スーパーロボット大戦OG Time Dive Fighters   作:舟太郎

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2話 プレジデントという男(前編)

 

「金属細胞を取り除くことは出来ないが、この薬を投与すればこれ以上の浸食は防ぐことは出来るだろう。」

 

ニューヨークドミニオンにある研究施設の一室で、邪学者アプファロンがラズナニウムに侵されたヒューゴを診察していた。

 

「その薬はどういったものだ?」

 

「かつて日本の日向生化学研究所で開発された融機鋼剤と呼ばれる薬だ。ある特殊な細胞を植え付けられた実験体の調整に使われていた物だが、この金属細胞に合わせて調合し直せば一定の効果は得られるだろう。」

 

アインストを撃退した後、プレジデントに邪学者アプファロンがヒューゴの容態を確認しながらそう告げる。

 

「そうか、任せる。」

 

「随分とあっさり任せるのだな?私が言うのもなんだがアプファロン君は信用できる人物ではないぞ。」

 

プレジデントが自分に協力する男を警戒するように告げる。

 

「別に信用したわけじゃないさ。どうせ放っておいても助からん、打てる手があるなら試すだけだ、これがな。」

 

「実に合理的で割り切った考え方だな。キミの乗っていたロボットは私の物にするとして、キミも一緒に私の物にならんかね?」

 

アシュセイバーを勝手に自分の物と主張するプレジデントがアクセルに問いかける。

 

「何を言っているんだ?」

 

「キミのことが気に入ったと言っているんだよ、アクセル・アルマ―。」

 

プレジデントはそう言って握手を求める。

 

「断ったら?」

 

「構わんよ。ただしその場合、キミは連れの男を見殺しにするしかなくなるがね。」

 

結果的に遠回しに脅しをかけてくるプレジデント。異邦人であるアクセルにもこの時点で断る理由はないが、脅迫に屈するのは気に入らなかった。

 

「そんな脅しが通用すると思うのか?」

 

「ふむ、クールだな。あの男に人質としての価値は無いと?」

 

「価値はあるさ、ただそれは絶対的なものじゃない。貴様の要求が俺にとって人質の価値を超えると思ったら従わないというだけだ。」

 

アクセルはそう答えつつ、プレジデントの右手を握り返すことはしない。

 

「今はその辺りが落としどころか・・・だが私は欲しい物は絶対に手に入れる主義でね、とりあえずキミにはしばらくこのニューヨーク・ドミニオンで生活してもらう。ホテルはこちらで手配しておこう、悪いが監視は付けさせてもらうよ。」

 

プレジデントはそう言いながら強引にアクセルの右手を取り握手を交わした。

 

 

▽▽▽

 

 

「部屋は最上階のスイートルームを取ってあります。」

 

アクセルはプレジデント・マークの部下の黒服に車で送迎され、ニューヨーク・ドミニオン随一の宿泊施設、ロイヤルフェアリーホテルに案内される。

 

「ご苦労だったな。」

 

「我々はこれにて失礼します。何か御用があればこれでお知らせください。」

 

黒服はアクセルに通信機を渡し、その場を後にした。

 

「・・・これが通信機か?表面がツルっとしてるな、コイツは?」

 

アクセルは初めて目にする旧式の携帯端末を訝し気に見る。

 

「そろそろ出てきたらどうだ?」

 

アクセルが誰もいない路地に声を掛けると、物陰からやたらと派手な女が現れる。首にはカメラをぶら下げている。

 

「施設を出たときからずっとついて来ていたバイクはお前だな?いったい何者だ?」

 

「あなた、プレジデントの関係者よね?」

 

そう言って女はアクセルにカメラを向けシャッターを切る。

 

「・・・マスコミの類か?」

 

ずけずけと距離を詰めてくるその女に、アクセルは嫌な顔を見せる。元々特殊工作員である上に、この世界、この時代の人間ではないアクセルにとって自分の肖像を残されるのは面白くはない。

 

「ハリー・ホプキンス、フリーのルポライターよ。」

 

ハリーはそう言ってアクセルに名刺を渡す。

 

「ハリー?女だろ・・・?」

 

「ハリーが女の名前だと悪いのかしら?うかつに人の名前を馬鹿にすると後々酷い目に合うわよ?」

 

「そうだな、バカにしたつもりは無かったが悪かった。珍しいから気になっただけだ、これがな。」

 

ハリーの苦言に対してアクセルは素直に謝る。

 

「なら代わりに取材に答えてくれるかしら?このニューヨーク・ドミニオンの大統領、プレジデント・マーク。最近は謎の犯罪組織ナガーとつながりがあるとか・・・。なにか知らない?」

 

(犯罪組織、アプファロンの事か・・・まともな人物だとは思っていなかったが、今ヒューゴの治療を邪魔させるわけにはいかんな、コイツは。)

 

「名前の件は謝罪した。俺は何も知らん、他を当たれ、話は終りだ。」

 

アクセルはまくしたてるように話を終わらせる。

 

「へえ、しらを切るんだ・・・?ひょっとしてあなたがナガーの構成員だったりして・・・」

 

「だったらどうする?マスコミごときが単身で犯罪者に接触してただで済むと思っているのか?ハイエナはハイエナらしくコソコソと嗅ぎまわってるのがお似合いだ、これがな。」

 

アクセルが脅すように悪態をついた瞬間、側頭部目掛けて蹴りが飛んでくる。

 

「知らないのかしら、ハイエナだって自分で獲物を狩るのよ!」

 

そう言ってハリーは当たる寸前で蹴りを止める。

 

「腕に覚え有りと言ったところか・・・、取材の相手を間違えている。俺は本当にプレジデントの事どころかこのニューヨーク・ドミニオンという町の事すらよく知らないからな。」

 

アクセルは少し感心した様子でハリーに告げる。

その様子を見てハリーは足を下げる。

 

「自分で獲物を狩るというのなら、プレジデント本人を当たるんだな。」

 

アクセルはそう言ってホテルに入っていった。

 

 

▽▽

 

 

「アームド・ファイト?」

 

「用はアームズを装着した選手による格闘大会ね。プレジデント・マークはこのニューヨーク・ドミニオンのチャンピオンなの。裏では随分と卑怯な手段も使ってたって噂だけど、その強さは本物よ。」

 

ハリー・ホプキンスがルームサービスで勝手に頼んだ料理を食べながらアクセルにそう説明する。

 

「その功績で得た人気で大統領に上り詰めたと?」

 

「もちろん選挙でも卑怯な手段は使ってたって話だけど、その支持率は絶大よ。アメリカ人はは強い男が好きだからね。もはやこのニューヨーク・ドミニオンどころか、TDFワシントン支部ですら動かせるほどの影響力を持っているらしいわ。」

 

(TDF、地球連邦軍の前身・・・あの旧式の軍隊はそういうことか・・・。)

 

「強くて卑怯か・・・そういう男は嫌いじゃない。」

 

元々裏工作を得意とする特殊部隊に居たアクセルはプレジデントの話を聞いても特に嫌悪感を抱くことは無く、むしろかつての上官を思い出す。

 

「っていうかなんでアタシの方が説明してんのよ!?」

 

「というかなんで部屋までついて来てるんだ?さっさと帰れ。」

 

今更ながらアクセルがハリーに尋ねる。

 

「こんないい女が部屋を訪ねてきてるのよ?もっと喜びなさいよ!プレジデント本人に取材しろって言ったのはアンタでしょ?ちゃんと紹介してよね!あ、シャワーも借りるわね、覗いちゃダメよ。」

 

食べ終えたハリーは浴室に入っていった。

 

「図々しい女だ・・・。」

 

ホテルの代金がプレジデント持ちである以上、ハリーが食事をとろうとシャワーを使おうとアクセルにとってはどうでもいい話である。

 

「それにしても140年前とはな。この先の未来が元の世界か、俺のいた世界か、それともその二つとは全く別の世界になるのか興味はあるが・・・どちらにせよダグブールをこの時代で好きにさせておくわけにはいかんな。」

 

アクセルは一人、思案する。

元より平行世界からの転移者であり、更には一度は死んだ身であるアクセルは元の世界に対する帰属意識が薄い。

 

「少なくともヒューゴは元の時代に戻す必要あるな・・・」

 

そう自己解決に達したタイミングで渡された携帯端末が音を立てて震える。アクセルはそれを手に取り、画面に従い通話状態にする。

 

『アクセル君、ホテルに入ってそうそう悪いが、今から出れるかね?』

 

通話の相手は当然ながらプレジデント・マークだった。

 

「ああ、問題ない。こちらも丁度お前に用事が出来たところだ、プレジデント。」

 

 

 

▽▽

 

 

 

アクセルがホテルから出ると、そこには巨大なリムジンが停まっていた。後部の窓が開くとそこからプレジデント・マークが顔を出す。

 

「ほう・・・早くも女性を連れ込むとはなかなか見どころがあるな、アクセルくん。ひょっとして邪魔してしまったかね?」

 

プレジデントはボビーと連れ立ってホテルから出てきたアクセルに対し、からかうように話しかける。

 

「変な勘繰りは止めろ。コイツはお前の客だ。」

 

「ほう、つまり私のファンかね?」

 

プレジデントは言いながら、いやらしい目つきでハリーを舐めまわすように見る。

 

「ふむ・・・取材は受けようじゃ無いか。今晩、私の部屋に来たまえ。」

 

「ええ、喜んで、プレジデント・マーク。」

 

プレジデントは当たり前のようにハリーを部屋に誘い、ハリーも承諾する。

 

「・・・・。」

 

アクセルは二人に対し、呆れた様子を見せる。

 

「何か問題があるかね?」

 

「仮にも要人が護衛もつけずに得体のしれん相手の接近を許すもんじゃないだろ。その女は相当腕がたつ、寝首を掻かれて命を落とすのはお前だぞプレジデント。」

 

「ふむ、要人なのだから用心しろと言いたいのだね?」

 

「そんなダジャレを言いたいわけじゃ・・・いや、まあそうなんだが・・・つーか日本語達者だな。」

 

アクセルはプレジデントに対するツッコミの焦点が定まらない。

 

「私の事が心配なら、キミも今晩混ざりたまえ、アクセル君。」

 

「・・・そんな趣味はない、これがな。」

 

「それは置いておいて、とりあえず乗りたまえよ。」

 

プレジデントに促され、アクセルとハリーがリムジンに乗り込むと、車はゆっくりと走り出す。

 

「目的地まで時間はある、好きにくつろいでくれたまえ。」

 

アクセルはリムジンに常備されている飲み物や軽食を口に運びながら、車窓から外を眺める。遠くには巨大な女神像の姿が見え隠れする。

 

「あれは・・・自由の女神か・・・?」

 

アクセルは柄にもなく、資料でしか知らない旧西暦の歴史的建造物に少なからず感動する。

 

「私が再建したイミテーションだがね、このニューヨークには必要だろう?」

 

「意外とセンチメンタルな人間らしいな・・・良い趣味だ。」

 

皮肉抜きで称賛するアクセル。

 

「アタシもいいと思うわ。旧西暦の巨大隕石、メテオ2の落下でニューヨークは一度は完全に破壊された。一から街を作り直してもその本質は別物でしかないけど、当時を知らないアタシでさえ象徴である自由の女神像があるだけでここがニューヨークだと感じることができる。」

 

ハリーも自由の女神の存在を肯定する。

 

「・・・そうだな。」

 

アクセルの中で、予想に反してまともな見解を述べるハリーの評価が上がる。

 

「ところでどこへ向かっているんだ?」

 

徐々に市街地から離れ、景色がすさんでいく。

 

「到着だ。」

 

車を降りると目の前にはネオンに彩られた巨大な城が立っていた。

 

「ここは?」

 

「私の経営するカジノだ。さあ、今夜は楽しんでくれたまえ。」

 

 

 





【キャラクター出典紹介】

ハリー・ホプキンス(CVまるたまり)[幻影闘技(PS)]
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