ガンダムSEED DESTINY IF ~もしも彼女がいたならば~    作:鯱出荷

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第十三話

コニバンス「お前バカだろ」

 

シン「うっ…」

 

ここ数日、ディアッカやアスランに言われたことを色々と悩んでいたシンの考えを一蹴する。

 

コニバンス「悪い行動ではなかった?相手のいい点を見つける?そんなもん、被害者に言うセリフじゃないだろ。しかも行動が悪くなかったことを前提に話が進んでいること自体、馬鹿らしい」

 

腐っても医者。

考え事があることをあっさり見破られ、話してみればこの調子だ。

 

コニバンス「じゃあ、なにか。『自分は中立』と高をくくって、普段の危機管理を怠り民間人を避難させれなかった指導者が悪くないと?」

 

メイリン『ごめん。そこのラッキョウ取ってくれる?』

 

コニバンス「しかもまともな後任者を国内に残さないで勝手に自殺。結果、オーブで連邦のコーディネイター迫害。迫害された国民は難民。これのどこに救いよ うがある。あとアスランの件もそうだ」

 

レイ『悪いな。おれ達の分まで』

 

インド洋での戦闘にて、シンの命令違反に関してだった。

戦闘指示の無視、そして敵基地での過剰な破壊活動。アスランがこれを咎めて件だ。

 

シンからすれば、前者は指揮官クラスの敵を早く撃墜しようとして。後者は基地から逃げようとしていた民間人と思われる人々を助けようとしての行為だった。

 

金網をくぐって基地の外へ行こうとする人々を、武装した兵が撃ち殺す。

それは戦争に巻き込まれて死んだ自分達の家族のように見えて、居ても立ってもいられなかったから。

 

そんなシンをアスランは、『戦争はヒーローごっこじゃない』『力を持つものなら、その力を自覚しろ』と否定した。

 

コニバンス「目先の敵に突っ走ったのはともかく。もう一つの件は、兵士を攻撃したのが悪いって言いたかったんだとしても。兵士は投降してない、背を向けたからってまた攻撃してくる可能性もある。しかも民間人は殺されてる真っ最中」

 

ルナマリア『いいのよ。カレーとかの鍋物は、多く作ったほうがおいしく出来るし』

 

コニバンス「だったらアスランの言う通り、降伏しようとしない敵に攻撃しない、背中から攻撃されても諦めろ、民間人は見殺せ。これでお前は満足か?以降これを教訓とするか?」

 

ティルム『食堂以外で食事するの、久しぶりだね。アカデミーではよく屋上で食べてたりしてたけど』

 

シン「違う…と思う……」

 

コニバンス「そうだろが。お前はただでさえ口論に弱くて真に受けやすい。考えるのはいいが、相談もしないで自己完結させるな」

 

ルナマリア『うんうん。最近食欲ないように見えたけど、心配ないようね。ティー』

 

シン「……意外だな」

 

「何が」とコニバンスは尋ねる。

 

シン「てっきり、隊長やディアッカさんの意見を尊重するかと思ったのに…」

 

コニバンス「あいつらが多かれ少なかれ、オーブの思想を持つのは勝手だ。だがそれを誰かに押し付けるなら話は別。まして一回それを捨てた奴にだ。何を悟ったか知らないが、あたしの知り合いに布教活動されるのは目障りなんだよ」

 

ディアッカについては、故意にシンを挑発した気もしないではないが。

 

コニバンス「―――それよりもだな」

 

視線をルナマリア達に移す。

 

コニバンス「さっきから何の用だテメェら!カレー臭いんだよ!!」

 

ホーク姉妹・レイ・ティルム「昼食」

 

コニバンス「帰れ!!」

 

先ほどから横で色々騒いでいたのは、昼食にきたレイ達だった。

しかも医務室にカレー鍋と炊飯器持参。今は誰も療養していないといっても、怒鳴りたくもなる。

 

シン「おかわり」

 

ルナマリア「はいはい。ちょっと待ってて」

 

コニバンス「よそうな!!つうかお前、あたしが話してる最中も飯食ってたのか!?」

 

柄にもなく真面目に話していただけ、結構ショックだ。

 

メイリン「そんな細かいこといちいち言ってるから、売れ残るんですよ。婚期何年前でしたっけ?」

 

レイ「そう言うな。本人に自覚はないのだから」

 

コニバンス「………………ティルム。付けな」

 

キョトンとするティルムに、コニバンスはガスマスクを手渡す。

 

コニバンス「加湿器にアクリロニトリル(猛毒の液体)入れるから」

 

ルナマリア「あはは。まさかそんな…」

 

メイリン「あ。注入した」

 

シン「逃げろぉぉぉーーーーー!!」

 

 

 

***

 

 

 

医務室から大急ぎで逃げ出したシンとルナマリアは、場所をレイ達の部屋に移すことにした。

なおメイリンとレイはハッタリだと気づいていたので、そのまま医務室で食事を続けていたりする。

 

もし本当に加湿器に毒を入れたら肌の露出部分にも毒が付着し、ガスマスク程度では対処できないとわかっていたからだ。

 

ルナマリア「まぁ、最近シンが荒れてた理由はわかったけど、そろそろ機嫌直しなさいよ」

 

ルナマリアもハッタリにうすうす気づいていたが、シンをほっとくわけにもいかないので付き合うことにした。

 

シン「……」

 

不貞寝で無視。

これもいつものこと。

 

ルナマリア「今日だってアンタとティルムの為に、久しぶりにメイリンと料理したんだから…………シンの分だけは、皆とは違うのにしたんだよ」

 

シン「あっそ………………ぉ?」

 

甘い雰囲気など皆無な自分達の間では、その言葉がとてつもなく悪い方向の物だと気づく。

 

シン「………何を入れた?」

 

ルナマリア「特別なものは入れてないわ。話題のインフルエンザに感染した鶏、魔法のマッシュルーム、青い酸のカレーだけよ」

 

シン「三日前のフライドチキン、朝食のサラダ、今食ったカレーだな!?っていうか俺のこと殺す気だろ!?」

 

ルナマリア「三日前のメニューを覚えてる。おめでとう。あなたの脳年齢は15歳です」

 

シン「わぁ。やったぁ…………って騙されるかルナマフィアーーー!!」

 

ルナマリア「子供の頃のあだ名持ってきてんじゃないわよぉぉぉぉおお!!」

 

意外なトラウマ発見。

 

ルナマリア「幼稚園児に『月のマフィア』って呼ばれる気持ちがアンタにわかる!?」

 

シン「いいじゃないか、月のマフィア。『ツキノワグマ』みたいで。ネズミ駆除の時は真っ先に呼んでやる。たらふく食え」

 

ルナマリア「誰が食うかい!テーマパーク掛け持ちしてる猫じゃあるまいし!!」

 

シン「子供に夢与えるキャラクターのデマ言ってサン○オ敵にまわすなーーーー!!」

 

 

 

***

 

 

 

シン「………もういい。疲れた」

 

「あの猫はペットとして猫を飼ってる」など「某ネズミも犬の友人がいるくせに犬を飼ってる」など、妙なことを力説されればさすがに。

 

ルナマリア「そう?これから『サ○エさん宅はなぜ子供に座布団を使わせないか』について議論しようと…」

 

シン「すみません、勘弁してください。………なんかルナといると、いつも騒いでる気がする」

 

それこそ、考える暇がないくらい。

 

ルナマリア「だってシン以外の人にやってもツッコミ来なくてつまんない」

 

シン「てめ、『ツッコミの達人』とかいう変なゲーム製作に誘われた俺への嫌味か!?」

 

ティルム「あ、あの……。『持って帰れ』ってコニバンス先生が………」

 

入り口のほうを見ると、いつ声をかけようか迷っていたティルムがいた。

 

その手には鍋、炊飯器、食器etc…。

『持って帰れ』とは、これらのことだろう。

 

シン「あのヤブ医者!よくもか弱いティルムにこんな重い物を………!!」

 

ルナマリア「落ち着けシスコン。妹は職場のMS整備でもっと重い物運んでるから」

 

ティルム「………?」

 

すると何かに気づいたのか、ティルムがまじまじとシンの横顔を眺め始める。

 

シン「どうかしたか?」

 

ティルム「ねぇ、お兄ちゃん……?」

 

シン「!」

 

ゆっくりと細くなり、一つの感情で支配されるティルムの目

普段の周囲を気にしながらとはまるで違う、迷いのない仕草

慣れない人間なら身震い程度じゃすまない殺気

 

最近は鳴りを潜めていた『症状』だ。

 

その状態のまま、ティルムはそっとシンの頬に手を添えてくる。逃げ出したい衝動に駆られるが、そこは経験と忍耐でどうにかする。

 

ティルム「その頬、どうしたの…?」

 

言われて慌てたシンは後ずさりし、自分の頬を押さえる。それはインド洋での帰艦後、説教の時にアスランから平手打ちされたものだった。

 

そのときティルムはレイ達の機転によって現場におらず、シンも安心してすっかり忘れていた。

 

シン「ちょっと…その……こ、転んで…」

 

ティルム「うそ…私にはわかるよ……。それ…手か何かで叩かれた痕だよね……?」

 

かつて都市ぐるみの迫害を受けたことがあるため、ティルムは外傷に詳しい。

一目見ただけで、何でどうされたのかわかるほど。

 

ティルム「あの出戻り?それともオーブの犬?誰でもいいよ…。私がぜーんぶ片付けてあげる……。お兄ちゃんの敵は私の敵だから、ね……?」

 

じわじわとにじり寄る。思わず自白してしまいそうな威圧感だ。

しかしここで正直に言っては、ティルムが何をするかわからない。

どうすればいいか悩んでいると…

 

ルナマリア「あぁ、それ?シンが帰艦後よろけてアタシの胸つかんできたから、アタシが平手打ちしたの」

 

大声で否定したかったが、ルナマリアは『合わせて』と目で訴えてくる。

 

シン「そ、そうそう。やっぱ女性の胸触ったなんて人前で言うことじゃないから、言いづらくて」

 

内容はともかく、助け舟を出してくれたルナマリアに感謝。

 

ティルム「そう…なんだ……。ごめんなさい…勝手に、勘違いして…」

 

しょんぼりと、いつものティルムに戻る。

大きく安堵のため息をつきたいところだが、深入りされる前に違う話題を振る。

 

シン「気にするなって。それよりレストレインの武装をプログラム化する件、どうなったんだ?」

 

高コスト。未完成のエンジン。乗り手を選ぶ武装。極度に悪い燃費。

 

いくら試作機といってもあまりに操縦しにくい機体な上、資金提供者の議長から一言あったため可能なところから簡易化に踏み出すことにしたのだ。

 

ティルム「あ。それだったら、今レイさんにプログラム作ってもらってるよ。問題の兵器『コワーディス』は有線ドラグーンのイメージで自在に操作できるように設定したから容量が増えて乗る人も選ぶ武 装になったけど、パターン化なら先読みされる可能性はあるけど操作も容量も大幅に…」

 

さきほどまでとは打って変わって多弁になる。

彼女は一つのことだけに目が行きやすいため、話題をそらすことは難しくない。

 

騙しているようで気が進まないが、これも彼女のため。

この戦争が終わるまでには、こんなことをする必要もなくなるだろう。

 

 

 

***

 

 

 

その後地球軍のガルナハン基地を陥落させたミネルバは、黒海の沿岸都市・ディオキアのザフト基地へ向かうこととなった。

 

ルナマリア「じゃあ、マナーの復習ね。『テーブルの上にフォークとナイフ、左右に3本ずつあります。使う順番は?』」

 

シン「えっと……端をさけて堂々と真ん中」

 

アスラン「とんちか?」

 

基地到着後、パイロット組は議長が待つホテルへと向かっていた。

 

タリア艦長から「議長が日頃の戦果をねぎらって、パイロット一同を食事に招待したがっている」と連絡を受けたからだ。

「高級な所での食事は息が詰まるから嫌だ」と一名反対者もいたが、不必要にやる気なレイに強制連行された。

 

ティルム「はぁーーーー…」

 

ディアッカ「どうした、ちっこいの。大きなため息ついて」

 

最後尾をトボトボと歩いているティルムに話しかける。

 

ティルム「身体的特徴で呼ばないでください。……だって、呼ばれたのはパイロットのはずなのに整備員の私まで呼ばれているから…」

 

その様子は、教師に説教される前の生徒のようだ。

 

ティルム「開発、打ち止めかなぁ…。なんとかなると思ってた改善点もどうにもならないし、相変わらず量産には向かない機体だし……。―――『… hirt』…つ…しか…ない…」

 

ディアッカ「なんだって?最後のほう、よく聞き取れなかったんだが」

 

ティルム「え!?なななんでもないです!愚痴です独り言です世迷言です!!」

 

色んな意味で、彼女は大丈夫だろうか?

 

レイ「私語を慎め。もう着くぞ」

 

 

 

***

 

 

 

議長との食事会での話は、現在の情勢・戦争そのものについてだった。

ブルーコスモスの母体であるロゴスは、己の利益のために影から世界をコントロールし、争いを遷延化させているという。

 

デュランダル「彼らに踊らされている限り、プラントと地球はこれからも戦い続けていくだろう。出来ることならそれをなんとかしたいのだがね……。だが、そ れこそが何より本当に難しいのだよ」

 

長々と喋り続けていた議長だが、一度目を伏せる。

 

デュランダル「すまないな。こちらばかり話してしまって。話題を変えようか」

 

タリア、アスラン、レイと、一人ずつねぎらいの言葉をかけていく。

 

デュランダル「そういえば、ディアッカに会ったら『早く戻ってきて欲しい』と、ジュール隊から伝言を預かっていた」

 

ディアッカ「そうかそうか。あいつらも可愛いところあるな。やっぱり俺がいないと寂しいって?」

 

デュランダル「いや。ジュール隊長とシホ・ハーネンフースのいちゃつきぶりが手に負えないことになっているらしい。止めてくれとのことだ」

 

ディアッカ「あいつら帰ったらぶっとばす!!」

 

アスラン「ディアッカ。お前はもうプラントに戻るのか?」

 

この基地の設備なら、ディアッカ本人はもちろんザクもプラントに戻すことができる。

 

聞いた話ではミネルバにも補充兵が新たに配属されるため、今ミネルバを抜けても誰も小言を言わないだろう。

 

ディアッカ「あ~…。そのつもりだったけど、宇宙では小規模な戦闘はあるけどそれだけなんだろ?この艦にも愛着わいてきたし、目下の問題を片付けるまでい るつもりだ」

 

デュランダル「別にそれを予測したからではないが、ジュール隊に支給したところ『我々よりも君向きだ』と言われ持って来た機体がある。ミネルバに残るなら、使ってみてはどうかね?」

 

ティルム「何ていう名前ですか?」

 

今まで寡黙だったティルムが、好奇心からか尋ねる。

 

デュランダル「『ケンプファー』だ。少々クセのある機体だが、有効に使ってほしい」

 

ティルム「ケンプファー…。たしか、射撃特化の強襲型MSでしたね」

 

その言葉を聞き、ディアッカはご機嫌になる。

 

ディアッカ「お♪そりゃ確かに俺向きだ。それにしても、俺もとうとう新型機か~。イザークの奴、羨ましがるだろうな」

 

デュランダル「向こうには同時期に作られた『ゲルググ』を支給したが」

 

ディアッカ「…くぅ!イザークのおさがりMSを譲ってもらって、喜ぶシホが目に浮かぶぜ!!」

 

アスラン「涙も一緒に浮かんでいるぞ。つまり、この機体のデータを取れということですか?」

 

デュランダル「いや、テストパイロットによるデータ取りは済んでいる。『扱いづらい』と各部署をたらい回しにされた機体なのだが、君達ならばと思い持って きたのだ。性能は保証する」

 

「…それならば」と、タリアも受諾する。

物資が間に合っている今の状態で試作MSを渡されるのはたまらないが、既にテスト済みなら話は別だ。

 

クセの強い機体らしいが、ディアッカの実力なら問題ないだろう。もし酷い出来だとしても、使わないで置いておけばいいだけの話だ。

 

デュランダル「そうか。――それと申し訳ないが、食事が済んだらシンとティルムは残ってもらえないだろうか?3人だけで話したいことがあるのでな」

 

 

 

***

 

 

 

デュランダル「わざわざすまないね。本当はもっと内密にやるべきだろうが、私も忙しくてね」

 

シン「…いえ」

 

「アタシも残る」と目で訴えるルナマリアを追い払い、今テーブルには議長、シン、ティルムだけとなっている。

ずっと隅にいた、護衛であろう人物も席を外した。

 

デュランダル「それでは本題に入ろうか」

 

ティルム「その…やっぱり、開発の打ち切りについてでしょうか……?」

 

デュランダル「? ………あぁ。活力がないとは思っていたが、そういうことか。心配しなくとも、そういった話は全く挙がっていない。安心していい」

 

その言葉に、ようやくティルムは大きく安堵の息と笑顔を浮かべる。

 

デュランダル「どうやら余計な誤解を与えてしまったようだね。私の用件は、君に頼まれていた物を持ってきた件だ。既にミネルバに運び込まれているはずだ。それと、もう一台グゥルも用意した。海上戦が多く、戦闘がキツイと言っていたからな」

 

ティルム「え…もうですか?連絡したのは、マハムール基地を出発してからなのに……」

 

デュランダル「私は書類上とはいえ、君の親なのだ。これくらいのことはさせてほしい」

 

話には聞いていたが、議長とティルムが頻繁に連絡を取り合っているというのは本当のようだ。

 

デュランダル「…と。話が脱線してすまない。本題はこっちのほうだ。入りたまえ」

 

ガチャ、と入り口の扉が開く。

 

???「こんにちわー☆ラクス・クラインでーす♪」

 

シン「!?」

 

入ってきたラクスにシンは仰天する。

 

シン「………でも、なんか違うような…」

 

オーブで会ったラクスと印象がだいぶ違う。

疑うようなシンの言葉に、ラクスと名乗る女性は不機嫌そうな表情を浮かべる。

 

???「あら。わたくしが偽者だと?」

 

シン「え!?いえ!決してそういうわけじゃなくて、その…」

 

デュランダル「ミーア。からかうのも、そのくらいにしなさい」

 

ミーア「だって~。久しぶりに会った先輩に向かって、『誰?』みたいな表情浮かべるからさー」

 

すねたような声。

その口調で完璧に思い出した。

 

シン「…もしかして、ミーア先輩!?」

 

アカデミーでシン達より一つ上の学年、パイロット科専攻だった人物だ。

生年月日がわずかにシン達より早かったことから、先輩と呼んでいた。

 

ミーア「正解。せっかく演技やめて登場したんだから、もっと早く気づいてよ」

 

そしてルナマリアと同じくコニバンスの弟子で、アンプロンプチュの使い手。

ちなみにルナマリアとは犬猿の仲でもある。

 

シン「すんません。突然アカデミーを中退して音信不通だったのに、まさか顔が変わってたなんて……」

 

卒業直近で赤服間違いなしと呼ばれた人物の中退に、当時アカデミーはかなりの話題になった。

 

ミーア「ふっふーん。じ・つ・はー♪わたくし、在学中にも関わらずフェイスにスカウトされたんでーす♪」

 

どこからともかく取り出したフェイスの勲章を、シンの鼻先につきつける。

 

ミーア「『ラクス様がいなくなった穴を埋めるため、その多才な才能を生かすため。ぜひフェイスとなってください』って言われたらね~」

 

シン「…でも、よく引き受けましたね」

 

出来るだけ遠まわしに発言する。

顔は特殊メイクなどではなく、整形だろう。

 

ミーア「この顔?…まぁ、ちょっと抵抗はあったけど嫌いな顔じゃないしね。それにフェイスになれば、憧れの人に近づけるかもしれないと思ったからね。あ、 それが誰かは秘密だからね」

 

相変わらず、ベラベラと饒舌(じょうぜつ)な人だ。

 

ミーア「そんなことよりも、もっと私…じゃなくて、わたくしがフェイスになったことに注目しなさいよ。…あぁ!立場的に自慢できる相手がいなかったら、 か・い・か・ん~♪…ほら!もっと羨ましたがりなさい!!」

 

ティルム「あの…お兄ちゃんが戸惑ってるから、それぐらいで…」

 

ミーア「あら。ティルムちゃん、久しぶり~♪わたくしと再会して嬉しいでしょう~。泣く?泣く?むしろ、泣け!!」

 

シン「うちの子に何をするか!!」

 

ふと、ミーアがティルムに「久しぶり」と言ったことに気づく。

 

シン「ティルム、ミーア先輩がラクスの真似してたこと知ってたのか?」

 

これもさっきまで気がつかなかったが、ティルムがラクス?を前にしても取り乱していない。

 

ミーア「術後、議長宅に隠れ住んでたときに説明したわ。あと、レイもこのこと知ってる」

 

デュランダル「ティルムから聞いたが、オーブでラクス・クラインに会ったのだろう?ならば、君にも言ったほうがいいと思ったのだ」

 

面白いので放置していた議長も、話題が変わったので口を開く。

 

デュランダル「当然だが、このことは他言無用で頼む。彼女に依存するのは、ひとえに混乱を抑えきれない私の力量不足だというのは承知している。しかし、そ れでも彼女にすがるしかないのだ」

 

無言でシンは頷く。

それは人に誇れる行為ではないというのはわかっている。同時に、それが数少ないプラントの状況を改善できる手段であることも。

 

デュランダル「助かる。ところで、実はもう一つ話があるんだが」

 

ごそごそと、デュランダルは懐に手を入れる。

それを何か察したティルムが、いち早くフォローに走る。

 

ティルム「えーと…お兄ちゃんには、まだ早いと思うんですけど……」

 

デュランダル「いや!男たるもの許婚の一人や二人いるべきだ!!――というわけで、見合い話を持ってきたぞ」

 

二人はまずいでしょう、とツッコムべきだろうか?それともキャラが変わっていることにツッコムべきか。

 

デュランダル「彼女もザフトで、オペレーター科だ。どうだ?出撃する際に『いってらっしゃい。あ・な・た♪』とかしてもらえるぞ!!」

 

シン「いや、そんなこと力説されようが結構です」

 

デュランダル「……一応、プラントには婚姻統制というものがあるんだが」

 

シン「結構です」

 

デュランダル「会うだけでも」

 

シン「結構です」

 

横からデュランダルが持ってきた写真を覗き見したミーアが口を挟む。

 

ミーア「もったいない。見た目悪くないわよ。写真だけでも見たら?」

 

シン「本当に結構です」

 

そもそも目の前に難題が山積みだというのに、そんなことしていられるか。

 

 

 

***

 

 

 

――これ以上問題は増やしたくないと言ってるのに…

 

ミーア「あらあら。最近の女性兵士は横に広い体系ですね。ほほほほほほほほほほほほ…」

 

ルナマリア「いえいえ。お忙しいラクス様には敵いませんよ。ふふふふふふふふふふふふ…」

 

シン「………どうしてこうなる?」

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