主人公が曇らされてばっかりの世界に、一般通過過負荷(マイナス)が、ダイナミックエントリー! 作:霓霞霖
浦原事件から約50年後。
「こら、
「待てと言われて待つ奴があるかよ!」
『狭間空間』で、茜雫が
恋次の見た目はまだ幼く、10代前半の見た目をしている。生まれてからの年月も、見た目に違わぬ長さである。
となれば精神も見た目相応で、絶賛クソガキだ。
「アンタ、何度座学を抜け出すの!」
「何の役にも立たねぇモン学ぶくらいだったら、畑の手伝いしてる方が何万倍もマシだ!」
座学が嫌いなクソガキ恋次君。彼は学校を抜け出しては畑仕事に精を出し、それが見つかる度に茜雫に追われる日々を過ごしている。
「彼奴は、また何をやっておるのだ……」
校舎の窓越し、座学の休憩時間に、ルキアは恋次の逃走劇を目撃し、呆れて息を漏らしていた。
「おー、やってるやってる。子供は風の子元気の子、『エリンギ、マイタケ、ブナシメジ』、なんてね」
「カイ様。来られていたのか」
「今来たところだよ」
ルキアと同じように逃走劇を目撃し、しかしこちらは微笑ましく見守るカイ。彼の突然の来訪に、最早慣れたルキアは習慣としてカイへ一礼する。しっかり敬いの念も籠っている。
その敬いの念を今後どう扱うか困りつつ、ただ日常会話を始めたカイである。
「恋次君の元気は見れば分かるとして。君や、君の友達はどうだい?元気かい?」
「ああ。私含め、皆元気にやっている。むしろ、元気でなかったら失礼だろう」
カイの確認に、ルキアは感謝も交えて答えた。女の子なのに力こぶを作っての元気アピールには、カイは少し苦笑する。原作同様の子に育てようとして、ちょっと教育誤ったかも、と。
ちなみに、敬いや感謝の気持ちを持ちながらも敬語を使わないのは、それもカイの教育だ。
「元気かい、それは良かった。せっかく助けたのに飢えでもしてたら、助けた甲斐がないしね。でも、『狭間空間』はもう許容人数いっぱいだから、食糧事情は不安だったんだよね」
「食事が必須な霊力持ちは少ない。その数少ない者たちも、自ら進んでここを出ている」
「申し訳ない話だね。もう大人になったんだから独り立ちしろと、暗に強要するのは」
カイとルキアが話し合うとおり、ある一定まで育った霊力持ちたちは、『狭間空間』を出るのが暗黙のルールとなっている。
内心では上手い仕組みを作ったものだと感心しつつ、カイは言葉だけは謝罪をした。
カイはあくまで弱い者の味方であるし、根っこはやはり自分本位なのである。あくまでこの場所は、原作通りに話を進めるための場、原作キャラの幼少期を支える場であると。
「カイ様が気に病む必要はない。皆、己の足でここを去っておるのだ。ここは弱き者の場。強くなった己は、その足で歩まねばならぬのだと。力ある者は、その義務を果たさねばならぬのだと。その事を学んだ者たちは、そこまで育ててくれたカイ様たちに感謝こそすれ、恨むような事は決してない」
「こちらがそう教育しておいてなんだけど。強者の理屈、というか、結局は大義名分だね。そういうお題目がなければ、ヒトは偽善も行えないという訳だ」
「『やらぬ善より、やる偽善』。茜雫先生もそう言っておられたぞ」
「全く。教育が行き届いてるね。これじゃあ、僕の出る幕はなさそうだ」
良心を揺さぶるような言葉を聞いても動じないルキアの姿に、カイは肩をすくめた。両手を肩の高さまで上げるその仕草は、折れない心へ降参を示しているようでありながら、負けを認めきれないがために中途半端に手を上げる仕草であるようにも見える。
とかく、子供たちが勝手に育っている姿には、感心を抱くカイである。
「カイ様は、我々に甘言を並べる悪魔の役であろう。我々が甘えぬように諫める役はいくらでもある」
「都合が良すぎる解釈だね。僕はそんな良い奴じゃないよ」
手前勝手に保護した子供たちが全肯定してくる様に、苦笑するカイでもある。
「『夕闇に
「ちょっ、それは卑怯―――ぎゃああああああ!!」
「……やりすぎてないかな?茜雫」
恋次を弥勒丸が起こした旋風で巻き上げる様に、苦笑するカイでもある。
茜雫はちゃんと落ちてくる恋次を風で受け止めていたが。
「ふむ。彼奴も懲らしめられたようだし、そろそろ良いだろう。―――おーい、恋次ー!次はモト先生の実技だー!今日は鬼道の初歩をやるそうだぞー!」
「マジか、それを早く言えよ!それならちゃんと受けるぜ!」
「座学もちゃんと受けなさい!そんなんじゃ死神になった時、苦労するわよ!」
ルキア、恋次、茜雫の仲睦まじいやり取り。
それを微笑ましく見つめるカイでもあった。
◇◇◇
浦原事件から約70年後。
この約20年の間に、すでにルキアと恋次が『狭間空間』を出て、死神の学校、『真央霊術院』に通って、もう卒業していると、ここに明記しておく。
あの後ちゃんと座学の大事さを知った恋次だったが、残念ながら時すでに遅く、あまり学べないまま真央霊術院へ入学してしまったので、知能は原作と変わりない。斬術・白打・歩法・鬼道の実技は受けていたが、本人の性分的に斬術に傾倒した戦闘がお好みなので、戦い方も原作と変わりない成長をしていくだろう。
「いやー、本当はもっと成長過程とか描写した方が良いんじゃないかと思ったんだけどさ?別に恋次君とルキアちゃんが仲良いのなんか当然だし、一応
恋次とルキアの馴れ初め(当たらずとも遠からずな表現)は概要だけでも示したので割愛である。
「彼らが死神を目指す理由も、力ある者の義務って教育したから大丈夫だろうし。道徳教育とかは、海燕君にぶん投げようってね?僕は道徳なんて教えられる立場でも人格でもないし」
後の教育は原作キャラ連中にぶん投げて、放り出す、カイの放任主義(?)である。
「後はほら。もう僕視点で語れる場面も少なくなってきたし、そろそろ話をすっ飛ばそうかなぁって。経過確認するだけの話をいくつも重ねるのも、読者は飽きるだろうからねぇ」
経過確認はしっかりしていきたいが、それでは読者は楽しめないだろうという、エンターテイメントの難しい部分だ。
「という事で、経過確認は、箇条書きでぱぁーと行こう」
以下が、これまでに起こった出来事である。
・ルキアが『狭間空間』にいる最中、虚に襲われていた緋真を、流魂街の哨戒任務に出ていた
・白哉は順調に出世しながら、緋真と交際。『流魂街の者の血を混ぜてはいけない』という家の掟を破る事承知で祖父や父を説得し、無事結婚。
「ま、白哉君のおじいちゃんたちは緋真が虚弱で長くない事を知ってたんだよね。だから、白哉君のわがままを叶えた。緋真の死後に新たな嫁を宛がえば良いって。ちなみにだけど、緋真ちゃんの虚弱は、ルキアちゃん、つまり自分の一部を切り取った影響ね。彼女の魂魄、その比率はルキアちゃん分、『霊王の爪』の方が大きかったんだろうね。ルキアちゃんを切り離すのは、半身以上を切り分けるようなものだった訳だ」
白哉の祖父らが持つ思惑やら、本作独自設定はともかく。
・彼らの思惑通り、緋真は早世。ただ、彼女はルキアを探してほしいと、白哉に頼んだ。
「忌避感もあったとはいえ、愛着もあった半身だ。置き去りにした事は、ずっと心残りだったんだろう。ま、探しても無意味だけど」
ルキアは『狭間空間』に居たので、流魂街を探したところで見つからない、という話だ。
それはさておき。
・六番隊隊長を務めていた白哉の祖父は、衰えを理由に白哉へその席を譲った。晴れて、白哉は六番隊隊長となった。
・後の六番隊副隊長、恋次は十一番隊を経由しつつ、現在は六番隊八席である。
「隊長といえば、二、三、七、十が埋まったんだっけ。後、十一も変わったんだよね」
・二番隊隊長に砕蜂が就任。副隊長は夜一が居た時と変わらず
・十番隊隊長に志波一心が就任。散々催促されて、本人が折れた形だ。副隊長はノーネームド(原作に影も形もない人物)。後に副隊長となる松本乱菊は、まだ同隊七席である。
・三番隊隊長に市丸ギンが就任。副隊長はこちらもノーネームド。後の副隊長である
・七番隊隊長は、前副隊長の
・十一番隊は、鬼厳城が更木出身の男と一騎打ちして死亡。こうして、更木の剣八、原作の彼が誕生した事となる。ちなみに、更木剣八は隊長の人事権使って、しれっと
「隊長格の話したし、僕に対する彼らの対応も明記しておこうか」
・砕蜂は初のカイ監視任務の際、拷問を仕掛けた。が、何の成果も上げられないと悟って、以降は書類仕事を持ち込みながら、それに集中しつつの監視を行っている。たまにカイがちょっかい掛けるので、その度にカイを白打している。
・白哉はカイが初手で緋真の事を訊ねて以降、無視を決め込むようになった。砕蜂と同じように書類を持ち込んでいる。カイが邪魔してこないように、『千本桜』でカイの全身を覆って閉じ込めている。
・一心は初の監視任務から、
・ギンは初の監視任務の時、藍染の監視を恐れて無言を貫いていた。なので、カイが気さくに「同じ白髪糸目仲間だね」と言ったら始解の『
・刃右衛門は初の監視任務からだんまりだ。カイと一言も話さないが、絶対に1時間は監視する。日によっては2・3度監視に来る事があり、カイは脱走できないと、刃右衛門が監視の日は脱走を諦めている。
・更木は初の監視任務でカイを切りつけたが、カイのあまりの脆さに呆れて、以降切り掛かる事はしていない。ただ、1時間の監視任務をサボる事はなく、暇つぶしとして話し相手にやちるを連れてきている。
「さて。話を白哉君に戻す、と言うか、ルキアちゃんの話をしようか」
・『真央霊術院』に通うルキアを見つけた白哉は、緋真と瓜二つな彼女を緋真の妹と確信。朽木家当主となっている自分の強権を振るって、ルキアを朽木家の養女にする。
・ただ、朽木家の権限で『真央霊術院』の教育課程を省略する事はせず、ルキアは自分の意志でしっかりと『真央霊術院』を卒業した。
・現在のルキアは十三番隊十五席として、白哉の圧力により中々出世できない日々を過ごしている。
「経過報告はこの辺かな?後言う事があるとすれば、惣右介君が
・未来の
「次の予定はーっと。海燕君が死んじゃう話があるけど、そこは僕ノータッチ予定だし、触らないで良いかな。という事は、次は現世の話になるかもしれないね」
カイは次触れるべきイベントに思いを馳せる。
「それじゃあ、ちょいと短めだけど、キリが良いし今回はここら辺でお開きとしよう。じゃね、バイビ」