WORLD ONE BRIDE GENESIS   作:マリービィ

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⚠注意!

※今回は過去一重たい回です。
※涙弱い人は号泣注意です。

本作初めて、これまで以上に重たいかと思います。
本当にこれの原作ラブコメ漫画か?と思う程、めちゃくちゃ重たいです。
恐らく、涙弱い人には本当に泣いてしまうかもしれないです。
それでは、本編へどうぞ。




12話 消えゆく光 後編

 

 

 

 

円「─────《彩》─────?」

 

 

 

円は放心したようにぽつりとつぶやいた。

蚊の鳴くような小さな声で発せられたその言葉に、周囲が驚愕と呆然に満ちた視線を集める。

 

 

 

三玖「え?森谷君、何言ってるの?」

 

瑛人「ま、まさかだけどお前・・・あ─────」

 

円「違うッ!!!」

 

 

 

腹の底から発せられたような怒号に、瑛人はビクリと身を強張らせて口を閉ざした。

円の指先は、カタカタと小刻みに痙攣していた。

 

 

 

円「そんなことない・・・そんなはずがないんだ・・・」

 

メラン【オオオオオオエエエエオオオオオオ!!!】

 

ドシャドシャドシャドシャドシャ!!!

 

 

 

まるで胃で消化したものをいっせいに吐き戻すかのような、不快な咆哮とともに、漆黒の魔獣(メランベスティア)の背中から生えた触腕から、粘液のような物体がいくつも吐き出された。

そしてスライムのように、瑛人と三玖のところへと向かう。

 

 

 

三玖「?!」

 

瑛人「三玖!」

 

 

 

三玖のところに行かせないよう、瑛人は必死に三玖を守っていた。

瑛人は来てしまったスライムに乗られてしまう。

そして、そのスライムはどんどんと重くなっていき、瑛人は顔を歪む。

 

 

 

瑛人「があぁ?!」

 

三玖「エイト!」

 

 

 

そこで、円は気づいてしまう。

漆黒の魔獣(メランベスティア)が─────明らかに円だけを避けていることを。

 

 

 

円「やっぱり・・・君は・・・?!」

 

瑛人「やっぱり認めるしかないのか・・・あの子がお前の妹だって・・・ぐわぁ!!」

 

三玖「エイト!!」

 

 

 

どうあがいても現実を突きつけられる。

この魔物(モンスター)が自身の妹・彩だということを。

 

 

 

一護「何をそこまで躊躇しているのかと思えば─────あぁ、なるほど、そういうことですか。」

 

 

 

拷問のようにじわじわと責め立てる攻撃に苦しみ悶える瑛人を眺めながら、一護は口元を歪め、嘲笑を浮かべていた。

が、やがてひとり合点したようにうなずいた。

 

 

 

一護「この女の正体─────あなたの妹だったのですね。」

 

 

 

円は憎悪に満ちた視線を一護に向ける。

 

 

 

円「お前さえ・・・お前さえいなければ・・・!」

 

 

 

どす黒い炎をその瞳に宿らせた、般若のような恐ろしい形相で睨まれても、一護は顔色ひとつ変えなかった。

 

 

 

一護「あなたの瞳に宿る憎しみの闇を見なさい。聖人ぶっていても、しょせんあなたも他の人間と大差ないのです。」

 

円「黙れッ!!」

 

一護「いいえ黙りませんよ。闇は誰の中にも存在する。あなたもしかり、彩というこの女もしかり─────誰だって憎み、誰だって迷い、そして誰だって孤独で、虚ろだ。」

 

円「・・・やめろ・・・やめろやめろッ!!」

 

 

 

円の語調がだんだんと弱くなっていく。

それを見た一護は更に、畳み掛けようとする。

 

 

 

一護「自身の妹に闇がない─────あなたはそう思ったのでしょう?」

 

円「?!」

 

一護「図星ですね。なんて都合のいいお人だ、あなたは。あなたはこの女の《光》の面しか見なかった。意図的に《闇》から目をそむけた。実験台にしたのは私ですが、責任の一端はあなたにもあるのですよ。」

 

円「・・・まさか・・・僕のせいで・・・!」

 

 

 

視界が色を失っていく。

一護の主張こそが正論に聞こえてくる。

 

 

 

瑛人「惑わされちゃダメだ、一樹ッ!!」

 

一護「─────そうやっていつまでも迷っているといい。その間に朝山瑛人は死んで、中野三玖が捕獲されますがね。この女もひとたび超漆黒の魔獣(レイドメランベスティア)になってしまった以上、どっちみち助かりはしない。いずれは死ぬのです。」

 

 

 

一護はありったけの嘲笑を円に向かって吐き捨てると、くるりと踵を返し、漆黒の魔獣(メランベスティア)─────もとい、彩を見上げた。

 

 

 

一護「さぁ、隙だらけですよ─────その男を殺しなさい。」

 

メラン【オオ・・・アアア・・・】

 

 

 

漆黒の魔獣(メランベスティア)のぶくぶくと脂肪に包まれた醜い顔が、ぞろりと円、もとい実の兄を見る。

その姿は元々美少女であった彩とは、真反対の姿だった。

 

 

 

円「彩・・・!」

 

一護「さぁ─────殺すのです!」

 

メラン【・・・・・・】

 

 

 

─────その時だった。

突然、漆黒の魔獣(メランベスティア)はぐるりと再び首を曲げると、一護に矛先を変えた。

 

 

 

一護「?!」

 

メラン【ヴアアアアア!!!】

 

ズシャアァァァァァァ!!!

 

 

 

漆黒の魔獣(メランベスティア)の触腕から発射されたスライムが、一護めがけて一直線に飛び、地面に押し倒した。

 

 

 

一護「何・・・だと・・・?!」

 

メラン『お兄ちゃん!私を倒して!

 

 

 

円は耳を疑った。

深い悲しみと自己嫌悪の中で、確かにどこからか自身の妹の声がした。

姿は見えないが、耳を澄ますと─────その声は確かに、漆黒の魔獣(メランベスティア)の中から響いていた。

 

 

 

円「彩!大丈夫だよ!助けるから!」

 

一護「チッ─────しぶとい女め、まだ自我が残っていたか!!」

 

彩『私が中からこの怪物の動きを止める!私の心が残ってるあいだに・・・ただの怪物になってみんなを殺してしまう前に・・・早く!』

 

 

 

円は身体を震えていた。

もう助からない彩と、助かる見込みのある瑛人と三玖。

どっちを取ればいいかなんて、わかりきっている。

それでも。

それでも─────僕は。

 

 

 

彩『私の心臓を撃って!此処にあるから!』

 

 

 

そう言って心臓の位置だと思われる、魔物(モンスター)・彩の胸に赤い光が光った。

そして、円は何時も持っている銃を彩に銃口を向ける。

 

 

 

円「う・・・うぅ・・・うぅぅぅ・・・!うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

円は叫びながら、彩に向けて銃を放つ。

 

 

 

パァン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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円「どうしたの?彩。」

 

彩「お兄ちゃん・・・」

 

 

 

とある日の夜中。

妹である彩が円の部屋に入って来た。

 

 

 

円「眠れなくなったかな?」

 

彩「うん・・・」

 

 

 

彩の顔立ちはかなり可愛い方であった。

色白で大きな目の中に青色の美しい瞳、小さな鼻も筋が通っており、小さな口。

そんな彼女の顔には不安そうになっていた。

 

 

 

円「一緒に寝よう。」

 

 

 

円はそんな彩を安心させるように、一緒に寝ることにした。

やがて、彼女は安心したのか目を閉じて、眠り始める。

 

 

 

円「おやすみ。彩。」

 

 

 

 

 

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円「彩!!」

 

 

 

ステージの真ん中に、異形の姿から解放された彩が、心臓を撃たれた胸から血を流して横たわっていた。

円が真っ先に駆け寄ると同時に、瑛人に覆いかぶさっていたスライムたちも、霧のように溶けて消えた。

 

 

 

彩「ありがとう・・・お兄ちゃん・・・」

 

円「馬鹿!彩、何でこんなことに・・・!」

 

 

 

瞳に涙をいっぱいに溜めながら、円は震え声で怒鳴った。

彩は実験台にされたのだ。

きわめて理不尽で、きわめて利己的な理由から。

なのに彼女は、誰にも恨み言ひとつ言わず、静かに消えていこうとする。

それが許せなかった。

彩は言った。

 

 

 

彩「あのね・・・お兄ちゃん・・・私・・・ずっと後悔していたの。」

 

円「?!」

 

 

 

円は顔を上げた。

彼女はそのまま話を続けた。

 

 

 

彩「お兄ちゃんはずっと・・・お父さんとお母さんに暴力を振るわれていた・・・私は何もされてなかったけど・・・後悔していたの・・・私はお兄ちゃんを守れない臆病者・・・私が死ねばいいのにって思ってた・・・」

 

 

 

彩がいなくなる日までずっと明るい妹だと、円は思っていた。

だけど、その内心では後悔と悲しみ、そして自分自身への憎悪に満ちていたようだった。

円は何故、自分は兄なのにそんなことを気づかなかったのか、後悔と悲しみが溢れ出ていた。

 

 

 

彩「これでようやく・・・お兄ちゃんは幸せになれる・・・」

 

円「馬鹿!そんなこと言わないで!だから・・・行かないで・・・彩ッ!」

 

彩「ごめんね・・・だけど、お兄ちゃんなら幸せになれるから。」

 

 

 

やめて。

そんな優しい声で。

そんな優しい言葉で。

そんな優しい笑顔で。

僕に別れを告げないで。

 

 

 

彩「お兄ちゃん・・・眠くなってきた・・・」

 

円「駄目だ・・・行かないで彩ッ!」

 

 

 

ごめんね、と彩は何度も繰り返していた、

ごめんね、ごめんね、と何度も。

 

 

 

彩「今までありがとう・・・お兄ちゃん・・・」

 

円「彩─────」

 

彩「さようなら─────おやすみ。」

 

 

 

彩の手はするりと落ちた。

彼女の手も、足も、目も・・・全てが動かなくなった。

彼女の死に顔は、目を閉じて、血を流しているのにも関わらず、穏やかに眠っているように見えていた。

 

 

 

円「・・・あ・・・あ・・・彩・・・彩・・・」

 

 

 

円は壊れたロボットのように言った。

そして─────

 

 

 

円「彩ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 

 

 

─────円は悲痛な叫びを上げる。

そして、穏やかに眠っているような彩の死体を抱きしめながら泣き叫んだ。

 

 

 

三玖「そん・・・な・・・」

 

瑛人「何だよ・・・何だよこれッ!!」

 

 

 

誰もがこんな結末を望んでいなかった。

円は彼女と再会を望んでいただけだった。

こんな理不尽な結末なんて・・・誰も予想していなかった。

再会をしたら、また彼等の日常が戻って来る。

ずっとそうだと─────そうだと思っていたのに。

 

 

 

ズズズズズズ・・・!!!

 

瑛人・三玖「?!」

 

 

 

その時だった。

何処からかゆらゆらと黒い靄のようなものが。

 

 

 

瑛人「これって・・・?!」

 

 

 

それは─────瘴気だった。

あまりにも強い悲しみが闇となり、目に見えるほどの濃度となって外に漏れ出しているのだ。

そしてその瘴気の出どころは─────円。

 

 

 

三玖「森谷君!落ち着いて!」

 

 

 

その呼びかけにも、円は彩の身体を抱きしめながら、何も答えない。

妹を失ったその兄を抱きしめるように、闇が彼を覆い尽くしていく。

「もう、何も考えなくていい」と。

「このまま絶望に身を任せてしまえ」と。

 

 

 

瑛人「一樹!落ち着け!」

 

 

 

瑛人が地を蹴って飛び出すより先に─────一護が動いていた。

 

 

 

一護「超漆黒の魔獣(レイドメランベスティア)の前兆─────これは丁度いい。貴様も・・・漆黒の魔獣(メランベスティア)になれッ!!」

 

瑛人「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

 

新鮮な血のように紅く煌めく石が、一護の手からヒュッ!と離れた。

石は矢のごとく直線に飛び、円の身体にコツン、と当たって跳ねる。

その瞬間─────

 

 

 

バリバリバリバリバリバリ!!!

 

瑛人「ぐわぁ?!」

 

三玖「エイト!」

 

 

 

瑛人は弾き飛ばされ、三玖のところまで転がる。

 

 

 

三玖「・・・嘘・・・?!」

 

瑛人「円が・・・漆黒の魔獣(メランベスティア)に・・・!」

 

 

 

 

 

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◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

     Next Time

 

      一柳円

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 






雑談ですが、作者は正直、此処を書くのがめちゃくちゃ辛かったです…
ですが、こうしないとストーリーが進めなくて…

いよいよ第10章も佳境へと入ります。
それでは、また次回。

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