主人公が曇らされてばっかりの世界に、一般通過過負荷(マイナス)が、ダイナミックエントリー!   作:霓霞霖

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6 MEMORY OF STIGMA

 一兵衛の攻撃によって、霊王大内裏から文字通り叩き出されたカイ。彼は攻撃を受けた時点で全身複雑骨折、霊王宮表参道に不時着した時点でミンチになっている。

 

「……冗談じゃないかと思う程に耐久力低いNe()、この下手人はSa()

 

 そんなカイを追ってきて、霊王宮表参道に降り立つ零番隊の3人。ただ、二枚屋(にまいや)王悦(おうえつ)はカイのその脆さに、思わず苦笑を漏らしていた。何がどうして、こんな脆い相手に自分たち死神は、ここまで追い込まれているのかと。

 

「天示郎。起きろ、麒麟寺天示郎。……うむ、駄目じゃな」

 

 ミンチのカイ、苦笑する王悦を横目に、一兵衛は釘を打たれて眠りこけたままの天示郎を起こそうとしていた。

 通常だったら、零番隊の者たちはこれで起きる。何故ならば、彼ら零番隊はこの霊王宮の霊脈とほぼ同化しており、この霊王宮が消滅しない限り、魂がこの霊王宮に縛られているからだ。体がどれだけ欠損していようが、それらは霊王宮の霊脈を以って再生されるはずなのである。

 だが、今回は違う。いくら一兵衛に名前を呼ばれようと、天示郎は復活しない。

 その状態を、科学者の一面も持つ千手丸は検分する。

 

「……釘に、何か仕掛けがあるのか。……いや、そうではなさそうじゃ。この釘は、あくまで彼奴(あやつ)の能力、その一部が具現したモノか?」

 

 頭の中で思考を巡らせるが、残念ながら答えに至る事はできずに居る。

 

「その推測も、間違いではないよ。ある意味で言えば、その釘は僕のスキルの一部だ。と言っても、釘の形しか取れないとか、釘しか出せないって訳ではないんだけどね?でも、螺子は先達が居るからさ。螺子以外にしようと思って、なんとなく釘に拘ってるんだよね。先達の螺子が法螺吹きからの連想だから、僕の釘も僕のスキルから一応連想してるんだけど。ま、連想ゲーム過ぎて他人にはどんな連想で釘を選んでるのかって、分かりづらいよね。そういう意味では、どういう連想から釘を選んだのか予想してもらうのも、楽しいかもね」

 

 そんな答えを出せない科学者に対し、途中式を乱雑に書き連ねた長文で答えを教える声。もちろん、さっきまでミンチだったカイの声だ。

 彼は相変わらず、五体満足の姿にいつの間にかになっている。

 

「釘が能力を連想させるもの、か……」

 

Hey(ヘイ)、千手丸。もう敵の目の前だYo()?考える時間が欲しいなら、ちゃんボクから行っちゃって良いかNa()?」

 

「……無暗に対峙すべき相手ではない事を、そちも分かっていように」

 

「暗中模索で問題Nai(ナイ)Nai(ナイ)。とっておきを持ってきたからNe()ェ」

 

 王悦は千手丸に苦言を呈されながら、そのとっておきを構えた。

 刀身も鍔も柄も真っ黒に染まった、その斬魄刀を。

 

「王悦、それは封印している中でも危険な物じゃ」

 

「毒を以って毒を制す、Sa()。未知の相手にはこれが一番良いってのは、Oh‐Show(オウショウ)も分かってるでShow(ショウ)?」

 

「……仕方のない奴じゃ」

 

 危険な斬魄刀。その使用を止めようとしない王悦に呆れながら、一兵衛も一定の説得力を感じ、王悦に応じた。

 そうして、真っ黒に染められて、()()()()()()()()斬魄刀が、その名前(チカラ)を取り戻す。

 

「『虚仮(こけ)()()え』、『加羅絡繰々(からからくりくり)』」

 

 吹き荒れる霊力の風。暴風と変わらぬそれに思わず視界を閉ざしてしまったカイは、次視界を得た時に、王悦の変貌をその目にする。

 

 鍔が木製の歯車という刀を握り、その握る手、連なる腕が絡繰といった様相の外装に包まれ、さらには、元より身に着けていたサングラスが、スチームパンク感すらある、レンズをいくつも重ね合わせられる機構を持つそれに変わっている。

 

「……驚いた。君が使える斬魄刀は『鞘伏(さやふし)』だけ、有っても元々自分のモノくらいだと思ってたけど」

 

 カイは『加羅絡繰々』が王悦の元々の斬魄刀ではないと察している。まぁ、明らかに王悦の雰囲気から逸脱した様相である事から、そう察するのは容易だろうが。斬魄刀は、持ち主の魂を写し取るという仕様なのだから。

 

「シーオカな事を言うNe()ェ。この世界にある全ての斬魄刀は、ちゃんボクの斬魄刀だYo()?何せ、ちゃんボクは、ナンバーワン・ザンパクトー・クリエイラァー!!十・九・八・七・六・五枚、終い(四枚)に三枚、二枚屋Oh‐Etsu(オウエツ)!!なんだからNe()!!」

 

 二枚屋王悦は、高らかにそう、ただ事実を自慢した。

 そう。彼はこの世界にある斬魄刀の生みの親。鍛冶・鍛造という点でもそうだが、そもそも『斬魄刀』という概念を作った人物が、この二枚屋王悦なのだ。

 故に、全ての斬魄刀は彼の物であり、彼は全ての斬魄刀を使役できる。

 

Ma()、斬魄刀の親だからって、余す事無く全部は使役できないけどNe()?元の持ち主に操を立てるって感じでSa()。それもそれで愛らしくて良いじゃないKai(カイ)

 

 斬魄刀の生みの親。斬魄刀への愛深き故に、斬魄刀自身の愛も肯定する。言い方を返れば、ただの親バカかもしれない。

 しかし、だからこそ元の所有者でなくても、斬魄刀が彼に持つ忠誠心は高い。女性に具象できるモノがキャバ嬢モドキしたり、男性に具象できるモノがキャバの裏方したりするくらいには、忠誠心は高い。

 

「そして、このコはちゃんボクの言う事を聞いてくれるちゃんイイコ。しかし、能力が危険すぎて、封印されちゃってたちゃんワルイコでもあるのSa()

 

「『術式の開示!!本気だね』、なんてね」

 

 やはり親バカなのか、子供自慢を王悦は始める。自分から能力を明かす事について、カイはちょっとからかっている訳だが、親バカな王悦には聞こえない。

 

「始解はただ、相手の攻撃を読んで、自動迎撃してくれるってだけ。でも、卍解は馬鹿げてる」

 

 

 

 

 

 

「――――卍解、『是絡繰帰路蹴(これからくりきろける)』」

 

 

 

 

 

 

 卍解の解放。本来、それは始解以上の力の解放であり、先ほどより風が荒れるはずである。

 しかし、その卍解は、風を荒らす事はない。霊圧を溢れさせる事無く、静かに集中させる。集中させた霊圧はシンプルな日本刀と、サイバーなサングラスを形成する。

 

「この愛らしいコがなんで危険なのか。それは、所有者を暴走へと追い込んだからSa()

 

 王悦の口から語られるのは、昔話だ。

 

「カーシム、カーシム。あるところに、この尸魂界(ソウル・ソサエティ)の未来に貢献したいって、誠実で正義感の強い子が居ました。未来に貢献するとは何かを考えた時、それは誰でも使える霊力的機械技術を発展させる事だと結論付けました」

 

 機械を発展させる事で、皆の生活を豊かにする。そんな理想を掲げた死神が居た。

 

「彼の魂を写し取ったこのコは、当然彼の意志に沿う能力を得ました。それは、未来を演算するという、能力でした」

 

 未来を目指した故に、その死神は未来を演算する斬魄刀を得た。もちろん、悪用はしなかった。

 

「誠実な彼は、皆が幸せになる未来を、演算しようとしたのです。それが、彼の暴走の始まりでした」

 

 万人が幸せに過ごせる未来を見ようとした。そんなモノ、ありはしないのに。

 

「彼はその演算で、世界が滅ぶ未来を見てしまったのです」

 

 結果、彼は悪夢を見る事になった。自らが望んでいない、唾棄すべき未来を見る事になった。

 

「それから彼は、その未来を変えようと、足掻きました。多くの霊力的機械技術を生み出しました。死神が根本的に強くなる方法を探りました。異種族を食らって強くなる方法を見付けました」

 

 彼が望む未来では、死神や現世で生きる人間はもちろん、滅却師(クインシー)も、あまつさえ(ホロウ)も幸せになるモノのはずだった。それを望んでいたのに、彼は同族の人体実験はおろか、異種族に対する非人道な扱いも繰り返した。

 

「同族から狂人と忌避され、異種族から悪魔と謗られるようになっても、彼は滅びの回避に挑みました。頑張って、努力して、足掻いて、藻掻いて……。その果てに、彼は狂いました」

 

 理想を追い求めた彼は、壊れてしまった。

 

「貪欲に力を、未来を変えられるそれを求めた結果でしょうか。同族も異種族も問わず魂を食らい続けた彼自身の魂が耐えられず、彼は、ただ魂を食らうだけの獣になりました」

 

 人として限界まで足掻いた結果が、獣に堕ちる結末だった。

 

「魂という餌を求めるようになった獣は、極上の魂を嗅ぎ付け、霊王宮にまで侵入しました。しかし、そこに居るのは霊王の守り人。いくら力を付けようと、知能のない獣が、人智を超えたその者に適うはずもありません。そうして彼は、真っ黒に塗りつぶされ、今まで蓄えた力も、そうなるまでに至った意味も、自分の名前も失うのでした」

 

 超然たる力を持とうが、ただの暴力では、概念攻撃を持つ一兵衛に適うはずもない。

 彼は、一兵衛の概念攻撃により、力を全て剥奪され、封印された。

 

「しかし、守り人は彼の事を憐れみ、せめて彼の努力だけは残そうと慈悲を掛けたのです。だからこそ、名前を失った彼は、新たな名前を与えられました。『技術書』と」

 

 結果はどうあれ、その過程に培った物には価値がある。故に、一兵衛はその者を、その培った技術を世に広めるだけの書物にしたのだ。当時では実現できなかった技術も記された、そんな技術書に。

 

「遥か先の機械技術まで記されたその書物のおかげで、尸魂界(ソウル・ソサエティ)に流れてきた現世の技術者たちはその活躍の場を奪われる事になるのですが。ともかく、尸魂界(ソウル・ソサエティ)は優れた機械技術だけでなく霊的技術も手に入れる事ができたのでした、チャンチャン♪」

 

 さりげなく機械技術者たちが被害を受けた事を横に置き、王悦は良い話風にまとめたのだった。

 

「色々言いたい事はあるけど。君ら、零番隊は和尚を除いて1人になった時しか卍解が使えないんじゃなかったの?」

 

「博識だけど惜しいNe()、シーオツだNe()。ちゃんボクたちが使えないのは、強力すぎる自分自身の卍解。このコはちゃんボクのコではあるけど、ちゃんボクの魂を写し取った、ちゃんボク自身の卍解じゃないのSa()

 

「そういう事ね。本作独自設定だとしても、なかなか粋な計らいじゃないか」

 

 零番隊と本気で戦いたかったカイにとって、王悦が教えてくれた本作独自設定(真実)は喜ばしいものだった。

 王悦の本当の本気とは行かないが、手が抜かれた戦いにならない事は、願ってもない事なのだ。

 ただ、ここで期待を抱いていたカイは、いつも期待を裏切られてきた故に、ある事に気付く。

 

「……ちょっと待って?その斬魄刀、未来を演算するって言った?」

 

So(ソウ)。元の所有者みたいに遥か未来を見る事は無理だけど、君の攻撃を全て演算するくらいは余裕だYo()

 

「……『止めておけカカシ(オウエツ)。その術はオレに効かない』、なんてね」

 

「青ざめてるのが、その言葉がハッタリである何よりの証k―――……」

 

 カイは、自分との戦闘において未来を見るという事がどれ程悪手であるか、知っていた。だから、もし王悦が斬魄刀の能力を使ってしまえば、しょうもない戦いになると理解し、忠告したのだ。

 ただ、また期待が裏切られる未来を嫌がって青ざめたそのカイの顔を、この能力が何よりの有効打だから青ざめたと、王悦は解釈してしまった。

 結果が、口を半開きにして涎をたらしている、王悦の姿である。

 

「だから『止めておけ』って言ったのに。僕の未来を見るなんて、『無量空処(むりょうくうしょ)』に自ら突っ込むようなものだよ?」

 

 『呪術廻戦』に登場する技・『無量空処』。それは相手に無限回の知覚と伝達を強制し、知覚→伝達→行動のサイクルが行動にまで辿り着かないため、相手は膨大な情報量を流し込まれつつも、何も行動に移せなくなるというモノである。

 カイがこの状況をそう例えたが、同じ部分は、膨大な情報量を相手は流し込まれる、という部分だけだろう。

 

 端的に言おう。

 王悦はカイの攻撃全てを演算しようとした結果、膨大すぎる情報を脳に叩き込まれ、脳が限界を超えたのだ。

 無数の攻撃手段を持つ、カイの攻撃全てを演算したが故に。

 

「とっても残念だ……。これなら、『鞘伏』の方が10倍楽しかっただろうね……」

 

 予想通り期待を裏切られたカイ。その顔は、酷くげんなりしていた。

 

「ま、とにかく。一旦ブルスクの強制終了って事で、お休みなさい」

 

 脳を酷使した王悦を労わるように、カイはその脳と心臓に釘を生やさせた。こうして、王悦は永眠(スリープ)する。

 

「さぁ、次だ」

 

 天示郎も王悦も()()に落としたカイ。彼は、次を見据える。

 自身の卍解が解放され、本当の本気が出せるようになった、修多羅千手丸を、カイは見据えるのだった。




オリジナル斬魄刀『加羅絡繰々(からからくりくり)』:『虚仮(こけ)()()え』という解号、『是絡繰帰路蹴(これからくりきろける)』という卍解名含め、完全にネタで思いついた斬魄刀。特に、『是絡繰帰路蹴(これからくりきろける)』は、カ行とラ行だけ全て使って卍解の名前っぽいものが作れないかと考えたモノ。というか、このネタ斬魄刀の始発点。
 そんなネタ斬魄刀を供養するためにその斬魄刀の能力やら背景やらを考えた結果、何故か『MELTY BLOOD』の『ズェピア・エルトナム・アトラシア』を丸パクリするところに行き付いたのであった。

 次回の更新は、4月7日の予定です。
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