【鬱の子】   作:湯タンポ

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……ところでなんでこんなに伸びてるんですか?(現場猫Part2)




※今話はアイを壊す為の準備運動です。








『人間は空腹になると考えることを忘れる。
頭で考えると心を忘れる。
心にとらわれると全てを忘れる。』


―――映画 バグダッドの盗賊より



壊れそうな程に凍てついた一番星

 

 

 

 

 

 

世界から音が無くなった。

 

 

見える世界が白と黒の 2色だけになった。

 

 

何も、聞こえない。

 

 

何も見えない。

 

 

何も感じない。

 

 

違う

 

 

何も聞きたくない。

 

 

何も見たくない。

 

 

何も感じたくない。

 

 

私はもう、何もしたくない。

 

 

何も食べたくない。

 

 

何も飲みたくない。

 

 

もう、誰も愛したくない。

 

 

もう、誰の事も見たくないし、誰の声も聞きたくない。

 

 

私はもう、誰からも愛されなくていいから……ただ静かに生きていたいだけなのに……なんで?

 

 

なんで私ばっかりこんな目に遭うの……? 私が何をしたって言うの……? ねぇ神様……教えてよ……っ!

 

 

『そうやって嫌な事から逃げて、誰かのせいにして。可哀想な私を誰か助けて〜って不幸に酔ってるだけでしょ?』

 

 

違う……ッ!私はそんな事思ってない……!ただジルとアクアとルビーと…子供達と幸せに暮らしたかった!それが奪われて嘆いたらいけないの…ッ!?

 

 

『そうやって悲劇のヒロインぶって…本当に可哀想なのはジル達だよね。こんなクソ女の子供に産まれちゃって』

 

 

違うッ!アクアやルビーは私がお母さんで良かったって言ってくれた!

 

 

『じゃあジルは?ジルコンは?』

 

 

じ、ジルだって私が母親で嬉しかったって―――

 

 

『言ってないよね?そんな事。』

 

 

それは…ッ!…で…でも、ジルは私に愛してるって言ってくれた!

 

 

『それ本当に愛?都合の良い言葉言って私をだまくらかしてるだけじゃないの?』

 

 

違う違うっ!!ジルの愛はホントだよ!そもそもジルが私に嘘なんかつく訳ないじゃんっ!

 

 

『なんでそう言い切れるの?ジルコンは、本当はもっと違う女の人の方が好きかもしれないじゃん。』

 

 

だ、だったら何?そんなの関係ないじゃん!そもそもジルは私の"子供"だよ?男の子だし、母親なんかより好きな女の人が出来るのは当たり前じゃん!だから、母親の私にわざわざ愛してるなんて嘘つく必要が……ッ!!

 

 

『そう信じたいだけだよね?だって私は―――

 

 

 

 

 

 

 

 

――ジルに恋してる(・・・・・・・)じゃん』

 

 

 

 

そ、んな、こと、ある訳が…っ!

 

 

 

『私は貴女、貴方は私。私に嘘は通じないよ。だって私は貴女自身なんだから。』

 

 

違う……っ!私は、恋なんてしてない……ッ!

 

 

『でもジルに愛してるって言われて嬉しかったんでしょ?嬉しかったんだよね?私は嬉しかったよ』

 

 

それは……ッ!そ、れは……。

 

 

『ねぇ、私。いい加減素直になってよ。』

 

 

……………ち…がう。

 

 

『違わない。別に悪い事だなんて言ってないよ。言えるわけないじゃん、その気持ちは私にもあるんだから。』

 

 

……どうして、そんなに認めさせたいの?認めさせて、何か得が有るの?

 

 

『別に得なんか無いよ。ただ、私が言いたいだけ。』

 

 

……そう。まぁいいや、認めてあげる。私はジルに恋してるよ!でもそれが何?悪いの?許されないの?それは私の気持ちなんだから関係ないじゃんッ!!

 

 

『だったら逃げないでよ!ジルが死んだ事から!結果的に私がジルを殺した事から!お母さんから虐待受けてた時からなんにも変わらないね!私は!そうやって誰かのせいにして、心を閉ざして!悲劇のヒロインぶって! 』

 

 

……うるさい。

 

 

『そうやってまた逃げるの?もういい加減にしてよ!』

 

 

……うるさい、黙って。

 

 

『黙らないッ!!貴女は私なのっ!貴女が認めなくても私は知ってるッ!そうやって貴女が逃げてる時、いつも辛いのは私なの!』

 

 

……うるさい、黙ってよ。

 

 

『黙らないッ!!貴女が現実から目を背けて!辛い事から逃げてる時!いつも苦しいのは私なのっ!』

 

 

……黙れって言ってるのが聞こえないの?

 

 

『ねぇ、私はもう耐えられないんだよ……!お願いだから私の気持ちも分かってよっ!!ジルが死んで辛いのは私も一緒なの!それどころか貴女の分まで私は辛い思いをしてるのっ!』

 

 

……うるさい。

 

 

『黙らないッ!!貴女は私なの!私は貴女、貴女は私なのっ!私が苦しいのも全部一緒なんだよ!?なのにどうして私の気持ちまで無視するの!?』

 

 

……うるさい、もう黙ってよ……!

 

 

『黙らないッ!!私は貴女なのっ!私が苦しい思いをしてるのは、貴女が逃げてるからなのっ!』

 

 

……うるさい、うるさい!

 

 

『黙らないッ!!ねぇ、私。そろそろ現実を見てよ……辛い事から目を背けても何も変わらないんだよ……?』

 

 

もうやめて……もう許してよぉ……!

 

 

『もうこれ以上私を苦しませないでよぉ……』

 

 

 

「ジル…ジル…ジル、ジル、助けてジル、助けてよ…」

 

 

ジル…私を愛してよ……

 

 

『ほら、そうやってまた逃げる!』

 

 

「ねぇ、ジル……愛してるよ、だからお願い……私を愛して……」

 

 

『逃げないでよ!』

 

 

「私を置いて行かないでよぉ……」

 

 

もうやめて。もう許して。もう逃げないから。ちゃんと現実と向き合うから。だから、もうこれ以上私の心を壊さないで……っ!

 

 

「助けて……助けてよ……っ!」

 

 

私はそう叫んだ時、ふと気づいた。

 

 

「……あれ?」

 

 

 

目の前にジルがいる事に(・・・・・・・・・・・)

 

 

「あれ、ジル…なんでそんな箱に入ってるの?」

 

 

なんだ!やっぱりジルは生きてたんだ!私を心配して来てくれたんだね! 私は箱に縋り付き、必死に呼び掛ける。

 

 

「ねぇジル?そこにいるんでしょ?私だよ、アイだよ……っ!!」

 

 

 

『いい加減にしてって言ってるでしょ!?それは棺桶!ジルは今から火葬されるんだよ!』

 

 

火、葬……?燃やすって、事?ジルを?なんで?

 

 

『ジルは死んでる!死んだ人は燃やされちゃうんだよ!骨だけになってお墓に埋められることくらい馬鹿な私でも知ってるでしょ!?』

 

 

嘘だ……っ!そんなの絶対信じないッ!!ジルは死んでないよ!

 

 

「ねぇ!ジルを燃やさないで!ジルはまだ死んでないの!!」

 

 

「アイ!」

 

 

「どうして止めるの社長!?ジルはまだ死んでないのに、この人たちジルを焼こうとしてるんだよ!?」

 

 

「そんな事してもジルは帰ってこねぇんだよ!」

 

 

何故かジルの入った棺桶を持っていこうとする人達に、私は掴みかかって阻止しようとしたのに、逆に社長に取り押さえられてしまった。

 

 

「何で!?待って、待ってよ!ジルを連れて行かないで!ジルはまだ、死んでないの……っ!!」

 

 

そうこうしている内に、棺桶が火葬場へと運ばれていく。

 

 

「待って!お願いだから待ってよぉ……っ!!」

 

 

私は必死に追いすがろうとするけど、社長に押さえられて動けなかった。

 

 

「ねぇ、社長!お願いだから離してよッ!!ジルが死んじゃうっ!!私のジルが燃やされちゃうの……っ!!」

 

 

「アイ……っ」

 

 

社長は沈痛な面持ちで私を見つめる。

 

 

 

私は必死に抵抗するけど、やっぱり社長の力には敵わなくて、どんどん棺桶と距離が開いていく。

 

 

そしてとうとう火葬場に着いてしまい、棺桶は炉の中に入れられて―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気付いた時、既に家に帰って来ていた。

 

 

あの後の記憶はあんまり覚えてないけど、どうやら社長が家まで送ってくれたらしい。

 

 

隣を見れば、社長の奥さんのミヤコさんが目を腫らしたルビーを寝かせていた。

 

 

「ミヤコさん、ありがとう。」

 

 

「…いいのよ、アイさんも何か食べてもう寝なさい。今はそれが1番いいわ。」

 

 

「……うん。」

 

 

 

私はミヤコさんにお礼を言って、リビングへ何か食べるものが無いか探しに行く。

 

 

流石に何か作る元気は無いと思いながら、キッチンへと足を踏み入れた。

 

 

 

「あ……」

 

 

何を食べようかと冷蔵庫を開けた私の目に飛び込んで来たのは、作った覚えのない料理と、1枚のメモ。

 

 

"明日の朝飯!夜食にするの厳禁!!"

 

 

 

"ジルコン"

 

 

「っ……ジル、ジルぅ……!!」

 

 

私はメモを握り締めながら、その場に崩れ落ちる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………おなか、すいた」

 

 

 

 

『それを食べたら、ジルがいた証が何一つ無くなっちゃうよ』

 

 

 

 

「……でも、ジルのご飯、食べたいよ。おなかすいた」

 

 

『だからそれを食べたらジルがいた証が無くなるって言ってるでしょ?』

 

 

「……おなか、すいた」

 

 

『……もういいよ。勝手にしたらいいじゃん、ホンットに自分の欲しか優先できないんだね、私は』

 

 

「おなかがすいたの…ッ!!ジルが死んでも、勝手にお腹が空くの…ッ!!なんで?ジルがいないのに、私は何で生きてるの……?ねぇ……っ!どうしてなの……ッ!?」

 

 

『貴女に分からないのに私が分かるわけないじゃん、そんな事。ごちゃごちゃ言ってないで早く食べればいいじゃん、お腹すいたんでしょ?』

 

 

 

 

 

「……っ……うん、そうだね…食べるよ」

 

 

『……自分の欲が最優先の獣だね』

 

 

私はジルのご飯を電子レンジで温めて、食べる。

 

 

「……美味しい」

 

 

『良かったね』

 

 

「うん……美味しいよ……」

 

 

『知ってる』

 

 

「……なのに……なんで、なんでこんなに冷たいの……?」

 

 

『知らない』

 

 

「……あ…ジルが作ったお味噌汁、まだ残ってる…これなら、温かいよね……だって、ジルが作ってくれたお味噌汁だもん」

 

 

『……』

 

 

私はお味噌汁を温めて、食べる。

 

 

「……美味しい」

 

 

『知ってるって。私もその味を知ってるんだから。』

 

 

美味しいのに。

 

 

こんなに美味しいのに……あの時みたいに、食べてもぽかぽかしない。

 

 

寒い…寒いよ、ジル……っ!

 

 

 

『それは私の心が凍てついてるからだよ』

 

 

 

寒い、寒いんだ…ジル。

 

 

 

 

だからジル、私をあたためて(愛して)よ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうしないと、わたしはもうなにもできないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「少し、お話が必要かな?」

 

 

 









\ ロ リ ロ リ 神 ♪ ( ( ‹ ( ' ω ' ) › ) ) 降 臨 ♪/




今作の誰がどう見てもハッピーエンドと、ジルが生き残ったifストーリーは鋭意制作中で御座います。しばしのお待ちを。

読者年代調査(恥ずかしがらず答えてね☆)

  • 15〜19
  • 20〜29
  • 30〜39
  • 40〜49
  • 50〜59
  • 60〜以上
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