スーパーロボット大戦OG Time Dive Fighters   作:舟太郎

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10話 美しき侵入者(前編)

 

案内されたオフィスの中央では、古代中国の皇帝のような服を身にまとった老人が立っていた。

周りにはプレジデント・マークやロバート・ゴードン、ルシファードとファディータが控えている。

 

「無事で何よりだ、アクセルくん。」

 

プレジデントがアクセルに話しかける。

 

「プレジデントか、まさか上海に飛ばされて貴様やロバートの顔を拝むことになるとはな・・・。」

 

「これでも多忙な身の上でね、こちらのメルコール総帥は大事な取引相手だ。」

 

プレジデントはそう言って壇上に立つ老人を紹介する。

 

「私の名はメルコール、このメルコール・コングロマリットの総帥をしております。」

 

メルコールは薄い笑みを浮かべて自己紹介をする。その際に両腕に身につけた特徴的な金の腕輪が印象的に光る。

 

(なんだこの威圧感は?ただの老人が出せるものじゃないな・・・こいつは。)

 

「ほう、君がアクセル・アルマ―ですか・・・ふむ、話に聞く通りの人物のようだが、実に惜しい。」

 

「惜しいだと?」

 

「私が求める人材ではないという事ですよ、そちらのライカンスロープと同様にね。・・・その点、君は大変いいですね、ボビー・ロギンズ。」

 

「俺かよ・・・ジジイに褒められても嬉しくねえけど。」

 

メルコールの言葉にボビーが戸惑う。

 

「メルコール・コングロマリット、話には聞いている。世界の三分の2を占める軍需産業だそうだな。それに東亜錬金技研に武装船団国家ナガー。あの公園にあったオブジェ・・・まさかお前たちはダイダル帝国と繋がりがあるのか?」

 

「いえいえ、ただあのダイダルゲートを掌握しているだけですよ。ダイダル兵どもを駆逐してね・・・。」

 

ダイダルゲート、メルコールは当たり前の様にあのオブジェクトをそう呼ぶ。

 

「そもそも、アレがいつからあの場所にあったのかは把握できていないのですよ。誰にも気づかれずにいつの間にかただそこにあった・・・。」

 

メルコールは含みのある笑みを浮かべながらそう続ける。

 

「そして先刻、突如あのオブジェクトから謎の軍勢、ダイダル兵が現れた。キミたちの話を考慮すればタイミング的には渋谷のダイダルゲートと連動したとみていいだろう。現在は小康状態にあるようだがダイダル兵に対抗する部隊で監視しつつ調査を進めているところだ、まさかキミたちがトウキョウから上海にワープしてくるとは思わなかったがね。」

 

隣でプレジデントがそう発言する。

 

「・・・ならば渋谷とこの上海ドミニオン以外にもゲートがあるとすれば、それも稼働したとみていいかもしれんな。だとすればこの世界はこれから荒れるぞ。」

 

アクセルは悪い可能性を示唆する。

 

「ふむ、突如現れたダイダル兵に対抗できるような猛者は限られるだろうからね。こちらのダイダルゲートはキミたちの言うシブヤのゲートに比べてダイダル兵の数は小規模のようだが、この上海ドミニオンの原子炉からエネルギーを吸収し断続的に出現し続けている。現在調査中だが、どうやらタッカード社が管理する原子炉の制御装置が一部乗っ取られているらしい・・・」

 

「厄介だが、小規模だと言うのであれば、対処方法さえ把握できれば一般の兵士でも対抗できる。」

 

アクセルは零児と小牟のガイダンスを思い出しながら、対処方法を説明する。

 

「ゴギョウのソウコクか・・・ふむ、確かにそれを知っているのと知らないのとでは対処の難易度はけた違いだな。・・・アクセルくん、もう少し話がしたい、この後時間はあるか?」

 

「無いと思うか?」

 

急に上海まで転移したアクセルたちに、この後の予定などあるはずもなかった。

 

「それではメルコール卿、我々はこれで・・・」

 

「ええ、では後程。」

 

プレジデントはメルコールに軽く挨拶を躱し、オフィスを後にした。

 

 

 

 

『・・・・つまり、東亜錬金技研にアシュセイバーの輸送を任せればいいのね?』

 

「ああ、本来はあんな胡散臭い連中に任せたくはないが、どうやらこの上海ドミニオンはTDFにとっては治外法権らしいからな・・・。なるべく早く頼むぞ、ハリー。」

 

アクセルはハリー・ホプキンスとの通話を終える。

 

「・・・嫌な街並みだな。」

 

高層ビルが立ち並ぶ上海ドミニオンの街中を移動用のリムジンの車窓から眺め、アクセルは呟く。

 

「分かるかね?一見栄えているように見えるが、一つ路地を通れば歪なスラム街が広がっている。」

 

プレジデントがアクセルのつぶやきに答える。

 

「どうやらオリジナルはTDF極東支部によって回収されてしまったらしい。依頼は失敗に終わった。お払い箱でも構わないが、どうする?」

 

「構わないさ、部隊を動かすには金も時間も無駄にかかる、君たちのような人材は貴重だ。それに得難い人材も得た。ボビー・ロギンズ、キミも私の下で働く気はないか?」

 

プレジデントは握手を求めるようにボビーに向けて右手を差し出す。

 

「今更俺を雇おうってのか?正気かよ・・・?」

 

ボビーは盗みを働いた相手からの申し出に戸惑う。

 

「メルコール卿が興味を示しているキミを手元に置いておくのも一興だからね。」

 

「・・・アーサー達を解放するなら考えてもいいぜ。」

 

ボビーは交換条件として、自分がつるんでいたギャングたちの自由の身を要求する。

 

「彼らには興味が無いが、キミが彼らを束ねるのならばTDF極東支部に働きかけようじゃないか。」

 

(あのギャング共はもはやテロリストと同等の扱いのはずだが・・・この男、TDFにどれほどの発言力を持っているんだ・・・?)

 

「・・・契約は成立だ。」

 

アクセルが抱く疑問を、ボビーは一切気にせずにプレジデントの申し出を受け入れた。

 

「プレジデント、最終的な貴様の目的はなんだ?TDFや地球連邦政府にそれほどの影響力を持ちながら、あのメルコールやロバート、ナガーの連中とつるむ理由は?」

 

今度はアクセルがプレジデントに尋ねる。

 

「目的は金と権力だよ。」

 

プレジデントははっきりと答え、「メルコール卿やロバート社長とは利害関係で手を結んでいるだけだ。」と続けた。

 

「清々しい答えだが・・・。」

 

俗物であることを隠そうとしないプレジデントに呆れた顔を見せる。

 

「ならば言い換えよう。そうだな・・・私はBIGになりたいのだよ。」

 

「いいじゃねえか、解るぜプレジデント!それでこそだ!」

 

さっそくボビーがプレジデントに同調する。

 

「だが一方でTDFや制御体連合国家による[同盟]への参加を断ったと聞く。立場を上げるなら協力した方がいいんじゃないか?」

 

「TDFはともかく、制御体連合国家・・・いや、正確には制御体などと関わるのはゴメンだね。アレは危険な存在だよ。」

 

何事にも享楽的なプレジデントが珍しく不愉快そうな顔を見せる。

 

「それで、今後はどうする?」

 

アクセルがプレジデントに尋ねる。

 

「私はしばらくはこの上海ドミニオンにとどまるつもりだ。キミたちにもダイダルゲートの調査、およびタッカードを占拠しているダイダル兵の掃討に付き合ってもらう。」

 

「いいだろう、ダイダルゲートの解明は俺も望むところだ、これがな。」

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

『上海ドミニオン』―――――中心に原子炉を持つこの島は、それ自体が一つの巨大な街であり、一つの自治体であった。

 

島の半分を覆いつくす企業のビルは天空へとひしめき合い、中流階級から抜け落ちた者たちは暗いスラムを徘徊していた。

 

ナノテクノロジーを玩具の様に扱うファクトリーからは常に廃棄物を含んだ汚水が下水道へと流される。

環境は日毎に破壊され、成分不明の汚水を飲んだ生物たちは突然変異を繰り返し、凶悪な生物へと変貌していく。

 

堕落した精神は欲望を生み出し、欲望は犯罪を起こす。

暗い影の中に蠢く犯罪を育てるように、街の裏側では麻薬の密輸が行われ、生きる望みのない人々の精神をも破壊する。

 

停滞した経済に企業達は己の生き残る道を模索する。

いつしか企業という形のない生物は人間たちの血と肉を喰らって肥大していき、その自重を支えきれなくなる。

 

地に落ちた人々は生物として扱われず、スラムの狭い路地裏の中、オイルの混じったヘドロの上に、己が足跡を残して暗闇を歩いていく・・・。

 

ここは上海ドミニオン、信ずるに値するのは自分の力のみ。

 

時代は新西暦50年、科学者たちが行き過ぎたテクノロジーを駆使し、狂気の落とし子を生み出す毎日。

 

自らの身体を守るため、人々は身体に「アームズ」と呼ばれる武具を埋め込む。だが、武器が平和をもたらすことは無い。

 

スラム街の至る所ではアームズのアクチュエーター音と共に、人々の悲鳴と爆発音が響き渡り、希望のない退屈な毎日に「死」という刺激を提供する。

 

生き延びるためには戦うのみ。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

(この状況、一体どうすればいいのだ・・・?)

 

「よう姉ちゃん、今から俺と付き合わねえか?」

 

ラミア・ラブレスは困っていた。

安物のアームズを身につけた数人のガラの悪い男に絡まれている。

 

(付き合うとはなんだ?この男の言動は明らかに私の行動を妨害しているが・・・排除しても問題ないだろうか?)

 

ラミアは迷惑なナンパ男にそんな感想を抱く。

 

「お兄さん、悪いけど私の連れにちょっかい掛けないでもらえるかしら、今は急いでるの?」

 

そこへ一人の女性が現れ、ラミアに代わって男の誘いを断る。黒騎士ミラ・ロマリアである。

 

「まあそう言うなって。なんならアンタでもいいんだぜ?」

 

男の一人が女性に手を伸ばそうとすると、女性はその手を取り、腕をへし折った。

 

「ぐわあ!」

 

「邪魔だっつってんでしょ?」

 

ミラは髪をかき上げながら男を見下す。

 

「このアマ!このアームズが見えねえのか!?」

 

「そこまでです。」

 

男がアームズの安全装置を解除しようとした瞬間、背後にアームズを身につけた女が現れ男を叩き潰した。

 

「まったく、相変わらず治安の悪い国ね、この上海ドミニオンは・・・。」

 

「制御体連合国家と比べれば大抵の国は治安が悪いですよ、ミラ。それに・・・」

 

アームズを身につけた女性、ドミヌラが黒騎士ミラ・ロマリアにそう告げる。

次の瞬間、上空から多数のダイダル兵が現れ二人を取り囲む。

 

「今この国はこのダイダル兵どもがランダムに出現し暴れている状況です。」

 

ドミヌラはそう言いながらダイダル兵に攻撃を仕掛け、ミラもそれに続いた。

 

「ラミアは下がってて、白兵戦は専門外なんでしょ?」

 

ミラがラミアにそう促す。

 

「いえ、こんなこともあろうかとアリッサ会長から武器をいくつか渡されてマッスル。この程度の相手なら問題ナッシング。」

 

ラミアはそう言ってフルメタルグローブを装着する。

 

「ドッカーン!!」

 

ラミアはその拳でダイダル兵を殴り飛ばした。

 

 

 

 

「生身でも結構やるじゃない、ラミア。」

 

ダイダル兵の残骸を前に、ミラがラミアに語り掛ける。

 

「人造人間ですので生身とは呼べなかったりしちゃいますです。」

 

「バイオロイドのあなたと全身サイボーグ義体の私、どちらの方が人間に近いのかしらね?いっそコンビでも組んでみる?ミラとラミアでミラミアコンビなんてどうかしら?」

 

「いえ、ここはドミヌラも交えてドミヌラミラなんていかがだったりしちゃいますか?」

 

ラミアはドミヌラを見ながら提案する。

 

「言いづらいですね・・・。」

 

「それにそれだとドミヌラの割合が多いわ。」

 

ラミアの案は却下された。

 

「制御体からの情報によれば、渋谷の一件以来ダイダルゲートらしき物体は世界各地で発見されているけど、実際に稼働した例は渋谷とこの上海ドミニオンのみらしいわ。」

 

ミラがそう説明する。

 

「つまり、この上海ドミニオンという都市国家にも、特別閉鎖都市である渋谷と同等のファクターが備わっていると?」

 

「いいえ、この国のダイダルゲートを稼働させているのは単純に動力源によるものですね。どうやら上海クリーンエネルギー社が管理している原子炉からダイダルゲートにエネルギーが供給されているようです。」

 

「クリーンエネルギー社?原子炉を使いこれほど環境を破壊しておきながら?」

 

環境を汚染された上海ドミニオンを見て回ったラミアが疑問符を打つ。

 

「ピースキーパーの目的は原子炉の破壊、そのために[同盟]に参加しています。」

 

「ピースキーパー、ドミヌラが所属する自然保護団体でいやがりましたね?」

 

「その割には破壊活動ばかりだけどね。」

 

ミラが皮肉めいたことを述べる。

 

「ミラ、ピースキーパーは真に地球環境の悪化を憂いていますよ。本部の科学者が現在開発している[大気修復弾]が完成すれば、上海ドミニオンだけでなく地球全体の大気汚染が改善されるはずです。制御体連合国家からは開発の中止を打診されていますが・・・。」

 

「制御体はその大気修復弾の開発を良しとしていないからね。そもそもピースキーパーは制御体連合国家と対立していたし・・・。」

 

「お二人は敵対しているのですか?」

 

「一団体と国家とでは対立というには立場が違い過ぎますが、ピースキーパーを始め成長を続ける制御体に危機感を持っている組織は数多く存在します。放置すればいずれ制御体連合国家だけでなく地球圏全体を監視する存在へと成長するのではないかと・・・。」

 

「・・・監視。」

 

ドミヌラの説明を聞き、インスペクターやアインストと言った敵と戦ってきたラミアは「監視」という存在に疑念を持つ。

 

「ま、気持ちはわかるわ。コンピュータに支配された世界なんて嫌だものね・・・。」

 

正に制御体連合国家、それも情報部という中枢に所属するミラからそんな言葉が飛び出す。

 

「人間による政治が優れているとは思いませんが・・・。」

 

ラミアは自分が生み出された腐敗した世界を思い返しながらそう述べる。

 

「実際、制御体連合国家の国民はシステムに従って生きるだけの無気力な人間が多いわ。それ以外のヤンチャな連中は大抵排除されるか、国外に逃亡してこの上海ドミニオンみたいな無法地帯に移住するかだからね。ようは管理された皆平等の安定した世界か、死ぬも生きるも運と実力次第の刺激的な世界、どちらがいいかってところに行きつくのよね。」

 

「この国はこの国で秩序に馴染めない者達のの受け皿になっていると?」

 

上海ドミニオンの治安の悪さを思えば存在を肯定する要素など皆無だが、それが他国の治安につながっているとなると話が変わってくる。

 

「自分に丁度いい国があればいいんだろうけどね。今は連邦の加盟国だって治安がいいとは言えないし」

 

「地球連邦政府自体、政治家よりも軍部の権限が大きく、政治センスを持った議員は自らの権力争いに夢中です。そこに民間人でも容易く手に入るオリジナルという銃器が大量に出回り、不自然なほどに犯罪が増える悪循環が起こっている状態です。まるで誰かが意図的に混乱を悪化させようとしているような・・・」

 

ドミヌラが自らの見解を口にする。

 

「ま、犯罪者の取り締まりはお巡りさんの仕事よ。私たちは私たちの仕事をしましょ?」

 

ミラは含みのあるおどけた態度でそうまとめる。

 

「上海クリーンエネルギー社はタッカードと同じく上海ドミニオンの中枢企業です。現在はやはりメルコール・コングロマリットの傘下に入っていますが・・・。」

 

ドミヌラが説明する。

 

「タルクスの報告によればフェイクのために原子炉の制御装置の一部を上海クリーンエネルギーからタッカードに移して管理していたけど、ダイダル兵に占拠されたらしいわ。」

 

「つまり、その制御装置を破壊すれば一時的に原子炉とダイダルゲートを止めることが可能であると?」

 

「・・・仕掛けましょう!」

 

三人はタッカードに乗り込んだ。

 

 





【キャラクター出典紹介】

メルコール(cv:塚田 正昭) [クリティカル・ブロウ(PS)]


【アイテム紹介】

フルメタルグローブ  ヒーロー戦記に登場するライダー用の装備品
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