【鬱の子】   作:湯タンポ

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朝の味噌汁の匂いは良い(堂ヶ島少佐)

朝の味噌汁ってなんであんなに美味いんだろ。




初めての朝ごはん(温もり)

 

 

 

 

B小町ドームライブ当日。

 

 

 

私も少しは緊張しているのだろうか。

 

起きようと思った時間より一時間早く起きてしまった。

 

 

 

勿論アクアやルビーもまだぐっすり寝ている。

 

 

だけどジルが見当たらない。

 

トイレにでも行ったのだろうか?

 

 

 

少し不安に思いながらも、私はアクアとルビーを起こさないようにそっとベットから抜け出した。

 

 

そしてリビングに行くと……そこにはジルがいた。

 

 

「おはよう、アイ」

 

 

「おはよー!早いね!」

 

 

「ああ、目が覚めちまってな……」

 

 

そう言うジルはどこか落ち着かない様子でそわそわしている。

 

 

「……もしかして緊張してるの?」

 

 

「ん?あ……あぁ、まぁね…」

 

 

(……ジルでも緊張すること、あるんだ。)

 

 

ジルの意外な一面に思わず笑みがこぼれてしまう。

 

 

(……あぁ、でもそっか……これからはこんなやり取りが毎日できるんだ……親子に、なれたんだ……)

 

 

そう思うと何だか感慨深くて、私はジルに笑いかける。

 

 

「大丈夫!だって私は天才的なアイドル様だよ?今日のドームだってきっと大成功させるに決まってるよ!……だから、ジルもママを応援してね!!」

 

 

「ああ、分かってる。」

 

 

そう言って微笑むジルの表情は優しくて柔らかくて、思わずドキッとしてしまう。

 

 

(……って、何考えてんのさ私!ドキッとしてしまう…じゃ無いよ!相手は3歳児半だし、何より自分の子供だよ!?)

 

 

ジルは決してイケメンでは無い。

 

 

イケメンというのは多分アクアみたいな顔の事を指すのだろう。

 

 

ジルはなんというか……強面と言う感じが1番近い気がする。

 

 

でもジルは笑うとすごく優しい顔になるから、そのギャップで……

 

 

 

 

だ か ら !私は一体何を考えてるの!?もしかして緊張で頭バカになっちゃったの!?)

 

 

「アイ、どしたー?」

 

 

「っ!な、何でもないよ!?あはは……」

 

 

 

(はいもうこの話終わり!)

 

 

私は、頭を切り替えて朝食の準備に取り掛かろうとキッチンへと向かおうとした。

 

 

「アイ、実は飯を作ったんだけど……いるか?」

 

 

「…………へ?」

 

 

 

(……言われてみれば、起きた時からいい匂いがしてた様な…)

 

 

「いる!!」

 

 

ジルの作ったご飯なんて初めてだから、私は思わず食い気味に答えてしまった。

 

 

「じゃあルビーとアクア起こしてきなよ、全員の分用意してるから。」

 

 

「……うん!」

 

 

(……家族皆で…朝ごはん…!)

 

 

 

 

「おはよー!アクア、ルビー!」

 

 

「おはよ……ママ」

 

 

「……ん……おはよう…アイ…」

 

 

私は2人を起こしに寝室へと向かった。

 

2人は眠い目を擦りながらも起きてくれた。

 

 

(きゃわ〜♡)

 

 

思わず顔がニヤけてしまう。

 

 

まだ寝ぼけているルビーとアクアの可愛さは犯罪級だ。

 

 

「じゃあ2人とも、顔洗っておいで?朝ごはんにしよ!」

 

 

私がそう言うと、ルビーは目をこすりながら洗面所へ歩いて行き、アクアもその後を付いて行く。

 

 

 

 

 

(ジルが作ってくれたご飯かぁ……どんなのだろ?)

 

 

そんな事を考えながら、私はアクアとルビーと一緒にダイニングに足を踏み入れた。

 

 

 

「わ……!」

 

 

「すっご……」

 

 

「健康的……だな」

 

 

 

ダイニングには既に朝ごはんが準備されていた。

 

 

白米と、焼き鮭と……卵焼き?かな? そして小松菜の…胡麻和え?

 

 

そして……豆腐とわかめとお揚げの味噌汁。

 

 

和食の王道と言った朝ごはんだ。

 

 

特別な料理は一つも無い。

 

作ろうと思えば子供でも作れるような簡単な料理。

 

 

でも、だからこそジルの愛情が伝わってくる様な気がした。

 

 

(……あれ?)

 

 

ふと私は気づいた。

 

 

 

 

 

私って……今まで誰かにご飯作ってもらった事あったっけ……?

 

 

父親は居なかった。

 

 

母は……少なくともこんな朝ごはんを作ってくれる存在では無かった。

 

 

ミヤコさんや斎藤社長は毎日忙しかったから……施設を出てアイドルになってからは、必然的に一人でご飯が多かった……。

 

 

勿論芸能界に居るから、立食パーティーとか、会食とかは当然合ったけど…。

 

 

 

誰も居ない部屋で、コンビニで買ったお弁当をレンジで温めて食べる…普段はそれが当たり前だった。

 

 

 

あの時、何度も胸に去来する物が合ったけど……今ならその正体が分かる。

 

 

 

……あぁ……私、あの時…寂しかったんだ。虚しかったんだ。

 

 

 

「ママ?食べないの?」

 

 

「…あ、うん!温かいうちに食べちゃおっか!」

 

 

ルビーに声をかけられ、私は現実へと引き戻される。

 

 

(……今はそんな事よりジルの愛情を噛み締めよう!)

 

 

そう心に決めながら、私達は席に着いた。

 

 

「じゃあ、いただきます!」

 

 

『いただきます!』

 

 

皆で手を合わせて食事を始める。

 

 

(まずはこの味噌汁から……!)

 

 

 

一口飲んでみる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――…美味、しい……っ

 

 

 

 

 

―――人に作ってもらったご飯って……こんなに温かくて、美味しいんだ…―――

 

 

 

「ママ、何で泣いてるの(・・・・・)…?」

 

 

「え……?」

 

 

ルビーにそう言われて目元を触ると……確かに涙が頬を伝っていた。

 

 

(私、泣いてたんだ……)

 

 

自覚すると、途端に涙が溢れて止まらなくなった。

 

 

「…っ……っ…っ…」

 

 

私はそのまま味噌汁を飲み干した。

 

 

だけど涙は止まなかった。

 

 

 

「…アイ、俺もアクアもルビーも、みんなここにいる。大丈夫だ。」

 

 

「うん……っ」

 

 

すると、ジルがそう言って私を抱きしめてくれる。アクアとルビーも一緒になって抱き締めてくれた。

 

 

私はそのまま、暫く泣き続けた。

 

 

(もう……私ってば昨日から泣き過ぎじゃない?)

 

 

 

 

私が泣いたのは、寂しかったからじゃない。

 

 

悲しかったわけでも無い。

 

 

(嬉しかったんだ……ご飯を作ってもらえることが……)

 

 

4人で囲む食卓がこんなにも温かい事が嬉しくて堪らなかったのだ。

 

 

(これからは、何時でも皆揃ってご飯食べられるんだ…)

 

 

 

「ほら、冷める前に食うぞ」

 

 

「うん……ジル、味噌汁のおかわりってある?」

 

 

「ああ、沢山あるぞ」

 

 

「じゃあ、おかわり!」

 

 

「はいはい」

 

 

「んふふ〜……♡」

 

 

 

そのあと、皆で和気藹々とお話しながら、お腹いっぱいになるまでご飯を食べた。

 

 

ジルの作った朝ごはんはとっても美味しかった。

 

 

一つ一つが丁寧で優しい味付けで……何より、温かさ(・・・)がこもった料理だった。

 

 

「ごちそうさまでした!」

 

『ごちそうさまでした!』

 

 

4人で手を合わせて挨拶を済ませ、食器を片付ける。

 

 

 

人が作った料理を、家族みんなで囲んで食べた……私にとって、初めての朝ごはん(温もり)

 

 

そして、私達4人の『家族』としての第一歩だった。

 

 

 

(これから何度も、こんな朝が続くんだ……)

 

 

そう思うと、何だか胸がポカポカしてくる。

 

 

「よし!じゃあそろそろ準備しよっか!」

 

 

『おー!』

 

 

私はアクアとルビーと一緒に洗面所へと向かい、歯磨きを済ませて服を着替える。

 

 

そして、先に私の着替えが終わったタイミングでインターホンがなる。

 

 

 

(ん…?斎藤社長達かな?迎えの時間にはまだ少し早いけど……も〜!…社長どんだけ今日のドームライブ楽しみなのさ!)

 

 

内心そんなツッコミを入れながら、私は取り敢えず誰かを確認しようとインターホンのモニターを見ようとした。

 

 

 

「あ…俺が出るよ」

 

 

「え?あ……うん、ありがと」

 

 

しかしジルがそう言って玄関へと向かってしまった。

 

 

(……まぁいっか(・・・・・)!どうせ社長達だろうし!)

 

 

私はモニターを確認するのをやめて、リビングで着替えているアクアとルビーを呼びに戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――私はその選択を永遠に後悔する事になる

 

 









そこに人の心はあるんか?


ないです(断言)

読者年代調査(恥ずかしがらず答えてね☆)

  • 15〜19
  • 20〜29
  • 30〜39
  • 40〜49
  • 50〜59
  • 60〜以上
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