スーパーロボット大戦OG Time Dive Fighters 作:舟太郎
「どうやら大統領暗殺には失敗したようだな?」
鎧の怪人ヘルザークがシースに話しかける。
「oh!失敗ではアリマセーン、成功への途中な~のデース!」
「日本語、達者でございますのね?」
六枚の翼をもつ女性の怪人プシュケルが現れ、シースの屁理屈にツッコミを入れる。
「プシュケルか、傷の方はいいのか?」
「あの程度のダメージは大したことありませんわ。それに一対一なら私が勝利していた・・・それをあのスナイパー・・・」
プシュケルは一拍置いて身体を振るさせる。
「とても美しいお顔をしておりましたわね。ライディ―スと言いましたか、必ずやあの顔を歪ませてあげますわ!」
「あ~、また悪い癖が出やがったか、あの男には同情するぜ。だが、だったらアクセル・アルマ―の方は俺がもらうぜ。」
「いいえ、アクセル・アルマ―もまた私の好みの顔立ち、譲るつもりはございませんわ。」
「という事は、今度はアナタたちが仕掛けると言う事デスネ?」
「ああ、だが今後もお前ら逢魔にも協力してもらうぜ?」
「ご依頼とあらばモチロンデース、正しき混乱のために。ではでは、シユアゲイ~ン!」
シースはそう言って姿を消す。
「食えねえ女だぜ・・・さて、俺たちも遊んでくるか。」
▲▲▲
「・・・おわぁ!!?」
アクセルが朝ホテルで目を覚ますと、同じベッドの上に海パン姿の筋肉男が一緒に寝ていた。
(俺はなぜ裸の中年と一緒に寝ている!?)
アクセルは咄嗟にベッドから飛び降り、自分の服装を確認する。ワイシャツは乱れているがにスラックスを履いていることに安堵する。
「どういう状況だ・・・?」
部屋には大量の酒瓶が転がっている。
「痛ッ!?」
部屋を歩くと何か硬い物に足をぶつける。下を見ると赤と金の鎧をつけた男がいびきを立てて寝ている。
「マークハンター・・・このまま寝てるのか・・・コイツは?」
カオスすぎるベッドルームを出るとハリーが旧式のノートパソコンで書き物をしていた。
それを見たアクセルはコーヒーを淹れハリーに持っていく。
「ん、ありがと・・・。」
ハリーは眼鏡をとり、眉間を抑える。
「これは昨日の記事・・・ひょっとして徹夜か?」
記事には「fight off mysterious monster the puresidents」などという見出しと、その下には昨晩の事件が細かく書かれ、プレジデントとロバートのツーショットやブラックマンの写真が載せられている。
「せっかく現場に居合わせたからね、誰よりも早いし正確な記事よ。逢魔の写真が無いのが残念だけどね。」
疲れた顔で満足げな笑みを見せる彼女は、先日の不躾なイメージとは打って変わって魅力的に見える。
「すっぴんの方が良いんじゃないか?」
「何それ・・・口説いてんの?」
「俺は歳上が好みだ。」
「アンタ幾つよ?」
「覚えてないんだ、これが。」
アクセルは自分が所持している携帯端末でもハリーの記事を確認する。するとページの隅に乗せられている自分の写真を見つける。写真の下には「handsme bodyguard(ハンサムボディーガード)」と紹介されていた。
「これは消しておけ・・・!」
アクセルは不機嫌そうに画像の消去を求めた。
▽▽▽
「・・・なかなかユニークなパーティが結成されたようだね。」
荒らされた工場内でプレジデントは笑いながらアクセルにそう語り掛ける。
足元には傷だらけの若い男が拘束され倒れている。
「集めた本人がいう事か?」
アクセルが不本意そうにぼやく。
右には素顔を見せないパワードスーツの男、左には海パン一丁の筋肉男が並んでいる。
「ハリーくんの姿が見えんようだが?」
「奴ならホテルで寝ている。徹夜で記事を書いていたようだからな・・・。」
「ふむ、昨日の今日で既に記事をアップしている事には称賛するほかないが、若い女性がワーカホリックなのはいただけないな。そう思うだろう?ハンサムボディーガード。」
「それは止めろ。」
(・・・そう言えばアイツも仕事づくめだったな。)
ワーカホリックという言葉を聞いて、アクセルは一人で異常な仕事量をこなしていたかつての恋人を思い出す。
「それはそうと、そいつはなんだ?」
アクセルは傷だらけの若い男を見てそう訊ねる。
「サウスブロンクスのスラムを拠点にしている若いギャング共の下っ端だよ。どうやら昨晩、我々が騒動に巻き込まれている間にこのハバン社の倉庫に侵入し、私が取り扱っている商品を盗み出したようだ。」
「その商品というのはなんだ?」
「オリジナルと呼ばれる大量生産可能で高品質な銃器だ。近々、日本で大事な取引があったのだがね・・・。」
アクセルが訪ねるとプレジデントは男の頭を踏みながらそう答える。
「取引だと?日本で既存の受注ではなく新規の取引があるのか?」
銃器の販売先はTDFをはじめとする政府直轄の組織や個人で強い力を持つ有力者、あるいは反社会的勢力の類に限られる。いかに混乱した時代と言えど、日本で新規の顧客を獲得するのは難しい。
「最終的な購買ターゲットはサラリーマンに主婦、学生などだよ。そのためにオリジナルは安くて易いつくりになっている。」
プレジデント価格の安さと扱い易さを掛けて語る。
「そんな連中が銃を購入すると?」
「買うとも。町中にゴーストサイボーグが現れ、平和な生活が脅かされればね。『風が吹けば桶屋が儲かる』、私が好きな日本語だよ。」
プレジデントはその後で「あとダジャレも好きだ」と言葉を続ける。
「風を吹かせている本人が使うことわざじゃないがな。自らゴーストを暴れさせ、その対策に銃器を売る・・・とんだマッチポンプだな、これが。」
「ゴーストの手配は私の仕事ではないがね。これが我々の[日本銃社会化計画]だ!」
「名前がダセえ!」
アクセルは日本銃社会化計画というネーミングに思わずツッコむ。
「軽蔑するかね?アクセルくん。」
プレジデントはアクセルに日本銃社会化計画の是非を問う。
「いや、名前はともかく、あの国の連中は平和ボケし過ぎている。お前たちが風を吹かせなくとも護身用の銃くらいは持っていてしかるべきだ。・・・それを盗まれたとなればお粗末な結果ではあるがな。」
かつてはたちの悪い女社長と協力関係にあり、更に異世界ではやたらと商魂たくましい知り合いが増えたアクセルはプレジデントの計画そのものには異を唱えようとは思わない。
「ゆっ・・・許してください!!・・・全部アーサーが考えたことなんだ・・・!」
男は泣きながら懇願する。
「アーサー?」
「彼らのボスだよ、時々仕事を回してやっていたんだが、飼い犬に手を噛まれるとはよく言ったものだ。」
プレジデントは日本の慣用句を用いて今の状況を伝える。
「アクセルくん、キミたちに仕事の依頼だ。ギャング共に奪われたオリジナルを奪還してくれたまえ。」
「俺たちは金さえもらえりゃ何でもするぜ、なあアクセル!」
マークハンターが依頼を承諾する。
「お前と一緒にするな、銭ゲバが。」
アクセルは勝手に話を進めるマークハンターに悪態をつく。
「いいじゃねえかよ、お前に合った仕事だろ?奪還屋。」
「誰が奪還屋だ!!」
「アクセルくん、キミたちにはTDFワシントン支部所属の追跡チームと合流して連中を追ってもらう。」
「・・・ギャング共の行先は解っているのか?」
アクセルの問いかけにプレジデントは一拍置いて答える。
「・・・・日本だ。」
▽▽▽
「海か、ついに俺の時代が来たな!さあ皆、海パンとゲタを履こう!」
日本へ向かう輸送艦の上をブラックマンが海パン姿で闊歩する。
「ゲタは関係ないでしょ、ビーサン履きなよ。・・・テンション高いわね、空路の方が良かったんじゃない?アクセル。」
船のあちらこちらでTDFワシントン支部の隊員や船員たちが忙しく働いていた。ハリーはブラックマンの様子を見てアクセルにぼやく。
「そいつの事はいい。空で襲撃されればもはやなす術はないが海ならばまだ対処のしようがある。」
「そういう事を言ってると本当に襲撃されるんだから。」
「それよりハリー、アーサーという男の事を聞かせてくれ。」
アクセルがハリーに尋ねる。
「アタシも詳しいわけじゃないけど、アーサーはかつてはニューヨークの顔とまで呼ばれたギャングよ。ただその後プレジデント・マークの台頭と共にその勢力は衰退、やがてはプレジデントの下請けで汚れ仕事を引き受けるようになっていったの。」
「それで鬱憤が溜まって今回の事件と起こしたという事か。小物だな。」
アクセルが小ばかにしたように言う。
「アンタのいう通り、アーサー自体は小物のギャングよ。ただ、今はギャングの中に厄介な男が一人混ざってるわ。」
ハリーは含みのある言い方をする。
「厄介な男?」
「そう、アタシと同じPOSの・・・って、何これ!!?」
ハリーが言いかけると船の下に巨大な魚影が浮かび上がる。
「来るぞ、各員警戒しろ!」
魚影が海面に上がりその姿を見せる。現れたのは巨大なチョウチンアンコウだった。
「まさかホントに襲撃されるなんて、ベタを通り越してもはや展開として恥ずかしいわね。」
▽
「ちっ!船員たちは艦内へ避難しろ!」
「でっかいチョウチンアンコウ、なんなんだコイツは!?」
突如現れた巨大な深海魚に一同が騒然とする。するとその巨体の口から二人の怪人が現れアクセルたちの正面に降り立った。
「カカカッ!驚いているようだな、アクセル!」
「ハァ・・・これは私の戦力の一端、その名もメカチョウチンアンコウでございましてよ・・・」
プシュケルがチョウチンアンコウを紹介する。しかしその言動には自慢げな雰囲気が一切ない。
「ああ、醜い。なぜ私がこんなメカを紹介しなければならないのでございましょうか・・・。」
プシュケルが落ち込む最中、メカチョウチンアンコウから小型の魚類メカが多数発進し輸送艦を取り囲む。
「何よ、それならとっとと帰ればいいじゃない!言ってる事とやってることが矛盾してるわよアンタ!」
ハリーがプシュケルに吠えながらメカチョウチンアンコウに向けてシャッターを切る。
「お前もな・・・。」
アクセルはそう言いながらヘルザークに向けて手持ちのバズーカを発射する。それと同時にハリー、ブラックマンも船に積んでおいた火器で攻撃した。
「効かねえな、これなら以前腹に受けた一撃の方がよっぽど強烈だったぜ、アクセぇル!」
ヘルザークは火器による砲撃を元ともせずにゆっくりと迫る。
「パワースラッシュ!」
マークハンターが爆炎にまみれてヘルザークに斬りかかる。
「ハッ!また変な奴が増えてやがるな!?随分と強えじゃねえか!!」
ヘルザークはそれをバックルで受け止める。
「ヘルザーク、貴様は強い。だがそれゆえに少々油断し過ぎだな、これが!・・・烈火朱雀刃!」
アクセルは両手に燃える苦無を逆手持ちし、間髪入れずにヘルザークに連続で斬りかかる。
「絶望がお前のゴールだ!」
「それはヤメロ。」
マークハンターがアクセルのキメ台詞にツッコむ。
「私も居るのをお忘れでなくて!」
上空からプシュケルが襲い掛かる。
「もちろん忘れてないわよ、ルナーエクリプス!」
プシュケルがヘルザークの援護に入ろうとするのをハリーが蹴り技で阻む。
「ドリルヘッドバット!」
その隙にブラックマンがヘルザークを追撃した。
「カカカっ!人間ごときが、いや、純粋な人間はそこの女だけみてえだが・・・やるじゃねえかよ!」
「何だと・・・?」
ヘルザークの言葉にアクセルが疑問符を打つ。以前混ざり者と呼ばれた自分や正体不明のマークハンターはともかく、ブラックマンはどう見ても人間である。
「お前、バイオロイドの類だろ?」
「・・・俺は、ライカンスロープだ。」
ブラックマンは静かにそう言ってヘルザークを艦板に叩きつけた。
「ライカンスロープ?」
「人間とバイオロイドとの間に生まれた存在よ。話に聞いたことはあったけどまさか実在していたなんて・・・」
ハリーがそう説明する。
「バイオロイドとのハーフ、だがそんな存在が居たとすれば・・・」
「もちろん嫌悪と忌避の対象として迫害されるでしょうね。彼の両親の関係がどんな物であったにせよ、傍から見れば倫理観に反するもの。」
「・・・くだらんな。」
ブラックマンを評価しているアクセルは一般的倫理観を吐き捨てるように言う。
「アクセル、お前も俺を軽蔑するのか・・・?」
「違う、そういう意味で言ったわけじゃ・・・」
「カカカッ!気が変わった。アクセル、お前は次の機会にするぜ!」
ボロボロになったヘルザークが立ち上がり再びブラックマンに接近する。
「分かるぜぇ、お前の気持ち。憎んでるんだろ?この世界を・・・さあ、解放しろよ、怒りを、悲しみを、恨みを、憎しみを、ありとあらゆる負の感情を!」
「何を!?」
ヘルザークの言葉にブラックマンが戸惑う。
「ブレインジャック!」
ヘルザークの身体が崩れ、そこから別の姿のエネルギー体が現れる。脳がむき出しの機械仕掛けの怪人の姿をしている。
「あの姿、まさかダークブレインなのか!?」
『そう、俺はダークブレインの一人・・・そして』
エネルギー体はブラックマンの身体に入り込んでいく。
「今から俺がブラックマンだぜ!」
【キャラクター出典紹介】
メカチョウチンアンコウ [バトルピンボール(SFC)]
【ゲーム概要】
[バトルピンボール]
1994年にスーパーファミコンで発売されたゲームです。上手にプレイとかは存在しない正真正銘の運ゲー、クリアできないときは出来ない。
【ちょっと語らせて】
バトルピンボールのメカチョウチンアンコウとスーパーロボットピンボールのプシュケルには別に関係性は無いのですが、まあ同勢力でいっかということで登場させてみました。
ちなみに今回ヘルザークが使用したブレインジャックはバトルドッジボールⅡでのダークブレインの必殺技ブレインアタックのアレンジです。ゲームでは脳みそを飛ばすだけですが、ヘルザークの設定に寄せてみました。