【模擬戦】
「この模擬戦ですが,どうなったら終わりになるんですか?」
「今回はお前の実力を測るのが目的だ。
どちらかが有効打を与えた時点で終了ということでいいだろう。」
「分かりました。倒すのではなく,有効打を与えるまで…ですね。」
「そうだな……では,いくぞ!!」
シグナムがバリアジャケットを展開してレヴァンティンを構える。
「はい!!」
ルルは返事と共に右手に水色の魔力剣を形成する。
開始早々,シグナムはルルに向かって跳躍する。
ルルは距離を取るため,魔力壁でシグナムを囲む。
「この技は何度も見せてもらった!!」
レヴァンティンを切りおろし,魔力壁を破壊する。
その間にルルは距離を取り,魔力弾を形成する。その数30以上。
シグナムが近づいてくる軌道を読んで魔力弾を発射する。
シグナムは簡単に回避しながらルルに接近する。
ついに剣の間合いまで詰め寄られ,シグナムはルルに向けレヴァンティンを振り下ろす。
それをルルの魔力剣が拒む。
「魔力弾の数量と精度は大したものだが,逆に読みやすい。」
「弾幕だけででなんとかなるとは元々思っていません!!」
「私相手に接近戦で勝負するつもりか,面白い!!」
そこからは一方的だった。シグナムが繰り出す攻撃をルルがなんとか防ぐ。
時折両手に魔力剣を発生させ,シグナムの攻撃を受け流していた。
ガキィン
その攻防の中の一撃でルルは大きく態勢を崩す。
「もらった!!」
レヴァンティンがルルに向け振り下ろされる。
しかし,レヴァンティンは通常ではあり得ない方向に逸れ,地面に衝突してしまう。
「何っ!!」
「勝負あり…でしょうか?」
逆に大きく態勢を崩したシグナムにルルが魔力剣を寸止めしていた。
「……あぁ,私の負けだ。強いな。」
「いえ,シグナム二尉が僕の能力を一部しか知らなかったのが大きかったです。」
「私に勝つほどの実力を持っているのだ……階級はいらない。
目に見えぬ壁を発生させ,剣を逸らせたのか…。」
「分かりました。ではシグナムさんと呼ばせて頂きます。
そうですね。まぁリミッターが無ければ壁ごと切られてたでしょうけど…。」
「態勢を崩したのもワザとだな。」
「ええ,逸らせる魔力壁を張るといっても,剣筋の角度を限定したかったので。」
「見事だ。また手合せしてくれ。」
「分かりました。喜んで相手をさせて頂きます。」
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「シグナム隊長に……。」
「か、勝っちゃった…。」
「す,すごい。」
「………。(……あの人も……私なんかとは違う…。)」
考えていることはそれぞれだが,各々賞賛の声が漏れるフォワード陣。
「さすがだね…。」
「……巧い。」
「善戦するとは思ってたけど,勝つとは思わなかったなー。」
「………………。」
見たままを評価しているだろうフォワード陣に対して,
隊長達は,ルルの過去を見て,ある程度実力は分かってはいたが,
シグナムの実力を知っている事やルルのランクC評価である事も重なり
驚きの気持ちが混ざる。
「じゃあ,フォワードの皆は訓練だね。
皆着替えて訓練所に来てくれる?
私たちも後で向かうから。」
気を取り直したなのはから声がかかり,唖然と見ていたフォワード陣が我に返る。
「「「「はい。分かりました。」」」」
返事をし,部屋から出ていくフォワード達。
なのはがフォワード陣を見送り振り返ると,はやてが下を向いて少し震えている。
「……はやてちゃん?どうかした??」
「…………ふふふふふ。」
「……?はやてちゃん?」
「リミッター付きとはいえ,シグナムを翻弄する動き,戦略,頭もいい。
しかも魔力はCランク…魔導士の保有制限にもほとんど関係無い上,
戦闘映像を見る限り空戦もできる。おいしい…おいしすぎるわ!!
コストパフォーマンス高すぎるやろ!!」
「は,はやてちゃん……声に出てるよ……」
「別にええよ!! 最高や!! ずっと居てもらえるし,性格もええ.それにかっこいいし…」
「え……はやて。ルルの事…好きなの?」
「そりゃあ,好きやで。あんな子どうやって嫌いになるん?」
「いや,フェイトちゃんが言ってるのはそうじゃなくて…」
「分かってる。恋愛かどうかは………正直分からへん。
でも,ルル君は昔私を助けてくれた恩人や。ずっと会いたいと思っとったし,
絶対に……悲しませたくない。幸せになって欲しいって思っとる。
それが私の正直な気持ちや。」
「そう…だね。私もルル君のこと好きだし…ルル君には幸せになって欲しいって思ってる。」
「私も…恩人だし……ルルの過去を見たら……ルルには,幸せになって欲しいな。」
「あいつは,はやて助けてくれたしな。たぶん良い奴だし…
はやてが言うなら私も…応援してやるよ!」
「そうやね。まずは色々知らないとなぁ~」
模擬戦を終えた二人がはやての部屋に入ってくる。
「八神部隊長。模擬戦終わりました。」
「お疲れさん! さすがやったなぁ。」
「いえ,状況が良かっただけです。」
「…まあ君はそういうやっちゃな。それじゃあ,施設内を見てもらおうかな…
訓練後フォワードの皆に案内役やってもらおうと思ってるんやけど,
なのはちゃん,ヴィータどんなやろうか?」
「そうだね。ずっと私たちとだけ話をするわけにもいかないし,
フォワードの皆とも仲良くなってもらわないといけないし,いいと思うよ。」
「あいつらも最近休みないしな。いいと思うぜ」
「じゃあ,訓練終わるまでは,ゆっくりしてていいから。」
「了解しました。八神部隊長。」
敬礼をしながら返事をするルル。
「………はやてって呼んでや。」
そのルルの堅い態度が気になったはやてが要求する。
「…?…了解しました。はやて部隊長」
要求の意味が分からないものの,抵抗はしないルル。
「……まぁええか。」
「「ずるいよ!はやて(ちゃん)!!」
そばで聞いていたなのはとフェイトがそろってはやてに詰め寄る。
「ま,まあええやん…自分らも頼んだら…」
その勢いに少し気圧されながらはやてがなんとか答える。
「ルル(君)!!」
勢いそのまま,ルルを向く二人。
「な,なんでしょうか?高町一尉,ハラオウン執務官。」
身構えてしまいそうになる衝動は抑えれたものの,展開が見えず戸惑ってしまうルル。
「なのはって呼んで!!」
「フェイトって…呼んでくれるとうれしい。」
「……はぁ…?……分かりました。なのは一尉,フェイト執務官。」
はやての時同様意味は分からないものの指示に従うルル。
「「階級も無しで!!」」
「…分かりました。……なのはさん,フェイトさんと呼ばせて頂きます。」
「「敬語も無しで!!」」
「そう言われるなら…対応はできます…でも,僕はよく分からないんだけど
組織の在り方として大丈夫なんですか?」
かなりの世間知らずではあるが,一般組織の上司と部下の関係等,簡単な知識はある。
「「ウッ……周りに誰もいないときは……
えっと…このメンバーのときは……大丈夫です」」
痛いところを突かれ,なんとか答える二人。
「分かったよ。他の誰かいるときは敬語で話すようにするね。」
二人の答えに納得したルルは笑みをこぼしながら話す。
「「(笑ってくれた!!う……うれしい!!)」」
ユダを前にして演技してた時とは違う,本当の笑みに歓喜する二人。
「二人ともずるいわ。ルル君!!ウチも二人と同じ扱いでいいから!!」
「分かったよ。ありがとう。はやてさん。」
「オーケーや。(笑顔ええなぁ。なごむわ~)」
二人同様,はやても歓喜する。
「はやてが許したんだ。私も階級とかいいからな!」
「分かりました。ヴィータさん。」
「じゃあ私はフォワードの皆の訓練に行くから。
またねルル君。」
「私も見とかないとな。じゃあな。」
「うんまたね。なのはさん。ヴィータさん。」
部屋から出ていく2人。
「僕は4人の訓練が終わるまでどこにいればいいですか?」
「そうだね。私も時間あるし……私と模擬戦とかでもいいけど,
ルルは何かしたいことある?」
「したいことですか……
皆さんのこと知りたいので…可能なら訓練を見せてもらいたいです。」
「そっか,じゃあ私と見ようか。はやて,問題ないよね?」
「そうやね。ウチはちょっと書類整理とかあるから
付き合えんけど,問題ないよ。ルル君のことまかせたわ。」
「了解。じゃあ行こうか。シグナムはどうする?」
「私も同行しよう。」
【訓練所近く】
「訓練ってこうやってるんだ。皆強いね。」
訓練をモニターで見ながらルルが感想を言う。
「そうだよ。皆頑張ってるよ。」
「僕じゃ……無理かもしれないな。」
「……何を言っている。私から一本取ったのだ。
少なくとも今訓練をしている4人より技量が劣るようなことはあり得ない。」
訓練をこなすのが無理かもしれないという意味で受け取ったシグナムが
自らとの模擬戦の結果も出し反論をする。
「いえ。この子たちは……貴方方もですね。
仲間の力を信頼して,1+1の力を3にも4にもしています。
僕には……出来ないことです。」
「でもそれは,やったことが無いからであって訓練すれば出来るようになるよ。」
「そう……だといいですね。」
(仲間から攻撃されることなんてもうないんだ。考え方を変えていかないと…。)
「でも面白いですね。それぞれに特徴があって……役割分担になっているのかな。」
「そうだね。ポジションによって敵との距離なんかが違うからね。
得意技なんかも変わってくるんだよ。」
「うんうん。皆才能の塊だね。原石って感じ。
さっきシグナムさんは4人に劣ってないって言ってくれたけど,
すぐ追い抜かれちゃうだろうな。」
「ほう?それはお前に模擬戦で敗れた私もあの4人にすぐ抜かれるということか?」
ルルの発言に対して,シグナムはイタズラに笑いながらルルに問いかける。
「いえ,シグナムさん分かってて言ってますね。
シグナムさんは正攻法で強いですからね。追い付くには時間がかかるでしょう。
僕は地力なんかは既に抜かれつつありますからね。
戦い方とか能力とか分かったらすぐ抜かれますよ。」
シグナムに苦笑しながら答えるルル。
「ルルも十分強いし,気にしなくても大丈夫だよ?」
ルルの言い方に少し心配したフェイトが励ますように言う。
「いえいえ,ごめんなさい。誤解させたかもしれないけど,
別に周りが強くなることを,気にしてるわけじゃないんだ。」
(僕が皆にとって必要じゃなくなるのが……怖い…んだろうな。)
「「……………?」」
ルルの真意までは読み取れず,疑問符が浮かぶ二人。
「でもいいなぁ。人が成長していくのを見るの楽しいですよね。
この訓練もすごい身になりそうな内容だし…また訓練見ても大丈夫ですかね。」
流れを変えるようにルルが声のトーンも変えて話し出す。
「それは大丈夫だと思うよ。一応あとでなのは達に確認はしとくから。」
「ありがとう。嬉しいよ。でも僕自身も訓練しないといけないよね。」
(まず連携を意識した動きを勉強しないと……仲間を怖がらず……。)
「ああ,模擬戦ならいつでも付き合うぞ。」
「私も手が空いてる時ならいつでも誘ってくれていいから。」
「はい。ありがとうございます。」
3人は訓練が終わるまで話をしながら見学していた。
今更ながら感想に返信できることを知る。
次回はフォワード陣との会話の予定。