ガンダムSEED DESTINY IF ~もしも彼女がいたならば~    作:鯱出荷

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【おまけ話】もてない男の、それなりに幸せな一生

トルスト「いや~。やっぱ新天地はいいね~」

 

C.E.69年、ユニウスセブン。その年に、一人の男が赴任してきた。

 

名前はトルスト。お世辞にも軍人向けな性格とは言えないが、一応MSのパイロットだ。

 

ユニウスセブンは農業用プラントのためMSは不要だと思われるが、まれに接近する隕石除去作業のため雇われたのだ。そして万が一のときは、正確に除去しな ければいけないため、腕の良いパイロットが要求される。

 

つまりは、この男もそれなりのパイロットなのだ。

 

エメル「あまりはしゃぐな。田舎者が」

 

同僚のエメルが、たしなめる。ここではMSパイロットは希少なため、ただでさえ目立つというのに。

 

エメル「ま、俺は用事あるからもう行くぜ。荷下ろし、まだ終わってなくてね」

 

トルスト「とっとと行け行け。怠け者」

 

ビッ!と中指を立て、エメルは帰っていった。

 

トルスト「けっ♪…っと。バカにかまってないで、なんか暇つぶさないと……」

 

そしてぶらりと、近くの商店街に立ち寄った。

 

ユニウスセブン初の食料自給が可能となったプラントだけあって、移住者も多い。そのためか、この周辺はとても繁盛しているようだ。

 

だが彼が目に付いたのは、華やかなレストランでも豪華な宝石店でもなく、1軒の花屋だった。

 

トルスト「ほぇ~」

 

注目すべきは、その種類だ。メジャーなものから、見たこともない物まで。しかも全て造花ではない。

 

トルスト「さすがユニウスセブンってとこか…」

 

店員「なにかお探しですか?」

 

店の奥から、女性店員が出てきた。

その女性に、トルストは釘付けになる。

 

トルスト(うわ…!めっちゃタイプ…!!)

 

その緑色の髪をした女性は、格好はとても着飾ったものではなかった。しかし、それでも十二分に美人といえる人物だ。

次の瞬間、思わずトルストは口を開いた。

 

トルスト「最近この辺に引っ越してきたもんで、造花じゃない花が珍しくて…。ところで、君。このあとヒマ?俺トルストっていうんだけど、良かったらこの 後、案内してくれない?」

 

その言葉に彼女は、ニッコリと微笑み、一輪の花を渡す。

 

トルスト「へ?」

 

店員「その花の意味知ってる?調べてから、また来てね」

 

そう言い残し、彼女は店内に戻っていった。

 

トルスト(苦節ン十年…!とうとう俺にも春が…!!)

 

花言葉を知らないトルストは、既に有頂天となっていた。

 

 

 

***

 

 

 

トルスト「隊長隊長隊長隊長隊長隊長!!なまはげも驚く恐面にも関わらず、綺麗な奥さんと可愛い娘さんに恵まれた、ある意味人間国宝な隊長!!」

 

サトー「赴任早々、ケンカ売ってるのか?貴様は」

 

自らの新上司であり、隊長のサトーの下へ駆け込む。

 

トルスト「それよりも!この花の花言葉教えてください!お願いします!!」

 

サトーは数多くの花言葉を使い、可憐な奥さんをゲットしたことで有名なのだ。

それゆえ彼の下に訪れたのだが、この花を女性からもらったことを告げると、表情を固くする。

 

サトー「…これ、その店員にもらったのか?」

 

トルスト「?ええ。そうですが」

 

サトー「トルスト。これは【ホウセンカ】といってな、花言葉は【私に触れないで】。つまりは、拒絶だ」

 

トルスト「え………」

 

その言葉に、トルストは固まる。

 

トルスト「………」

 

さすがに気の毒に思い、サトーは声をかける。

 

サトー「まぁ、なんだ。たまたま相手側の好みが、合わなかっただけだろ。だから…」

 

トルスト「………隊長。昔使っていた、花言葉の本ありますか?」

 

言葉をさえぎり、トルストはゆっくり顔を上げる。

 

サトー「何?まぁ、あることはあるが…」

 

トルスト「しばらく貸してください!!」

 

 

 

***

 

 

 

店員「あら?」

 

翌日、昨日ホウセンカを渡した人物が店に訪れる。

 

店員(意味わかってないのかしら…)

 

そう思い、ホウセンカの花言葉を直接伝えようと近づくと。

 

トルスト「これ!どうぞ!!」

 

そう言い、彼は赤いチューリップを渡す。

 

店員「これ…」

 

花言葉は【愛の宣言】。

 

トルスト「これが俺の気持ちです!」

 

店員「……」

 

驚いた。大抵の男は、ホウセンカの時点で怒るか諦めるかの、どちらかだというのに。

 

店員(でも、ただしつこいってだけかも…)

 

そして店員が手に取ったのは、黄色いチューリップだった。意味は【望みない恋】。

 

店員「どうぞ。これがお返事です」

 

 

 

***

 

 

 

その翌日から、トルストと店員との会話が始まった。

会話といっても、ほんの二、三言で、ほとんど花言葉を通じてだった。トルストも、店員の名前すら知らない。

 

それでもトルストは、

 

・キク(赤)【愛しています】

・ハナミズキ(黄)【私の想いにこたえて】

・モモ【私はあなたのとりこ】

・ハイビスカス(白)【繊細な美】

・ナンテン 【私の愛は増すばかり 】

 

など、時には地球でしか生息していない花も取り寄せ、渡し続けた。

店員も、

 

・ルコウソウ【私は忙しい】

・マルバノホロシ【だまされない】

・ハナタバコ 【私は孤独が好き 】

・パフィオペディルム【変わり者】

・アスパラガス 【無変化】

 

など、結果は惨敗でも返してくれた。

アスパラガスを渡されたときは、さすがにくじけそうになったが。

 

 

 

***

 

 

 

そして三ヶ月が経った。店員はそろそろ来る頃だろうと、店の外に出る。

 

店員「……あなたも懲りませんね」

 

やはり今日も来ていた。彼は休業日を除いて、毎日来ているのだ。

 

トルスト「こんないい女、みすみす逃すわけにはいかないんで」

 

いつものように花を渡す。いや、今回は花束だ。

 

店員「紫と黄色のスターチス……。意味は【変わらぬ誓い】と【変わらぬ愛】……」

 

トルスト「そ。どっちか迷ったけど、どっちも俺の気持ちなんで」

 

店員「……ふぅ」

 

ため息をつくと、店員もいつものように一つの花を差し出す。

知識も増え、近頃は調べなくても意味が分かるようになったトルストは、その花を受け取り、驚く。

 

トルスト「………!!!これって…アザレア……」

 

しかも白いアザレア。意味は……

 

店員「ふふ♪負けたわ。…こんなに私に真剣になってくれた人、あなたが初めてだから」

 

ふられ続けた男トルスト。人生で初めて、告白成功した瞬間だ。

 

トルスト「………ぃぃぃいいいやったぁぁぁぁぁあああ!!大切にする!!絶対に大切にするから!!!」

 

そう叫び、商店街の真ん中だというのに店員を抱きしめる。

 

店員「ちょ!ちょっと!!…もう!」

 

店員も満更でもなさそうだ。

とっくの昔に商店街の名物になっていた男の成就に、町の人達は拍手で祝福した。

 

 

 

***

 

 

 

C.E.70年1月

 

フィミー「やっぱり行っちゃうんだ」

 

花屋の店員であった、フィミーである。

付き合い始めて、ようやく名前を教えてもらったのだ。

 

トルスト「なんか地球との関係がゴタゴタしそうだから、腕に覚えのある奴は強制招集だってよ。まったく、いい迷惑だぜ」

 

フィミー「…」

 

トルスト「暗い顔すんなって!俺がナチュナルなんかにやられるわけないだろ。隕石除去も、必要最小限はいるから心配いらないから」

 

無言で、フィミーは花を渡す。

 

トルスト「ラベンダー…か」

 

意味は【あなたを待っています】。

 

フィミー「……いい!?絶対帰ってくるのよ!?あのぐらいじゃ、最近の女は満足しないんだから!!」

 

トルスト「うぅぅ…申し訳ない……。けど、結構満足してたように見えたような………」

 

フィミー「ば!バカ!何言って…!ん……んん…」

 

真っ赤になって怒鳴るフィミーの口を、トルストが口でふさぐ。

 

トルスト「…こんないい女、誰が手放すか。ダメだって言われても、絶対戻ってくるから」

 

しばしの辛抱だと、トルストはもう一度彼女と口づけを交わした。

 

 

 

***

 

 

 

C.E.70年2月14日

 

トルスト「隊長~。ダルイっす~」

 

エメル「愚痴を言うな。疲れてんのは、みんな同じだぜ」

 

トルスト「んなこと言ってもよ~。俺は愛しのフィミーに会いたくて、恋しくて。」

 

地球軍MAメビウスを、これでもかというほど撃墜したトルストは、クタクタだった。

なんとか今日も生存できたが、毎日こうでは身がもたない。

 

トルスト「あ~あ。今年こそは男の夢、恋人からのバレンタインチョコもらえると思ってたのに、来年までお預けかよ……て、隊長?」

 

呆然と、サトーはTVの画面に釘付けになっていた。

 

トルスト「なんすか?何か面白い話題でも…」

 

そう言い、自分もTVに目を向ける。

 

アナウンサー『…繰り返します。地球軍によって熱核弾頭ミサイルが中央シャフトに撃ち込まれ、ユニウスセブンが崩壊しました。これによる犠牲者は24万に も及ぶと見られ、プラント側は……』

 

トルスト「…おい。冗談にしては、度がありすぎるぞ。なんなんだよ、これ…」

 

エメル「トルスト…」

 

トルスト「ふざけんじゃねぇ!どうして危険な場所にいる俺が無事で、あいつがあんな目にあわねぇといけないんだ!!」

 

横にいる、エメルを掴む。

 

エメル「おい!落ちつけ!!」

 

なおエメルに掴みかかるトルストを、サトーが引き剥がす。

 

トルスト「なにすんだよ!?隊長だって家族殺されたんだろ!?」

 

サトー「泣いて何か変わるのか!?泣いたらナチュラル共が苦しむのか!?違うだろ!!」

 

目を赤くしたサトーが一喝する。

 

サトー「俺達がすることは!一人でも多くナチュナル共を駆除すること!そうだろがぁぁ!!だったら泣いてないで!さっさと戦えっ!!そして殺せ!一人でも 多く!!一秒でも早く!!」

 

トルスト「だからって…!!」

 

そこへ、事情を知らない同僚がやってくる。

 

ザフト兵「お、いたいた。トルスト。お前宛に荷物届いてるぞ」

 

そんなもの!と、払いのけようとする。しかし送り主を見た途端、トルストはその荷物を奪い取った。

 

トルスト「……!!」

 

乱暴に包み紙を破くと、中にあったのはチョコレートと一輪の花。

送り主は、フィミーだった。

 

そして、同封されていた花を手に取る。

 

トルスト「チトニア…【果報者】…」

 

どこまでも彼女らしい言葉が、余計に胸に響く。

 

トルスト「……やってやる。やってやるよ…!たとえ俺一人になっても!ナチュラル共を片付ける!たとえ地獄に落ちようと!絶対に!!」

 

 

 

***

 

 

 

それからのトルストは、ただナチュラルを駆逐することだけに没頭した。

 

今までは相手も命令を受けただけだからと、ある程度は手心を加えることもあった。

しかし、今はそんなことしない。する理由がない。

 

ザラ議長も自分と同じ考えで、これが今行うべきことだと、唯一の明るい未来だと。

そう信じて戦い続け、生き残ってきた。

 

しかしC.E.71年、戦争は突然終結した。自分が望んだものとは、違う形で。

 

まして停戦条約に至っては、屈辱以外の何者でもなかった。

愛する人が眠る場所で、プラント側に不利な条約を締結させられたのだから。

 

 

 

***

 

 

 

戦後しばらく。トルストはザフトに残りながらも、毎日をただ過ごしているだけという無気力な人生を送っていた。

そんな日々を過ごしていると、話があると戦後消息不明だったサトーから連絡があった。

 

トルスト「お久ぶりです。隊長」

 

そこにはエメルを始め懐かしい顔ぶれと、見かけない顔が幾つかあった。

 

サトー「そうだな。ところで、トルスト。率直に聞く。お前は今も、ナチュラルを恨んでいるか?」

 

トルスト「ちょ!隊長!!」

 

慌てて周りを見渡す。クライン派といっても、一部にはブルーコスモスのように過激派・狂信派もいる。

下手に口にすれば、今の時代彼らによって、戦犯扱いだ。

 

サトー「心配するな。ここにいる連中、皆クライン派に不満を持つ者だ」

 

トルスト「隊長…もしかすると…!!」

 

コクリと、一回頷く。

 

サトー「我々の意思に共感し、MSを提供してくれる者も見つけた。後は同志を集め、実行するだけだ。…お前はどうする?このまま仇の奴らと笑いあう人生 を選ぶか、違う道を選ぶか」

 

その全容を聞くまでもない。トルストは一も二もなく、答えを出した。

もちろん、サトーたちと戦う道を。

 

 

 

***

 

 

 

C.E.73年 計画実行当日

 

エメル『いよいよだな』

 

幾分緊張した、エメルが言う。

彼も両親をあの事件で失い、今回の行為に参加した。

 

使用するMSは、ジン・ハイマニューバ2型。自分が最も長く使っていたジンの、発展型だ。

だが、用意できたのはこれだけ。

 

当然、帰還する戦艦もない。

つまり出撃したら最後の、片道切符なのだ。

 

エメル『それよりも、本当にいいんだな?ユニウスセブンを、地球に落として』

 

トルスト『もう決まったことだろ』

 

大事な人が眠る場所を、奴らの思想に使われるくらいなら、いっそこの手で。

それが彼らの、共通した意見だった。

 

トルスト(これでいいんだ…!あいつが喜んでくれなくても、これで……!!)

 

サトー『無駄口を叩くな。行くぞ!!』

 

 

 

***

 

 

 

ディアッカ『いつからなんだ!?友人の俺に内緒で!きっかけは!?振り向いてもらう方法は!?キスってやっぱりレモン味なのか!?』

 

イザーク『レモンだと!?シホの唇はそんな低俗なものでは…………現状を把握しろぉぉぉ!!』

 

サトー『ふざけるなこのヒヨッ子共がぁぁ!!』

 

トルスト『そうだ!うらやましいじゃねぇかこんちくしょー!!』

 

全く最近のガキは!俺がお前らの年の頃は、異性に電話かけることさえ緊張してたっつのに!!

 

サトー『お前もだトルストォォォー!!』

 

隊長。ツッコミ力上がってないか?……と、増援か。

 

サトー『まずエース級を倒す!続け!!』

 

そう指示し、赤いMSに向かっていく。

相変わらず、ご注文の多いことで。

 

トルスト『……つうかよ!?こいつ!強くね!?』

 

さっさと沈めるつもりで撃ったビームライフルを、軽々かわすMSに驚く。

 

エメル『くそが!』

 

トルスト『落ち着けよ。こっちは時間を稼げば勝ちなんだ』

 

こういう時こそ、冷静に……

 

ルナマリア『守りに入っちゃ負けるわよ!!』

 

そう思った矢先、赤いMSが急接近する。

無理やり回避行動を取ろうとしたエメルは、ビームトマホークで胴体を切り裂かれてしまった。

 

トルスト『エメル!』

 

思えばこいつとは、かれこれ十年近く悪友やってたな……と!いけね!!感傷に浸るのは後だ!

 

そう思い、日本刀型の重斬刀を勢いよく横に…って、こんな簡単に回避するか!?

 

ルナマリア『甘い甘い甘い!そんなんじゃ最近の女の子は満足しないわよ!!』

 

マジかよ……!あいつ以外に、こんな事口にする女がいるなんて。

 

トルスト『うぅ……。昔付き合った彼女に言われたセリフ…』

 

サトー『戦えぇぇぇ!!!』

 

ルナマリア『そんなあなたには、この幸運を呼ぶ黄色か白のチューリップが……』

 

サトー『お前何しに来たぁぁぁ!?しかも黄色いチューリップの花言葉は【望みなき恋】、白いチューリップは【失われた愛】だろうがぁぁぁー!!!』

 

……いや。あいつもここまではひどくなかったな。うん。

 

 

 

***

 

 

 

ルナマリア『帰還信号!?…くっ!!』

 

お?あのMS、帰るみたいだな。

高度の限界も近いし、俺達みたいに死ぬ気でなきゃ、残らんわな。

 

彼女もザフトだし、追撃すんのはやめとくか。もうビームライフルの弾ねぇし。

 

トルスト『んじゃ、敵もいなくなりましたし、エメル達の思い出に浸りながら、ユニウスセブンと運命を共にしますか』

 

周囲は探索しても、友軍機の反応なし。つまり、生き残ったのは俺達だけだ。

 

サトー『…どうやら、それは早計なようだぞ』

 

隊長が見ている方向を見る。

うわ。まだ破砕作業してる奴がいやがる。

 

トルスト『…あいつらも、死にたいんですかね?』

 

サトー『さぁな。どっちにしろ、わずかでもユニウスセブンの威力を下げさせるわけにはいかん!!』

 

悪い、エメル。どうやら、黙祷をささげる暇もなさそうだ。

 

 

 

***

 

 

 

アスラン『っ!まだいたのか!!』

 

サトー『これ以上はやらせん!!』

 

トルスト『同感!…残ったのは、俺らだけっすか』

 

ここにたどり着くまでに、再検索したから間違いない。

地球軍も混ざった、あれだけの混戦だもんな。手駒が足りなすぎる。

 

サトー『トルスト…。せめて、お前だけでも…』

 

トルスト『はっ!何を今更!』

 

何を言うかと思えば。

帰ればテロリスト扱いで、間違いなく処刑。それぐらいだったら!!

 

トルスト『惚れた女と同じ所で死ねるなら本望さ。ナチュラルにやられた、人生最初で最後の恋人のな!』

 

隊長が緑のMSの方へ。ということは、俺はこっちの白い奴か。

 

シン『こいつ!ルナが相手してた奴らか!』

 

あの物凄い女のことだな。

こいつ、あれの彼氏かな?ま、どっちでもいいけど、人生の先輩として一言いってやるか。

 

トルスト『名前聞いてないけどきっとご名答!大丈夫。彼女は撤退したさ。……お前さんには関係ないけど、俺の女、結構ひどいこと言うけど笑顔が素敵な奴 だったんだぜ』

 

そう。本当にいい笑顔だった。あれから見合い話もあったが、どの女にも見向きしなくなるぐらいの。

 

シン『…え?』

 

トルスト『女は生きてる内に孝行しろってことさ!』

 

おいおい。人の話を素直に聞く姿勢はいいが、止まっちゃマズイだろ。

そのおかげで、足にしがみつけたけどな。

 

シン『な!?』

 

トルスト『心配いらねぇ。これ用の火力は減らしてある。やられてユニウスセブンが破砕しちまったら、本末転倒だからな』

 

少しでも破損しないように、なおかつ万が一にも自身が生き残らないようにつけた物だ。

それでも、足止めぐらいの威力はあるはず。

 

トルスト『へっ。悪くない人生だったぜ、フィミー……』

 

本当に。本当に悪くない人生だった。

そして唯一の。本当にたった一つの心残りを、トルストは口にする。

 

トルスト『行く場所が天国と地獄、違うのが残念だがな!』

 

その言葉を最後に、トルストは自爆装置に指をかけた。

閃光に包まれる中、コクピットに飾ってある物が目に入る。

 

あのときの花。

ドライフラワーにして、ずっと肌身離さずに。

戦場では必ずコクピット内に貼ってある、自分にとって一番大切な花。

 

アザレア(白)【あなたに愛されて幸せです】

 

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