異世界漂流記   作:ガスト

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第1話

 

「状況は?」

 

「王都攻略に参加した部隊と新たに参加した憲章連盟軍合わせて約10万と言うところかね」

 

 黒い軍服に身を包んだ二人の女性は最低限の灯りしかない廊下を足早に歩きながら会話を進める。

 

「こっちは王都から逃げてきた王都守備軍と親衛隊、私のガラクシア騎士団含めて二万か」

 

「守備軍と親衛隊はほぼ壊滅。妹殿下の脱出にあてよう」

 

 二人は駆けていく隊員たちと何度もすれ違いながら敵の予測配置へ

図を見る。

 

「だと防衛線力は1万4000ね。姉殿下は?」

 

「王都から囮のために最低限の護衛と共に予定ルートBを進行中。二時間後に着予定」

 

「スコーピオにいかせなさい。着までに包囲される」

 

 女性に命令された老婆は手近な伝声管の蓋を開けるとスコーピオに話しかける。

 

「了解。スコーピオ!」

 

《はいはい!》

 

「姉殿下をエスコートしろ」

 

《おけ!3分で出るよ!》

 

 伝声管の蓋を勢いよく閉める音がこちら側まで響くのを聞きとげるとすぐに老婆は先に歩いていった女性に急いで追い付く。

 

「もう少し老体を労ってくれんかの!」

 

「なら少しは年寄りらしくなさい。その時は副団長はやめてもらえけど」

 

「厳しいね!」

 

 老婆こと副団長のカプリコーンは目の前でこちらを見ずに歩く騎士団長ヴァルゴを恨めしそうに見つめる。

 そんな時、太鼓を叩く音が聞こえると同時に10騎の騎馬が山肌に備えられた出入口から黒い甲冑を着た騎士を乗せて出ていく。

 

「流石スコーピオ。仕事が速い」

 

 そう言うと二人は目的の部屋にたどり着き、ドアを開ける。

 そこには同じ軍服を着た騎士団員たちが9人が立って待っており、部屋の一番奥にはドレスに身を包んだ女性が座っていた。

 

「陛下、遅れたこと深くお詫び申し上げます」

 

「よい、今は火急。そなたの役目を果たせば良い」

 

「は!」

 

 ヴァルゴは素早く今の状況について説明すると陛下と呼ばれた女性レティシアは静かに頷く。

 

「敵の奇策により王都は陥落。民を見捨て、このガラ要塞に逃げ込み生き恥をさらしている。国を統べるものとして嘆かわしい」

 

「何を言いますか。ゴーリ親衛隊長が命を懸けた覚悟を無駄になさるつもりですか!」

 

「婆や、そんなつもりはない」

 

 レティシアはいつものように厳しく接してくれる婆やを見て少し安堵しながら目の前に立つ騎士たちを一人一人見つめる。

 

「このような結果になったが私は自らの行いを悔いてはいない。人族以外を悪と断じ、排斥することは決して未来には繋がらない。言葉を交わせるのならお互いが歩み寄り、対話をもって知性あるもの同士が支えあって生きていかねば一生戦いあわねばならない!」

 

 若くして親を失い、小国ながら国を統べる王女として人族と多種族が共存する国家としての立場を貫いてきた。今なお若き身でありながらもその意思を貫く覚悟は本物であった。

 

「今、陣営を定めねば誅すると言う人類憲章連盟のやり方は対話を捨て去った昔の魔族そのもの。決して許してはならない!」

 

 獣人や魔族である騎士団員も多くいるガラクシア騎士団の団員にとっても安心して過ごせてた祖国を壊された怒りは同じだ。

 

「各員、一層奮励努力せよ!」

 

 レティシアの言葉に参集していたガラクシア騎士団員たちは深々と頭を下げるのだった。

 

ーー

 

 ガラ要塞外苑、人類憲章連盟軍本陣。

 

「結局逃げ込まれてしまったな」

 

「将軍、まだレティシア王女は我らの追撃隊と交戦しています。ここから増援を出し挟み撃ちにすればまだ勝ち目は」

 

「スコーピオの騎馬隊にこっちの防衛線を正面から突破された。疲労している追撃隊は敵わない。それに今から増援を出しても遅い」

 

 追撃隊が追っているレティシア王女は影武者だ。恐らく双子の姉のラティシアだろう。

 開戦時からこの要塞を監視していたが相手は動く気配すらなく、頑なに籠城していた。

 当初の作戦なら王都の増援に向かう道中に強襲し要塞の外で戦力を削る予定だったが、それを予期して王女が逃げ込むまで戦力を温存していた。

 

「奇人ヴァルゴ。流石だな」

 

 人類憲章連盟筆頭国であるアルバニアン王国将軍ヴァゴは無精髭を撫でながら要塞と化した山を見つめる。

 

「王都制圧部隊はここにいつ着く?」

 

「一時間もあればそれなりの数は揃うでしょう」

 

「先陣は我々だ。王女が要塞に辿り着くまでに要塞に取り付け!」

 

「は!全騎士団長に召集命令だ!」

 

ーー

 

「くそが!しつこい!」

 

 悪路を突き進みながら馬を駆けさせるラティシアは半分以下になった部下を見ながら速度を速めようと急がせる。

 ガラ要塞まであと一時間の距離だがついに追い付かれてしまった。

 

「駄目だ避けられん!」

 

 開けた場所に出た瞬間。追撃してきた騎士が大弓を構えて詠唱を始める。

 

「メル!あとは頼むぞ!」

 

「イザベラ!」

 

「投擲加速!」

 

 イザベラと呼ばれた騎士は馬を反転させると剣を抜き投擲。大弓を構えていた騎士は鎧ごと胴体を貫かれ絶命し落馬する。

 だが剣を失ったイザベラは短刀を取り出し構える。

 

「こいやぁ!」

 

「押し通る!」

 

 追撃してきた騎士は持っていた斧を振り上げそのリーチ差はどうしようもなく馬ごとイザベラは叩き切られる。

 

「すまねぇ」

 

「追い付かれます!」

 

 ラティシアも自身の剣を抜き、後ろから迫る騎士たちを見た瞬間、横合いからランスを持った小柄の騎士が追撃部隊の右翼を吹き飛ばした。

 

「LaLaLaLa!」

 

「増援!」

 

「お待たせしましたぁ!」

 

 スコーピオは左手を大きく振り、毒霧を撒き散らす。

 防御の遅れた騎士たちは血を吐きながら落馬し地面にのたうち回る。

 

「スコーピオ!」

 

「エリエッタ。また遊ぼうね!」

 

「うお!?」

 

 スコーピオは横にいたラティシアの腰を掴むとそのまま持ち上げて時分の馬に乗せるとそのままガラ要塞へと転身し駆け始める。

 

「エリエッタ殿、どうしますか?」

 

「無理だ。私たちは負けたんだヴァゴ将軍と合流するぞ」

 

ーー

 

 スコーピオがラティシアを救出したのと同時刻、ガラ要塞は包囲していた憲章連盟軍7万の攻撃を受けていた。

 計画段階でガラ要塞攻略は難航すると言われていたがその想定以上の損害を連盟軍は被っていた。

 

「先陣のテストゥドが吹き飛ばされました。魔力探知に引っ掛からなかったので非魔力兵器かと」

 

「すぐにバラけさせろ。騎馬隊にも突撃命令」

 

「了解!」

 

 伝令の兵が魔力で赤と青の光を上空に打ち上げると前線の兵士たちは組んでいた陣形を解除して突撃を慣行する。

 

「てぇ!」

 

 山をまるごと要塞化して建設されたガラ要塞。山肌から生えるように設置された各砲台が火を吹き、迫り来る連盟軍を吹き飛ばす。

 

「次弾装填急げ!」

 

「敵のかたまっているところを狙うんだ!」

 

「そろそろ敵の騎馬隊が来るぞ!麓の隊に知らせろ!」

 

 時代を遥かに先取りした砲台は他国で使われている大砲など比べ物にならない威力を誇っていた。

 

「くそ、魔力探知に反応がないから攻撃タイミングが分からない!」

 

「とりつく前に魔力が切れちまうよ!」

 

 岩影で隠れていた兵士たちは遥か先のガラ要塞を見つめるが砲台の発砲炎すら木々に阻まれ見にくい状況だった。

 連盟軍の知る大砲ではこの距離はまだまだ射程外の筈だが味方の隊は見事に吹き飛ばされている。

 

 この距離なら爆裂魔法の飽和攻撃が一般的だがそれなら魔力探知に反応があり、各隊に配置された魔導師が防御をしてくれる筈だ。

 だが敵の攻撃は魔力探知に反応しないため魔導師が防御する前に吹き飛ばされるのだ。

 

「王都にはあんなものありませんでした。もちろん我が国にもない兵器です」

 

「予想以上の威力だ。魔力に頼ってきた戦いが変わるかもしれん」

 

「将軍!」

 

「作戦中止だ!騎馬隊も止めさせろ!」

 

 本陣で戦況を見ていたヴァゴは撤退の判断をくだすと苦い顔をする。

 初戦はこちらの大敗となったは間違いない。なにせ相手は一人の死傷者も出さずに終わったのだから。

 

「作戦を練り直す。代表を集めさせろ!」

 

「了解!」

 

 

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