北米の旅路の果てに、剣鬼は   作:綱久

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 皆さま、お久しぶりです。そして投稿が4ヶ月もかかってしまい本当に申し訳ありませんでした。
理由は仕事やゲーム等いくつもあるのですが、やはりやる気がなくなっていたのが一番の要因ですね、楽しみにしていた方達は本当にすみません。
 これから何とか復活していくので、こんな自分ですが最後まで付き合ってくれたら嬉しいです。

 サムレムの第3弾のDLCストーリーの前日の投稿となりましたが、どうぞ!!


中編3 鬼の刃は天へと

 

 

 

 

 

「――ふむ、少しやりすぎたか」

 

 平坦な口調のカルナであったが、彼の周辺の状況はあまりにも熱気に満ちあふれていた。

 

 まるで隕石が衝突したかのように、アメリカの荒野の大地に巨大なクレーターが出来上がっていた。大地は今だ燃えており、溶解した部分もいくつも存在する――まさに人の手に余る大災害だ。

 同じサーヴァントでも、カルナと同様のことが出来る者など"宝具"を使ったとしても数える程度にしかいないだろう。

 だが恐ろしいのは、カルナのこの力を限定的にしか使わ――否、使えないことだ。

 

 英霊がサーヴァントとしてこの世に現界し維持し続けるためには、魔力による供給が必然。普通のサーヴァントであれば、自身の切り札の"宝具"を使用しない限り多大な魔力を消費することはないが、最上位に位置し力が強大なカルナは、"宝具"どころか"スキル"を使うことすら魔力を多大に消費してしまう。例え魔術師と契約し逸れの身から脱っせたとしても、それでも少しマシになる程度でしかない。

 

 もしカルナが聖杯からの膨大な魔力供給を受けていれば、そしてもし彼が生前と同様に今を生きる人間であれば、このような災害を幾度も起こすことなど造作もないことなのだ。

 

 

「――直撃は避けたか。あの状況でよく冷静に動けたものだ」

 

「はぁ……はぁ……」

 

 感心するように口にしたカルナの視線の先には、肌や着物の所々に焼き焦げ、片膝を突きながらも必死に息を整えている伊織の姿があった。

 

(ライダー――"雷神"因陀羅の子である"丑御前"に勝るとも劣らない厄災の如き力。言の葉通り、神の域に至る超越者……っ!)

 

 カルナの魔力を纏った強大な一撃、伊織はカルナのその姿を眼で捉えていたためかギリギリではあったが直撃を避けることはできた。しかし強烈すぎる余波までは躱せず受けてしまった。

 結果として、地の型による防御と宝石魔術の『巌の身』を発動していたこともあり、致命傷にまでは至らなかったが体力は大きく削られ、立つことすら危うい状態となっている。

 

 

(もう、止めなくては……!)

 

(……ここまでだな)

 

 

 この戦いを見届けていたラーマも、死闘を繰り広げたカルナも、今の伊織の状態を見てこの戦いの終わりを悟る。

 

 カルナはあらゆる意味で規格が違うインド神話に生き、数多の苦難や戦を乗り越え踏破した大英雄。普通のサーヴァントでは全く相手にならず、一流サーヴァントですらまともに相手ができるのも数える程度だ。

 だというのに、"宝具"を使用していないとはいえ、今を生きる人間である伊織が大英雄を相手にここまで戦い抜いてみせたのだ。 

 誰も伊織を侮辱する者はいるはずもなく、むしろ彼を称えるであろう。見守っていたラーマも、実際に戦った本人であるカルナもそれは大いに認めている。

 

 だからもう十分だ、お前は見事に武勇を示した、今は体を休め次の決戦に備えよう――と、足を動かし言の葉で伝えようとした……。

 

 ――顔を上げた、伊織の表情を見るまでは。

 

 

 

 

 

(力の差は歴然……それでも俺は――貴殿に勝つ!!)

 

 

 刀の如く鋭き冷たい目をしながらも、普段表情の起伏が乏しい伊織からは想像できない――三日月を思わせるような笑みが浮かんでいた。まるで、嬉しくて愉しくて仕方ないと思わせる……この状況に似つかない狂気を感じさせる表情であった。

 

 

 

(死合いの果てに、自分以上の高みへと刃が届くと知ってしまった……!)

 

 

 同格以上との互いの武をぶつけ競い合う死合いも心躍るが、格上との死合いもまた喜ばしい。

 自身よりも上の領域を知ることで、自分の剣は更に究めることができるのだと理解し、それを己の剣で斬り伏せ勝利したいと、心が大いに滾り喜悦を感じられる。

 

 あぁ、それはなんと心地良いことか……!

 

 

 

(ならば、貴殿を斬らずにいられようか…!!)

 

 

 やがて伊織は立ち上がる。

 疲労や傷など関係ないと言わんばかりに、二刀を正眼に構え――己の斬るべき敵を改めて見据える。

 

 

 

(さぁどう斬る…!!? 貴殿をどうすれば斬れる!!? この刀をどう振ればその首へ…!!)

 

 

 そこにいるのは、高く正しき信念や忠節心を持つ武士でもなければ、護るべき大切な者達と誇りのために戦う戦士でもない。

 

 ただひたすらに、己の欲がままに剣を振るい敵を斬る―――

 

 

 

 ―――……一匹の"鬼"である。

 

 

 

 

 

(そうか……伊織、お主――君は……)

 

 伊織の顔をみた瞬間、ラーマは理解し、その表情は悲しく曇る。

 自分は伊織を全く理解しておらず、彼の一面だけを見て知った気になっていた。確かに善と在ろうとする姿に嘘はないのだろう。しかし、伊織の本質は――

 

 

「――……成程。お前は武を究めんとする"武芸者"でもあり、敵を斬り勝つことに飢える――"剣の鬼"でもあるのだな」

 

 道理であのアルジュナがこの青年を気に掛けたわけだとカルナは納得する。

 先ほどアルジュナは実直かつ誠実な男と語ったが、実際は他者が思うほど誠実でも無ければ、自身が思うほど邪悪でもない男だ。

 そしてアルジュナ同様に伊織もまた、己の内の本当の自分を隠して生きていたのだと、カルナは直観する。

 

 そんな伊織に対し、カルナは闘志が衰えることはなく、落胆も失望も抱くことはない。あるのはただ……目の前に対する"剣鬼"への肯定のみ。

 どれ程高尚な言を語ろうが、武とは結局のところ己のために磨き上げるもの。そして修練した己の武で勝ちを願うのもまた、武人としては当然のこと。

 在り方の違いや気持ちに大きな差異はあれど、自分も伊織と何ら変わらない武人だ。

 

 そしてカルナは、更に伊織への興味を強くする。

 神代はとっくに過ぎた人の時代、更には戦争は終わり泰平へと移り変わった時代にも関わらず、聖杯戦争があったとしても有り得ぬ、英霊にさえ届きえる――磨き上げられた鋭き冴えた剣技。 

 その在り方と剣が、己の中の闘争心が湧き上がるのを抑えられない…!

 

 

「武具など不要。真の英雄は眼で殺す――」

 

 槍技も、スキルさえ使ってもなお伊織は倒れず、今だその闘気に衰えを見せぬどころか上がっている。ならばこれ以上は最早、己の象徴たる"宝具"を持って試す他はなし。

 

 さぁ、乗り越えて見せよ……宮本伊織!

 

 

 

「――梵天よ、地を覆え(ブラフマーストラ)!!!」

 

 

 瞬間、カルナの瞳から凄まじい熱量の光線が放たれた。

 

 否、正確には光線ではなく、彼の強力すぎる眼力が可視化できるようになったためにそう表現するしかないのだ。

 これはカルナが、インド神話の大英雄の一角――パラシュラーマより授けられた弓術の秘奥にして、彼の代名詞とも言える"宝具"だ。

 "アーチャー"クラスで召喚されていれば"対国宝具"に位置する程の威力となっていようが、此度は"ランサー"での召喚のため"対軍宝具"へと降下している……しかしそれでも一個人に向けるには余りあることには変わりない。

 

 

「……っ!!」

 

 胴体を狙った、触れる物全てを消滅させる音速を超えた速度の光線。

 だが今の伊織は最高潮に高揚したためか、集中力は今までと群を抜いていた。確かにカルナのこの宝具は伊織の予想を超えたデタラメだったが、想定を超えたわけじゃなかった…!

 

 

「しっ……!」

 

 危機察知からの即座の右側への飛び込み、それが紙一重で光線を躱す結果となった。

 

「これすらも躱して見せたか、素晴らしい反応だ」

 

 カルナの表情は変わらないものも、伊織への賞賛の想いは本物だ。

 とはいえ伊織に宝具を躱されたにも関わらず、カルナは動こうとしなかった――いや、必要がないのだ。

 

 

「――後方注意だ、悪く思え」

 

 まるでカルナの声に応えるかのように、伊織を通り過ぎたはずの光線は軌道を曲げ、後ろから再び伊織へと襲い掛かる。

 

「追尾型の宝具だと!!? 伊織ぃ!!!」

 

 ラーマは驚愕する。

 速度は勿論、ただでさえ当たれば大きな致命傷――下手をすれば死に直結しかねない宝具に関わらず、必中効果まで付与されてるなど反則もいいところだろう。

 

 

「………………」

 

 だが、そんなラーマとは裏腹に明鏡止水の如く、伊織の心は凪いでいた。

 先ほどは予想外の攻撃であったこともあり、"躱す"という選択しか取れなかった。しかし何が迫るのかを理解していれば―――備えられる。

 躱した光線が再び自分に向かってくることから察するに、この光線は自分に被弾するまで追い続けるのだろう。

 ならば対処する方法は………一つしかない。

 

 瞬く間に小太刀を鞘へと収め、両手で太刀をしっかり握りしめる……そして躊躇いもなく――

 

 

―――光線へと太刀を振るった。

 

 

 窮余の一策とも捉えられる、その結果は―――

 

 

 

「なんだと……?」

 

「馬鹿な……カルナの宝具を、受け止めている…!?」

 

 

 ――そう、ラーマの言葉通り伊織は――太刀で光線を文字通り受け止めているのだ。

 

 当然カルナとラーマも、この光景に驚きを隠せない。

 "宝具"ならまだ分かる。魔力を纏った武器ならば、差異はあれ干渉も可能だろう。伊織の剣は神秘にも届く良業物なのは間違いないが、それでも光線―――"炎"や"水"と同じく、目に映るが無形にして事象なるものである"光"に、干渉できる筈がないのだ。

 そう、伊織は武器である"剣"で防いでいるのではない。

 

 あの月の夜に見た、極限の剣へ至るため……血反吐を吐く程の鍛錬を重ね、死を隣に感じさせる修羅場を乗り越え――《剣聖》の領域に迫るまでに至った、伊織自身の純粋な"剣技"によって起こしえた光景であるのだ。

 

 

(……なんと情けないんだ、宮本伊織……っ!)

 

 己の不甲斐なさに、伊織は内心で憤る。

 伊織は、この光線を斬るつもりで太刀を全霊で振るったのだ。結果はこうして受け止めるのが精一杯。周りはそれだけでも多いに称えられる御業とほざくだろうが、伊織にとって情けないことこの上ない。

 

 そして同時に、自分はいまだ《剣聖》、《空位》の域に至らぬ未熟者であることを再確認する。

 もし、かの天下一の剣の師にして養父であれば、かの平行世界より現れし師である《天元の花》であれば、かの最強が恐れたもう一人の師であれば、かの《剣術無双》であれば――ただの一閃のもとに斬れたのであろう。

 

 あぁ……今だ頂きは果てしない。しかしだからこそ、剣の道というのは―――面白い!!

 

 

「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 声を上げながらの全身全霊の一閃。

 《剣聖》の域にいる者達の剣に比べれば、伊織の剣は優雅とは程遠いだろう。しかしその剣は確かに――

 

 

―――カルナの梵天よ、地を覆え(ブラフマーストラ)を斬るに至った。

 

 

「光を――斬ったというのか……!」

 

 信じられないと声を震わすラーマをよそに、上段から真っ二つに斬り裂かれた光線は伊織を避けるように通り過ぎ、斬られたことで追尾の概念がなくなったのか光線は降下し――カルナの近くの大地へと着弾した。

 

「っ!」

 

 "対軍宝具"に匹敵する威力によって大地はそれ相応に抉れ、一時的に広範囲の砂煙が舞う。目を腕で覆いながらも、カルナはこの状況に嬉しさを感じる。

 

 勝負を決めるために"宝具"の札を切ったのは確かだが、宮本伊織という剣士が――この程度で終わるはずがないと、どこか予感していた。まぁ、まさかあんなやり方で危機を脱するとは思いもしなかったが……どこまでもあの人間は、自分の想像を超えてくれる……!

 

 

(そしてお前なら――やはりここで来るか…!)

 

 砂煙が落ち着きカルナの視界が回復した瞬間、脅威的な速さでこちらに迫ってきた伊織の姿を捉えた。

 

(視界が劣悪の中にも関わらず、俺が足を止めた瞬間を見逃さず攻めに転じたか。それに奴の今の速さはこの戦いの一番の速度……悪くない選択肢だが――)

 

「――悪いがお前の疾さ、視えているぞ」

 

 確かに伊織の速さは最早サーヴァントの領域、ステータスで表すならEX(規格外)を除けば最高ランクのAに妥当する程に。

 だが、その程度でカルナの眼から逃れられはしない。

 

 伊織が槍の射程範囲に入った刹那、伊織を仕留めるべくカルナの神速の槍の突きが穿たれた。そしてそのまま伊織の胸に槍が突き刺さる――はずだった。

 

 

(澄み渡る――"空の型"!!)

 

 

 瞬間、突き刺したはずの伊織の姿は文字通り消え、いつの間にかカルナの目前に姿を現したのだ。

 

 

「な、に――!?」

 

 カルナは表情は驚愕――というより理解が追い付かないと言った表情だ。

 伊織の速さは今までの戦闘で理解していたはずだ。なればカルナの優れた動体視力による追跡が、それを逃すはずがないのだ。なら何故伊織の姿を一瞬見失った……?

 

 答えは至極単純――伊織は本当の意味で全速力ではなかったのだ。

 

 今の伊織の型は、剣速に優れた"水"でも、攻撃特化の"火"でも、強固な防御の"地"でも、この"特異点"で今だ見せていない"風"でもない。

 これは全てのバランスが整い、神速の如き斬撃と速さを持つ――『空の型』。中距離であろうと最早人間離れした速度で一瞬で間合いを詰め、残像すら残す程の速さで敵をことごとく斬り伏せる無双の型。

 

 伊織がやったのは、カルナの槍による神速の突きを放つ直前に型を切り替え、自身の本当の全速力でカルナとの間合いを一瞬にも満たぬ刹那で詰めたのだ。その光景はまるで、様々な条件が重なることで瞬時に相手との間合いを詰める……アジアの武道家の誰もが知る歩法の極地――『縮地』を思わせるものだった。

 

 もし伊織が最初から"空の型"で戦っていれば、最初は意表を突き圧倒できるであろうが、カルナ程の武人であればすぐに対応されていただろう……だからこそ、今使ったのだが。

 隠し弾というのは、ここぞという効果的な場面で使ってこそ意味があるのだから。

 

 

「しまっ――」

 

 いつの間にか二刀を鞘に納め、腰を落とし右の手脚を前に出して構えた伊織の存在を目の前で認識した時には、もう遅かった。槍を引き戻して防ぐことも、躱す時間すらなかった……。

 

 何せ伊織が放つは、かの名高き《剣術無双》とは別の生を歩んだ"逸れのセイバー(柳生但馬)"より教わった、超高速抜刀術。

 最初は"貴石"による魔力を使用しなければ使えなかったが、これまでの修練と死闘の積み重ねが、それすら必要することもなくなったのだ…!!

 

 

「――絶塵剣!!」

 

 

 カルナの目で捉えたのは、伊織がいつの間にか抜いた太刀を、鞘へと納めていく光景だった。そして完全に太刀が鞘に納まった瞬間―――

 

 

「――がはっ!」

 

 体に激痛が奔り、思わず片膝をついてしまった。そして自分の胴体が脇腹から肩にかけて斬られ血を流し、口から血が零れていることから……自分は斬られたのだと今認識した。

 

 幸い致命傷にはギリギリ至ってはいない。

 カルナが纏う――否、一体化した防御型宝具『日輪よ、具足となれ(カヴァーチャ&クンダーラ)』。物理、概念を問わずあらゆる敵対干渉のダメージを10分の1にまで削減する無敵の宝具と言える。そして受けた傷は例え致命傷であろうと即座に治療してしまう自己回復能力を併せ持ち、現に伊織から受けた斬撃も回復していっている。

 

 そんな中で、カルナは自分の中で湧き立つ興奮と感動を抑えるのに必死だった。

 

 宮本伊織の放った奥義は、他のサーヴァントであれば間違いなく絶命していた。自分がこうして生きているのは『日輪よ、具足となれ(カヴァーチャ&クンダーラ)』を纏っていたからこそ。もしその宝具が無ければ自分の命は……。

 そしてそれだけではない。『日輪よ、具足となれ(カヴァーチャ&クンダーラ)』を纏うカルナの肉体は一級サーヴァント以上の宝具でなければ、致命傷どころか傷を負わせることすら困難と言える。

 

 それをこの人間は―――己の技術のみで成し得たのだ。

 

 これに何も感じない英霊など、いようはずがあるまい……!

 

 

「……これすらも、貴殿には……届かなかったか…」

 

 アドレナリンが切れたのか、最早立つことすら危うい伊織は太刀を地面に突き刺し、それを支えにして何とか立っている。カルナの今の状態に伊織は、今だ自分はこの程度なのかと悔しさを隠せずにいた。

 

「――それは断じて否だ、宮本伊織」

 

 だがそれを、カルナは否定する。

 

「純粋な剣技のみで我が宝具を防ぎ、更には宝具に匹敵する一撃で俺の肉体を傷つけた――いやそれだけではない。相手が格上であろうと諦めず立ち向かう不屈な心、どんな手段であれ勝利を得るためならば僅かな可能性でも掴み取ろうとする強い意志。人の可能性……それを大いに思い知らされた」

 

「お前は今まで戦ってきた戦士とは明らかに異なるが、その剣に一切の歪みはなく、日々磨き上げ高められたそれははむしろ美しさを感じるほどだった」

 

「宮本伊織、お前という剣士にここで出会い戦えたこと――俺は誇りに思う。この時間を座にいる本体の記憶に刻みたいと思うほどにな」

 

 それは紛れもない、カルナの心からの大きな賛辞。神代を生き武勇を示した大英雄からの素直な賞賛に、何も感じない伊織ではなかった。

 

「………カルナ殿、俺は――」

 

 

 

『GAohooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!』

 

 

 

「っ! 獣の、雄たけび……?」

 

「……エジソンか。どうやらあちらの決着は着いたようだな」

 

 大総統府から離れたこの大地にまで轟くあの咆哮から察するに、どうやろ手酷い負け方をしたようだ。まぁ自分もエレナもそれを望んでいたし、あの男はそれでも折れず立ち上がることも知っている。何はともあれ、もうこの場での戦い時間は終わりだ。

 

 カルナの闘気が完全に消失したことにより、伊織も察したのか自身から発していた剣気を消すと同時に地面へ倒れるようにして座り込んだ。その姿に慌てて駆け寄り心配の声をかけるラーマの姿をよそに、カルナは再び伊織について考える。

 

 一流の武人は戦闘中、互いの得物を交わすことによって相手の心情を得物から読み取り、理解することができる。当然カルナも、それにより伊織の心を知るに至った。

 剣の頂への果てしない願望、そしてそこへ至るための険しき修羅の道。それに対し、相手の全てを肯定するカルナはその生き方を否定するつもりは一切ない。だが、彼が歩むであろうその旅路に……こう思わずにはいられない。

 

 

(宮本伊織。その生き方を続ける限り――――お前は永遠に孤独だぞ)

 

 

 

 

 

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