デスゲームが想像以上に馴染んでいる以外は何一つ変わらない世界 作:ピカ
「はぁ……頭いたっ!今何時だ?」
煩く鳴るスマホのアラームを乱暴に止め、ズキズキと強く痛む頭を抑えながらゆっくりと起き上がる。
時刻は七時。そろそろ学校へ行く支度をしなければ行けない時間だ。重い体を無理やり動かし、洗面所で顔を洗い歯を磨く。
その後、パパッと学生服に着替える。その間、テレビを少しだけ流しておく。昨日起きた事とかが知れるから。
『さぁ、今年もこの季節がやってきました。D-1グランプリ。さぁ一体誰がこの戦場を生き残れるのか!今日の午後九時から開催ですね。宮本さんは誰に勝ち残って欲しいとかありますか?』
画面の解説役らしきおじさんがアナウンサーにそう尋ねる。
「そうですねぇ、やっぱり今回決勝が全員初めてと言う事でどう出るのか分からないので下手な事は言えませんが、きっと熱い戦いになるでしょう」
D-1グランプリ?何だ。新しい漫才のグランプリか?そう思いながら画面の方へ視線を向ける。喉が渇いたから水も飲むか。
水道からコップに水を入れ、飲む。
『誰が生き残るのか!生き残った者が勝者の殺し合いデスサバイバル!Death-1グランプリ。今夜九時からです』
「ぶっ!」
待て待て待て。あれ?今朝から物騒な事言わなかった?逆に朝だからはっちゃけてるのか?コンプラが厳しくなってる時代にあの人は何言ってるんだマジで。
思わず拭いてしまって濡れてしまった口元を拭き、俺は学校へ行く支度をする。
死か。朝突然出てきた話題に頭の中はいっぱいになった。追い出そうとしても無駄でずっと占領している。
その言葉で思い出すのは、半年前に亡くなった祖母の事だ。半年前だと言うのに、昨日の事の様に思い出せる。結局死に目には会えなかった。少し席を立ったそのタイミングで亡くなってしまったのだ。
次に会った時は棺桶の中だった。
「はぁ……あのおかしいテレビ番組にクレームでもしようかな」
朝から陰鬱な気持ちにさせられた代償はデカい。その時の俺は気付かなかった。
おかしいのはテレビ番組じゃなくて世界である事。そしてこの世界からしたらおかしいのは俺だと言う事。
何だかんだボンヤリと考えていたら、学校に着く。いつも通り変わらない校舎に何故かホッとしながら、校門を通る。
そのまま教室に行き、自分の席で寝たふりをする。
「プロデスゲーマーのshine✴︎マジ凄くね?優勝あり得るんじゃねえ?」
「分かるわ、あの強さはヤバい。総理大臣狙える」
いや狙えねえだろ。なんでゲームの上手さで、総理大臣になれるんだよ。そんな軽いもんじゃ無いだろ。
俺は伏せながらそうツッコミを入れる。だがそれは届く筈も無く、彼らは話を続ける。
「それより俺らの話だろ。聞いたか?そろそろ生徒会総選挙が始まるらしいぞ」
「いや俺には関係無いわ。立候補するつもりなんか無いし」
「あれ?お前知らないの?」
「何が?」
「まあ、これは先輩から聞いた話だから、あんま鵜呑みしないで欲しいんだけど……」
「お、おう。何だ」
「実はこの学校。おかしいと思わないか?」
「おかしい?ああ、確かにおかしい。
女子が可愛いすぎる!皆二次元から出てきたみたいな顔立ちとスタイル。凄えよなぁ」
「まあ、確かに可愛いけどそうじゃない。まず公立高校なのに設備が綺麗すぎる。それにここに受験した生徒は全員受かってるんだ」
「全員⁉︎」
「ああ、おかしいだろ。何かこの学校には裏があるんじゃないかって話だ。例えば人を殺しまくってるとかな」
「いやそれはおかしく無いだろ。普通だろ」
「そりゃあそっか、日常茶飯事だな!ハハッ。で生徒会総選挙で俺らは死ぬかもしれないって話だ」
「はぁ?ちょっと待て。どう言う事だ」
「先輩の年に一クラスから、ぴったり十人ずつ消えたらしい。後からその十人は退学したって言うのが表向きの話だが、裏じゃあ」
「殺されたんじゃないかって事か」
「そうだ。それでその前にあったのが、生徒会総選挙だ。だからもしかしたら俺らも死ぬかも知れない」
「死ぬのは立候補や犯罪起こした奴らだけじゃねえのか」
「俺らの考え過ぎて言うのも有り得るから気にするな」
「……」
「どうした?」
「ちなみに生徒会総選挙の投票日っていつだ?」
「……今日だ、今日の午後。説明されるのもな」
何が起きてんだ、この世界。
俺は伏せたままの顔を、上げる事が出来なかった。怖過ぎた、死がいつの間にこんなに身近になっているだなんて。
少ししたら授業が始まり、カリカリと板書する音と小さな喋り声だけが聞こえた。
そしてあっという間に午前が終わり、午後。体育館に集められ、壇上の生徒会長は
「今日より生徒会総選挙デスマッチをして貰います」
と淡々と告げた。