ガンダムSEED DESTINY IF ~もしも彼女がいたならば~    作:鯱出荷

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第十一話

オーブ兵「ユウナ様!ご無事でしょうか!?」

 

フリーダムに新婦姿のカガリを奪われ、呆然とするユウナに駆け寄る。だがユウナはうつむいていて、その表情をうかがうことはできない。

そこへフリーダム追撃を指示されていた、オーブ軍本部の兵士がやってくる。

 

オーブ兵「も、申し訳ございません!フリーダムを始め、アークエンジェル一行を逃してしまいました!!」

 

激しい叱責が来ると、身構える。

しかし、ユウナの反応は予想していたのと違っていた。

 

ユウナ「…ふぅー。ようやく、行ってくれたか」

 

大きくため息をついて、そう呟いたのだから。

 

オーブ兵「ゆ、ユウナ様?それは一体どういうことで……」

 

てっきり怒鳴られると思っていた兵士が、素っ頓狂な声をあげる。

すると、横からウナトが近づいてくる。

 

ウナト「そんなことを言っている場合ではないぞ。忙しいのはこれからだ」

 

ユウナ「わかっていますよ。父上。国家を個人所有物だと思っている、愚鈍な一族はいなくなった。これからは、国民の為の国家に作り直さないと」

 

今までのうろたえぶりが嘘のように、近くの近衛兵を集めキビキビと指示を出す。

そして召集をかけると、その兵を引き連れ移動を始めた。

 

オーブ兵「ど、どちらへ?ユウナ様」

 

事情を把握できないオーブ兵が、慌ててユウナに尋ねる。

尋ねられたユウナは、含みのある笑みを浮かべた。

 

ユウナ「墓荒らしだよ。国民の血税で作られた、罰当たりにも程があるお宝のね」

 

 

 

***

 

 

 

シン「うわっ。酒くさ」

 

カーペンタリアで補給中のこと。

昼食時に食堂を訪れたシンを襲ったのは、強烈なアルコール臭だった。

 

ルナマリア「あ。シン~♪こっち、こっち~」

 

既にほろ酔い気分のルナマリアが、手招きする。

近づくのは危険と脳内で警報を鳴らしている。向かい席でうつ伏せになっている、レイやヨウラン達を見ればわかる。

 

しかし断るのも危険なので、しぶしぶ隣の席に腰掛ける。

 

シン「昼間っから、なに酒飲んでるんだよ。それに、この大量の酒はどこから?」

 

ルナマリア「前の戦闘の祝勝式~。お酒は元々進水式用のだったけど、あんなことがあって手付かずだったから、そこから~」

 

向こうの方にマッド達もいることから、艦長の許可は取っているようだ。

 

シン「それはわかったけど、いい加減そのぐらいで……って言ってる最中に2杯目注ぐな!!」

 

会話の最中にも関わらず、またワインをグラスに注ぐルナマリア。

 

ルナマリア「やだ~♪2杯目なんかじゃないわよ~♪」

 

シン「どうせ2リットル目とか、ありがちなネタだろ」

 

ルナマリア「ううん。2グロス杯目」

 

グロス。12の12乗=144。

つまり、2グロス=288。

 

シン「飲みすぎだろ!というか、何でお前生きてる!?」

 

常人ならとっくに致死量を超えているか、急性アルコール中毒になっている量だ。

 

ルナマリア「ぜーんぜん大丈夫よ~。ただちょっと、シンが3人いるように見え…」

 

シン「コニバンス先生!急患でーーーーーーーーす!!」

 

メイリン「あー……。多分、ほっといて問題ないと思うよ。お父さんも、週末はいつもそんな風だったし」

 

医務室まで担ぎ上げようとするシンに、メイリンが呆れたような声をあげる。

 

シン「メイリンは正気なのか?」

 

メイリン「うん。ワタシ下戸だから、割るための炭酸水しか飲んでないから」

 

そう言って、グラスを掲げてみせる。

 

シン「………そっか」

 

ドッと疲労感が出たシンが、ルナマリアを椅子に座らせ直す。

 

ルナマリア「あ~♪そうだ~」

 

思い出したかのように、ゴソゴソと机の下を探る。

 

シン「今度は何だ?」

 

ルナマリア「ジャ~ン♪」

 

少々ここにいるのが苦痛になってきたシンに、ルナマリアは笑顔で大きな紙箱を取り出した。

よく見ると、箱上部に手が入る程度の穴が開いている。

 

ルナマリア「ねぇ~シン~?箱の中身、当ててみて~♪」

 

 

意訳

【ヒマだから遊んで】

 

 

長い付き合いだと、こういった短い言葉のやり取りで相手の言いたいことがわかるのが不便極まりない。

 

シン「わかった、わかった。これやったら、昼メシに行くからな」

 

半ば呆れるように、箱の中に手を入れる。

彼女の笑顔に嫌な予感もするが、テーブルの下に置いていた以上、危険物ということはないだろう。

 

シン「ん?何だこれ」

 

ザラザラで、太く巻いている物が手に当たる。

 

ルナマリア「え~とね~。ヒントは、ティーと関係がある物~」

 

シン「ティルムと?じゃあ、MSのケーブルとか」

 

ルナマリア「残念~。正解は、ティーの通り名でもある【マンバ】でした~♪」

 

シン「へー。そっか~。俺はてっきり、『インパルスのケーブル切断して持ってきた』とかだと………うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ い!?」

 

想像以上の危険物に、箱から全力で手を引っ込める。

そして高笑いをするルナマリアの襟首を掴む。

 

シン「何考えてんじゃい!?」

 

ルナマリア「あははははは。平気だって~。ちゃーんと、麻酔で眠らせてるから~♪」

 

メイリン「お、お姉ちゃん…。そんなもの、どこから持ってきたの?」

 

すでにはるか後方に非難したメイリンが、恐る恐る尋ねる。

 

ルナマリア「ん~?この前オーブで入手して、実験で使うって先生が持ってた~。【ハウメア・マンバ】っていう、オーブの固有種らしいよ~♪」

 

ちなみにルナマリアが言う先生とは、コニバンスのことである。

 

シン「ハウ…!?あの年増!なんつう危険物を!!」

 

本人が横にいたら恐ろしいことになる言葉を、平然と口にする。

 

メイリン「シン。その【ハウメア・マンバ】って、そんなに危ないの?」

 

シン「『危ない』なんてもんじゃない!自然界で最も強力な毒を持つ生物として、ギネスに載ってるぐらいなんだぞ!!しかも犬くらいなら、簡単に絞め殺すだ けの力もある!!」

 

その言葉を聞き、周囲の人間が顔を青ざめる。

 

シン「落ち着け、落ち着くんだ。俺。………とにかく、一刻も早くこの箱を返そう。コニバンスの所へ行けば、ゲージとかあるはずだから」

 

自己暗示をかけつつ、やるべきことを見出す。比較的酔いが回っていないメンバーが、シンの考えに同調する。

本来ならルナマリアに一任すべきだが、今の彼女に何かを任すほどミネルバ乗組員はバカではなかった。

 

シン「よし。じゃあ、持ち上げるぞ」

 

落とさないようにと、複数でマンバの入った箱を持ち上げようとする。

しかし紙箱の中では、ちょうどマンバの麻酔が切れた頃だった。

 

 

 

***

 

 

 

アスラン「出迎えはなし、か……。嫌われたものだな…」

 

同時刻。

ミネルバが駐留しているカーペンタリアに到着したのは、正式にザフトに戻ったアスランだった。

 

とりあえず艦長に顔を出しておこうかと思っていると、背後から以前にも味わったことのある殺気を感じる。

 

アスラン「…やはり君か」

 

やや緊張して振り返ると、そこにいたのはティルムだった。

ティルムは『あなたには興味ない』といった様子で、アスランが搭乗していた機体に目を向ける。

 

ティルム「ZGMF-X23S、【セイバーガンダム】……。完成していたんですね」

 

アスラン「あ、あぁ。デュランダル議長から、フェイスの徽章と共に頂いてね。それと、今後はミネルバと行動することになった。よろしく頼む」

 

握手のため、手を差し出す。

 

ティルム「………」

 

差し出された手を数秒見つめる。

しかしティルムは踵を返すと、レストレインの整備に戻っていった。

 

アスラン「…俺のことが気に食わないのはわかるが、いくら何でもそういった態度はないんじゃないか?せめて、名前だけでも教えてくれないか?」

 

さすがにムッと思い、整備に没頭するティルムに近づく。

 

ティルム「………」

 

アスラン「俺とキラが知り合いなのが、そんなに気に食わないのか?それだったら、何か改善点を言って欲しい。理由も聞かされないまま、不愉快な顔をされる のはこちら側も……」

 

ティルム「…アレックスさん」

 

アスラン「今はアスランで構わないよ。それで、なんだい?」

 

ようやく口を開いてくれたと、幾分声を弾ませて答える。

 

ティルム「…アスランさん。私はどういう事情であれ、裏切り者には強く当たる性格です。あなたが信用に値するかは、今後自分の目で判断します。ですので、 今日のところはお帰り願えないでしょうか?」

 

一層殺気が強まる。

 

アスラン「……わかった。君の期待に添えるよう、努力するよ」

 

何とか声を絞り出し、その場を去ることを決めた。そうしてティルムから離れようとすると。

 

ティルム「…ティルム」

 

アスラン「え?」

 

艦長室に向かおうとしたところ、声をかけられた。

相変わらず、こちらに顔を向けてはくれないが。

 

ティルム「…私の名前は、ティルムです。『君』じゃありません」

 

アスラン「……そうか。次から、そう呼ばせてもらうよ。ティルム」

 

 

 

***

 

 

 

アスラン(かなり愛想の悪い子だが、やっていけないことはなさそうだな)

 

艦長室でタリアとの面会も終え、アスランはティルムとの会話を思い出していた。

 

アスラン(とりあえず、今は少しずつでも心を開いてもらおう。キラとの関係を聞くのは、それからだ)

 

今後のことを思考していると、タリアに言われたことを思い出す。

 

アスラン「…そういえば、食堂でパーティーをやっていると言ってたな」

 

シンとも話がしたいし、ルナマリアと再戦の約束もあった。

そう思うと、次第に食堂に足を運ぶスピードが速くなる。

 

アスラン(少しの間離れていたが、なにか変わっていないだろうか。まぁ、アークエンジェルやエターナルにいた俺から見れば、どんなことでも大したことない がな)

 

あそこでの生活は、常識を激しく逸脱したものだった。

自分が巻き込まれたものだけでも、

 

・第八次ケバブソース侵略戦争

・暴走ハロ『ジャスティス篭城24時間』事件

・ディアッカの『ここがひどいよミリィ様』

・トリィVSハロ『マスコット争奪!時間無制限3本勝負』

・ミリアリアの『トールの遺品、強制レンタルフェア』

 

アスラン「………くぅっ!」

 

ちょっと涙が出てきた。

 

アスラン(だが、ここではキラもラクスもいない!しかも、仮にも人の上に立つ身。しっかりしないと!!)

 

あんな非常識なこと、起こるはずがない。そう決意し、食堂への扉を開く。

そこには……

 

 

 

「おい!しっかりそっち押さえてろ!!」

「大丈夫か!?傷は浅いぞ!!」

「誰か麻酔銃持ってこい!電気銃でも構わん!!」

「もっと応援を呼べ!それと怪我人と女性に避難指示を!!…ルナマリア!お前は逃げるなっ!!」

「コニバンス医師はまだか!?」

「『ティルムちゃんの手作りスープを持ってきた』だと!?よくやった!!!打ち込め・流し込め・かけまくれっ!!」

 

 

 

アスラン「………」

 

麻酔の切れたハウメア・マンバが暴れまわるという、アスランの予想をはるかに超えたことが起こっていた。

 

 

 

***

 

 

 

シン「……というわけです」

 

なんとかマンバに麻酔銃(とティルムの料理)を打ち込み、騒動を鎮圧することができた。

 

しかし事態を聞いた艦長の逆鱗に触れてしまい、シン達は状況の説明を強要させられていた。

たまたま訪れたアスランも、何故かその中に含まれていた。

 

コニバンス「マンバの毒だけ注文したはずが、何故か一匹丸々発注されていてな。せっかくだから、色々実験しようと保存していたら、ルナが鍵を開けて持ち出 したようだ。悪かったよ」

 

さすがに負い目を感じ、珍しくコニバンスが謝罪する。

 

タリア「……まぁ、持ち込んだ危険物を把握していなかった私にも、責任はあるわ。この件については、不問にします」

 

全員が、ほっと安堵の息をはく。

するとアスランは、すすり泣きと共に背後にしがみつく『何か』を察知する。

 

ディアッカ「ア~ス~ラ~ン~?」

 

アスラン「………」

 

嫌々、そのしがみついてくる物を見る。

そこにいたのは、号泣するディアッカだった。

 

アスラン「ど、どうした?ディ…」

 

ディアッカ「こ・ん・の!裏切り者ぉぉぉぉぉぉ~~!!!NJキャンセラー搭載機持ち逃げしたお前が!フェイスに最新鋭機にラクスと復縁だと!!俺は機体と一緒に寝返っただけで、処刑直前&緑服に降格だっつのに!!自慢か!?嫌味か!?見せしめか!?」

 

アスラン「お、落ち着け。ディ…」

 

ディアッカ「お前だけは仲間だと信じていたのに!カガリに殴られ、キサカに説教され、キラに追い討ちをかけられるお前なら!!同じ不幸の星に生まれた同 士!支え合っていこうと誓ったじゃないかぁぁぁぁぁ~!!!」

 

全く持って、心当たりない話だが。

 

ディアッカ「第一!!どうやってあの!あのキラから、ラクス・クラインを取り戻したんだ!?教えやがれこのとお『プスッ』……り………」

 

嫌な音がしたと思うと、ディアッカはそのままズルズルと床に倒れこんだ。

それを行ったと思われる人物に目を向けると……

 

コニバンス「ふぅん。思ったより、即効性はあるようだな」

 

満足気な表情でコニバンスは、ディアッカの首筋にマンバの牙を押し付けていた。

 

 

 

***

 

 

 

ユウナ「税金泥棒の隠れ家らしく、小汚い場所だな」

 

情報により把握していた、ある場所にユウナ達がたどり着く。

ユウナ達が足を踏み入れると、自動で設定されていた音声が流れ出す。

 

『もしもお前が力を欲する日来たれば、その危急に応えて私はこれを贈ろう。教えられなかった事は、多々ある。が、お前が学ぼうとさえすれば…』

 

ユウナ「抵抗派は?」

 

その音声を歯牙にもかけず、ユウナは前もって進入させておいた側近に状況を聞く。

 

近衛兵「はっ。エリカ・シモンズを始め多少の抵抗はあったものの、無事拘束し万事問題ありません。ここ一帯の資料も、ダミーを含め全て複製済みです」

 

満足そうに頷く。そして目的の物である、製作途中の機体に目を向ける。

 

ユウナ「政策も問題ならセンスも問題か……。悪趣味にも、程があるな」

 

『…る事が出来るだろう。故に私は唯一つ、これのみを贈る。力はただ力。多く望むも愚かなれど、無闇と嫌うもまた愚か。守る為の剣。今必要ならば……』

 

ユウナ「……すまない。ここらの資料は、この音声も含めて複製済みなんだな?」

 

近衛兵「はっ。確かに、それは間違いありませんが……」

 

『…が、真に願うは、お前がこれを聞く日の後の事だ。今、この扉を開けしお前には届かぬ願いかもしれないが、どうか、幸せ【バ ンッ!!】……………』

 

近衛兵「な…!?」

 

音声が流れるスピーカーを、ユウナが銃で撃つ。

その音声が停止したのを確認して、不機嫌を隠そうともせずに言い放った。

 

ユウナ「ちっ。国よりも理念を優先して勝手に死んだ、無責任指導者が。全員が全員、あんたの言うことが正しいと思ってるのか」

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