WORLD ONE BRIDE GENESIS 作:マリービィ
仁之介「昨日も言ったんだが、僕は彼女の教師で同僚でもあったんだ。そして─────僕が、君のお母さんの夫。つまり─────君のお父さんだ。」
五月「・・・・・・え?・・・お父・・・さん・・・?」
仁之介から聞かされた話に、五月が目を見開いた。
─────否、彼女は驚くよりも先にとある感情を抱いた。
その感情は再会できたことでの喜びではなかった。
その感情は─────
五月「今更・・・今更、何なんですか?!!!」
彼女は仁之介に怒鳴る。
彼女の感情は喜びではなく、怒りだった。
それは、彼が昔、自分達五つ子が生まれた瞬間にこの男は逃げたという。
恐らく、五つ子を育てるのが無理だと思い、零奈に任せたんだろう。
それを彼女がどれだけ辛かったのか・・・
五月「貴方のことはお母さんから聞いています!貴方なんかに・・・貴方なんかに・・・!!!」
涙を流しながら怒りを表した。
そしたら次の瞬間─────ドン!と音がした。
仁之介「ごめんなさい!!!」
五月「?!!」
その音の正体は、彼の土下座であった。
彼は額を地面に叩きつけ、謝罪をしていた。
仁之介「なんて情けない。ずっと後悔していたんだ。当時の僕に甲斐性があれば君たちに、こんなに迷惑をかけずに済んだのにと!そして、君たちの行く末を考えると心が張り裂けそうな思いだった。」
五月「・・・・・・」
仁之介「僕の罪は消えることはない。しかし許されるのならば・・・罪滅ぼしをさせてほしい。今からでも父親として娘にできることをしたい。」
仁之介は頭を下げながら言った。
彼の額は先程、自分自身で地面に叩きつけていた為、少量の出血をしていた。
五月「・・・・・・もう私たちに関わらないでください。お父さんならもういます。」
仁之介「中野君か。あの子は優秀な生徒だったが、父親としては不合格と言わざるを得ない。やはり血の繋がりが親子には必要不可欠。お母さんが死んだ時、彼が君に何をしてくれた?」
五月「!」
仁之介にそう言われ、五月は言葉を失う。
仁之介「娘が亡くなった母親の影を追い続け、母親と同じ間違った道に歩を進めようとしている。学校の先生が君に相応しくないということは君が一番よくわかっているはずだ。父として到底見過ごすことができない。君たちへの愛が僕を突き動かした。」
仁之介の言葉に今五月の頭の中はぐちゃぐちゃになってきている。
仁之介「考えるなら、また今度にしよう。僕は此処で失礼させてもらうよ。」
仁之介はそう言って立ち去った。
五月はどうしようかと、悩んでいた。
五月「私は─────」
???「五月。」
五月「?!」
そこで、聞き慣れた声がした。
そこには、つい先月から恋人となった彼がいた。
五月「円君・・・」
円「通り過ぎようとしたら、君がさっき、老人の男性と話していたの見えたんだ。良ければ、話を聞くよ?」
五月「・・・・・・円君・・・良いの?」
五月は円と恋人同士となってから、彼にタメ口で話すようにした。
彼は元々、妹持ちの兄であったからか、こんな本当の自分を受け入れてくれた。
その為、彼女はそんな自慢の彼氏である円にタメ口で話すようにした。
円「僕はもう君の彼氏なんだから、話してもいいよ?」
五月「・・・・・・」
彼は本当に優しい。
こんな優しい人が自分の彼氏だと思うと、安心感があった。
五月「円君・・・実は─────」
円「・・・・・・」
五月から話を聞いた円は、怒りが湧いた。
それもそのはず。
今更、父親面をするな・・・お前に五月の気持ちが分かるのか・・・?
彼の心の中にはそう言っていた。
五月「本当に私は間違っているのかな・・・?」
五月は不安があった。
自分は親と同じ道に歩んでは駄目だろうか?
彼女はそう思い始めた。
円「五月。」
五月「何?」
五月は上目遣いで彼を見る。
思わず、彼は可愛い彼女の上目遣いにやられそうになるが、今は真剣な話なので理性を抑えきる。
円「僕が三学期の時に言っていた言葉─────覚えてる?」
五月「!!」
三学期に言われた円の言葉。
五月はそれを思い出し始めた。
円『僕の妹もいてね─────妹の将来の夢を聞いて、僕は妹を応援したいと思ったんだ。親じゃないけど、兄目線で言うと、良いと思うよ。』
円「僕は君を応援したい。だから─────親に憧れて教師になること、それは間違っていない。」
それを言われた五月は、目に力が戻ってきたような気がした。
五月「お母さんは私の理想の姿。強くて、凛々しく、優しくて・・・私は・・・お母さんのような先生になりたい。私は─────私の意思で教師を目指すよ。」
円「五月・・・!」
五月の言葉を聞いて、円は微笑んだ。
今までの沈んでいた姿とは打って変わって、力強く天に向かってそう誓う五月。
円「じゃあ僕は彼氏として、君をサポートするよ。」
五月「円君・・・本当にありがとうね。」
五月は笑顔でそう言った。
円は愛おしい彼女の笑顔を見て、優しく微笑んでいた。
数日後。
仁之介は誰かを待っていた。
そう─────自身の娘を待っていた。
五月「無堂先生。五月です。」
そこで、待っていた仁之介に五月が話しかけた。
しかし─────五月のはずだが、何処か違和感があった。
仁之介「やぁ。まさか五月ちゃんの方から来てくれるとはね。僕の言葉に耳を傾けてくれるようになった・・・ということでいいかな?」
だが、仁之介はそんな彼女の違和感を気づくことなく、話しかける。
五月「もう一度聞かせてください。学校の先生になりたいという夢が間違っているのだとしたら、私はどうしたらいいのですか?」
五月はそう仁之介に再び問いただす。
そして、当然かのように仁之介は答えを出す。
仁之介「五月ちゃんが五月ちゃんらしくあってほしい、その手助けがしたいんだ。君は今もお母さんの幻影に取り憑かれている。学校の先生でなければなんでもいいんだよ。お母さんと同じ間違った道を歩まないでくれ。」
五月「なぜ急に私の前に現れたのですか?」
仁之介「離れていた時もずっと気にしていたさ。罪の意識に苦しみながらね。それがどうだい。まさか、こうして父親らしいことをしてやれる日が来るとはね。この血が引き合わせてくれたんだ。愛する娘への挽回のチャンスを・・・」
仁之介はそう言い切ろうとしたその時だった。
???「ガハハ、父親だって?笑わせんな!」
仁之介「?!君たちは・・・」
現れたのは厳ついサングラスをかけた男性・勇也と彼の同級生であった女性・下田が間に割り込んできた。
勇也「うーっす、先生、ご無沙汰。」
下田「つっても、用があるのはうちらじゃないんだけど。」
そう、この二人は所謂前座である。
本当に用事があるのは、この二人の他にもう一人であった。
マルオ「無堂先生─────ご無沙汰をしています。」
仁之介「中野君・・・」
マルオ、彼こそが用事がある人物だった。
彼に気づいた仁之介は彼の目の前まで来る。
仁之介「中野君、君にも謝るきっかけができて良かった─────すまなかった。」
そう言って、仁之介はマルオに頭を下げる。
マルオは彼を見下ろしながら言った。
マルオ「いえ、貴方には感謝しています。貴方の無責任な行いが、僕と娘たちを引き合わせてくれた。」
仁之介「どうだろう。こと責任に関しては君も果たせていないように見える。だから五月ちゃん自らここに来た。頼りない君でなく、僕の所にね。」
マルオ「五月君が・・・ここに・・・?」
マルオは無堂の近くにいる五月を見ながら疑問の声を投げかけた。
先程から違和感のある五月の方へと向かって行った。
マルオ「何を言っているのですか?よく見てください─────此処に五月君はいませんよ?」
仁之介「?!!」
そう─────先程から違和感のある正体は、五月ではなかったからだ。
五月ではなく─────三玖であったのだ。
五月「私は─────此処です。」
そこで、正真正銘の五月が現れた。
彼女の後ろには、円と瑛人がいた。
何故彼等がいるかと言うと、もし、五月や三玖に何かあった時の為であった。
仁之介「何のつもりだい・・・?それに、後ろにいる二人は・・・」
五月「二人に関しては後程説明します。騙してしまい、すみませんでした。しかし─────こうなることは分かっていたんです。」
話しながら、五月は彼の目の前まで来ていた。
仁之介「それがどうした。ただ間違えていただけで・・・」
五月「愛があれば私たちを見分けられる。母の言葉です。」
仁之介「・・・!!また彼女の言葉か!いい加減にしろ!そんないい加減な妄言!いつまで信じてるんだ!」
仁之介はとうとう声を荒らげる。
今までは穏やかな感じだったが、本来は此方の方だと思われる。
仁之介「今すぐ忘れなさい。お母さんだってそう言うはずだよ。思い出してごらん。お母さんがなんて言ってたか。」
五月「お母さんが後悔を口にしていたことは覚えています。」
仁之介「そうだ。君のお母さんは間違った!君はそうなるな!」
仁之介はそう説得するかのように言い続けた。
しかし、五月はニッコリと笑顔で言う。
五月「─────私はそう思いません。」
仁之介「?!!」
五月「たとえ本当にお母さんが自分の人生を否定しても、私がそれを否定します。いいですよね。私はお母さんじゃないのですから。ちゃんと見てきましたから。全てをなげうって尽くしてくれた母の姿を。あんなに優しい人の人生が間違っていたはずがありません。」
五月は母親のことを話しながら、仁之介に対して皮肉なことを言い続けた。
仁之介「子供が知ったような口を・・・!」
自分の手を強く握りしめ仁之介は口にする。
マルオ「貴方こそ、知ったような口ぶりで話すのですね。」
仁之介「・・・・・・どういうことだ?中野君。」
マルオ「恩師に憧れ同じ教師になった彼女の想いが、裏切られ見捨てられ傷ついていたのは事実。しかし、そこで逃げ出した貴方が知っているのもそこまでだ。その後の彼女が子供たちにどれほどの希望を見出したのかを貴方は知らない。貴方に彼女を語る資格はない!」
無堂を睨みながら自身の言葉を伝えるマルオ。
普段自身の感情を出さないマルオがここまで感情をむき出しにするのだ。
相当怒り心頭なのだろう。
三玖「お父さん・・・」
あまり表情を表に出さなかったマルオの姿に、三玖は声を漏らした。
五月「無堂先生、最後まであなたからお母さんへの謝罪の言葉はありませんでしたね。私はあなたを許さない。罪滅ぼしの駒にはなりません。あなたがお母さんから解放される日は来ないでしょう。」
仁之介「・・・ッ・・・」
五月の言葉に悔しそうに顔を歪めている仁之介。
すると─────
仁之介「この・・・分からず屋が!!」
五月「?!!」
三玖「五月!!」
マルオ「五月君!!」
仁之介の拳が五月の顔面の方へと向かう。
しかもそれも、かなりの勢いで。
その為、三玖は自分の妹を、マルオは自分の娘を助けに向かおうとするが、間に合わない。
五月は殴られると思い、目を瞑る。
しかし─────痛みが来ない。
目を開けると、そこには、顔面鼻先の前に拳が寸前で止まっていた。
円「─────」
─────否、止められていた。
それは、五月の彼氏である円が仁之介の腕を掴んだ。
仁之介「何だ・・・何なんだ君は?!」
円「─────僕は一柳円─────五月の恋人だ。」
次の瞬間─────ドゴォ!と音がした。
仁之介「がはぁ?!」
円は仁之介の腹部を思いっきり殴った。
彼の拳が仁之介の腹部に突き刺さっていた。
そして、殴られた仁之介はそのまま勢いで吹っ飛ぶ。
ドーン!!!
仁之介は壁に衝突し、地面に倒れ込んだ。
円「僕の彼女に手を出すな─────次やったら、殺す。」
五月「円君、助けてありがとう。」
円「恋人を助けるのが、僕の役目だからね。」
あの後、警察が騒ぎを聞きつけに来たが、円は正当防衛をしただけだと聞いた警察は仁之介を、暴行未遂で逮捕することとなった。
瑛人「これで一件落着だな。」
三玖「そうだね、エイト。」
こうして、無堂仁之介の事件は終えた。
彼等の夏休み──────もうすぐ、終焉と迎える頃であった。
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Chapter14 END
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Next Chapter
レジェンド・ソルセリア編
Coming Soon・・・
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これにて、夏休み編も終。
久々に長文を書いてしまいました…
まぁ、今までは短くなっていたのでこのぐらいと時もいいかと思います。
さて、次回からオリジナル編である章、レジェンド・ソルセリア編が始まります。
そしてこの章で再び、新たな敵オリキャラが登場します。
それでは、また次回。