【鬱の子】   作:湯タンポ

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赤信号、みんなで渡れば怖くない




12話より分岐



IF
君死にたまふことなかれ


 

 

 

 

 

「アイ―――とにかく、アイが無事で…良かった」

 

 

 

 

 

「良くない…良くないよ…っ!!ジルが刺されたのに良かったなんて思える訳ないじゃん…っ!」

 

 

 

 

 

「アイが、刺されるよりは…マシだ」

 

 

 

 

 

「マシじゃないよ……!何でそんな事言うの…っ?あんまり良いお母さんじゃ無かったかもしれないけど、私は君達の…ジルの、母親なんだよ……?自分より子供が刺されて良かったなんて、思える訳ないじゃん……っ!」

 

 

 

 

 

「…そうか、ごめんなアイ…でも、俺はアイを、助けられたから、良いんだ、それがきっと、俺の生きてきた意味で、死んだ意味で…」

 

 

 

 

 

「ジル…?ジルはまだ死んでないよ…?それに、私を助けたって…なに?」

 

 

 

 

 

「……あー、頭ボーッと、してきた。

 

 

 

…アイ、ごめんな…生まれてきて、ごめんな。そろそろ、近いわ、コレ」

 

 

 

 

 

「やめて……っ!そんなこと言わないでよ……!ジルが居なくなったら私、どうすれば良いの……?そんな事言わないでよぉ……!!」

 

 

 

 

 

アイは大粒の涙を流しながらジルにすがりつく。

 

 

 

 

 

「わ、わた、私、ジルが死んじゃったら生きていけない…何も出来なくなっちゃうよ…っ!」

 

 

 

 

 

「アイ……そんな事、言い出すなよ…まだ生きたい、って、思っちまうじゃ、ねぇか…」

 

 

 

 

 

「生きれば良いじゃん…っ!だから諦めないで……ッ!生きてよぉ……!!」

 

 

 

 

 

「は…アイ、嬉しいけど、そりゃ無理だわ……俺、多分もう死ぬし。」

 

 

 

 

 

「やだやだやだッ!なんでもするから!私の事嫌いでもいいから!どんな事だって君のためならやるから!だから、ジルは死んじゃダメなの…ッ!お願いだからぁ……!」

 

 

 

 

 

「アイ、子供みたいに、なってるぞ……」

 

 

 

 

 

「子供でいいもん……っ!ジルが生きててくれるなら、なんでも良いよ……!」

 

 

 

 

 

「……そうか。」

 

 

 

 

 

そう言うとジルはアイの頭を優しく撫ぜる。

 

 

 

 

 

「ねぇ、ジル、私、何処で間違えちゃったのかな…?私、ただ君達を愛したかっただけなのに……!君たちと、幸せに暮らしたかっただけなのに…っ!

 

 

 

……ねぇ、ジル、教えてよ……わたしはどうすれば良かったの?」

 

 

 

 

 

「……アイは何も悪くない……それに、俺が居なくても、アクアや、ルビーが、居るじゃねぇか」

 

 

 

 

 

「違うの…!私には、ジルが必要なの……ッ!だからお願い……!死なないでよぉ……」

 

 

 

 

 

「……そっか。」

 

 

 

 

 

「私ね、ずっと前から思ってたんだ。私の人生は間違いだらけだったって……でも、それでも良いって思ってたんだ……だってジルやアクアやルビーが幸せになってくれればそれで良かったから……!」

 

 

 

 

 

「そう、か」

 

 

 

 

 

「だから、だからさ……お願いだよ……私の幸せを願うなら、生きてよ……!私のために生きてよぉ……!」

 

 

 

 

 

「アイ……」

 

 

 

 

 

ジルはそう言うと、アイの涙を優しく拭う。

 

 

 

 

 

「ありがとう、アイ……でも、アイは強い子だから、俺なんか、居なくても、生きていける、立ち直れる……だから、俺はもう、要らないよ」

 

 

 

 

 

「そんな事ないっ!私はジルが居ないと生きていけないのッ!アクアとルビーとジルが皆揃って初めて私は幸せに生きていけるのッ!」

 

 

 

 

 

「そう…か…」

 

 

 

 

 

「嫌だ……死なないでよぉ……!ジルが居ないと私生きていけないぃ……」

 

 

 

 

 

アイはそう言うとまた泣き出す。するとルビーも泣きながら言う。

 

 

 

 

 

「お兄ちゃんっ!私もママと同じっ!だからお願い、死んじゃやだよっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あぁ……この世界の君たちは………どんな風に、生きるのかな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジルは焦点のあってない目で言うと、アイとルビーの頬に手を添えると、俺の名を呼んで傍に来るように促す。

 

 

 

 

 

「アクア、ちょっとこっち来い」

 

 

 

 

 

「なんだ?」

 

 

 

 

 

「……最後に、これだけは…言っとくぞ……」

 

 

 

 

 

「……ああ……っ」

 

 

 

 

 

俺の返事にジルは1拍置くと、ゆっくり俺たちを見回しながら言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アクア……ルビー……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は君達の事、結構好きだったよ。」

 

 

 

 

 

 

 

「ジル……っ!」

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん……っ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

まさに風前の灯火。

 

 

 

 

 

ジルは、最後の力を振り絞って俺達に言葉を伝える。

 

 

 

 

 

たった一言のジルの言葉に、俺もルビーも前が見えなくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そして、アイ……」

 

 

 

 

 

 

 

「……ジル?ねぇ、最後なんて言わないでよ……っ!まだまだいっぱい話したい事とか、ジルと一緒にやりたい事とかあるのに……っ! だから、お願いだから死なないでよぉ……ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

「アイ」

 

 

 

 

 

ジルはアイの名前を呼ぶと、優しく抱きしめる。

 

 

 

 

 

「……ぇ…」

 

 

 

 

 

 

 

「……アイに会えて良かった……画面越しに君の死に目を眺める事しか出来なかったのに……それを止められて…君に"愛"を教える事が出来た……こうしてアイを抱きしめてたら、アイがここに居るんだ、って実感できる……アイの命の重み・・・・が分かるよ…」

 

 

 

 

 

 

 

「……ジル、何、言ってるの?ジルの言ってる事が、私にはよく分からないよ…っ」

 

 

 

 

 

ジルの要領を得ない言葉にアイは困惑する。

 

 

 

 

 

「いや、いいんだ……分からなくても……ただ、アイ」

 

 

 

 

 

「……やめてよ」

 

 

 

 

 

「多分次の言葉が最後になる」

 

 

 

 

 

「やめてよ……っ!ジルは死んじゃダメ!ダメなのっ!もう嫌だよ、辛い事も寂し事も、全部耐えて耐えて我慢して、ようやくジルに会えて、ようやく知った"愛"なのに……ッ!!……私から"愛"を…っ…奪わないでよ……ッ!!」

 

 

 

 

 

ジルが何を伝えようとしているのか、アイも薄々気づいている。

 

 

 

 

 

だからこそ、その最後の言葉を聞きたくなくて、少しでも長くジルと生きたくて、アイは必死に言葉を紡ぐ。

 

 

 

 

 

それは我が子を喪う事を恐れる母親の慟哭にも思えたし、ついて行きたいと駄々をこねる子供のようにも、愛した人を失いたく無いと嘆く少女のようにも思えた。

 

 

 

 

 

 

 

「…アイ」

 

 

 

 

 

「やだ…っ!言わないで!」

 

 

 

 

 

 

 

「世界で1番」

 

 

 

 

 

「ジルっ!やだよ!もっとジルと生きたいよ!」

 

 

 

 

 

「世界で唯一・・」

 

 

 

 

 

「ジル……ッ!お願いだからぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイ……君だけを愛してる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ジル……っ!私も愛し―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジル…?」

 

 

 

 

 

 

 

ジルの言葉に、反射的に返事を返そうとしたアイだったが、いい切る前にふと違和感を感じてジルの顔を覗き込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ジル?」

 

 

 

 

 

アイが呼びかけるも、ジルからの返事はない。

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん……?」

 

 

 

 

 

ルビーも心配そうに声をかけるが、やはり反応は無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ……ジル、嘘でしょ……?返事してよ……っ!私を置いて行かないでよっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嫌ぁッ!嫌嫌嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 

 

 

 

アイは半狂乱になって叫ぶ。

 

 

「お兄ちゃんッ!返事してよ……っ!ねぇ、お兄ちゃんってばぁ……ッ!」

 

 

 

 

 

ルビーも泣きながらジルに呼びかけるが、やはり反応は無い。

 

 

 

 

 

「……あ」

 

 

 

 

 

そして俺は気づく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう、とっくにジルの心臓は鼓動を止めている事に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁアぁぁぁぁぁぁぁァぁぁぁぁぁぁぁあああ嫌嫌嫌嫌嫌いやいやいやいや違う違うダメだめだめだめだめ駄目ダメだめダメダめだメだメダメッ!違うッ!!こんなの違うッ!!」

 

 

 

 

 

アイは半狂乱になって叫び続ける。

 

 

 

 

 

「愛してる愛してる愛してる愛してるあいしてるあいしてるアイシテルあいしてる愛してる愛してるからだからお願いおねがいおねがいおねがいぃぃぃッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

そしてアイはジルを揺すりながら、何度も何度も何度も、狂ったように愛してると叫び続け

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん……っ!お兄ちゃんッ!!」

 

 

 

 

 

ルビーはジルにすがりついて泣き叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で何で何でなんでなんでなんでなんでナンデなんでなんでナンデなんでなんでナンデなンでなんデなんでどうしてどうしてどうしてドウシテドウシテドウシテドウシテどウしてどうシてどうしてどうしてどウシて……こんなに愛してるのにッ!!」

 

 

 

 

 

アイはジルに縋り付きながら壊れたように叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、何で……?私、ちゃんと愛してるって言ったよ……?なんで返事してくれないの……?愛してる、ジルの事こんなに愛してるよ……っ!なのになんで、返事をしてくれないの……? ねぇ、ジル、ジル……ジルコンッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんなに愛してるのに……ようやく愛を、知ったのに……愛を知った代償がこれなの…?こんなのって…ないよ…神様」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――アイの言葉を嘲り笑う様に、カラスが一羽鳴いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ジルは何とか、本当に何とか一命を取り留めた。

 

 

だが―――

 

 

「………辛うじて命を留まらせることは出来ましたが…出血量が酷く、一時的な心肺停止、更には脊椎への損傷も見られました。

 

……その為……その、大変…お伝えしづらいのですが…」

 

「…………は、い」

 

「……現在彼は昏睡状態…所謂植物状態であり、意識が回復する可能性は低く、また仮に意識が回復したとしても、脳へのダメージによる障害や、脊椎損傷による半身不随等の後遺症が残る可能性が極めて高いです。」

 

「そう、ですか……」

 

医者が申し訳なさそうに告げる言葉に、アイは力無く返事を返す。

 

「……それでは、失礼します。」

 

「……はい、ありがとうございました。」

 

医者が出て行くのを見届けると、アイはジルの病室へと戻る。

 

 

人工呼吸器と心電図の無機質な音が響く室内。

 

 

その中に、ルビーの啜り泣くような嗚咽が混じっていた。

 

「お兄ちゃん……ッ…っく…おにいちゃん…っ」

 

「……ルビー……大丈夫、そのうちジルは何も無かったみたいに目を覚ますさ 」

 

「……アクアぁ……っ」

 

そして、それを慰めるアクアの声も、何処と無く震えていた。

 

 

「…ねぇ、ママ……お兄ちゃんは…ジルは、何か悪いことしたのかな…っ…どうしてお兄ちゃんがこんな目に遭わなきゃいけないの……? ねぇ、ママ……ッ!」

 

ルビーはアイにすがりつくと、頬を涙で濡らしながら問いかける。

 

ルビーの問いを受けたアイは、アクアとルビーを細い両腕で抱きしめて言った。

 

 

 

 

 

わかんない

 

「ママ……?」

 

わかんないよ

 

「……アイ?」

 

「わかんないわかんないわかんないよわかんないわかんないわかんないわかんないわかんないわかんないわかんないわかんないよ…なにもわかんない。」

 

 

アイは、壊れたようレコードの様にただわからないと繰り返す。

 

彼女の一番星の様に煌めいて、総てを吸い寄せる様な黒曜石の如き瞳からは、光と輝きが失われ、とめどなく涙が溢れていた。

 

 

「なんでジルがこんな目に遭わなきゃいけないの……?どうして……どうしてッ! ねぇ、神様……仏様でも悪魔でも死神でも何でもいい、誰か教えてよッ!!どうしてなの私!?何で私から愛を奪うのッ!?」

 

アイは病室の中で慟哭する。

 

それは魂を切り裂く様な叫びだった。

 

神や悪魔に懇願したってどうしようもない事を知りながら、それでもなお答えを求めて叫ぶ。

 

その叫びで、奇跡が起こってジルが再び目を開けてくれと言わんばかりに。

 

「ママ……ッ」

 

「アイ……っ!」

 

 

「……ふ、ふふっふふッあははははははッ!!」

 

 

突然、アイが壊れたように笑い出す。

 

その恐ろしく無垢な狂気を孕んだ笑顔に、ルビーとアクアの背筋がゾクリとする。

 

 

「あっははははハッ!あーもうやだやだっ!なんでこんな事になるのかなぁ!?もう、全部どうでもいいや……っ! ねぇルビー、アクア!」

 

「な、なに……?」

 

「何だ、アイ」

 

 

 

 

 

皆で一緒に死んじゃおっか!

 

 

 

 

アイはルビーとアクアの手を握ると、務めて明るくそう言った。

 

先程と全く同じ笑顔で、涙を零しながら。

 

「ッ……!!」

 

「え……?マ、マ……?」

 

アイの急な申し出にルビーは息を詰まらせながら困惑し、アクアは言葉を詰まらせる。

 

「どうせ生きてたっていい事ないし、生きるのにもお金が必要だし、生きるってそもそも疲れるし…何よりジルは起きる気配がない!

 

なら……もういっそこのまま死んじゃって、ジルと一緒になれる場所に行っちゃおうよ!」

 

アイの言葉にルビーとアクアは狼狽える。

 

「ママ、何……言って……?」

 

「……正気か?アイ」

 

 

「別に私は本気だよ。まぁ私としてもアクアとルビーが一緒に来てくれるなら、こんな世界に未練なんてないし、何よりジルが居ない世界なんて生きてても意味無いし。」

 

2人の問いにアイは平然と答える。その目は虚ろだった。まるで、世界そのものを諦めているかの様な…

 

「ねぇルビー、アクア、私と一緒にいくのは……嫌?」

 

アイは笑顔で問いかける。

 

その瞳は暗く陰り、頰には涙の跡が残り、笑顔はどこか歪だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、もしもし社長?今すぐジルの病室来てくれる?」

 

 







「生きるより死ぬほうがマシな時もあるさ、耐久性の問題だけどね。」







※以下本誌ネタあり







あ〜人の心が無いんじゃぁ〜。いいぞもっとやれ〜!

大輝くんがフリルに(役で)激高するシーンあるじゃないですか。

あれを見た時……その、下品なんですが……ふふ……フリル、可愛いですよね。

読者年代調査(恥ずかしがらず答えてね☆)

  • 15〜19
  • 20〜29
  • 30〜39
  • 40〜49
  • 50〜59
  • 60〜以上
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