前世 男の聖女コスプレTS少女が行くダンジョン配信 作:銭湯妖精 島風
やれやれだぜ、とか思いつつキツめの左カーブを抜け短い直線に入ったが、抜群の安定性でスピードを落とさずに僕を追走してくる熊を反響定位とミラーで確認し
「ワカモ〜」
「なんじゃね、主よ」
名前を呼ぶと即座にタンデムシートに降り立ち、ワカモが僕に尋ねてくる
「熊とコンニチワしちゃってさ? なんか僕を追いかけてきてるんだけど、対話で解決出来ないかな?」
「吾に熊と通訳・・・いや、対話をしろと?」
「無理かな?」
「何を戯けた事を、獣との会話など児戯に等しいものよ」
「そう? お願い」
「うむ、任せよ。あと主は運転に集中して良いし、吾を気にかけてないで構わぬ、タンデムシートに張り付くでな」
「え? うん、分かった」
ワカモへ用件を伝えると、彼女は快く了承してくれて熊の方へ身体を向けて対話を開始する
開始したのだけど、なんでリューネ語で語りかけているのかな? 母国語的な奴かな? それとも対話に対応してる言語がリューネ語なのかな?
まぁ僕にはサッパリ分からないけどね
「主よ、どうも聖女の気を感知し是非 配下へ加えて貰おうと追走してきた様だ」
「・・・え?」
「聖女である主の配下になるべく付いてきている、故に 一定距離を保っている様だ」
「・・・聞き間違いじゃ無かったか、
「分かったよカナリアちゃん、気をつけて」
「私達ではもしもの時に足手纏いになるわね、分かったわ」
熊が追走してきた理由が、なんとも想定外の内容で困惑しつつ渚と紗夜に、先行して貰う事を伝えて僕は安全に停車出来るスペースにninja400を停車して、熊と対峙する
「きゅーん」
「ふむ、『聖女様の配下となりたい』 と言っておるな」
「熊が、人間みたいに頭下げてる・・・凄い」
体高180㎝を超える熊が、礼儀正しく僕の前に傅いていて困惑してしまう
僕としては困るけど、気持ちは有難いと思わなくも無いから、極力 傷付けない様に断りを入れたい
デカくて圧倒されるけど、つぶらな瞳をしていて愛嬌があるしね?
「あー・・・君を連れて行けない、人間社会では君が生きづらいだろうしね? だから家におかえり?」
「くぅーん」
「『聖女様のお言葉ならば、従います。また お会い出来る事、願っております』との事だ」
「うん、また何処かで・・・あ、次はもう少し触れ合いがしやすい
なんだか物凄く聞き分けの良い熊は、僕の言う事を聞き頭を下げてトコトコと来た道を帰っていく、その背中を見て 絶対に会いに行こうと心に決めてninja400に跨り先行した渚と紗夜が居る筈の休憩場へと走らせる
「彼奴も喜んでいたぞ、主よ」
「そう? 少し可哀想な事を言ってしまったかなぁ? って思ってたんだけどね?」
「仕方あるまいよ、主の言った事は真実だ、彼奴も承知しているだろう」
「そうだと嬉しいな」
タンデムシートに座るワカモの言葉に返すと、ワカモが そう言う
「本当助かったよワカモありがとう」
「吾は役に立つ為に主と契約している故な、気にしないで良い」
「そうだとしても、ありがとう」
渚と紗夜の待つ休憩場へ向かいながらワカモへ感謝を述べると、彼女は そんな事を言う、なんというか謙虚だ と感じる
にしても、聖女の影響が こんな所で現れるとは予想外だった
「聖女、流石はエクストラクラスに分類されるだけある・・・いや、二柱分だからか?」
「あぁ・・・確かにイオン様とヴェスタ神の二柱から任命されてるもんね、なるほど」
「吾も動物に懐かれる質だが、主は吾以上かも知れぬな?」
ワカモは そんな事を良いカラカラと笑う、そりゃ君は霊狐だもの動物と仲良くなれるよね? とは言わないでおく、そこまで空気を読まないで言えるほど、僕は無神経では無いのだ