スーパーロボット大戦OG Time Dive Fighters 作:舟太郎
キタクラ・マヤは戸惑っていた。
驚異的な戦闘能力を見せつけたファイター・ロアの正体が高校生くらいの男の子だったことが信じられずにいた。
「えっと、吾妻吼太くん・・・でいいのよね?」
「ん?・・・ああ、まあな。・・・コウタでいいぜ。」
コウタもまた姓名の順で名を呼ばれることに若干戸惑っている。
「キタクラ班長、しばらく彼と二人で話したいのですが?」
TDF極東支部の一室でフジワラ隊員はキタクラ班長にそう提言する。
「・・・構わないけど、フジワラ隊員とコウタさんとはどういう関係なの?」
「親戚です。」
(無理があんだろドイツ人!)
フジワラ隊員の発言にコウタが心の中でツッコむ。
「あら、そうだったのね。それじゃ私は指令に報告してくるから、しばらくは二人でゆっくりしていて。」
キタクラ班長はそう言って部屋を後にする。
「・・・んで、なんだよフジワラ・ライって?」
「・・・順を追って話そう。まずはコウタ、この基地に来るときに何が見えた?」
「ん?ああ、なんかすげー近くで富士山が見えたな。なにげに麓までくるのは初めてだぜ・・・って、おかしいじゃねえか!俺たちはグランドクリスマスで戦ってたはずだろ!?」
『気づくのが遅いぞ、コウタ。』
ロアが近くのモニターに顔を映し、会話に参加する。
「人が来たらすぐに消えてくれ。」
『分かってるさ。』
「ここは俺たちが戦っていたアイドネウス島ではなく日本の静岡県だ。そして更に驚くべきことに、今は新西暦50年・・・つまりここは俺たちがいた時代から139年前の日本だ。」
「139年前だって!?ってことはじいちゃんがまだ子供だった頃に来ちまったってのか!!?」
『もっと昔だ。』
コウタの祖父、キサブロー・アズマ博士の年齢は68歳、当然ながら生まれていない。
「この時代は異常なほどに情勢が乱れていてな、俺はたまたま犯罪事件に遭遇し、その際にUCMAに協力し、そのまま仮入隊した。」
「それは解ったけどよ、なんで偽名なんだよ?」
「仕方あるまい、ブランシュタイン家は古くから続く名家だ。」
「どこ家だって昔から続いてるから今があんだろ?」
「その意見はもっともだが、この場合、一族がどれほど家名と血筋、歴史を大事にしているかどうかが重要になってくる。」
ブランシュタイン家は旧西暦から続く軍人家系の名門であり一族はその名に異常なほどの誇りを持っている。その呪われた歴史は200年以上にも及ぶ。
「へっ!悪かったな、吾妻家に特に興味無くて。俺はショウコとじいちゃんが元気ならそれでいいんだよ!」
「いや、そういう事ではなくて・・・」
コウタの言葉をライはめずらしくむずがゆい顔をして答える。
「この極東支部にいるんだ、俺の・・・ブランシュタイン家の先祖がな。」
▽▽
コウタの目の前に金髪の中年男性が立っていた。
「私がこのTDF極東支部指令官のシュワルツ・V・ブランシュタインだ。」
年齢こそ感じさせるがかなり整った顔立ちをしている。
(たしかにライ少尉やレーツェルさんに似てるな・・・オッサンだけど。)
コウタはそんな感想を抱きながら同席していたライを横目で見る。
ライがブランシュタインを名乗れば周囲は血縁関係を疑わないだろう、両者の間にはその程度の面影はある。しかしそれはブランシュタイン家の当事者を除けばである。
「キミがアズマ・コウタか・・・なるほど、いい目をしている。」
ライとマヤが同席する中、シュワルツ指令はコウタを値踏みするように見る。
「単刀直入に言おう、アズマ・コウタ、TDFに入らないかい?」
「え!?」
シュワルツの唐突な提案にキタクラ班長が驚き、唖然とする。
「ああいいぜ、今までも軍に協力することは何度もあったし、困ったことがあったら力を貸すぜ!」
「え!?」
コウタの二つ返事で更に驚く。
どうやら両者の話の早さについていけないようだ。
「指令!?」
「何を驚いているキタクラ班長、彼が信用に値すると言ったも、実際に彼に助けられたのもキミだろう?このご時世だ、強力な味方がいればスカウトするに越したことは無い。」
マヤがプシュケルと対峙した時、コウタが割って入らなければマヤはただでは済まなかっただろう。
「しかし、まだ会ったばかりですし、もう少し話を・・・」
マヤが話そうとしたところで、基地内に緊急警報が鳴り響く。
「何があった!?」
「大変です!市街地にて生物兵器が多数出現し暴れているとの情報が入りました!なお、現地ではジェイスワットが対応に当たっている模様です!」
部下の隊員が報告に来る。
「ふむ、ジェイスワットか・・・並みの犯罪者であれば彼らだけの方が上手くやれるだろうが・・・生物兵器となると厳しいかもしれんな。キタク・・・」
シュワルツがマヤに指示を出そうとする前にコウタは既に走り出していた。
「さっそく出番みてえだな!ライ少尉、俺はバトルレーサーで先に向かうぜ、闘竜王を持ってきてくれ!」
ライ少尉、シュワルツはその呼称に一瞬反応する。
「ああ、頼むコウタ。キタクラ班長、我々も輸送ヘリで向かいましょう!」
「わっ、解ったわ!」
三人はそう言って部屋を後にする。
「やれやれ、指示を出すのは私の役割なんだがな・・・」
残されたシュワルツはそうぼやいた。
▽▽▽
「隊長、周囲の避難は完了しました。」
ジェイスワットの隊員が隊長に報告する。
「ふむ、それで対象は確認できたか?」
「対象を目視で確認、アンディ・ブラッドとクリーチャーが数体、それにあの男は・・・ネプチュ~ンです!」
隊員の一人が、三又の槍トライデントを携えた男を差してそう報告した。
「ネプチュ~ン、大物だな。主に生体兵器を取り扱う武器商人、奴自身もバイオロイドだと聞く。」
ネプチュ~ンは長いひげを蓄え、よくみると体中の至る所から鱗を生やしている。
「仕掛けますか?」
「いや、どうも様子がおかしい。しばらく様子を見よう。各員、[ライアット]の準備だ。」
隊長がそう指示を出すと隊員たちは3式10番径散弾銃ライアットを準備し、観察を続ける。
「お前には高値がついているんだ[人狼のアンディ]・・・。逃げ出してもらっては困るな。」
ネプチュ~ンがアンディに語り掛けると、クリーチャーたちがアンディに遅いかかかる。
「へっ!冗談じゃねえ、俺は自由にやらせてもらうぜ!」
アンディはそう言いながら迫りくるクリーチャーたちを撃退する。
「おいてめえら!てめえらも自由になりたきゃ俺についてきな!」
アンディは倒れたクリーチャーたちにそう声を掛ける。
「無駄だよ、お前も知っているだろ?そいつらは獣のように見えて命令系統が確立された自我のない兵器だ。お前にも指揮権は与えてあるが、お前よりもこのわしの命令が優先される。」
ネプチュ~ンがそう言うと、クリーチャーたちは電撃を発生させ、アンディを攻撃する。
「ちっ、エナジーフィールド!」
アンディはエナジーフィールドを発生させ電撃を防ぐ
「流石は体内にアームズを仕込んだ生体兵器だ。だがお前に組み込まれているアームズは今となっては旧式、どこまで持つかな?」
ネプチュ~ンはそう言って自らもトライデントの先端から電撃を発生させアンディを追撃する。
「ぐわああ!」
エナジーフィールドがネプチュ~ンとクリーチャーの電撃に破られ、アンディがその場で倒れこむ。
「今だ!総員、攻撃開始!」
アンディが倒れたタイミングを見計らって、ジェイスワット隊長が指示を出し隊員が一斉にライアットを発射する。
「むう、ネズミ共が・・・」
ネプチュ~ンはクリーチャーたちを壁にして銃弾を防ぎながら、電撃で反撃する。
「怯むな!距離を保って撃ちまくれ!!」
隊員たちはクリーチャーの接近を防ぎながら応戦したが、火力不足で決め手に欠けるジェイスワットは苦戦を強いられた。
▽
「ここか、ラン?」
「うん、エイジ。ここには普通とは違う気配が集まってる。けど、お兄ちゃんとは違うみたい。」
両者の攻防がしばらく続くと、そこへ二人組の男女が現れる。
「民間人だと!?」
クリーチャーは急に隊員たちへの攻撃を止め、現れた[叶エイジ]と[日向ラン]に向かって唸り声をあげる。
「わわわっ!どうしようエイジ、怪獣だよ!?」
「ランは俺の後ろに下がってろ!」
叶エイジは日向ランを庇うように前に立つ。
「どうなっておるのだ!?クリーチャー共が勝手に・・・!!」
ネプチュ~ンがそう口にすると、クリーチャーたちは勝手に叶エイジたちに襲い掛かる。
「はあああ・・・!」
エイジの全身が黒く光り、エイジはその光を搔きむしっていく。
「・・・変身!ヴォルテックス!!」
叶エイジは紺色の怪人に変身し、迫っていたクリーチャーを殴り飛ばす。それを見て他のクリーチャー達は動きを止める。
「なんだアレは!?クリーチャー共が言う事を聞かん、何が起こっていると言うのだ!!?」
「へっ、決まってんだろ?そいつらは奴にビビってんのさ・・・何かは知らねえがアレはやべえぜ。」
倒れていたアンディが狼狽するネプチュ~ンにそう語る。
「ふん、バカなことを、こいつ等はお前とは違い完成された兵器だ。恐怖を抱くなどありえん。」
「へっ、そうかよ!」
アンディは近くのビルの屋上に飛び上がり、雄たけびを上げると数体のクリーチャーがアンディに従うように集まってきた。
「こいつ等も俺と一緒に逃げるってよ。あばよ、ネプチュ~ン。」
そう言ってアンディは数体のクリーチャーと共に姿を消した。
「くそっ、野良犬が・・・!」
そう言い残してネプチュ~ンも姿を消す。
「各員、撤退の準備だ!急げ!!」
ジェイスワットの隊長がヴォルテックスを見てそう叫ぶ。
「隊長はヤツをご存知なのですか?」
隊員の一人がそう訊ねる。
「・・・VOL細胞の試験体、EATER。・・・アレは、悪魔だ!」
その様子を見ていたヴォルテックスが隊長に近づいてくる。
「隊員さん、あなた達はひょっとして俺と同じような・・・」
ヴォルテックスが何かを訪ねようと距離を詰めようとすると、隊長は咄嗟にパワーガロックを抜き、構える。
「えっ!?ちょっと待ってください!!」
「く、来るな化け物!!」
隊長が狼狽し、そう叫んだ瞬間、上空から赤い鎧のファイターが降り立った。
「こいつが例の生物兵器か!?なんかソウルゲインに似てんな?」
「アームド・ファイター、どこから降りてきたんだ!?」
「アームド・ファイターじゃねえ、ファイター・ロアだ!」
コウタはそう言いながらヴォルテックスに殴りかかる。
「ぐあっ!」
ヴォルテックスはコウタの拳を受け流しながら当身をくらわせた。
「あっ・・・ゴメン、つい・・・」
「今の動き、武術かなにかか!?怪人のくせにやるじゃねえか!」
ファイター・ロアとヴォルテックスが互いに距離を取り対峙する。
「ちょっと待ってよ、ファイターさん!」
両者の間に日向ランが割って入る。
「なんだアンタ、あぶねえから引っ込んでな!」
「だから誤解なんだって・・・!」
「てやんでいべらぼうめ、街をこんなに荒しといて誤解もへったくれもあるもんか!」
「わわわっ、どうしようエイジ!江戸っ子だよ、これじゃ話を聞いてもらえないよ!」
「江戸っ子を何だと思ってるんだよ・・・」
ヴォルテックスはそう言って変身を解き、叶エイジの姿に戻る。
「人間!?なにがどうなってんだ?」
『彼女の言う通り、本当に誤解があったようだな。』
「けどよ、ロア・・・」
コウタが戸惑っているとジェイスワットの隊員たちがエイジとランを取り囲んだ。
「アンタらなにを・・・!」
「ファイター・ロア、キミのことはシュワルツ指令から聞いているが、この場は黙っていてもらおうか。VOL細胞の被験者、彼らは危険な存在だ・・・。」
「あなたは俺と似た存在を知っているんですか?だとしたら一体どこで・・・?」
エイジが隊長に尋ねる。
「ああ、知っている。お前達EATERはただ殺戮を繰り広げるだけの悪魔だ!」
「違っ・・・!」
「拘束しろ!」
「ちょっと待ってよ!うう、酷いよ・・・。」
ランの声を聞こうともせず隊員たちがエイジを拘束しようとする。
「気に入らねえな・・・。」
様子を見ていたコウタがぼそりとつぶやく。
『待てコウタ!短気を起こすな!』
「バトルレーサー!」
コウタは空中で停滞させていたバトルレーサーを呼び、エイジとランを抱えて飛び乗る。
「何の真似だファイター・ロア!」
「シュワルツのおっさんに伝えてくれ、入隊の件は無しだってな!」
コウタはそう言って飛び去って行った。
【登場人物出典紹介】
ネプチュ~ン [電神魔魁(AC)・ゴーストチェイサー電精(SFC)]
叶エイジ・ヴォルテックス [スーパー特撮大戦2001(PS)]
日向ラン [スーパー特撮大戦2001(PS)]
【ちょっと語らせて】
実際のゲームではエイジがヴォルテックスに変身する際には、無言で全身を掻きむしって変身するだけなんですけど、それだと描写が難しく「変身」って言わせることにしました。
男子なら変身する際には何か言いたいと思うんですよね。
ネプチュ~ンは設定としては海中探査用のバイオロイドという事になるのですが、ゲームで戦うステージは陸という可哀そうなキャラクターです。
更に余談ですが、アンディとクリーチャーはこの後上海に逃亡しました。