【鬱の子】   作:湯タンポ

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『俺はアンタが大っ嫌いだ。

でも同時に、アンタは凄い人だと思うよ。』

私の頭の中のジル君より引用。

原作136話時点でのアイの解釈がほぼ一致してて助かります。まぁ表現出来るとは言ってないんですけどね、初見さん。

バイトの賄いが美味いので初投稿です。


※今回のお話もアニメ推しの子の第一話を既読である事を前提に作られております、ご了承ください。




ヤマアラシのジレンマ 序

 

 

 

 

 

 

「ジル、愛してるよジル。愛してる愛してる愛してる愛してる愛してるよジル!ジルも私の事愛してくれてるよね?…そっか!んふふ〜私も愛してるよ〜ジルー。」

 

「ママ……もう、やめてよ…ジルは………っ…お兄ちゃんは、もう…」

 

「どうしたのルビー?あ、ルビーもジルに甘えたい時期なのかな〜?もうお兄ちゃんっ子め☆」

 

「ママ!ジルはもう―――だよっ! 」

 

「……っ!違う違う違う違うッ!!そんな訳ないよ!ルビーまでそんなこと言うの!?アクアはそんな事言わないよ!ねぇアクア!?」

 

「せんせ、ママを何とかしてよっ!!ねぇアクア!お願いだよ!ママのこんな姿もう見たくないッ!!ねぇ!お兄ちゃんっ!」

 

 

オレは間違えた。

 

 

オレにあの時必要だったのはジルとの距離じゃなく、踏み込む勇気だった。

 

 

ジルとのコミュニケーションを、もっと取るべきだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれは転生して二、三ヶ月たった頃だった。

 

 

ルビーがネットでアイのアンチとレスバを繰り広げているのを見かけた。

 

「赤ん坊が喋ってるー!!??キッモー!!」

 

「お前も赤ん坊だろ」

 

ので、まぁこんな感じでルビーとの面識を済ませたのだが、三つ子の内ルビーとオレが転生者だと分かった事で、当然その疑いはジルにも掛かる訳で……

 

 

「ジル、お前転生者?」

 

「その通りだよワトソン君」

 

「オレいつの間に探偵の助手になったんだよ」

 

「真実はいつも1つ!とは限らない!」

 

「それ平成のシャーロックホームズの方じゃねぇか、しかもパチモンだし。」

 

「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」

 

「ニーナとアレキサンダーどこ行ったなんて言わねぇからな」

 

「意外と乗ってくれるやん、漫画割と読む人だったん?結構面白いやんけ、"雨宮吾郎"先生よ。

…ああ、今はアクアマリンだっけ?ウケるー」

 

「は?おま…何でオレの前世の名前を…」

 

思い切って正面からジルに転生者か聞くと、意味不明な返しが飛んできたので、転生者かと確信を得つつ悪ノリしていると、絶対に聞き捨てならない情報をサラリと漏らすジル。

 

「…何でオレの前世の名前を知ってる?仮にお前が前世で僕の事を知っていたのだとしても、名前を始め個人情報を出していないにもかかわらず、この短い期間でオレが雨宮吾郎だと分かった?」

 

オレは警戒度をMAXまで上げると共に、ジルにそう聞いた。

 

何故ならコイツこそがオレとルビーを転生させた存在かも知れないからだ。

 

 

「まぁそんな警戒しないでよ〜、俺だって神か誰かに「え…?せんせ…?」ねぇ今俺のター「せんせ、せんせなの!?」ン何だけ「ね、名前と職業、あとせんせにあげたキーホルダーの言葉は!?」……ファミチキください…」

 

しかし、ジルの言葉はルビーの衝撃的な発言の数々に掻き消される。

「…あ、雨宮吾郎、産婦人科医、勤めていた病院は宮崎総合病院、昔患者から貰ったストラップの言葉は…「アイ無限恒久永遠推しっ!」…ほ、本当に、さりなちゃん…なのか…?」

 

「うん…うんっ!そうだよせんせ!さりなだよ!今はルビーだけどっ!」

 

「は、ははっ……こんな偶然ってあるのかよ……」

 

オレは、前世で救えなかったさりなちゃんが妹として目の前に居るという非現実的な出来事に、思わず乾いた笑いを漏らす。

 

 

「て言うか転生したって事はせんせ死んじゃったって事!?もしかして女の人に刺されちゃったの?」

 

「それが山を散歩してたら滑って崖から

落ちて、気がついたら赤ん坊になってたんだよ」(まぁ本当はアイのストーカーを追って山に入ったら突き飛ばされて死んだけど)

 

「えぇ……せんせって意外とドジっ子属性あるの?」

 

「無いよ。それよりも、ジルは何でオレの前世が雨宮吾郎だと知ってたんだ」

 

ルビーがさりなちゃんだったと言う事実は死ぬほど嬉しいが、今はそれよりジルが何故オレの前世を知っていたのかと言う疑問を解決したい。

 

 

「別に知ってる事はそれだけじゃないよん、アンタが前世で外科医じゃなくて産婦人科医を選んだ理由も知ってるし、ルビーは前世で母親に逢いに来て欲しかったのに、それを隠して良い子を演じてたのも知ってるし、俺達の今世の父親…つまりアイの元彼の名前だって知ってる。なんで知ってるかなんて聞くなよー?答えられんから。」

 

 

寒気を通り越して、怖気が走った。

 

何故そこまで知っているのか。意味がわからなさ過ぎて気持ち悪さすら感じた。

 

「じゃ、スピードワゴンはクールに去るぜ……」

 

だから、オレは眼前から去ろうとするジルを止めて話し合う勇気は、オレには無かった。

 

 

 

「あ、色々知ってる弟から助言なんよ。前世では祖母から望まれたから自分の夢の外科医を諦めて産婦人科医になったんだし、今世では自分の好きな事すれば?

まぁでも自分で何か考えて決めるって結構労力いるしね、誰かに決められたゴールを走った方が楽な人だっているし、俺はアンタがどう生きようとなんか言う気は無いよ。

芸能人になろうが医者になろうが人殺しになろうが好きにしてくれって感じ。

ただルビーとヤるつもりなら避妊はしろよ、妹だし近親相姦になるし。

あばよとっつぁん。」

 

 

吐き気すら催す程の気味の悪さ。

 

あったことも無い他人がこんなにも自分の事を知っていると、ここまで恐ろしく気味の悪い事なのだと、オレはこの時初めて知った。

 

 

 

「あでっ」

 

「………」

 

「………」

 

「……周りがどうなってるかわからん、助けてクレメンス」

 

 

同時に、コイツの背負ったハンデと生きづらさが、相当な物だということも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから三年ほどの月日が流れ、アイのドームライブが決まった頃になっても、オレのジルへの距離は変わっていなかった。

 

仲がいい訳でもないが悪い訳でも無い。

ジルが俺達へ敵意がある訳でも無い事も分かったし、まぁ普通の兄弟と言えばそうかも知れないが、それでもどこか他人行儀な距離感は変わらなかった。

 

それはルビーとジルの距離感も同じで、普通に日常会話で盛り上がったりするし、飯が出来た時に呼びに行ったりもする。

 

でも、逆に言えばそんな普通の兄妹程度の関係性。

 

「ジル、飯出来たってよ」

 

「ほいほい今行くめぅよ」

 

なんて言う程度の。

 

だから、オレ達は家族だけど家族じゃない。そんな微妙な関係だった。

 

お互いに理解し合おうと歩み寄ろうとしても、お互いに傷付くことを恐れて踏み込めない。

 

そんな、ヤマアラシのジレンマの様な関係だった。

 

でも、それが意外と心地良かったりした。お互いに踏み込まず気安く話せる関係でもあったから。

 

 

 

 

 

 

 

あの日まではそう思っていた。

 

 

 

 

アイのドームライブ当日までは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






1週間ブリですね☆

あ、ここまで読んでくれてる人ならわかってると思いますけど、ジル君はマジでチートとか突出した才能とか無いです。

別に馬鹿じゃないし無能でも無いけど、何にしても平均よりちょっと上くらい。ホントにそれだけ。

ただの鬱病患者です。


星野アイ曇らせチャート

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読者年代調査(恥ずかしがらず答えてね☆)

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