ガンダムSEED DESTINY IF ~もしも彼女がいたならば~    作:鯱出荷

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第四話

シン「くそっ!なんであそこで帰還信号なんか!」

 

レイ「命令だ」

 

クラクラする頭を押さえ悪態つくシンに、それを冷静に返すレイ。

 

結局ガンダム3機はプラント外に脱出されてしまい、それを追うと恐らく泥棒一味の仲間であろうMAと戦闘。その最中の帰還命令。今ようやくミネルバに着い たところだった。

 

レイから見れば限界に近いのは一目瞭然で、間違いなくシンのほうだろう。

 

シン「だからって『お兄ちゃーん!』ティルムーー!!!」

 

ふらつく体はどこへやら

義妹のためならどこへでも

インパルスパイロット、シン・アスカ

シスコン傾向のある16歳

 

無重力状態の中、ティルムが腕を大きく開いたシンの胸に飛び込む。

 

艦長報告何だそれ?(←義務)

義兄のためなら火の中・水の中・ベッドの中(←実践済み)

ガンダムレストレイン開発者、ティルム・ニックス

間違いなくブラコン(←断定)の14歳

 

ティルム「お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!!大丈夫だった?痛いところない?」

 

シン「当たり前だろ。ティルムのほうこそ平気か?ずっと実験ばかりで初めてのMS戦だったんだろ?」

 

抱きしめ頭を撫でる義兄に、それを嬉しそうに目を細める義妹。

こんな一見微笑ましい光景を見て、誰が話しかけることが出来ようか。

 

整備員達はシスコン・ブラコンの噂は聞いていたが、ここまで深刻とは予想していなく全員ドン引きである。

 

ルナマリア「あ~…。ラブシーンの最中悪いんだけど、艦長報告済ましてきて」

 

周りを代表するかのように、うんざりした様子で言う。整備員達から小さな拍手が起こる。

それを無視し、ティルムはシンの胸に頬ずりする。

 

ティルム「ん~♪もうちょっと…♪」

 

シン「ルナ。兄妹のコミュニケーションを邪魔するとは何事だ」

 

ルナマリア「アンタ等がしてるのは兄妹のコミュニケーションじゃなくて、バカップルがすることでしょうがぁぁぁ!!」

 

静かにしなさい!!とキャット・ウォーク上から叫んだのはタリア艦長だ。

しかしシン達の顔を見るや、しまったという表情になる。

 

そこで気づいた。艦長と議長の隣に、見知らぬ男女がいることに。

 

ティルム「ねぇ。あの人達、誰?さっきも議長室前にいたけど」

 

返答に困るルナマリアの横で、シンが呟くように言う。

 

シン「オーブ首長国代表、カガリ・ユラ・アスハ様だよ……!」

 

どこか嫌味っぽく『様』をつける。驚愕するティルムに、今すぐここから逃げ出したいと思うルナマリア。

 

しかしカガリは艦長の様子に気づかない。議長も位置的に、シン達が見えないようだ。

 

カガリ「争いがなくならないから力が必要だとおっしゃったな。議長は」

 

シンは地面を見たまま、小刻みに震えている。今それに気づいていないのは議長とオーブからの二人だけだ。

 

デュランダルは「ええ」と頷く。

 

(そうだ。それのどこがおかしい。)

 

カガリ「だが、ではこの度の事はどうお考えになる。あのたった3機の新型MSのために、貴国が被ったあの被害のことは!」

 

(力があるから争いが起こったんじゃない。奴らがいるから争いが起こったんだ)

 

デュランダル「だから、力など持つべきではないのだと?」

 

カガリ「そもそもなぜ必要なのだ!そんなものが、今更!」

 

(何かあってからじゃ遅いからだ。俺のときのように。それとも奴らはわざわざ待ってくれるとでも?あいつと違って)

 

カガリ「我々は誓ったはずだ。もう悲劇は繰り返さない、互いに手を取って歩む道を選ぶと!」

 

限界だった。

あんたの悲劇は知らないが、俺の悲劇を生んだ張本人が何を言う。手を取っていた俺達家族の手を振り払い、突き飛ばした奴が。

 

シン「さすが、奇麗事はアスハのお家芸だな!」

 

 

 

***

 

 

 

シン「さすが、奇麗事はアスハのお家芸だな!」

 

突然の声は、目の前の議長からのものでなかった。カガリはすぐさま声のほうを向く。

 

艦長はこうなることがわかっていたかのようにため息をつき、議長は今さっき彼の存在に気づいたらしく、下を見て驚く。

さっきの罵声は、下にいる黒髪の少年からのようだ。

 

カガリ(あの目……。何かオーブ、もしくは私に恨みがあるやつか…?)

 

バキュンッ!

 

そんなことを考えていると、少年の足元に銃弾が。隣にいるアレックスの仕業だ。

 

カガリ「お、おい。アスラン…」

 

アレックス「キサマ…!一兵士ごときが、『アスハ』だと?何様のつもりだ!!」

 

カガリ(ああ、アスラン…。こんなにも私のことを気遣って…)

 

アレックス「もうすぐ『ザラ』に変わるが、今はアスハ『様』だろうが!カガリを呼び捨てにしていいのは俺だけだ!」

 

カガリ「そっちかよ!?」

 

シン(なんか、怒らせちゃ駄目な人を怒らせてしまったような……)

 

違う意味で先ほどの発言を後悔する。「こいつに関わってはいけない」と。

すると金髪の青年と褐色肌の少年が、彼を咎める。

 

シン「……ブリッジに報告に行く!!」

 

そう言うとスタスタ歩いていく。

一緒にいた幼い少女も、ギロリとカガリを睨むと少年の後を追う。

 

カガリ「っ!!!」

 

その時気づいたのは、睨まれたカガリだけだった。

一瞬見せただけの年端もいかない少女の憎悪が、少年が発した恨みを超えていたことに。

 

デュランダル「いや。申し訳ない」

 

議長がすまなそうに、苦笑いする。彼が言うに、あの少年はオーブからの難民らしい。

そのことに驚愕するアスランとカガリだったが、カガリにはもう一つ尋ねたいことがあった。

 

カガリ「あの少女もそうなのか?彼についていった、あの金髪の少女も」

 

デュランダル「いえ。彼女は生まれも育ちもプラントの、純コーディネイターです。それが何か?」

 

やや困惑したように言うデュランダルに「いや。それだったらいいんだ」と答えるカガリ。しかし、その顔は議長以上に困惑していた。

 

 

 

***

 

 

 

ステラ・アウル・スティングの3名は、帰艦してメンテナンスベッドの中にいた。

 

エクステンデッドと呼ばれる彼らは、薬物強化を受けたことによる禁断症状か ら逃れるため、この『最適化』が必要不可欠だからだ。

 

ネオ「で、どれくらい待てばいいのかな?」

 

今回強奪事件を起こしたファントムペインの指揮を任されている、ネオ・ロアノークだ。

 

科学者「ちょっとかかりますね。アウルがブロックワードを使ってしまったようなので」

 

ブロックワードとは、脱走や反乱防止用にエクステンデッド個々に『設定』された言葉である。

該当する言葉を聞くと、理性を保つことさえできなくなる。

 

ネオ「ではこの『揺り篭』を使って、嫌なことはすっきり忘れてもらうというわけか」

 

科学者「少し違いますね。『忘れる』ではなく『誤魔化す』です。『忘れさせる』ということは、既に染まっている色を透明にするということです。それよりも 楽しいことや好きな物の情報で埋め尽くして、上塗りした、つまりは『誤魔化す』ほうがよっぽど安全ですから。また忘れさせる方法ですと少しの操作ミスで白 紙、つまりは赤子状態になってしまう恐れもありますので」

 

ネオ「おいおい。そんなので大丈夫なのか?ふとしたきっかけで禁断症状、なんてシャレにならんぞ」

 

科学者「記憶という物はとても繊細で、忘れさせるとなると高い技術と技量が必要とし、過剰な設備と訓練を要します。それに人間の娯楽への欲求というものは ほとんどの苦痛に勝り、さらに連続して歓楽を与えることによって…」

 

ネオはうんざりした様子で言う。

 

ネオ「もういいさ。とりあえず、頭の中を幸せいっぱいにするということだろ。それよりも、リー艦長は?」

 

説明好きな科学者から逃れるため話題を変える。すると科学者は、困った様子で口ごもる。

 

ネオ「またか。いくら気に入らないからといって、ここまで露骨な行動はないんじゃないの?」

 

ファントムペイン母艦である「ガーティ・ルー」艦長、イアン・リーのことだ。

 

彼は定期的に揺り篭が必要なエクステンデッドを、『ラボから押し付けられた欠陥品』として見ている。実直な軍人である彼にとって、不完全な『兵器』は許せないのだろう。

 

ネオ「やれやれ。今はまだなにもかもが試作段階みたいなもんだというのに、それがわからないのかね。艦・MS・パイロット。またこの世界も」

 

そして、と続ける。

 

ネオ「やがて全てが本当に始まる日がくる。我らの名のもとにね」

 

 

 

***

 

 

 

おまけ

 

ブリッジにて副艦長であるアーサー・トラインは、艦長報告代理としてブリッジに残っていた。

すると名物兄妹、シンとティルムがやってきた。

 

アーサー「やあ。お疲れさま。それじゃあ、さっそ、く……」

 

そこでアーサーは気づいた。この目の前の兄妹は、何故かとてつもなく腹の虫の居所が悪いことに。

 

シン「なんすか?」

 

ティルム「報告してもいいですか?」

 

文章ではわからないがこの二人、地獄の底から声を出しているのではと思うような声を出している。

本能が訴えている。早く終わらせないと命がない。

 

アーサー「そ、そうだね!早く始めようか!!」

 

タリア艦長、プリーズ・カムバック・クイックリー(←他ブリッジ要員、知らんふり)

心で泣いても、笑顔ができる(←死を悟ったような素敵な笑顔)

ミネルバ副艦長、アーサー・トライン

未成年に死の恐怖を感じる(←特にギャップが激しいティルムに)26歳

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