【鬱の子】   作:湯タンポ

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※今話から独自解釈マシマシ絶望マシマシ愛情カラメって感じなのでダメな方はUターンしてね♡

それ以外の方はゆっくり曇らせていってね♡






上り一日下り一時

 

 

 

 

 

 

 

地獄の門は開いた

 

 

後は精々愛し(呪い)合え

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――リビングに到達する寸前、物凄く嫌な予感がした。

 

 

(……やっぱり私が出よう、社長達じゃ無かったら困るし……)

 

 

そこまで考えた私は、ジルが居るであろう玄関へと向かった。

 

 

廊下の扉を開けながら声をかけ

 

 

 

「ジル〜やっぱり私が出―――

 

 

 

『お前、アイの子供か』

 

『うん』

 

『じゃあお前でいいや』

 

 

 

………ぇ………?」

 

 

 

私はその場で硬直した。

 

 

 

 

 

―――ジルが、フードを被った男の人に刺されていたんだから。

 

 

 

私は、理解出来なかった。

 

 

これがどういう状況なのか。

 

 

なんでジルが血を流してるのか。

 

 

なんでジルが苦しそうに倒れ込んでいるのか。

 

 

なんで私の体は動こうとしないのか。

 

 

これが夢なのか現実なのか。

 

 

 

 

いや、理解したくなかった。脳が理解を拒んだ。こんなのが現実だと思いたくなかった。

 

 

 

 

なんで?

 

 

なんでなんで?

 

 

なんでなんでなんで?

 

 

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで?

 

 

 

なにこれ

 

ゆめ?ドッキリ?

 

そんなわけないよ、現実だよ。

 

 

なにこれ

 

ジルが刺されたんだよ

 

なにこれ

 

早く動かないと

 

なにこれ。

 

早くしないとジルが死んじゃう

 

なにこれ。

 

何してるの私、早く救急車を呼ばないと

 

なにこれ

 

いやその前に警察

 

なんなのこれ。

 

 

思考が上手く纏まらない。

 

 

今目の前で起こっている出来事を、脳が処理しきれない。

 

 

なんなのこれ―――

 

 

 

 

 

「アイ」

 

 

「あ……ああぁぁぁぁぁぁあああ!!!じ、ジル!?」

 

 

―――ジルが私の名前を呼んだことで、ようやく私の体は動いた。

 

 

多分人生で一番速く走ったと思う。

 

ジルに駆け寄って、抱きかかえる。

 

 

「じ……ジル!ジル!!しっかりして!!」

 

 

私は泣きながらジルの名前を呼ぶ。

 

なんで?なんで刺されてるの?なんで血が止まらないの?なんでこんなに温かいの?ねぇ、どうして――

 

 

 

「ふは…!痛いかよ!苦しいかよ!俺はもっと痛かった!苦しかった!アイドルなのに子供なんて作るから…ッ!ファンを裏切るふしだら…っ!ファンのこと蔑ろにして裏ではずっとバカにしてたんだろ…ッ!?この嘘つきが!散々好き好き言っといて釣っておいてよぉッ!!全部嘘っぱちじゃねぇかッ!!!!」

 

 

 

フードを被った男の人が何か叫んでいる。

 

でも私は、ジルの事で頭がいっぱいでそれどころじゃ無い。

 

 

 

「うるさいから静かにして!!!全部嘘なんて当たり前じゃん!!君達ファンが嘘でもいいからって『愛』を求めたんでしょ!?自分から嘘の『愛』を求めといてそれがいざホントに嘘だとわかると嘘つきって非難してさ、君は何様なの!?ファンだったらなんでもやっていいの!?私はアイドルとしてファンの皆を愛したいって思って、みんなが求める"アイドル"としてファンのみんなを愛してたつもりだよ。ホントにファン愛せてたかどうかはファンの皆にしか分からないけど……少なくとも、私は"アイドル"として"ファン"の皆に求められる事は全部やってたよ!それが嘘でもなんでも、君達ファンはそれで喜んだんでしょ!?だったらそれで満足してよ!!なんで私の子供まで殺そうとするの!?アイドルに子供が居るのが嫌なら推さなきゃ良いじゃん!見なきゃいいじゃん!私はバカだけど、それくらいの理屈は分かるつもりだよ!」

 

 

 

だから、叫んだ。

 

 

今まで思ってたことを全部。

 

 

泣いてたかもしれない。

 

 

「んだよそれ…っ!!自分が嘘ついてた事を正当化してるだけじゃねぇか!!どうせ俺の事すら覚えてねぇんだろ!?そんな奴に俺の気持ちが―――

 

 

「リョースケ君でしょ!?よく握手会来てくれてお土産で星の砂をくれた!違ったらごめんだけど!」

 

 

 

は…え…?」

 

 

「そりゃ私は嘘つきだよ、元々無責任だし、純粋じゃないし、ずるくて汚いし、社会の常識なんて知らない顔だけが取り柄の女だよ。

 

 

…でも。…でもさ…こんな私でも『家族』が出来たの。君達ファンにアイドルとして"嘘の愛"しか吐けなかった私が、ようやくホントに『愛してる』って言えるようになったの……それを、"本当の愛"を教えてくれたのが、君が刺したこの子だよ……ッ!!だから、私の一番大事なものを傷付けた君を…私はもう…愛せない…ッ!」

 

 

 

そこに居たのは、男が今まで見ていた完璧で究極のアイドル"アイ"では無く、"星野アイ"というただ愛に飢えていただけの少女だった。

 

 

そして、自分に向けられているアイの眼に宿っているのは、憎悪と殺意の様なドス黒い綺羅星(・・・)

 

 

そんな彼女が必死に抱き締めている小さな命に、自分が何をしたのかを、握りしめた血塗れのナイフを見てようやく自覚した男は……

 

 

「お、俺は……そ、そういうんじゃなくて…!う、うわぁぁあああ!!」

 

 

ナイフを投げ捨てて逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

―――だが、それで全てが終わりでは無い、

 

 

 

 

 

「…ジ…ル…?」

 

 

「ぇ……お兄…ちゃん…?」

 

 

 

廊下のドアから、アイの大声に何事かと慌てて様子を見に来たルビーとアクアが、ジルとアイの状況を見て固まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ』

 

 

 

 

 

 

 

―――ダンテ・アリギエーリの叙事詩『神曲』地獄篇第3歌 地獄の門より。

 

 

 

 








楽しめた?

まだまだ?

じゃ、続きを待っててね。





読者年代調査(恥ずかしがらず答えてね☆)

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