氷風のエエカトル   作:Damned

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#4 紡がれる導火線

 

 

 

 

 ──数日後。

「侵入禁止エリアに行こうと思ってな」

 冷泉が気楽そうな雰囲気で放った言葉に、呆れたような声でテュファは尋ねた。「コンビニに行こうと思ってな」くらいのもので、部屋とはいえ半ば犯罪の暴露に近しい。

「……あなた、言っていることが分かっていますの?」

 

「分かってなかったらこんなことは言わんさ。まぁ、正気を疑われるのは前提だよ」

「最悪、アカウント停止になりましてよ。誤魔化すことができるとしても限界がありますわ」

 

 その時はその時である。それに、企業連中は今回の一件を重く見ているはずだ。以前あったLINK VRAINS(リンクヴレインズ)崩壊の再来となるのは大きな損失につながる。

 

「どちらにせよ、SOL(ソル)の連中も自分で調査するだろうから、それに乗じて乱入するさ」

「あなた、わたくしよりもお馬鹿ですわ……」

 楽観的も楽観的、やる事の重さに伴わない言葉は、言い聞かせているようとも思える。

「お前さんが行きたくないんなら置いていくから、安心してくれ」

「置いていかれる方が不安ですわ。あなたに死なれては、わたくしの存在意義はなくてよ」

「……協力してくれるのかい?」

「いくらあなたの覚悟が決まっているとて、危険を回避するのにも限界があるのだから。これはあくまで、あなたの監視ですわ」

 

 呆れたような──否、心底から呆れた声である。『テュファ』にそんなプログラムを搭載した記憶は無いが、あのブレイクスルーを期に増えたものなのだろう。

 もっとも、そんな下らないやり取りをしている暇は無いのだが。今日にも調査がなされている可能性がある。

 

「それじゃあ、どうするおつもりでして? 茶番を繰り広げている暇はありませんでしょう?」

「違いない。まずはエリア近辺での張り込みだろうな、それでも就寝時間を超えそうなら、不眠不休で悪いがお前さんには監視を依頼することになる」

 

 すぐにでも調査が入る、と考えているものの、VR世界においてフィードバックは重い問題である。特に、侵入禁止エリアなどという得体の知れない場所ならば、脳味噌まで物理的にクラッシュしてしまう可能性は否めない。

 だからこそ安全性を天秤にかけて、翌日以降の調査となるのは否定できなかった。そもそも深夜帯の調査は世界の性質上よくあることだ。インしている人間は最小限である。

 

「オーライですわ。そう言うと思って、ステルスプログラムも組んでありましてよ。褒めてくださいまし」

「仕事が早くて助かるな。それじゃあ、早速だが行くよ」

 

 はらり、と長い髪が解ける。

「Into the VRAINS」

 

 転移先は、以前ログアウトした場所にほど近い、オブジェクトの上。

 

 

 

 

 

 

「進入禁止エリアの障壁は未だ健在、内部の動向は視認できなくてよ。ただ、昨日よりアクセスログが増えておりますわ。おそらくメンテナンスの為でしょうけれど」

「お前さんが言うなら間違いねえな。……が、少し違いそうだ。アクセスの手段が妙……なような気がする」

「この前の連中ではなくて?」

 カトルは首を振った。

 

「違うな。どっちかが正規の手段で、残りがハッキングして侵入したんだろう」

「わたくしでは検知できませんでしたわ。現実(そと)に居てもデータの流れを感じられることも然り、どうやっておりますの?」

「さあな。感じるものは感じるんだよ、霊感みてえな奴だよ、多分な」

 入らなきゃ話にならん、と話をぶった切って、カトルはテュファより受け取っとったプログラムを起動する。警告も何も無く、まるで入るべき者のように迎えられた、その瞬間。

 

「ユー・ハヴ・コントロール」

「アイ・ハヴ・コントロール、ですわ」

 ──骨を刺すような、風。

 ただのデータストームではない。この空間を満たしているのは、全てを拒む暴風だ。

「こ、れは……ッ」

 

 視界が歪む。ボードに膝をついた、否、崩れ落ちた。この世界には存在しないというのに、胃がねじ切れるような吐き気を催した。

「ぅ、う……ぐ……ッ」

「あなたっ?」

 テュファの案じる声が遠く聞こえた。冷泉は問題ないと切って捨てる。

 

「今のあなたでは身が持ちませんわ! 昨日のことを覚えていまして!?」

「断るッ」

「けれど──」

「……あいつが、居る。ここに……絶対に」

 

 テュファに肉体があれば、瞠目しただろう。データの風が刃のように吹き荒れる中、どこにいるかも分からない者を感知できるのかと。以前見たとはいえ、そのデータ量は圧倒的に多いのだ。

 足先から全身が冷え切る。けれど血管は燃えそうなほど熱く、思考の奥底が叫んでいた。

 

 ここにあいつが関与している。

 それ以上の何かもある。

 ならば、自分の取るべき行動は。

 

「だからこそ行かなきゃならん。頼めるな」

「……分かりましたわ。いざと言う時は、わたくしがログアウトさせますのよ」

「やったら末代まで恨む」

「ええ。わたくしで終わりですけどね」

 

 ふらつく身体に鞭打って、カトルは立ち上がる。その暴風を浴びながら、吐き気と共にふと気付くのだ──この風は、やけによく馴染む。自分が作り出した嵐の中で、意図的に身を放り込んだように。

 やはり、あれの仕業か。舌打ちと共に、テュファに声を掛ける。

 

「もしかすれば、一部じゃあるが乗っ取れるかもしれん。おれの身体を使()()()くれねえか?」

「……あなたねぇ。もう何も言いませんわ」

「悪いな」

 欠片も思っていない、と言わんばかりに溜め息で返される。自身の身体にぴりりとした電気のようなものが走って、暴風が〝少しばかりの向かい風〟ほどに和らぐ。

 

「今のわたくしには、この程度しかできなくてよ」

「いや、十分だ。今のおれじゃこれより酷い。コンディションが最悪なのもあってな」

 通常よりも強い推進力で、先へと進む。深い谷の中を縫うように進んで、随分寂しいなと感じた。

 今の自分のようだ、と考えて心の底から嫌悪する。あんなクソAIの作った環境を己の比喩に使うなど、おぞましいと言う他にない。

 

 周囲の空間から隔絶された──とまでは言わないが、脇道(グリッチ)とでも言うのが正しい場所を、カトルは見つけた。一度、身を休めた方がいいと提案されたのだ。それに、このレベルのデータストームを常に浴び続けるよりは小刻みの方が負担も掛かりにくい。

 その中に、二人の女性がいた。

 

 似た系統の装いをした、女性のアバター。何故ここに、と考える前に、青い髪の方が口を開いた。

「──っ、誰!?」

 鋭い声が飛んでくる。洞窟内は静かだが、それに対し場の空気は張り詰めていた。

 

 白地にピンクと青をアクセントとした、ボーイッシュ、しかしガーリーな装い。それと裏腹に、刺すような視線をカトルへと向ける。

 もう片方は、艶やかな銀髪に紫のメッシュの女性。口元を画し、鋭い目つきとライダースを着用した姿は、コケティッシュな魅力がある、のだろう。多分。

 どちらもベクトルは違えど、只者では無い雰囲気を持っていた。

 

「おいおい、そう警戒しなさんな。おれは悪人じゃねえ。そう怖い目付きで見られちゃ、少しばかり悲しいぜ」

 両手を上げ、降参のポーズをしながらカトルは歩み寄った。彼女の方は一言で切って捨てたが。

「悪い奴ってのはみんなそう言うのよ」

「おお怖い。経験談かい?」

 

 彼女は無視し、逆に銀髪の方が声をかけてくる。

「それにしても、こんな場所を単独で抜けてくるなんて。SOLの技術力はそこまで低くはないと思うけれど」

「企業秘密ってやつさ」

 

 先程よりは和らいだとはいえ、依然としてその視線は鋭い。ここに侵入した時点で、怪しまれるのは当然だ。

 ふと、青い髪の彼女の振る舞いに何かを何かを感じて、カトルは尋ねた。

 

「お嬢さん。どこかで会ったかい?」

 彼女は一瞬戸惑うような視線を向けたあと、目を細め、眉間に皺を寄せた。

「は? こんな時にナンパ? 馬鹿じゃないの」

「ああ、悪かった。顔じゃなくてな。振る舞いとか、雰囲気がね。気のせいみたいだ」

「あっそ」

 

 苦笑と共に肩をすくめる。なかなかに尖った対応だが、自分の現状を鑑みれば仕方がない。代わりに「面倒だから名前を教えてくれないか?」と訊くと、不承不承と言った態度で「ブルーガール」と名乗った。

「そっちの姉さんは?」

「ゴーストガールよ。貴方は──」

 ラヴィエカトル、だったかしら?

 彼女から発されたのに、壁に背を預ける。

 

「なんだ、知ってるじゃないか」

「一昨日のデュエルも見ていたわ。貴方、ただのデュエリストじゃないでしょう?」

 ──詰んだ。

 カトルは舌打ちを呑み込んだ。あれを見られていては、誤魔化しなど通用しない。ここで下手な発言をすれば即デュエル。ブルーガールは、それ程剣呑な雰囲気を纏っていた。

 

「WW使いで正体不明の女性プレイヤー──いや、中身は男性よね?」

「またまた。胸もないし、肩周りも男のモンだろ。ただの一般中性男だよ」

 胸もない、の所でブルーガールに睨まれた気がした。もしかすればリアルのボディが……口にすれば八つ裂きにされる。ここで口にするのもデリカシーが皆無であるし、アバターを自由に作る(むねをもる)のもOK。無視を決め込んだ。

 

「そうね。失礼したわ」

「失礼なんて思ってねえだろ、(ねえ)さん」

「その〝姐さん〟っての、やめてくれないかしら」

「あんた、年上だろ。おれなりに年長者を敬ってるのさ」

 

 なにか言いたげな視線だが、諦めたらしい。

「口は達者なようね」

 紫のメッシュが入った長髪の彼女──ゴーストガールと名乗った女が、少しだけ口角を緩める。その鋭さを秘めた紫の目も、わずかに緊張を解いたように見えた。

 その空気を断ち切るように、ブルーガールが一歩前に出た。

 

「話はもういい?」

「おや、随分急かすじゃないか。用事かい?」

「違うわ。貴方が居るここは、本来管理者じゃないと入れない場所。不正アクセスよね?」

「そうだねえ……調査だよ。オーケイ?」

「何の? 二人一組(ツーマンセル)なら分かるわ。でも、貴方はひとり。その上昨日の行動とアバター。裏があるのは分かってる」

 

 なかなかに、痛い所を突いてくる。

「そうかい。疑われちゃお兄さんは悲しいね」

 わざとらしく返してみるが、ブルーガールの視線は和らぐどころか、敵意と言っていいほどの感情を帯びている。

「信用ってのは難しいもんだな? お嬢さんもそう思うだろ?」

「当たり前でしょ。あんたみたいな怪しい奴、信じるって言う方が馬鹿よ。だから」

 

 彼女はデュエルディスクを展開し、宣告した。

「ここから帰って。報告はしないであげるわ」

「そりゃ無理な相談だ。こっちにも目的があるんでね」

「穏便に済ませたいの。でも、貴方がそれを拒むなら……」

「拒むなら?」

「戦う覚悟があるのよね?」

 

 ゴーストガールも、静かにこちらを見ている。

 彼女の方には一歩引いた空気があった。止めはしないが、先に手を出す気はないというスタンスだ。

「あーあ。結局、こうなるって訳だ。デュエリストってのは、どうにも戦いたがる」

「それがデュエリストっでものでしょ。茶化さないで」

 

 カトルはため息をひとつ吐いた。だがはすでに、彼の手にも蒼と翠の装甲が重なるデュエルディスクが展開されている。

 ──あんなモデル、知らない。

 ──私もよ。

 ツーカーではなくても、交わった視線で会話は成立した。益々怪しい。

 

「そんなに不審者に見えるかい?」

「見えるわ。目が節穴? それとも脳味噌が無いの?」

「言葉が鋭いと、自分自身が怪我するぜ? それとも、誰でもいいからぶっ飛ばしたい気分か……随分と欲求不満なんだな」

「気色悪い言い方しないで」

「失礼。なら言い換えよう。決闘値(けっとうち)が高いな」

 

 以前、「誰でもいいからぶっ潰したい気分なの」という軽さで突っ込んだ、自分の幼さを突きつけられたようで苛立つ。努めて軽く返したのに、彼女の対応がどんどん辛辣になっていく気がする。

 

「はは。ったく、穏便に済ませたいのはこっちもだっていうのに」

 悪戯をした子供を宥めるように吐かれた言葉。曖昧な表情で笑って見せた彼は、腰のホルスターにあったデッキをセットする。

 何の機構かと思っていれば、妙なものだ。先進的なデザインなのに、デッキだけは実体を持たせている。妙な趣味だと思いながら、彼女もデッキをセットする。

 

「いいんだな?」

 確認ではなく、念押し。カトルの言葉に、ブルーガールは鼻を鳴らした。

「それ以外に、貴方を追い出す方法、ある?」

「あらら。そりゃ随分と力ずくな論理だ。誰かに不法侵入された経験でも?」

「……関係ないでしょ」

 

 ピシャリと叩き落とす一方、ゴーストガールは彼の覚悟を問う。

「本当に、戦うのね?」

「ああ。仕方ねえだろ? おれの邪魔するってんなら、潰さなきゃなあ……」

「何故、そこまでして?」

「質問で時間を稼ぐつも……ああ。おれが負けたら消える代わりに、勝った場合の条件を追加しても?」

 

 確かに、彼に一方的に不利なルールを押し付けているのだ。それに負けるつもりもない。

 ブルーガールは頷く。

「じゃ、お嬢さんが負けたらログアウトしてくれ。それで対等だと思わんか?」

「……待って。私達は──」

「ああ、帰れないのか。なら、ちゃんと()()()()()やるさ。安心しろ」

 

 自分たちも一度しか使えない、ログアウト用のプログラム。それを彼は、複数回使えるのだろうか。ますます強まる疑念の中、ばちりと視線が火花を散らした。

 ──デュエル、開始。

 

 

ラヴィエカトル

 

LP 4000

 

ブルーガール

 

LP 4000

 

 

「先行か後攻か、好きな方を選ばせてあげるわ。大口叩くだけの実力、見せてみなさい」

「そりゃ随分と舐められたこって。遠慮なく先行だぜ」

 先程までと変わらぬ口調だが、その身体から漂うのは本物の〝殺意〟だ。人差し指は慣れた動作を反復するように小刻みに動いていて──焦点の定まった、決闘者(てき)を殺す意志を見せている。

 

「じゃあ、メインフェイズに。おれは《マジェスペクター・クロウ》を召喚」

 

《マジェスペクター・クロウ/Majespecter Crow - Yata》

ペンデュラム・効果モンスター

星4/風属性/魔法使い族/攻1000/守1500

【Pスケール:青5/赤5】

【モンスター効果】 「マジェスペクター・クロウ」の①のモンスター効果は1ターンに1度しか使用できない。

①:このカードが召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。 デッキから「マジェスペクター」魔法カード1枚を手札に加える。

②:このカードはモンスターゾーンに存在する限り、 相手の効果の対象にならず、相手の効果では破壊されない。

 

「クロウの効果発動。デッキから、《マジェスペクター》魔法カードを手札に加える。おれは《マジェスペクター・サイクロン》を手札に」

 

 マジェスペクター。今日日見ない、リンク召喚が出てからは向かい風のペンデュラムテーマだ。スピードデュエルではあまりに不利であることを加味して、魔法・罠ゾーンと別に、ペンデュラムゾーンが用意されるほどの。

 

「おれはカードを二枚セットして、ターンエンドだ」

「──え」

 拍子抜けしたように、声が漏れる。どこかで似たような行為を見たような気がする。

「ハッ、あれだけ自信満々に吹っかけといて、先行展開で制圧することしか知らないのかい?」

「そういう貴方こそ、対面を舐め腐ってる挙動だけど」

 

 ブルーガールは目を細め、デッキに触れる。

「ドロー。スタンバイ、メインフェイズ。私は《トリックスター・ライトステージ》を発動!」

 空間が煌びやかに塗り替えられる。その名の通り、アイドルのステージのように。

 

《トリックスター・ライトステージ/Trickstar Light Stage》

フィールド魔法

(1):このカードの発動時の効果処理として、デッキから「トリックスター」モンスター1体を手札に加える事ができる。

(2):1ターンに1度、相手の魔法&罠ゾーンの裏側表示カード1枚を対象として発動できる。

このカードがフィールドゾーンに存在する限り、その裏側表示カードはエンドフェイズまで発動できず、相手はエンドフェイズにそのカードを発動するか、墓地へ送らなければならない。

(3):自分フィールドの「トリックスター」モンスターが戦闘・効果で相手にダメージを与える度に、相手に200ダメージを与える。

 

「私は《トリックスター・キャロベイン》を手札に加えるわ。更にライトステージの効果! 貴方のセットされたカード一枚を、エンドフェイズまで発動できなくする!」

 自分から見て右側のカードが封じられる。《神の宣告》などの妨害を受けなくなり、またバトルフェイズの攻撃力変動といった《トリックスター》の打点不足への対処ともなる。

「そして、《トリックスター・ヒヨス》を召喚──輝け、勇気と決意のサーキット!」

 

 召喚条件は、Lモンスター以外の「トリックスター」モンスター1体。

「リンク召喚、リンク1《トリックスター・ブルム》! 更に、リンク素材となった《ヒヨス》の効果発動!」

 

《トリックスター・ヒヨス/Trickstar Nightshade》

効果モンスター

星1/光属性/天使族/攻 100/守 0

このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが「トリックスター」リンクモンスターのリンク素材として墓地へ送られた場合に発動できる。

このカードを墓地から特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。

 

 そして再度リンク召喚。現れたのはリンク2──《トリックスター・ホーリーエンジェル》。

 

《トリックスター・ホーリーエンジェル/Trickstar Holly Angel》

リンク・効果モンスター

リンク2/光属性/天使族/攻2000

【リンクマーカー:左下/右下】

「トリックスター」モンスター2体

(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカードのリンク先に「トリックスター」モンスターが召喚・特殊召喚される度に、相手に200ダメージを与える。

(2):このカードのリンク先の「トリックスター」モンスターは戦闘・効果では破壊されない。

(3):「トリックスター」モンスターの効果で相手がダメージを受ける度に発動する。このカードの攻撃力はターン終了時まで、そのダメージの数値分アップする。

 

 耐性にバーン、自己強化。展開の起点としても使用できるこのカードは、

「その瞬間、《マジェスペクター・クロウ》をリリースして、《マジェスペクター・テンペスト》を発動」

 

《マジェスペクター・テンペスト/Majespecter Tempest》

カウンター罠

(1):自分フィールドの魔法使い族・風属性モンスター1体をリリースして以下の効果を発動できる。

●モンスターの効果が発動した時に発動できる。その発動を無効にし破壊する。

●自分または相手がモンスターを特殊召喚する際に発動できる。その特殊召喚を無効にし、そのモンスターを破壊する。

 

 ホーリーエンジェルが風にあおられ、粒子となって散る。着地すら許されなかった彼女は、墓地からの蘇生もできない。

「くっ……」

 彼女の知識が浅いわけではない。しかし、一万を超え、その中の環境どころか見かけもしないテーマ。リリース以外のコストがなく放たれたカウンター罠は、彼女の身を絡め取るのは容易だった。

 

「……そういう、ことね」

 僅かに、悔しさが滲んでいた。

 彼女の瞳には計算外の敗北感と、それ以上に燃え上がるような闘志がある。

「知らないカードでミスを誘おうって算段? 甘いわね。そうやって挑んできたプレイヤーはいくらでもいたわ。私は《トリックスター・フュージョン》を発動!」

 

《トリックスター・フュージョン/Trickstar Fusion》 †

通常魔法

(1):自分の手札・フィールドのモンスターを融合素材とし、「トリックスター」融合モンスター1体を融合召喚する。

(2):墓地のこのカードを除外し、自分の墓地の「トリックスター」モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを手札に加える。このターン、自分はこの効果で手札に加えたモンスター及びその同名モンスターを通常召喚・特殊召喚できない。

 

「私は《ナルキッス》と《シャクナージュ》を素材にして、《トリックスターバンド・ドラマチス》を融合召喚!」

 

《トリックスターバンド・ドラマチス/Trickstar Band Drumatis》 †

融合・効果モンスター

星6/光属性/天使族/攻2000/守1000

「トリックスター」モンスター×2

このカード名の(1)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが融合召喚した場合に発動できる。同名カードが自分のフィールド・墓地に存在しない「トリックスター」カード1枚をデッキから手札に加える。

(2):このカードをリンク先とする自分の「トリックスター」Lモンスターの攻撃力は1000アップする。

(3):自分か相手が効果ダメージを受けた場合、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力を0にする。

 

「このカードが融合召喚に成功した時、デッキから「トリックスター」カード一枚を手札に加える。私は《トリックスター・ディフュージョン》を加えるわ」

「へえ。展開したがりだな」

「貴方が消極的すぎるだけよ。カードを一枚伏せて、バトルフェイズ! 《ドラマチス》でダイレクトアタックよ」

 

 攻撃力2000に加えて、《ライトステージ》の効果によって追加の200ダメージが襲う。

 

ラヴィエカトル

 

LP 4000 → 1800

 

「チッ……」

 舌打ちをしながらも──対戦態度としては大変最悪であるが──それも必要経費として、カトルは割り切っていた。

 そしてブルーガールのほうも、やや不満気な空気を纏っていた。

「このターンで終わらせるつもりだったけど。甘かった、と言ってあげるわ」

「必要ないね。ターンを渡しな」

「エンドフェイズに、ライトステージの効果よ。そのセットカードを発動するか、墓地に送りなさい」

 

 カトルは躊躇いなく《マジェスペクター・サイクロン》を墓地に送った。それ以外の択はない。そもそもの発動ができないのだから。





交差する意志、響き合う戦術
力なきものは沈み、驕る者もまた討たれる
限界を超えながらも、前に進む意味とは?
次回、〝風に乗る敗北の詩〟
輝く瞳に、真実を見通せるものか

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