いずれ狩人となる   作:enfy

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第6話

 窓を叩く

 

 暫くして、小走りで此方に駆けてくる足音がきこえた

 遮られたカーテンは小さな影を映し出した

 

「あなた、だあれ?」

「知らない声、でも、なんだか懐かしい匂いもするの」

「もしかして、獣狩りの人かな?」

「だったら、お願い、お母さんを探して欲しいの」

「獣狩りの夜だから、お父さんを探すんだって…それからずっと帰ってこないの」

「私ずっと…でも、寂しくって…」

 

 狂った世界に不釣り合いな程透き通った声

 未だ、小さく幼い少女の声だ。

 窓の外の俺に警戒する素振りはあれど、恐怖や怯えといった感情は一切感じなかった。

 直ぐにその警戒も解き、自身の境遇を話してくれた。

 

 自分で言うのも何だが得体の知れない、敵かも分からない人物と会話をするとは少女の言う通り、相当に寂しかったことが窺えた。恐らく、これほど長く父親と母親の両方がいなくなることは無かったのだろう。

 或いは、獣狩りについて何も知らされていないのか。少女をそれに関わらせない様に狩りと育児を両立してきたのだろう。それだけの実力を2人が持ち合わせていることを俺は知っている。

 それとも、少女の言う懐かしい匂いとやらが警戒を解いたのか…。

 

 いずれにしろ、少女をこのまま見捨てるわけにも行かない。

 そも、その為に来たのだ。そんな選択肢は俺には存在しなかった。

 

 

『少女の母親を探す』

 

 

「…本当?ありがとう!」

「お母さん、真っ赤な宝石のブローチをしてるんだ」

「大きくて、すっごく綺麗なんだから、きっとすぐに分かると思う」

 

 それで、それでね

 

「お母さんを見つけたら、このオルゴールを渡して欲しいの」

 

『小さなオルゴール』

___

 ヤーナムの少女から預かった、小さなオルゴール

 両親の思い出の曲が流れるらしい

 

 蓋の裏の紙片は、どうやら古い手紙のようで

 かろうじて2人の名前が読み取れる

 それはヴィオラと、そしてガスコインであろうか

___

 

 オルゴールは金属で繊細な装飾が成されており、相当高価であることがわかった。所々傷んでいるが手入れはしっかりと成されており、少女がどれだけ大切にしていたかが緊々と伝わってきた。

 

「お父さんの好きな、思い出の曲なんだって」

 

 拳を固く握りしめる

 

「もし、私たちのこと忘れちゃっても、この曲を聞けば思い出すはずだって」

 

 行き場のない怒りが込み上げる

 唯、どうしようもない現実に対して

 

「…それなのに忘れて行くなんて、おっちょこちょいなお母さんだよね」

「狩人さん、どうしたの?」

 

 なんとか取り繕って何でもない、と返す。それも喉奥で空気が抜けた様に掠れて上手くは行かなかった。何だか痰が絡んでね、などと少女に聞いて欲しいのか、自分に言い聞かせているのかわからない小細工をすると少女も納得した様だった。

 それでも若干、不安気に此方を見つめる視線に耐えきれず帽子を目深に被る。きっと酷い顔をしているだろう、其れを見せたくはなかった。

 

 教えられる訳がない。

 もう、両親と会えることなど2度とないと言うことも

 例え再開できたとしても、それが少女の望む形でないことも

 

 窓越しから差し出されるそれに、俺は手を伸ばすことができないでいた。血が出るほどに爪が食い込んだ手を見られたくなかったのもある。

 でもそれ以上に、オルゴールに、家族の思い出に他人の俺が触れてはいけない様な気がした。

 

 忘れて行くなんて、そんなことある筈がない。今までを生き抜いてきた優秀な狩人がそんな貴重品を忘れて行く筈がなかった。

 

 だから、これはきっと母親から少女に向けた餞別なのだ。

 1人でも寂しくない様に、夜明けが全てを終わらせるまでの手慰みとして___

 

 少女に言った。

 きっと、自分で渡した方が母親も喜ぶだろう、とか

 母親の顔をよく知らないから見つけ出すのは大変だ、とか

 俺は、道具の扱いが雑だから壊すかも知れない、とか

 

 そんな取るに足らない理由で言い包めた。

 

 更に続けていう

 見つけたら、此処にきて絶対に教えるから待っていてくれないか、と。

 

「…うん、分かった。私、待てるよ」

 

 

 俺は卑怯で狡猾な奴だ。

 小さなオルゴールは、市街のボスを倒すための重要なアイテムであった。少女を助けたい気持ちもあったが、これを受け取りボスを倒すというのが本音だった。今の俺ではどうやっても勝てる様な相手ではないからだ。そんな理由を並べ立て、家族の思い出の品を取り上げようとする奴だった。更には、少女が両親とは2度と会えないことを知りながら、我が身可愛さに嘘を吐き有らぬ希望を持たせてしまった。

 

 こんなに堂々と上手く嘘を吐けた自分に嫌悪感と気持ち悪さが込み上げる。

 

 でも、仕方ないじゃないか。

 このままでは、何も知らぬ少女が1人両親を探しに行き、死んでしまう。全てを知ってしまったのなら結末は余計悲惨なものになるだろう。

 

 これは、そう言う物語だからだ。

 

 

 でも、今は違う。

 決まった選択肢に従い、決まった結末を辿るゲームとは違う。今、確かに俺も少女も生きていて意思を持って動いている。

 なら、せめて少女だけでも救えるかも知れない。

 この悲惨な結末を少しはいい方向に持っていけるかも知れない。

 後で、幾ら恨まれようと構わない。

 それだけの仕打ちを働いたし、これから働くからだ。

 

 でも、この瞬間だけは騙されたままでいて欲しい

 

 

「またね、狩人さん」

 

 内心を隠したまま、返事を返した

 

___

 開通した昇降路を使い、大橋前へと向かう。

 奥には、此方を待ち構える大量の群衆

 更にその階段先には、5mはある大橋の横幅ほどの鉄球を構える獣狩りの下男

 

 向こうも、此方には気付いてる筈だがやってくる気はない

 向こうも知っているのだろう

 相手の目的はこの先であり、此方は獲物がくるのを唯、待つだけでいいのだと

 果たして、それは敵のものであったろうか、味方のものであったろうか

 大橋の床は、人々の血肉が絵の具の様にこびり付いていた

 

 群衆を相手にすれば、その隙に転がる鉄球に押しつぶされる

 突き進もうとも、鉄球をどうにかしない限り結果は同じだろう

 

 橋の距離は200mはあるだろうか

 ゲームでは鉄球が向かってくるのは群衆と相対する橋中心部だった筈だ

 そこから橋前に戻り避けるのは現実的ではない

 かと言い、大橋に鉄球を避けれる様な都合のいい窪みや隙間がある訳でもなかった

 

 

 でも、行くしかなかった

 立ち止まることだけは許されなかった

 

 橋の中央へと駆け抜ける

 銃持ちの射撃を腹部に喰らいながらも突き進む

 木の盾を持つ群衆を其れごと断ち切る

 長柄に対しては鉈を噛ませ、蹴りを入れる

 長柄を巻き取り、近寄る者をまとめて串刺しにする

 背後から剣撃を喰らうも直ぐに立ち直し距離を取る

 銃持ちの射線を死体によって切って行く

 数は残り半数

 

 それでも、常に意識は別のところにあった

 

 

 そして__

 

 ガタッ

 

 重低音が響き渡る

 鉄球が階段を転がり出す

 

 

 急いで死体を捨て、来た道を引き返す

 

 逃げ出そうとした瞬間__

 足首を掴まれ、勢いよく転ぶ

 

 足元には、先程盾として扱った群衆が地を這いずっていた

 口元は酷く歪んで、嗤っていた

 

 群衆は狙っていたのだ

 敢えて、死を偽り油断を誘っていたのだ

 

『何れ、お前もこうなる』

 

 うるさい

 

 俺は、こんな所で立ち止まるわけには行かない

 急いで、手首を切り落とし、こける様にして走り出す

 

 

 

 しかし、一足遅かった

 目前には鉄球が迫り寄せる

 

 不思議と恐怖はなかった

 これだけの速さで鉄の塊が迫っているのだ

 痛みすらなくやり直せるだろう

 全てがゆっくりと動いて見えた

 丸で、俯瞰視点で世界を見ている様だった

 今も、刻一刻と鉄球が迫り来る

 何なら、群衆がチリの様に潰されるのさえ、確認できた

 

 何故、自分は失敗してしまったのだろう

 迫り来る危機に対し、初めての多対一という大太刀周りという状況に酔ってしまったのだろう

 次は群衆が死んだか確認して、もっと余裕を持って立ち回ろう

 

 尚も、刻々と迫り来る鉄球

 

 思えば、こうも達観した状況で死ぬことなど今回が初めてだろうか

 

 __足掻け

 

 あと、2m位だろうか

 やるなら早く、一思いにやって欲しい

 

 __自分に嘘を吐くな

 

 元より、一回で行けるなんて思ってなかっただろう?

 

 

 

 

 じゃあ、何で

 俺は、今も尚必死に走り続けているんだ?

 

 

 

 やっぱり死にたくない

 死ぬのは

 痛い

 寒い

 怖い

 

 あの感覚はもう、一度だって味わいたくない

 

 それに

 

 あれに慣れてしまったら

 

 もう2度と俺は人間では

 俺では無くなってしまう様な気がする

 

 

 そして__

 

 

____

 身体中から痛みを感じる

 

 起きあがろうとするも手は動かず

 声を上げようとするも声にならない呻きが上がるばかりだった

 

 瓦礫に身体が埋もれており自由に身動きができなかった

 無事だった左手に輸血液を使う

 瓦礫を退かし、何とか這い出る

 

 見る限り、俺は未だ大橋に取り残されていた

 取り敢えず、生き残ったことだけは確かだった

 

 現状を把握しようと辺りを見回した時、それを視認した

 

 そして、理解する

 鉄球を橋から落とし、この惨状を作り出した原因の姿を

 

 5mを悠に超える圧倒的な体格

 全身に生える威圧的な黒い体毛

 異様に肥大化し凶器とかした左手

 研いだ刃より鋭利な爪と牙

 獣というよりは化物と言ったほうが正しいであろう

 

 子供の癇癪の様に暴れ続け

 尚も肉塊となった群衆を弄び続ける

 それは児戯で蟻を踏み潰す子供に似ていた

 

 状況は何も好転などしていなかった

 寧ろゲーム知識が当てにならなくなった時点で悪化したともいえる

 

 

 あり得ない

 あり得ていい訳がない

 ボスがボス部屋から出るなんてことが許されていい筈がないのだ

 これが、少女への仕打ちの対価だとしたなら俺はこれを受け入れるしかないのか

 同時に、気絶中に瓦礫に埋もれ標的にならなかったことが贖罪のチャンスの様にも見えた

 

 

 『聖職者の獣』

 

 市街に出てくるもう一体のボス

 聖堂街へと繋がる二つの大橋の内、既に封鎖されているもう一方に出現する、筈だったボス

 

 俺は、誤ったのだろうか

 住民の避難が優先であり、避難所へ繋がる大橋を目指した

 無駄な戦闘は控えるべきだと思っていた

 だから、その付けが回ってきたのか

 

 そんな、現実逃避

 自罰的になって、自分に酔っているだけ

 贖罪だと、何だと、全ては自分を許したくて悲観的になっているだけ

 

 そも、俺にそんな時間など与えられていなかったのに

 

 

 何の拍子か奴が此方に振り向く

 

 

 目が合う

 

 

 束の間の静謐

 

 

 そして、獣の咆哮と共にそれは破られた

 新しい玩具を見つけたとばかりに

 

 身を揺るがすほどの振動

 今の状況で勝てるかは分からない

 寧ろ負ける可能性の方が高い

 でも、逃げるわけにはいかない

 逃げたって何も変わらない

 

 でも、勝てたなら自分を少しは許せるかもしれない

 

 

 走りくる獣に対しゆっくり照準を合わせる

 その勢いのまま、俺を叩き潰そうとする獣

 目を逸らさずに、撃つ

 

 訳もわからず、奴は俺の前で地に手を付く

 油壺を取り出し、武器で叩き割ることによって武器に纏わせる

 それを顔面へと突き込んだ

 

___

 内臓攻撃

___

 

 追撃を仕掛ける

 相手は強く暴れ回り、後退すると顔を押さえ込みながら俺を強く睨みつける

 

 新しく出てきた玩具をみる様な視線が鋭く睨むものに一転する

 獣が俺を明確な敵として認識した瞬間だった

 本当の戦いが始まる

 

 

 今度は銃を警戒して、飛び掛かり攻撃を仕掛ける

 それを走って躱し、そこに火炎瓶を投げる

 油壺によって体の内側まで濡れた身体はよく燃え上がり相手も仰反る

 

 見計らい、蓮撃を仕掛ける

 丸で、鉄でも切っている様な感触だった

 しかし、血を吹き出していることから有効打となっていることは理解できた

 できる限り手数を稼ごうとすると__

 

 横腹を途轍もない衝撃が襲う

 引き際を誤った

 肺から空気が全部抜け出て、身体が蹌踉めく

 それは、俺を引き離そう放った小ぶりな苦し紛れの一撃だったのだろう

 それでも、あの巨体から放たれる一撃はそれだけ脅威だった

 

 直ぐ様、体制を立て直そうとするも相手がそれを許す筈がない

 

 大振りな一撃が俺を襲う

 ギリギリで鉈の腹を間に挟ませる

 しかし、それで防げるはずもなく欄干へとぶち当たる

 

 呼吸するのが精一杯だった

 息を吐く度、吸う度、口一杯に鉄分が広がる

 息苦しく咳き込めば、口からは痰混じりの血液を吐き出す

 あまりの衝撃に、内臓がやられたのだろう

 

 尚も、続けられる追撃をなんとか横に転がることで避け、火炎瓶を牽制として投げる

 相手も学習してそれを手で払いのける

 

 急いで、輸血液を浴びると掴みを横に躱し連撃を浴びせる

 反撃を躱し、更に追い詰める

 

 すると、地面へと拳を叩きつけ猛攻を阻止しようしてくる

 地面に小さなクレーターができるほどの攻撃であった

 それを、相手の腕、胴と踏み台にすることで躱す

 更にそのまま、頭蓋の傷口を広げる様に攻撃を仕掛ける

 自分の弱点を狙われ、焦った獣は直ぐに反撃に映るが間一髪で回避に成功する

 そのまま張り付き、刃を突き立てる

 地に伏せた獣にもう一度内臓攻撃を仕掛ける

 相手も必死に抵抗し、俺の胴体を掴み握り潰そうとしてくる

 

 でも、俺の方が一歩早かった

 

 刃を根元まで突き入れる

 脳を掻き出す様に引き抜く

 

___

 内臓攻撃

___

 

 未だ、警戒は解かない

 まだ、生きている

 同時に後少しで倒せるという確信もあった

 起き上がる前に追撃をしようとする

 しかし、2度と上手くいくことはそうない

 相手も戦闘の中で学習しているからだ

 武器を腕で受け止められ

 そのまま後退を許す

 当然、俺も追いかける

 

 直後、俺は背を向け身体を丸めた

 

 獣は地面を攻撃した時にできた破片を利用して投石を行ったのだ

 相手は悪あがきのつもりだったのかもしれない

 しかし、その威力は絶大にすぎた

 丸で全身を刺されたかの様な痛みが背中の節々に伝わる

 獣も俺に有効的だとわかると、馬鹿の一つ覚えで幾度となく、絶え間なく投石を続けた

 

 このままでは埒が明かない

 このままでは、死ぬまで延々と石を投げられ続ける

 

 優勢が一転し不利な状況へと持ち込まれる

 

 折角、ここまで追い詰めた

 最後の最後でこんなに呆気なく終わらせる訳には行かない

 

 意を決する

 

 振り向き突き進む

 

 相手もここで接近されれば負ける事を悟ったのだろう

 より激しく、より濃密に弾幕を展開する

 

 武器を持つ手に

 頭部に

 眼窩に

 

 至る所に礫が飛び散る

 でも進むしか道はなかった

 

 最低限武器に身を隠す

 ひたすらに走る

 

 至る所が血だらけで

 視界が赤く染まる

 

 相手もそれを鑑みて礫に意味では間に合わないと思ったのだろう

 人2人分ほどの岩を持ち上げ俺に投げつける

 

 左右に避けるのは不可能

 なら、と地面を滑り下を潜る

 獣は眼前だった

 狙い済ました様な叩きつけを武器を斜めにして逸らす

 

 最早、満身創痍

 でも、辿り着く

 この一太刀で終わらせる

 

 鉈を振り下ろす

 

 刃はしかし、何も切り裂かなかった

 

 獣は、何処にそんな余力を隠していたのか勢いよく後退すると

 背を向けて逃げ出した

 下水道の屋根を攀じ登り、市街へと逃げ込んだ

 火炎瓶を投げるも、それは学習したと言わんばかりに跳ね除ける

 遂には、家々へとその姿を消していった

 

 

 後に残されたのは血だらけで満身創痍の俺1人だけだった

 

 

 

 

 は?

 

 

 あそこまで戦って置いて逃げる?

 

 そんなことがあっていいのか

 

 許されていいのか

 

 巫山戯るな…!

 

 今までに相対したどんな敵だって逃げたりはしなかった

 知性も僅かばかりしか残っていない群衆も武器を失っても、死ぬ直前まで俺に手を伸ばしていたと言うのに

 そんな群衆が束になっても勝てない聖職者の獣が我が身可愛さに逃げ出した

 

 俺だって、勝てるか分からなかった

 負ける可能性の方が何倍も高かった

 だけど、それらを乗り越えて俺は嵐の様に突然現れたお前に立ち向かった

 万全でない状態でだ

 

 やり場のない怒りを唯、地面に叩きつける

 礫が未だ突き刺さった血だらけの手で地面を何度も何度も…

 

 

 そして、暫くして頭が冷える

 

 

 ここはゲームじゃない

 獣も知性を持ち生きている

 倒せなかったのは単なる力量不足だ

 そう理解はできても納得はできなかった

 しかし、これ以上何かに当たり自傷しても結局、何も変わらないのだ

 子供の様に駄々を捏ねて何かが変わるなら、この世界は此処まで悲惨にはなれなかっただろうから

 

 そして段々、狭まった視界が元に戻ると同時に身体中が悲鳴を上げる

 このままでは、折角勝ったのに死んでしまう

 急いで輸血液を使う

 

 輸血液はまだ、戦闘するには十分の量があった

 更に、今回は異変こそあったが鉄球を突破することができたのも確かだった

 大橋の敵も全て倒されており、問題は疲労だけだった

 正直、もう一歩だって歩けそうにはない

 

 この戦闘は終始優位に立てている様に見えて、実はかなりギリギリだった

 もし、最初の内臓攻撃で場の流れを掴むことが出来なかったら

 もし、相手が怒り狂い、単調な動きをしていなかったら

 もし、相手が最後まで逃げずに、俺に立ち向かっていたら

 

 これだけ、長場の戦いは初めてだった

 最後の一撃など、実は殆ど力など入っていなかった

 実際、当たっていても殺せたかどうかは怪しい

 余力さえ有れば絶対に逃げられることはなかっただろう

 それさえも、本当に獣が瀕死だったらの話だが

 だからこそ、あれだけの力を残している獣が逃げる時に少しだけ安心した自分も少なからずいたのだ

 

 しかし、もう終わったことだ

 俺は大橋の中央で休息を取り、次のボス戦へと備えるのだった

 

 

___

「他は何かあったかな…」

「オルゴールは持ったし、リボンも付けてるし」

「…あ!忘れる所だった」

 

 狩人さんから貰った護身用具?をバッグに入れる

 

 なんだか、いけない様な事をしている気分でちょっとだけワクワクした

 お母さんもお父さんも全然帰ってこなくて凄く寂しかった

 外は危険だっ、て中々外に出られなくて…

 

 一度、獣狩りがどんなのだろう、って気になってお父さんの後をこっそりついて行ったこともあった

 

 その時のことは、今でもよく覚えてる

 斧見たいな武器を持ったお父さんが、私よりも何倍も大きな獣や獣に成りかけている人たちをどんどん倒していくの!

 凄く怖かったけど、私のお父さんは凄い人なんだって、お父さんのお仕事はちゃんと皆の役に立ってるんだって

 

 でも、家にいない事に気づいたお母さんが直ぐに私を見つけて、それをお父さんに見つかって…

 その日はすっごく怒られた

 普段は滅多に怒らないお父さんも今回はお母さんより厳しく怒ってた

 それで、私、どうしたら良いか分からなくなって、泣いちゃって…

 2度としないから、嫌いにならないでって…

 

 次の日

 何となく、顔を合わせにくくてなんだか素っ気ない態度を取るとお母さんに部屋に呼び出された

 なんだろう、ってビクビクしてると昨日のことを謝ってきたの

 私が悪いことしたのに、言い過ぎたわ、とかでも貴女の為だったのとか

 それで私も素直になれて仲直りできたの

 

 それから少し経って、お母さんがリボンをくれたの

 1人でも寂しくない様に、って

 それからこの白いリボンはずっと私の宝物

 

 でも、こんなにお母さんもお父さんもいない日は初めてで心細くて

 時々、近くから呻き声なんか聞こえてくると怖くて眠れなくて…

 

 そんな時に来たのが獣狩りさん

 最初はお父さんかなって小走りで近寄ってみたけど違って

 でも、不思議と悪い人じゃないって、そう思って

 気づいたら、お父さんとお母さんを探すのを手伝ってもらってて、色々なことをお話ししてた

 

 それで、狩人さんに、オルゴールを渡そうとしたら自分で渡した方がお母さんも嬉しいだろうとか言われて、そうだなって

 それから、見つけた必ず知らせに行くから、とかもし帰った時に君が居なかったら心配するよ、とも言ってたっけ

 更に、もしも危険になった時はこれを使うと良いよ、って火炎瓶を幾つかくれたの!

 

 でも、やっぱり1人は怖いし寂しい

 それにこれは狩人さんがちゃんとお父さんとお母さんを探してくれるかの監視

 そう、私は監視するために出かけるの

 

 狩人さんの後をついて行けば、敵も居ないはずだし安全だよね?

 

 こうして少女は自分の意志で外に一歩踏み出す

 

 

 

 少女は未だ幼く、家の中以外を知らずに生きてきた

 また、無知であり純粋でもあった

 それは延いては、ガスコイン神父とヴィオラの努力の賜物だった

 少女が外を、地獄を知らずにずっと無垢でいられる様に育てた、育てることができてしまった

 

 そんな少女が狩人と出会い、どの様な結末へと至るかは未だ誰も知らない




氏名:____
性別:男
年齢:若い
過去:逃亡者

『逃亡者』
___
君は数奇な運命を辿った
それは、君には重すぎたのだろう
___

レベル:1
体力:10
持久力:8
筋力:9
技術:8
血質:7
神秘:9

少女の名前

  • なし
  • 勝手に決めろ
  • 考えてやろう
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