ガンダムSEED DESTINY IF ~もしも彼女がいたならば~    作:鯱出荷

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第十話

アーサー「それでは、ここ数日の出来事を整理します」

 

オーブ滞在三日目。

艦長室にて、プラントで起きたことを報告する。

 

アーサー「大西洋連邦を中心とする地球連合はテログループの逮捕・引渡しをプラントに要求してきましたが、既に全員死亡していることからプラントはこれに 応じることが出来ませんでした。さらに賠償金・武装解除・現政権の解体・連合理事国の最高評議会監視員派遣と、無理難題をふっかけてきました」

 

タリア「彼らも受け入れるとは思っていないでしょうね。開戦の口実にしか聞こえないわ」

 

アーサー「はい。実際武力による排除を通達し、月面地球軍アルザッヘル基地から核武装を含めた艦隊がプラントに攻撃を仕掛けてきました」

 

そしてニュートロンスタンピーダーを使い、これらを退けたことを伝える。

ちなみにその直前から、ミネルバは部外者を入れないようにコンディションイエローを発令している。

 

タリア「終わりよければ全て良し…とは受け取ってくれないでしょうね。プラントの住民達は」

 

数年前のユニウスセブンの件がある以上、地球連合に対する不安や不満を拭い去るのは難しいだろう。

 

アーサー「この出来事でプラントは抗戦状態になりかけましたが、この放送で抗戦派は息を潜めました」

 

画面にラクス・クラインの演説が映し出される。

それは、どうか怒りを静めてほしいこと・感情赴くまま行動しないでほしいこと・最高評議会とデュランダル議長を信じてほしいこと、といった内容だ。

 

タリア「未だ歌姫の力は衰えず、ね」

 

これは一部の者しか知らないが、彼女はラクス・クラインではない。偽者のミーア・キャンベルだ。

 

偽者であろうと、事実この混乱を収めたのだからそれはいい。問題は、万が一プラント市民にこのことが知れまわったらどうするつもりなのだろうか。こんな行 き当たりばったりな方法、彼らしくない。それだけ切羽詰っているということか。

 

そういえば、ティルムはこの放送を目にしたのだろうか?

 

アーサー「プラント最高評議会は、国防委員会から提出された案件『積極的自衛権』の行使を全員一致で了承しました。地球への降下作戦も実行される手筈で す」

 

そして「これは個人的な意見ですが」と続ける。

 

アーサー「宣戦布告された以上、中立国であるとはいえ大西洋連邦寄りのオーブに留まるのは危険です。物資の積み込みを急がせ、いつでもオーブを発てる準備 だけでもしたほうが」

 

本当はすぐにでも出発したいところだが、情勢が不安定な今は下手な行動が火種になりかねない。

ならば万全の状態にし、すぐ行動に移せるようにするべきという意見だ。

 

タリア「…そうしたいのはやまやまだけど、火種を恐れている場合でもなさそうなのよね」

 

さきほどの「砂漠の虎」ことアンドリュー.バルトフェルドの通信を思い出す。

まもなくオーブが大西洋連邦との同盟が締結する。早くオーブを発て、と。

 

タリア「彼の話を鵜呑みにするのもどうかと思うけど、万が一ということもあるわ。命令は受けていないけど、ミネルバは明後日までにオーブから出航します。 出れば遠からず戦闘になるわ。気を引き締めるようにね」

 

アーサー「了解です。すぐさま乗組員に通達し、可能な限り万全を期します」

 

 

 

***

 

 

 

 

前日にそんなことを伝えられても、朝は変わらずやってくる。

ミネルバもまた同じだ。これからすぐに大仕事が待っている整備組と、いつ起こるかわからない戦闘へ備えているパイロット組という違いがあるが。

 

ティルム「お兄ちゃん。それ、おいしい?」

 

オーブ領域内では、いくらなんでも戦闘はないだろう。

シンはそう考えてのんびり朝食のご飯を頬張っていると、右隣のティルムが興味津々の目で見てくる。

 

シン「ん?これか?」

 

そう言い、ふりかけを見せる。ルナマリアと出かけた際、買ってきた物だ。

聞くとオーブではごく一般的な食べ物だが、プラントでは違うらしい。

 

ティルム「ふ~ん。どういう味なのかなぁ…」

 

話せば話すほど興味を惹かれたようだ。彼女は料理の腕はともかく、好奇心は人一倍ある。

ならティルムの朝食にも、と思ったが彼女の朝食はパンだ。

 

シン「ティルム。あ~ん」

 

それならばと、ご飯を箸で取り、ティルムの前に持っていく。

一瞬ティルムはキョトンとするが、その意図がわかると嬉しそうに口をあける。

 

ティルム「ん~♪」

 

口にご飯が入れられると、一層嬉しそうな声を上げる。

そんなティルムが親鳥に餌をねだる雛のように見え、思わずシンは優しく頭を撫でる。

 

シン「美味いか?」

 

ティルム「うん!」

 

その場にいた乗組員の心は一つだった。

 

『頼むから、このバカップルをなんとかしてくれ』

 

しかもこんな光景が日常なのだから、たまらない。

すると左隣に座っていたルナマリアが、トントンとシンの肩を叩く。

 

シン「ん?」

 

また小言の一つだろうか。そう思って振り向くと

 

ルナマリア「ア~ン♪」

 

大きく口をあけていた。

 

シン「………」

 

しばらく思考すると、おもむろに箸をルナマリアの喉奥に突っ込んだ。

 

ルナマリア「ゲホッ!ゲホッ!オヴェ!…………何すんのよ!?」

 

シン「いや、喉に魚の骨が刺さったのかと…」

 

ルナマリア「表情でわからんか!?ていうか、どう考えたらフレンチトーストに骨がある!!?」

 

向かい席では、そんな喧騒をメイリンが笑顔で眺めていた。

 

レイ「随分と嬉しそうだな」

 

メイリン「え~?そんなことないよ~♪」

 

昨日事細かに事情を喋らせたメイリンは、姉の行動が可愛くて仕方がなかった。

 

(もう、お姉ちゃんたら。どさくさにまぎれて、あんな甘え方して。この様子だと、今のうちにシンとの相性、検査したほうがいいかな?前回はひどい目にあっ たから、ちょっとくらい身分が悪くても、お父さん達も了承してくれるはず。もし良好だったら、もっと大胆になるようアドバイスできるし。もし悪くても、 『0%じゃないんだから』とか言って、既成事実を作らせて……)

 

メイリン「フフフフ……面白くなってきたわ…」

 

一人クスクス笑うメイリンから、周囲に人影はいなくなっていた。

 

ヨウラン「俺…再就職先、探そうかなぁ……」

 

ヴィーノ「その時は付き合うよ。ヨウラン…」

 

すると、周りにざわめきが起こる。

何かあったのか、と食堂の入り口を見ると、そこにはカガリがいた。

 

ティルム「………」

 

シン「……何であんたがいるんすか?」

 

今は部外者が入れない、コンディションイエローが発令しているはずだ。

 

カガリ「そ、そのだな。ミネルバが発つと聞いたんでタリア艦長に会えないかと聞いたら、特別に……。ほ、ほら!ちゃんと監視も付いてる!」

 

ティルムから発せられる、無言のプレッシャーに耐えながら答える。

見ると、確かにアーサーと数人の監視役と思われる人物がいる

 

ルナマリア「それで、どうしてこちらへ?艦長室は、食堂とは反対側ですが」

 

思い出したように、カガリが慌てて答える。

 

カガリ「そ、それはだな。タリア艦長との面会が終わったら、余った時間に一緒にお茶でもどうかと思って。しばらくは話す機会もないんだし…」

 

シン「…もういいだろ。あのときオーブを攻めた地球軍と、今度は同盟。どこまでもいい加減で身勝手なあんた達に、こっちはうんざりしてんだよ!!」

 

バンッ!と机を叩きながら立ち上がると、そのまま食堂から出て行く。

 

カガリ「シン!」

 

不満気な口調で、ティルムがカガリを咎める。

 

ティルム「もうやめてもらえませんか?キラ・ヤマトをかくまっているオーブ代表に、いつまでも二枚舌外交されるのは不愉快です」

 

無視してカガリはシンを追おうとするが、一つの単語に足を止める。

 

カガリ「キラを…知っているのか…?」

 

この前は確かに、ファミリーネームは言ってなかったはずだ。

 

ティルム「直接会いましたけど、何か?」

 

カガリ「なっ…!?」

 

言葉をなくすカガリに、後ろのアーサーが声をかける。

 

アーサー「代表。そろそろお時間ですが…」

 

食堂に備え付けられている時計を見ると、その通りだった。

元々こちらの事情で面会を申し込んだというのに、延期してもらうわけにはいかない。

 

カガリ「く……!」

 

彼らと話せる最後のチャンスを逃し、カガリは口惜しい思いを抱きながら艦長室に向かった。

 

 

 

***

 

 

 

ルナマリア「レイ」

 

一山超えて食堂を出たところ、ルナマリアが呼び止める。

 

レイ「なんだ」

 

ルナマリア「なんだ、じゃない。気づいてるんでしょ?」

 

周囲を見渡してから言う。

 

ルナマリア「ティーの口調がおかしかったことに」

 

あんな強い口調で話す彼女、見たことがない。

 

レイ「…『検査』では、少なくとも悪化はしていない」

 

ルナマリア「してからじゃ手遅れなの。わかってる?彼女は既に末期なの。ほんのわずかな悪化も許されないの」

 

ここ数日、ティルムにとって悪影響な状況ばかり起きているのが原因だろう。

 

ルナマリア「レストレインも、実戦可能な段階まで進んじゃってるし…。本当に、時間がないんだから」

 

レイ「…わかった。シンには、おれからも言っておく。ただ、レストレインに関してはどうしようもない」

 

ため息をつき、ルナマリアは壁に寄りかかる。

 

ルナマリア「そうなのよねー…。この前のユニウスセブンの一件以来、『ただ待つだけは嫌だ』って戦場に出る気だし…開発止めるのは、論外だし…」

 

レイ「止めるのが無理なら、フォローのことでも考えたらどうだ。彼女の腕を理由にすれば、あの機体といえども無茶は出来まい」

 

ルナマリア「それしか、ないかぁ…」

 

一層大きなため息をつく。

残る希望は、艦長は『時期に戦闘に入る』と言っていたが、それが骨折り損に終わるのを願うだけだった。

 

 

 

***

 

 

 

ルナマリア「まったく!悪い予感ばかり、こうも当たるんだから…!!」

 

艦長の予測は、見事に的中した。しかも翌日の出港後すぐという、早いタイミングで。

 

レイ「状況は?」

 

MS搭乗の準備を急ぎながら、マッドに尋ねる。

 

マッド「本艦の前方に、地球軍艦隊と思われる多数の熱源反応が。しかも後方オーブ領海線には、オーブ艦隊。砲道全開で、本艦に向けられているそうだ」

 

シン「オーブが…!?」

 

ティルム「…ぁんの七光りがぁ………!上辺ばっかり善人ぶってぇ…………!!」

 

シン「っ!!ティ、ティルムっ!落ち着けって!ほら!お兄ちゃんがいるから!!」

 

周囲に殺気を撒き散らすティルムを、慌てたシンが抱き寄せ、頭を撫でる。

 

ルナマリア「そそそそそ!そうよ!?もうすぐ『お義姉ちゃん』になる、アタシもいるわよ!!?あと何ヶ月もすればティーも叔母さんよ!!」

 

レイ「そうなのか!それだったら急いで結納の準備を!!ご両親への挨拶は済ませたのか!?まだなら、ギルおすすめの『シャア専用乾燥ワカメ詰め合わせ』が とってもお買い得!!」

 

シン「この大変な状況で動転してんじゃねー!ルナもドサクサに紛れて変な噂広めようとするな!!」

 

本当になだめる気があるのか、疑問に感じる光景である。

それでもシン達が側にいるためか、「うううぅぅぅ…!」と唸り声を上げながらもティルムは落ち着いていく。

 

ディアッカ「お、オイ…。あの子、大丈夫なのかよ?」

 

尋常とは言えない少女の様子に、ディアッカが圧倒されながらヴィーノに尋ねる。

 

ヴィーノ「そ、それについては何とも…。ただ、言っても聞かない子なので……」

 

マッド「あ~、ところでルナマリア。ザクの装備のことだが…」

 

ルナマリア「この状況の火種作った張本人が、落ち着くな!!」

 

真犯人はレイだが。

 

マッド「こっちも急ぎなんだよ。悪いんだけど、ウィザードの予備ないから、お前さんのザク、ガナー仕様にしといたから」

 

ルナマリア「勝手にしとい……ハァァァ!?アタシが射撃苦手なの、わかってるでしょ!?しかもあの漂流者とペアルック?ぜっっっっ対!イ・ヤ!!」

 

ディアッカ「悪いけど、『言葉の暴力』って知ってるかな?(泣)」

 

今なら、窓際族の気持ちがよくわかる。

ちなみにディアッカのガナーウィザードは、ジュール隊から持参してきた物だ。

 

マッド「仕方ない。じゃあ、素で」

 

ヨウラン「素ザク一丁!!」

 

ごく自然に、ディアッカの発言は無視される。

 

ルナマリア「ムリムリムリ!宇宙空間でならともかく、重力下じゃムリ!!しかも相手は空中仕様!」

 

シン「ルナ。心配するな。お前のザクと、あの人のザクを見比べてみろよ」

 

治まってきたティルムを撫でながら、シンが口を挟む。

言われた通り、自分のザクと見比べる。

 

一方は自分の髪と同じ色でもある、赤いザク。専用色は赤服やエースでないと許されない、目に見える名誉だ。

 

もう一方のザクは、緑色。一般兵が乗る、量産型のザクの色である。

 

ルナマリア「あ…」

 

一つのことに気づき、自分の軍服の色、そしてディアッカの色も見比べる。

 

シン「わかったろ?お前は赤で、相手は緑。装備は同じでも、似て非なる物だ」

 

ルナマリア「そっか!忘れてたけど、アタシ達、赤だもんね!!さっすがシン!!!」

 

拝啓、お母様。職場が変わりましたが、待遇は悪化の一途を辿っている今日この頃です。

目から汗が止まりません。

 

レイ「泣かないで下さい。一機しかないグゥル、お譲りしますので」

 

ディアッカ「すまない。あと、ハンカチを貸してもらえると、ありがたいんだが……」

 

 

 

***

 

 

 

タリア「地球軍は本艦の出航を知り、網を張っていたと思われ、またオーブは後方のドアを閉めている。我々には前方の地球軍艦隊突破の他に活路はない」

 

出撃前に、艦長から激励の放送が流される。

 

タリア「これより開始される戦闘は、かつてないほどに厳しいものになると思われるが、本艦はなんとしてもこれを突破しなければならない。このミネルバク ルーとしての誇りを持ち、最後まで諦めない各員の奮闘を期待する」

 

レストレインを含めた、全機が発進完了したのを確認し、指示を出す。

 

タリア「シンとディアッカには、発進後あまり艦から離れないように。レイとルナは、シンの援護と甲板から上空のMSを狙撃。ティルムは、同じく甲板から威 嚇射撃するように、それぞれ伝えて」

 

ディアッカの実力を知っているため、シンと違い援護の必要がないと判断しての指示だ。

ティルムを攻撃に参加させないのは、ディアッカとは逆に実力がないからである。

 

タリア「イゾルデとトリスタンは左舷の巡洋艦に火力を集中、左を突破する!」

 

チェン「はい!」

 

ミネルバのブリッジ要員、火器管制担当のチェン・ジェン・イーだ。

 

シン『ティルム。あまり出過ぎるなよ』

 

ティルム『ビーム砲も完成した。出力も5割以上キープ出来る様になった。対空砲火の代わりぐらいには、なってみせる!』

 

ルナマリア『その必要はないわ!楊貴妃・クレオパトラ・小野妹子の世界三大美女に劣らぬ美貌を持つ、このアタシがいればね!!』

 

シン『悪い。最後のやつ、小野小町の間違いだと思うが』

 

小野妹子は男です。

 

 

 

***

 

 

 

シライ『何やってんだろうな…俺達は……』

 

オーブ空母で待機しているシライが、茫然自失な様子で言う。

 

ハシダ『仕方がないだろ。あれはザフトの艦なんだし』

 

シライ『馬鹿いってんじゃねぇ。あれにはシンが乗ってんだぞ。家族を守ってやれなかった俺達が、今度は銃を向けるなんてよ…』

 

この通信相手も、シンと短いながらも一緒に過ごしたことのある人物だ。

 

シライ『結局俺達がしてやったのは、難民手続きだけじゃねぇかよ…。これがオーブの誇る理念かよ…』

 

すると開きっぱなしにしていた通信から、聞き覚えのある声が聞こえた。

 

ルナマリア『……オパトラ・小野妹子の世界三…………に劣らぬ美貌を持つ、この……シがいればね!!』

 

シライ『この声…!あの時のハードゲイじゃねぇか!!パイロットだったのか!』

 

この時シライは、ちょっとしたミスをした。通信はハシダだけにしていたが、この言葉を聞いたハシダは弟分の危機だと、他知り合いにも通信する。

よって、伝言でオーブ軍・さらには地球軍にもこの言葉は広がり…

 

 

 

***

 

 

 

メイリン「!!艦長!オーブ軍から地球軍に発せられた、通信をキャッチしました!!」

 

タリア「読み上げて!!」

 

メイリン「はい!『ザフト軍の赤きMS、【ハードゲイの小野妹子】により、注意されたし』………?」

 

甲板に出たルナマリアは、地球軍全MSからの視線を感じる。

 

ルナマリア『……………』

 

視線を合わそうとすると、一斉に外される。

搭乗しているのはMSだというのに、首を逸らすところまで丁寧に再現してくれている。

 

シン『…ご愁傷様』

 

ルナマリア『待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って!!ホントお願い!この通り名だけはホ ントにイヤ!!!』

 

メイリン「あ、珍しい。お姉ちゃんが本気で嫌がってる」

 

あくまで他人事なので、妹は冷静である。

 

レイ『では、【生ニラの小野妹子】はどうだ?』

 

ルナマリア『生ニラでも調教師でも男女(おとこおんな)でもいいから、とりあえず小野妹子から離れて!!』

 

シン『じゃあ、クレオパトラ繋がりで【ツタンカーメンと紅鮭】』

 

ルナマリア『せめて人間扱いしてよ!思いっきり鮭メインじゃん!!』

 

日頃の恨みといわんばかりに、シンとレイは状況を悪化させていく。

 

ディアッカ『お前ら…状況わかってんのか?』

 

ルナマリア『うるさい!こっちは名産品扱い寸前の一大事なのよ!邪魔すんならアンタも敵よ!!…ていうか、アンタ誰?』

 

ディアッカ『今更か!?………まぁ、名乗ってなかったのは謝るよ。ディアッカ。ディアッカ・エルスマンだ』

 

情報の伝わりが悪いことは咎めず、きちんと名乗る。

だが、ルナマリアは4文字以上の名前を覚える器用なことは出来なかった。

 

ルナマリア『でぃ…?でぃ…でぃ…………パイナップルさんね』

 

ディアッカ『どうしてそうなった!?』

 

ティルム『すみません…。ルナは、人の名前覚えるの苦手で……』

 

ディアッカ『限度があるだろ!………そういえばお前!!前にイザークのこと【イザ汁】って呼んだ奴だろ!?』

 

シン・レイ・ホーク姉妹『人違いです』

 

ディアッカ『ハモるな!!あの後、俺がどんな目にあったか…』

 

ルナマリア『そんなことより、パイナップル・ツチノコ・エロセールスマンの中から、好きなあだ名を選んでください』

 

仮にも先輩に向かって、この扱いである。

しかしほっとくと大変なことになりそうなので、自ら案を出す。

 

ディアッカ『マトモなのねぇのかよ!だったら頭文字のディーとか、ディアッカのアカとか、昔乗ってたバスターとか』

 

ルナマリア『ディーはティーとカブるので。赤はアタシのパーソナルカラーですので。バスターは、ちょっとイメージにそぐわないので』

 

ことごとく否定。

さすがに不憫に感じ、シンが案を出す。

 

シン『ディスはどうです?これだったら、いくらルナでも覚えられるでしょうし』

 

ディアッカ『それで頼む!!頼むから!!!』

 

少なくとも、今までで一番マトモである。これ(This)呼ばわりは、多少酷だが。

 

ルナマリア『そうですか?せっかく『緑』とか『ミドリ』とか『ユーグレナ(ミドリムシの学名)』とか色々考えてたのに…』

 

訂正。これ扱いで十分です。

 

拝啓、ギルバート・デュランダル様。いっそのこと、あの時助けてくださらなかったほうが幸せだったかもしれません。目から体中の水分が出ていきそうです。

 

レイ『元気を出してください。夕食の冷奴、お譲りしますので』

 

ディアッカ『すまない。出来れば、生姜乗ってないやつを……』

 

 

 

***

 

 

 

シン『いっけぇぇぇ!!』

 

フォースインパルスに乗ったシンが、3機1チームの小隊を組んでいるウィンダムに飛び込む。

 

地球軍兵『死にたいのか?囲め!』

 

ウィンダムが前左右を囲み、一斉に切りかかる。

 

地球軍兵『なっ!?』

 

その包囲網をギリギリでかわす。あいにくアカデミーでの包囲網突破の成績においては、シンの右手に出る者はいないのだ。

そしてインパルスは小隊長機に直進し、ビームサーベルで撃破する。

 

地球軍兵『よくも…!』

 

小隊長機を撃破し隙だらけのインパルスを攻撃しようとすると、ミネルバ甲板からのレイ

とルナマリア砲撃が、小隊員を直撃する。

 

ディアッカ『グゥゥレィィィト!!やるじゃないか!お前ら!!』

 

まずレイが敵の小隊長を識別し、突進力のあるシンがその小隊長を撃破して一瞬指揮を失わせる。その隙にルナマリアが小隊員を攻撃し、打ちもらしたのをレイ が片付けるという戦法だ。

伊達に長い付き合いではない。

 

ちなみに一度シンに連携を強要したことがあるが、散々な結果に終わり、シンに攻撃目標だけを指示し後は個の判断に任せるという、今の形に落ち着いた。

 

レイ『仮にも赤服ですから』

 

シン『現役の赤服ですから』

 

ルナマリア『元ではなく、現役の赤服ですから』

 

ディアッカ『すまない。俺、お前らにそこまで嫌われる心当たりがないんだが』

 

ツッコミを入れながらもグゥルを駆り、敵のド真ん中にオルトロス砲を放つ。敵の動きを制限しつつ、シンを動きやすくさせているのはさすがだ。

 

だが、敵の数が多すぎる。敵側の小隊人数も、5・6体編成と徐々に増えていき、レイ達の打ちもらしも増える。ディアッカがカバーしてくれているとはいえ、 インパルスへの攻撃回数は増える一方だ。

 

シン『くそ…!ルナ!お得意のアンプロンプチュで、どうにかならないのかよ!?』

 

ルナマリア『これの欠点知ってるでしょ!?』

 

アンプロンプチュはMS戦でも応用できるが、それは少数を相手にしているのが絶対条件だ。

人間のリズムの好みは、千差万別。そんな中、大人数のリズムを分析し、かつ全員が好むリズムで応戦することなど不可能だからだ。

 

ディアッカ『ミネルバ!何機かそっち行った!!』

 

アーサー「えぇぇぇぇぇ!?し、CIWS!迎撃体勢!!」

 

タリア「同時に大きく左へ!進路を読ませるな!!」

 

チェン・マリク「「はい!」」

 

チェンと、ミネルバ操艦を担当するマリク・ヤードバーズだ。

 

 

 

***

 

 

 

地球軍兵『どうせコーディネイターなんぞ、この程度さ!沈めるぞ!!』

 

突破した小隊率いる小隊長が、ミネルバに攻撃を仕掛ける。すると、甲板にいる黒いMSの動きに気づく。

 

片手に銃、もう片方にビーム砲を装備しているようだが、動きがあまりにもギクシャクしている。

少しパイロットやった人間ならすぐわかる。あいつは素人だと。

 

地球軍兵『そんな腕で出てきた勇気は褒めてやる。いい的になってるぜ!!』

 

ウィンダムの空対地ミサイル、『ドラッヘASM』が発射される。

 

ティルム『きゃぁぁぁぁぁぁぁ!?』

 

寸分の狂いもなく、ミサイルがレストレイン頭部に直撃する。

 

ディアッカ『マジか!?こんの…!!』

 

オルトロス砲を構えるが、引き金を引く前に先ほどのウィンダムが爆発する。

 

ディアッカ『へ?』

 

ウィンダムを攻撃した方向を見る。そこには、ミサイルが直撃したにも関わらずほぼ無傷のレストレインがいた。

 

ティルム『動きが止まった状態なら、私でも…!』

 

どうやら、パイロットも無事なようだ。

 

ディアッカ『おー。その機体もVPS装甲か?』

 

レイ『いいえ。あれにはニックス家が開発したという、独自の技術が使われています』

 

ディアッカ『ニックス?ニックスっつうと、あの【ディログ・ニックス】が立証させたやつか?紙でも防弾ガラス並みの強度を持たせることが出来るっていう』

 

驚いた様子で、レイが答える。

 

レイ『博学で。世にはあまり出回っていない技術のはずですが。彼女はそのディログ氏の一人娘です』

 

ルナマリア『油断しないで!何か来るわよ!!』

 

蟹のような形状。地球連合軍新型MA、ザムザザーだ。

 

タリア「あんなのに取り付かれたら、終わりだわ。アーサー、タンホイザー起動!あれと共に左前方の艦隊を薙ぎ払う!」

 

アーサー「え、えええええぇぇぇーっ!!」

 

タリア「沈みたいの!?それとも沈めようか!?私が!!」

 

目がマジである。

 

アーサー「あ、はい。…………いいえいいえいいえいいえいいえ!!たたたタンホイザー起動!斜線軸コントロール移行!」

 

ユラリと、リ○グの貞○の動きをするタリアに冷や汗をかきつつ、慌てて攻撃指示を出す。

 

ルナマリア『ハァァ!?何よアレ!!』

 

しかしタンホイザーは直撃するものの、ザムザザーはそれを完全に防ぎきる。

 

ティルム『ゲシュマイディッヒ・パンツァー…?ううん、陽電子砲を弾いたってことは…』

 

レイ『分析は後にしてくれ。シン!いけるか!?』

 

シン『いくしかないんだろ!!くそっ!』

 

とりあえず、所持している武器を片っ端から試すしかない。だが、そんな行き当たりばったりな方法が通用する相手ではなかった。

時間だけを消費していき、同時にインパルスの活動時間をいたずらに失うだけだった。

 

 

 

***

 

 

 

ユウナ「すごいですね、あの兵器。まさか陽電子砲を反ね返すとは。ザフトの新型も、あれには敵わないようだし」

 

オーブ軍本部から、地球軍艦隊との戦闘を眺めていたユウナが賛美の声を上げる。

 

カガリ「何をしている!?」

 

事の自体を知らされていなかったカガリが、室内に飛び込んでくる。

 

カガリ「これはどういうことだ!?ミネルバが戦っているのか!?地球軍と!?」

 

ユウナ「そうだよ、オーブ領海の外でね。心配いらないよ。すでに領海線に護衛艦は出してある。領海の外といっても、だいぶ近いからねぇ。困ったもんだよ」

 

カガリ「領海に入れさせない気か?ミネルバを!あれでは!逃げ場も何も……!」

 

ふんっと、ユウナが鼻で笑う。

 

ユウナ「それがオーブのルールだろ?君の敬愛するお父様が、固執していた。それに正式に調印はまだとはいえ、我々は既に大西洋連邦との同盟条約締結を決め たんだ。なら、ここで我々がどんな姿勢をとるべきか、それぐらいのことは君にだってわかるだろ?」

 

カガリ「…!しかしあの艦は!」

 

ユウナ「間もなく盟友となる大西洋連邦と敵対している、ザフトの艦。それ以上でも、以下でもないよ」

 

オーブ軍兵士「ミネルバ、領海線へさらに接近。このまま行けば数分で侵犯します」

 

ユウナ「警告後威嚇射撃、領海に入れるな。それでも止まらないなら、砲撃も許可する」

 

カガリ「そんな!」

 

ユウナ「国は個人の玩具ではない!いい加減感傷で物事を語るのはやめなさい!」

 

 

 

***

 

 

 

トダカ「以前国を焼いた軍に味方し、懸命に地球を救おうとしてくれた艦を撃てか…。こういうの恩知らずっていうんじゃないかと思うんだがね、私は。政治の 世界にはないかもしれん言葉かもしれんが」

 

オーブ軍旗艦内で、トダカが誰に言うわけでもなく呟く。

 

トダカ「…警告開始!砲はミネルバの艦首前方に向けろ!絶対に当てるなよ!」

 

オーブ軍兵士「司令、それでは命令に…」

 

トダカ「知るか。私は政治家じゃないんでな」

 

砲撃が許可されても、直撃させろとは命令されていない。

 

トダカ(これでシンには、二度と口を利いてもらえないだろうな)

 

ザムザザーに苦戦するインパルスを見ながら、そんな考えが一瞬頭をよぎる。

また親しい人間に裏切られて、また彼は傷つくだろう。自分が恨まれても構わない。ただ、どうかこれ以上彼の心が壊れないことだけを祈る。

 

トダカ「主砲、撃て!」

 

 

 

***

 

 

 

ミネルバのすぐ横に着弾した威嚇射撃を見て、シンが思わず動きを止める。

 

シン『オーブが、本気で……』

 

ディアッカ『バカ!止まるな!!』

 

無防備になったインパルスの脚を、ザムザザーが捕らえる。

 

シン『しまっ……』

 

それと同時、エネルギー切れを知らせる警告音が鳴り出す。まもなくインパルスのVPS装

甲は消失し、脚を引きちぎられてしまう。

 

ティルム『お兄ちゃん!!』

 

ルナマリア「シン!!くぅ……!」

 

オルトロス砲を構えるルナマリアを、レイが止める。

 

レイ『よせ!直撃しても効果があるかわからない!!それどころか、シンが盾にされる可能性がある!!』

 

ルナマリア「だったら指くわえて見てろって!?シンがやられるのを!!」

 

そうしている間に、インパルスが海面に叩きつけられる。

そうと思った刹那

 

シン『こんなことで・・・こんなことで俺はぁぁぁー!!』

 

ルナマリア「え?」

 

海面スレスレで、今まで見たことのない鮮やかな動きをしたインパルスが海面衝突を免れる。

 

シン『ミネルバ!デュートリオンビームを!それからレッグフライヤー、ソードシルエットを射出準備!』

 

ルナマリア「シン!大丈夫!?」

 

シン『メイリン!早く!!やれるな!?』

 

メイリン『は、はい!』

 

ミネルバの通信を聴取したルナマリアが、シンの異変に気づく。

 

ルナマリア「シン…?」

 

シン『うあぁぁぁぁぁ!!』

 

デュートリオンビームを受け、エネルギーが回復すると同時。先ほどまでの苦戦が嘘のように、ビームサーベルでザムザザーを撃墜する。

 

シン『シルエット射出!』

 

メイリン『は、はいっ!』

 

その余韻に浸ることなく、次の指示を出す。

破損した部分をレッグフライヤーで補い、満身創痍であったフォースインパルスが、ほぼ無傷のソードインパルスとなる。

これがインパルスの機体特性だ。ユニウス条約でMSの保有数の制限がされたため、エースパイロットを出来るだけ長く戦わせるというための。

 

シン『てぇぇぇぇぇい!!』

 

地球軍の戦艦に対し、エクスカリバーを手にしたインパルスが襲い掛かる。

 

 

 

***

 

 

 

それからは、一方的な展開だった。対艦刀を持ち、戦艦を撃沈しては新たな戦艦へ飛び移る。

こんなMS離れした動きを、次々とインパルスは行ったのだ。

 

戦艦を切り裂いた際吹き上がる燃料を、まるで血のように浴びるインパルスに脅威を感じたのか、地球軍側の戦艦を何隻も失ったからか。

 

とにかく地球軍は撤退し、何とかミネルバは無事に済んだ。

 

ルナマリア「シン!!」

 

帰還したシンに、ヨウラン達を押しのけ、ルナマリアが駆け寄る。

そこにいたのは、どこか疲れきった表情をし、うつむくシンだった。

 

ルナマリア「大丈夫?どっか痛めた?」

 

シン「……悪い。ちょっと一人にしてくれ。艦長報告は、後で行くから…」

 

そう言い残し、フラつきながら格納庫を去る。

 

ヴィーノ「お、おい。シン…」

 

レイ「そっとしといてやれ。……また泣きたくなったんだろう」

 

かすかに潤んだ瞳を、レイは見逃さなかった。

 

シンは理解しているのだろう。あの『ハードゲイ』という単語が、オーブ側から送られたということ。

それは、トダカかシライがあの配置されたオーブ軍内にいたということ。

そして彼らは、自分がいることを知って砲台の引き金を引いたということを。

 

ティルム「………」

 

クルリと向きを変え、ティルムはレストレインの方へ歩いていく。

 

マッド「ティルムちゃん。報告は?」

 

ティルム「切りのいい所まで終わってから行きます。……お兄ちゃんは、MS操縦で力をつけるっていう約束、守ってくれました。だから、次は私が約束守らな いと…!少しでも、お兄ちゃんの力にならないと……!!」

 

ルナマリア「ティー…」

 

『約束』のことは、ルナマリアも知っていた。ティルムを突き進ませないためにした約束だ。

シンもルナマリアも、どうしてもティルムに復讐を果たさせるわけにはいかない理由があるのだ。

 

ルナマリア(でもあの約束が、今は逆効果になってるわね…)

 

なんとかしないと。

シンのあの動きの謎はわからないが、もし意図的にできるのだったら、頻繁に出さないよう注意するとか。

 

ルナマリア(まったく……!!次から次へとこの兄妹は!!)

 

やるべきことの多さに、ルナマリアは軽い頭痛を覚えた。

 

 

 

***

 

 

 

艦長報告を済ましたディアッカは、視聴覚室で先ほどの戦闘シーンを見ていた。

まるで火が付いたように暴れまわるインパルス。これを見て、ディアッカは一つのことを思い出す。

 

ディアッカ(あの変わり様…)

 

見覚えがあった。かつてストライクと戦っているときも、あんな風に動きが豹変した。

 

ディアッカ(チッ!アスランやキラが居れば、少しはわかるかもしれないのに…!!)

 

もう一度そのシーンを再生しようとすると、映像の更新歴が目に入る。

 

ディアッカ「ん?…こりゃ、コピーの跡だな」

 

実行時刻は、自分がこの部屋に来る直前だ。

 

ディアッカ(ただの好奇心や興味からだといいが、どうもきな臭いな……)

 

大きくため息をつく。

 

ディアッカ「はぁぁぁぁ……。これだったら、プラントでイザークに八つ当たりされてたほうが、楽だったかもな」

 

 

 

***

 

 

 

夕方。

なんとか気分も落ち着いて、艦長報告から戻ると、待っていたのはルナマリアだった。

 

ルナマリア「シンー?少しでいいから、食べないと」

 

そう言って、箸でつまんだロールキャベツを目の前まで持ってくる。

いや、これは善意でやっているのだから、別に構わない。

問題は……

 

シン「何で両手両足の関節外すんだよ!?」

 

部屋に戻ろうとしたときに、背後から問答無用で羽交い締めされ、医務室に連行されたのだ(拉致とも言う)。

今は関節を外されて首しか動かせない状態で、馬乗りになったルナマリアのなすがままだ。

 

コニバンス「あまり騒ぐな。ここは医務室だぞ」

 

シン「黙れこの実行犯っ!!」

 

ルナマリアの片棒を担いだ、関節を外した張本人であるコニバンスに叫ぶ。

なお、ミネルバでの職務は医療スタッフ。

 

コニバンス「静かにしてろ。ヤニがまずくなる」

 

シン「ここ医務室じゃないのか!?30代!!」

 

こんな口調をしているが、コニバンスは一応女性である。

彼女ともアカデミー時代からの付き合いで、外科・内科に加え、メンタルケアやネゴシエーターまで行うことができる、優秀(謎)な人材だ。

 

だがヘビースモーカーに加えその大雑把な性格から、アカデミーで『OG兼医師』という名の売れ残りで10数年在学し続けていた。

が、何の因果がミネルバに 医療スタッフとして招かれたのだ。

 

コニバンス「ほぅ………首の関節も外して欲しいか?」

 

彼女なら、本当に実行するから恐ろしい。どうしてそんなことできるのかと言えば、ルナマリアにアンプロンプチュを教えたのは彼女だからだ。

しかもルナマリアよりも腕が立つから、始末に困る。

 

シン「黙ります。はい」

 

さすがのシンも、彼女には歯向かえない。

 

アカデミー入学以来、問題児だったシンはことあるごとにコニバンスにボロボロにされて、半ばトラウマとなっている。

本人曰く『メンタルケアの一環』とのこ とだが、どうにも信用に欠ける。

 

ルナマリア「じゃあ、シン。アーン♪」

 

シン「『じゃあ』じゃねぇ!!まず関節元通りにはめろ!!」

 

間違いなく、ルナマリアに彼女の悪影響が及んでいるのが目下の悩みだ。

 

ルナマリア「え……いけないわ………。こんな所で、はめ」

 

シン「下ネタはやめぃ!」

 

コニバンス「とりあえずシーツ汚れると面倒だから、避妊は諦めてくれ」

 

シン「つうか止めろよ責任者!!」

 

時々この空間にいる男性が、本当に自分だけかと疑問に感じる。

 

コニバンス「とにかく、もうすぐティルムも定期検査でやって来る。少しでも食ってるとこ見せんと、また余計な心配をかけるぞ」

 

その言葉に、シンが黙る。コニバンスがミネルバに赴任した本当の理由は、彼女がティルムの専門医だからだ。

ちなみにティルム本人には、もう完治した心の病のリハビリ、と言ってある。

 

シン「…わかった。食うよ。そういえば、何でわざわざロールキャベツなんか持ってきたんだ?」

 

他にも、夕食の献立はあったはずだ。

 

ルナマリア「だってキャベツって、アレが豊富でしょ」

 

シン「アレ?」

 

ルナマリア「え~と。食物…食物………食物センサー?」

 

コニバンス「たぶん『繊維』と『連鎖』が混ざっているんだと思うが、正しくは食物連鎖だ」

 

シン「食物『繊維』だ!!」

 

そんな物が豊富なキャベツ、絶対にイヤだ。

そうやって未だルナマリアと叫びあうシンを横目に、コニバンスは安堵のため息をつく。

 

コニバンス(これだけバカできれば、問題ないか)

 

シンは気づいていないが、既にシンの調子は戻っていた。

元々シンを医務室に連れてきたのは、レイが事情を話し、頼んだからだった。

 

コニバンス(それにしてもコイツといい、ティルムといい…。一体どうして、ここには問題児ばっかいるんだか)

 

タバコの煙を大きく吐きながら、コニバンスは改めて、どうして自分ごときがミネルバに配属されたのか納得した。

単に、引き受ける人間がいなかっただけだと いうことに。

 

自分も問題児ということは、棚に上げて。

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