【鬱の子】   作:湯タンポ

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なぁ知ってるか?気付いたら4ヶ月近く更新して無いやつがいるらしい。
何でも、その間にアニメ二期は終わって原作は完結したんだってよ。


……はい、お久しぶりですね。私です。

夏と秋は冬眠してました(?)

これからまた冬眠したいと思います。





願い

 

 

 

 

 

 

限界。

 

 

今のアイの精神状態を表すのに、これほど的確な言葉は他にないだろう。

 

 

過酷な芸能界という伏魔殿に身を置き、かつては観客を魅了するアイドルとして、今は日本を代表する女優として、常人を遥かに超えた努力で精神のすり減りそうな重圧に耐えてきた彼女。

 

 

しかし、その重圧を耐えることが出来たのは、自身の子供たちであるアクアやルビーへの愛と、その子供たちを養わなければならないという現実的な義務と責任。

 

 

そして何より……何より、『ジルとまた言葉を交わせるかもしれない』という一縷の希望があったからだ。

 

 

 

 

………だが、近頃アクアとルビーとの仲がうまくいっていなかったのもあり、もう家族を自分の手で幸せにしてあげる事が出来ないのでは無いかと、そんな思いが頭を過ぎるようになっていた。

 

 

アクアとルビーは金銭的にも独立し始めているし、もう自分が家族を養う必要はなくなって来ている。

 

 

……自分が生きる必要がないのでは無いか…とも。

 

 

 

…それほどまでに、彼女は限界だった。

 

 

 

そんな折に、ジルは目覚めた。

 

 

 

アイは嬉しかっただろう。

 

 

愛した子が黄泉の淵から戻ってこられた純粋な喜びで、愛した子を二の腕で思い切り抱きしめた温もりで、アクアやルビーとのわだかまりが解消された喜びで、傍観しか出来なかった役割から開放された喜びで。

 

 

これまでの苦労が全て報われた気がして。

 

 

……だが、その喜びも束の間。ジルはアイの知る『ジル』では無かった。

 

 

自分達との家族としての記憶を無くして。

 

声も、話し方も、仕草も、性格も、何もかもがアイの知るジルとはかけ離れており、他人そのもので。

 

 

……確かにジルを見ているはずなのに、まるで他人の人生を覗き見しているかのような、そんな気さえして。

 

それでも自分の生きる意味を諦めきれなくて、ほんの僅かな可能性に必死になって縋って。

 

 

 

「っ!ねぇ!何か思い出したの!?思い出したんだよね!?……そうだと言ってよ……お願いだから……っ」

 

 

そんな短絡的な言葉を、懲りずにアイは口にする。

 

 

 

心のどこかで、ある種諦めのような感情が芽生えている事を自覚しながらも、それを必死に押し殺す。

 

 

 

 

 

 

そんなアイの思いは

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ〜……刺された後から記憶なくて、ここ病院……で目の前には泣き崩れそうなアイが居る……なるほど、記憶喪失だったわけね。」

 

 

 

 

 

確かに届いた。

 

 

 

 

「…えっ……ジル…?…本当…?ホントの本当にジルなの……?」

 

 

「あー、うん、そうだよ、"アイ"」

 

 

 

ジルからのその呼ばれ方を聞いただけで、アイの頬は弛緩し始め、その緩んだ頬を伝う暖かな雫がとめどなく流れる。

 

 

もう、確信を持っていたのだ。

 

 

ジルが、愛しき我が子が、自らの腕で抱きしめる事のできる距離に帰ってきたのだと。

 

本当の意味で、帰って来たのだと。

 

 

 

「……っ…き、君の本名は?」

 

 

ただ、それでも疑心暗鬼になった心はそう簡単には晴れず、さらに『嘘』でないか確認する為に、何度か質問を重ねる。

 

 

 

「本名?あー、ジルコン、星野ジルコンでーす。」

 

 

「カレーは?」

 

 

「辛くないとカレーじゃない。」

 

 

「好きな食べ物は?」

 

 

「馬刺し」

 

 

 

……どれもこれもジルが幼少期から公言していたような言葉や、アイの知るジルと相違無い返答ばかり。

 

 

そしてそれが、アイの猜疑心をだんだんと晴らしていった。

 

 

 

…だが、それでも尚、僅かに残る不安。

 

 

その不安を払拭したくて、アイは記憶を取り戻したジルで無ければ絶対に知り得ない質問を投げかける。

 

 

「じゃあ……さ、ジル。」

 

 

「……ん、どした?」

 

 

「……あの日…13年前の、あの日。…あの日君が初めて私達に作ってくれた朝ごはんは、何?」

 

 

これに答えられるのなら、不安も、疑う事も、もうしなくていい。

 

 

だから……

 

 

 

(……だから……お願いだから答えて…っ……!)

 

 

……そんな切実なアイの願いは、届く。

 

 

 

 

「……え、米と味噌汁と焼鮭と出汁巻きと小松菜の胡麻和えじゃ無かったっけ。適当に作ったからあんま覚えてないけど。」

 

 

 

 

その答えを聞いた時、アイはもうジルを抱 締めていた。

 

 

「っ……!ジル……っ、……おかえり……

 

やっとまた、会えたね。」

 

 

「ん、ただいま。」

 

 

 

「もう絶対、絶対絶対ぜーったい、離さないから。」

 

 

 

アイは震えた声でそう言って、強く、強くジルを抱きしめた。

 

 

涙と声が枯れきるまで、ずっと。

 

 

 

 

 

……かくして、アイの願いは届いた。

 

 

それは、何者かの意志によるものだったのか。

 

それとも、何処かの優しい神様が願いを聞き入れてくれたのか。

 

 

……それは誰にも分からないが、それでも、『ジルにまた会いたい』というアイの願いは、確かに届いたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれが、家族…か。……羨ましいな…」

 

 

 

 

その願いがどんな結末を呼び込むのかを、誰もが知らぬまま。







所で黒咲先生のバックストーリーが2万文字くらいになってるんですけど……どうしましょか?

先生の可哀想な話だけは無限に出てくるんすよね……フリルのメス顔は難航してるのに……。

読者年代調査(恥ずかしがらず答えてね☆)

  • 15〜19
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  • 30〜39
  • 40〜49
  • 50〜59
  • 60〜以上
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