しぶりですねぇ、桃地再不斬さん」
忍刀七人衆、2人目か。一緒に行動していたって訳じゃなさそうだな。最悪の偶然だ。
「再不斬さん、何ですかあの武器は。あれも忍刀ですか?」
「そうだ。大刀 鮫肌。油断はするなよ、あの刀はチャクラを食らう化け物だ。そいつを扱うやつ自身の実力もな」
ニィ、と笑う鬼鮫。その瞬間、姿が掻き消える。
【敵勢力、急速接近。対象:ハク】
「ハク!!」
「くっ、速い!?」
「避けますか!アナタも相当なスピードですねぇ!しかしそれだけじゃ逃れられませんよ!」
鮫肌が振り下ろされる。振り下ろすスピードが半端じゃない!どんだけ馬鹿力だよ!!
「アファイム、
「甘いですねぇ、私の鮫肌は斬るのでは無く...削る!!」
水銀が...融ける!?そうか、チャクラをっ!
「甘いのはてめぇもだ」
断刀 首切り包丁と大刀 鮫肌が交差する。その衝撃波を利用し、ハクが俺の隣まで避難する。
「おや?鮫肌の機嫌がこうも良くなるとは...余程銀のチャクラが気に入ったようですねぇ」
そうだった、あの鮫肌にも意志があるんだったな。俺の銀遁をメシ扱いかよ。見てろ、次はぶちかましてやる。
「危なかった...再不斬さんが居なければ、あれでやられてた」
「まさか俺の水銀の硬化を融かすとは...相性悪ぃぜ」
「あの刀は全ての忍者にとって天敵なんじゃないかな」
「たしかに。はは、笑えねぇ」
目の前で繰り広げられる超人共の体術&剣術合戦。あのレベルに入っていけるほど、俺の体術は人外じゃねぇ。
「援護に徹するかね、いつも通り」
「僕も隙を見て攻撃を仕掛けるよ。力じゃ全く及ばないけど、スピードなら負けてない。あの刀、鮫肌の特性も攻撃範囲も覚えた。再不斬さんを主軸に戦局を組み立てよう」
「干柿鬼鮫の名は知ってる。尾の無い尾獣と呼ばれるほどのチャクラ量の持ち主らしい。名前の通り水遁が得意なんだろうな。接近してない時も油断はするなよ、ハク」
「うん、わかってる」
再不斬と鬼鮫が距離をとった。その隙にハクが迫る。再不斬を相手した2vs1を思い出すな。
スピードはハクが僅かに上。でもそれ以外のステータスは全部相手が上って感じか。
いや、鬼鮫の表情を見るにまだ余裕がありそう?そもそもあいつはどういう立ち位置なんだよ。何しにここにやって来たんだ?抜け忍じゃないのか?
まぁ良い、雷刀 牙を手に入れたことだし。少し試したい。さて、
「っおい気をつけろ!そっち行ったぞ!」
っはぁ!?くっそ水分身...いや、こっちが本体かよっ!!
「鮫肌にはいつも助けられていますからねぇ。こういう時にご褒美を与えなくてはと思いまして。少々お付き合いください」
「舐め腐りやがって...腹ぁ壊しても知らねぇぞ!
ちっ、まじで全部喰っちまう気かよっ!しかも鮫肌が自分で動いてんのか、手添えてるだけじゃねぇかっ!?
「どうやらアナタの銀のチャクラは甘いらしいですよ。水飴のようにね」
「はっ、飯じゃなくておやつってか!痺れさせてやる!脳汁ぶちかませや!!
「これはこれは、味変ですか?鮫肌を喜ばせるのが随分お上手ですねぇ」
くっそが!!
「氷遁 群鳥氷柱」
「おっと、流石お早い。そしてどうやらアナタの氷も美味らしいですよ、フッフッフ」
「なるほど、やりずらいね」
再不斬は...水分身の数が増えてる。まだかかりそうだな。
アファイム!
【了解しました。
『ハク、ヤツに幻術を仕掛ける。俺に合わせて声にチャクラを乗せてくれ』
「!」
いくぜ。名付けて、
「「〜〜♪」」
「これは幻術ですか...しかし、この歌声は」
『時間を稼いでくれ、ハク!遠距離からぶち抜く!!』
「了解。土遁 黄泉沼+氷遁
ボロックソに連撃叩き込んでんじゃんハクさっすが!頼りになるぜ!
ダメ押しだ!銀の大洪水に呑まれちまえ!!
「結界術
アファイム、
【壁の作成、了解しました。何をするおつもりですか、マスター】
「まぁ見てろ。此処で良いか。雷刀 牙を
【
「そうだな...”
【了解しました。水遁の攻撃が迫っています。壁の耐久力に難があります。チャクラを追加してください】
チャクラ追加、了解。
雷遁によるエネルギーチャージを開始。
【壁に水鮫弾の着弾を確認。支障はありません。そのまま狙撃体勢を維持してください。結界内で水銀の消滅を確認しました。敵は結界の破壊を試みています。狙撃まで4秒、3秒、2秒、1秒】
「
ッッパァァーーン!!!
「うぐぅっ!?」
「い”っっっ!?!?」
「モモ!?一体何をっ」
っっっってぇぇえええ!!肩!!!やっべこれ肩外れたんだが!?!?鬼鮫の肩にも穴あいてるけど!!!
素人考えのスタンドじゃ衝撃吸収まで出来ねぇんか!!そりゃそうだろうな!!!
衝撃で壁も崩れたしそのせいで肩外れたこともバレたし何より3人とも驚愕した目で俺を見てる。俺も同じ気持ちだよ...クソいてぇ!!
ぼふんっ
「あっ」
変化も解けちまった。
「こ、子ども...?まさか、それが本当の姿ということですか。私が子ども相手にここまでの手傷を...フッフッフ。これだから忍者は面白い。これ以上は無粋ですかねぇ」
ハクと再不斬が駆け寄ってきた。ハクが心配そうに俺を見ている。そして再不斬は。
「ふっ!」
「ぉんっっっぎゃあーー!?!?い”た”い”!?!?」
「ちょ、そんないきなりっ!せめて何か一言くらい!」
「知るか。治してやっただけ有難いと思え」
いたいいたいいたいいたいぃぃぃ...っ。ぅぅううう泣きそうってかもう涙出てる。撃たなきゃ良かったよぉ。
「そうして泣いているところを見ると、年相応なんですがねぇ。未だに信じられませんよ」
「てめぇ途中から完全に手抜いてやがったな。何のつもりか知らねぇが、それで風穴開けられてちゃ世話ねぇぜ舐めプ野郎」
「元々殺すつもりはありませんでしたよ。言った通り鮫肌へのご褒美と、あとは私の好奇心ですねぇ」
「好奇心...あんたも刀も、揃いも揃って俺たちの血継限界が目当てかよ。いってて」
「いいえ?鮫肌は確かにアナタ方の銀と氷が気に入ったようですが、私の目的は別ですよ。最近、水の国のとある港で素敵な出会いがあったんです。物資調達に出ていたら、どこからともなく現れました。彼らが」
なんだ、一体何の話だ。素敵な出会い?彼ら?
「一目惚れでもしたんですか?それが僕たちとなんの関係が?」
「一目惚れ...あぁ、その言葉は確かにしっくり来ますねぇ。確かに、私は一目惚れしてしまいました。あのお美しい歌声に」
「「「...」」」
歌声、水の国のとある港、素敵な出会い、彼ら。
この言葉から導き出される答えとは。
「まさか実在するとは、冗談のつもりだったのに。モノホンのザザじゃん」
「ぶっ、ごめんなさ...っ。ふっ、ふふ、顔を赤くして興奮しながら身振り手振りで褒める再不斬さん...あっ、間違えましたザザさんでしたね」
「笑ってんじゃねぇ!俺は了承なんざしてなかったろうが!好き放題言いやがってクソガキ共が!!」
「つまりあんたは俺たちのファンって認識でおk?」
「その通りですよ。いやはや、今まで歌など微塵も興味は無かったんですがね。あなた方の歌声は本当に素晴らしい。そんな歌声の持ち主を殺すなど、勿体ないじゃないですか。そう言えば肩は大丈夫ですか?」
勿体ない...いつでも殺せるけどって感じだな。まぁ、褒められてるから素直に受け取っておこう。
「展開が意外すぎる件。あんたに言われたくねぇっての、俺の肩はもう完治したよ。なんならあんたの肩も治すけど」
「おやおや、それは大変嬉しいファンサービスですね。是非お願いします。ついでにサインも頂けますか?」
サインて。そんなもん考えた事もねぇわ。治してる間に考えるか。
「ハク、そういやユニット名は何にする?あ、ってか自己紹介してなかったな。俺、モモね。こっちは双子の兄のハク」
「干柿鬼鮫です。以後、お見知り置きを」
「よろしくお願いします、鬼鮫さん。やっぱり分かりやすい名前が良いかな。出来れば僕ら2人の名前だって分かるような」
「てめぇら和みすぎだ」
うーん、黒髪の白と白髪の百。黒眼と紅眼。氷と水銀。White&Silver。
あ。
「ツクモモでどうだ、ハク?」
「ツクモモ?あぁ、なるほど。白は百から一を引いたものだから
「おー、モモだと再不斬も含まれてるしな」
「なぜ俺を含める」
そりゃ、俺たち運命共同体だし。1人だけ仲間はずれなんてする訳ねーじゃん。
「感動ですねぇ、まさか私の目の前で推しの歌姫たちの名前が誕生するだなんて思ってもみませんでしたよ。では私はツクモモファンの第1号ということで」
「おー、おめでとー。姫じゃねぇけどな。うっし、肩の治療も完了だ。流石に穴塞いだのなんて初めてだからちょっと怖かったけど、問題ないみたいだな。良かった良かった」
「ありがとうございます、モモさん。私、もうそろそろお暇させて頂きますが...最後に1曲だけ聞かせて頂けませんかねぇ」
「ハクがいいなら」
「大丈夫だよ。音楽はありませんので、赤ペラでよろしければ」
「そんじゃバラードで...3.2.1」
「「〜〜♬」」
鬼鮫が俺たちの目の前で嬉しそうに腰を下ろす。鮫肌もギィギィと鳴いている。嬉しがってる?っぽいな。お前も歌が好きなのか。歌声に少しだけチャクラを流してやったら、なんだかうっとりしている様だった。
「...はぁ」
再不斬はため息をひとつ。それから少し離れて片足立ちで木にもたれ掛かり、目を閉じて静かに佇んでいた。
「「〜〜♪♬」」