スーパーロボット大戦OG Time Dive Fighters 作:舟太郎
「抹消する・・・制御体・・・静寂を乱す秩序・・・新たなる過去・・・偽りの地・・・歪められたルーツ・・・星喰いの眷属・・・刻は近い・・・」
◆◆◆
「こんなにもデスクワークが似合わない刑事は他に居ないでしょうね。」
幽霊課のオフィスで魔傀が報告書をまとめている。
「ほっとけ・・・それにしてもなんで俺がレイモンド大佐やベルヴァの件まで報告書に上げなきゃいけないんだ?」
レイモンドやベルヴァの存在を知らされていなかった魔傀がぼやく。
「というかあなた、全身義体のサイボーグなのにデスクワークはアナログなのね?」
ヴィレッタが資料に目を通しながら魔傀に対してそうツッコむと「うるさいな・・・」という言葉が返ってくる。
「TDFパリ総合本部所属レイモンド・ノーマン大佐、格闘術に秀でた特殊工作員。一年前にメルコール・コングロマリット本部への潜入任務に失敗し死亡・・・。」
ヴィレッタが何気なく資料の内容をかいつまんで読み上げる。
「俺も情報軍に居たころ何度か会ったことがある、単独の白兵戦においては間違いなく当時のTDF最強の軍人だった。一年前任務中に死亡したと聞いた時は驚いたが・・・それがまさか幽霊課に出向していたとは、笑えないジョークだ、っと。」
魔傀は口にした言葉をそのまま報告書に記入していく。
「そんなのでいいのね・・・」
ヴィレッタが呆れた風に尋ねると、魔魁はどうでもよさそうに「いいんだよ」と答える。
「あのベルヴァという起動兵器に関しても聞きたいのだけれど?」
ヴィレッタがそう訊ねたところでオフィスの扉が開き、レイモンド・ノーマン大佐と金髪の少女が入室する。
「[ACー03ベルヴァ]。元々はTDFベルリン支部で開発された自立型戦闘用ロボットだったけど、紆余曲折あり制御体連合国家で管理していた物よ。もっとも、調整が困難なためまともに運用できずにいたみたいだけど、制御体があなたのR-GUNの起動データを解析し調整したわ。」
少女は容姿に似つかわしくない知識を気だるげ話す。
「なんでこんな所に子供が?」
ヴィレッタはベルヴァの説明を聞きながらも現れた少女に疑問を示す。
「貴方がヴィレッタ・バディムね、会えて嬉しいわ。私はノーヴル・ディランよ。」
ノーヴル・ディランを名乗る少女はそう言って握手を求める。外見こそ10代の少女だがどこか大人びた雰囲気がある。
「ではあなたがTDFワシントン支部から出向中の・・・?一体どういう理由で?」
「それは吾輩が説明しよう。」
隣に立つレイモンド・ノーマンが語りだす。
「現在、この地球にはゴーストやナガー、逢魔と言った犯罪者以外にも人知を超えた脅威が蔓延っているのは知っているな?」
「資料は読んだわ。ダイダル帝国とその協力者たち、それに私たちは遭遇していないけど[SYSTEM(システム)]を名乗る怪物たちね?」
ヴィレッタは自分の知るダグブールやアインストの情報を開示する事無く、あくまで聞きに徹する。
「それらに対抗する為に地球連邦政府はTDFと制御体連合国家はを中心に新たなる部隊を設立した。その名もガイアセイバーズ!」
「ガイアセイバーズだと!?」
ヴィレッタは封印戦争の折に敵対していたその名を聞いて思わず声を荒げる。
「なんだ、ガイアセイバーズを知っているのか?」
「いえ、地球の救世主なんて随分と大仰な名だと思ってね・・・」
ヴィレッタはそう言って動揺を誤魔化す。
「他人事のように言っているがヴィレッタ少尉、吾輩とキミ、ノーヴル・ディラン博士、それに幽霊課も外部組織としてガイアセイバーズに参加する予定なのだぞ。」
「幽霊課も・・・?」
「TDFと制御体連合国家以外の力のある組織や企業もガイアセイバーズ参加しているんだが、今は制御体連合国家から参加しているのは一人だけでな。それじゃ恰好がつかないらしく俺たち幽霊課も組み込まれることになった。」
魔傀が経緯を説明した後で「通常業務もあるから常にというわけにはいかんがな」とまとめる。
「ならばレイモンド大佐とディラン博士はなぜ制御体連合国家に?直接ガイアセイバーズと合流すればよかったのでは?」
ヴィレッタが少々冷たい物言いで尋ねる。
「正体不明の神出鬼没な怪物たちに対抗するには制御体の監視能力が必要になる。けれど制御体連合国家はあくまでも制御体にからの啓示によって成立している国だ・・・。」
「そこで私が派遣されたのよ、こちら側から制御体とのコンタクトを試みるためにね。」
▽▽▽
一人の男がフラつきながらエントランスに現れる。
「どうされましたか?」
受付の警備員が男を呼び止める。
「・・・・・。」
男は蚊の鳴くような声でぼそぼそと口を動かしている。
「あの、ご用件を・・・」
「制御体・・・」
「えっと、制御体がなにか・・・?」
「静寂を乱す・・・新たなる秩序は・・・あああああああっ!!」
男が雄たけびを上げながら目を見開くとその眼球は赤く変色している。そしてそれは顔の表面を破り赤い球体が露になり、身体は植物の様に変貌した。
「きゃああああっ!」「何だ!?」「ばっ・・・化け物だ!!」
アインスト・ムントの出現にエントランスにいた人々はパニックに陥った。
「何だアイツは!?」
「とにかく止めるぞ!」
署内の警察官たちが集まり、アインスト・ムントに拳銃を向ける。しかし、アインスト・ムントはそれをものともせず触手を伸ばし、警官たちを拘束する。
「ぐっ・・・魔傀刑事に連絡を・・・ああ・・・あああああ!」
警察官は同僚にそう指示を出すが、その目は徐々に赤くなり、先刻の男と同じようにアインスト・ムントへと変貌した。
▽▽▽
研究棟のバイオロイド用の調整カプセルの中でJ11ことゼル=ディアが眠っている。
衣世がその様子をカプセルの外から眺めている。
「衣世、あなたもそろそろ調整の時間よ?」
ノーヴル・ディラン博士が衣世にそう告げる。
「まだ、後でいい・・・。」
衣世は珍しく少し迷うように言葉を発する。
「何か気になる事でもあるのか?」
魔傀が衣世に尋ねる。
「うん、なんだかモヤモヤするの。何か良くない事が起こりそうな・・・」
「噂をすれば影が差す、そんな事を言っていると本当に厄介ごとが起きるぞ。」
魔傀が衣世をなだめようと言葉をかけるが、その言葉選びは微妙だった。
(不器用な男ね・・・)
「それにしても、TDFから出向してきた科学者が衣世たちの調整まで行っているのね?」
ヴィレッタは素朴な疑問を投げかける。ノーヴル・ディランが行っている作業は明らかに外様の仕事ではない。
「衣世は単なる生物兵器ではないの。彼女こそが制御体とのコンタクトのカギとなる存在よ。」
「制御体がそれほどの存在だと?現時点での私の認識では犯罪を監視するプログラムくらいにしか思えないが・・・。」
「制御体はまだ完全ではないのよ・・・この時代の人類が[監視者]や[破壊者]、[魔神]に対抗するには制御体の成長が必要不可欠なの。」
(この時代の人間だと・・・?)
「可能性、監視者に破壊者、魔神・・・?口数が多いわりには思わせぶりな事ばかりなのね・・・少し知り合いに似てるわ。」
ノーヴル・ディランの要領を得ない話し方にヴィレッタは壁際のいぶし銀を思い浮かべる。
『魔傀、ヴィレッタ少尉、聞こえるか?緊急事態だ、この映像を見てくれ。』
コンドウから連絡が入る。通信モニターにエントランスの映像が流れる。
「これは・・・まさか!?」
「アインスト・・・SYSTEMの端末。」
ヴィレッタが驚く隣でノーヴル・ディランがそうつぶやく。それまで気だるげだった雰囲気はやや険しくなる。
(彼女がなぜアインストの名を・・・!?)
映像の中では、襲われた警備員たちが次々と歪な生物へと変貌していく。
(以前見た人間のアインスト化現象に近い・・・ヘッドクラスの敵が近くに居るという事?)
ヴィレッタはインスペクター事件の折にウィニペグで見たアインスト・レジセイアの赤い霧を思い出す。
「今すぐそちらに戻ります。」
『いや、こちらはレイモンド少佐と警官隊が対処に当たっている。だが制御体によれば奴らはそちらにも出現するらしい。警戒してくれ。』
▽
「特に問題ないみたいだが・・・。」
ヴィレッタと魔戒は研究所内の見回りを始めた。とくに騒ぎも怒ってなければ破壊された形跡もない。
「何を言っているの?静かすぎるわ、人の気配がしない・・・。」
ヴィレッタが魔傀の言葉に異を唱える。
「・・・ああ、俺もおかしいと思っていたんだ。」
「ウソね。」
見栄を張って取り繕う魔傀にヴィレッタがツッコむ。
「!!?」
通路を抜け、部屋を一つ一つ確認していくと、ある一室で複数の研究員が倒れていた。
「これは一体・・・」
「まって、うかつに近づくべきじゃないわ。」
研究員に駆け寄ろうとする魔傀をヴィレッタが制止する。
「そんな事を言っている場合か!?」
魔傀がヴィレッタの忠告を無視し、倒れている研究員の一人に駆け寄る。
「・・・あっ・・・あっ・・・あっ・・・」
警備員は苦しそうに声を上げる。
「まだ息が・・・!?」
「あああああああっ!!」
研究員が雄たけびを上げながら目を見開くとその眼球は赤く変色していく。そして次の瞬間、骨のようなものが体中を突き破り、怪物へと変貌した。
「やはりこれは・・・!?」
ヴィレッタが骨の怪物、アインスト・シェーデルを見て警戒する。
アインスト・シェーデルはその爪を魔傀に振り下ろす。魔傀は咄嗟にアインスト・シェーデルを殴り飛ばした。
「・・・警戒していた通りだな。」
「ウソね・・・と軽口を叩ける状況でもないわね・・・どうする、魔傀?」
倒れていた研究員たちが次々とアインストに変貌していく。
『魔傀、聞こえるか?』
そこへコンドウから連絡が入る。
「コンドウさん、今は取り込み中だ。」
『そこはもういい。それよりも急いでディラン博士と衣世の所へ戻ってくれ。制御体の予測によれば二人に危険が迫っている。』
「予測・・・そんな不確かな情報で彼らをこのまま放置しろと?」
『事が起きてからじゃ遅い、制御体の予測は絶対だ。どちらにせよその研究員たちが元に戻ることは無い。それにもしも彼らを救う事が出来るとしても、博士と衣世の方が制御体による優先度は高い。」
「優先度だと!?さっきから制御体制御体と・・・!?」
ヴィレッタも研究員たちが元には戻らない事は察しているが、コンドウの言い分に不快感を感じる。
「分かった、いったん衣世と博士のところへ戻る。とにかくこの施設から避難する方が良いだろう。」
「魔傀!?」
「文句を言いたい気持ちはわかるが、俺も彼らと衣世なら衣世の方が大事だ。普段相手にしているゴースト共ならそこまで心配は要らないが、今起この施設で起こっていることは異常だからな・・・。」
(優先順位か・・・。)
「・・・解ったわ。・・・けれどすぐには戻れそうにないわよ・・・。」
気が付くと先ほどまで無人だった廊下にもアインストが溢れかえっていた。
▽
「悪い予感が当たったわね、衣世。」
「嬉しくない!」
魔傀とヴィレッタが見回りに行った後、ノーヴル・ディランの研究室にもアインストが現れ、研究員たちが襲われた。
更に、襲われた研究員たちがアインストに変貌し、衣世とノーヴル・ディランを取り囲んでいる。
「博士、この人たち元に戻せないの?」
「・・・今は無理ね。」
ノーヴル・ディランはおよそ10代の少女とは思えないような冷めた視線をアインストに贈る。
「・・・そっか。」
衣世はハンマーを構え、アインストと対峙する。
「サイクロンストーム!」
衣世はハンマーを振り回し、複数のアインスト・シェーデルを同時に砕く。
しかしそこへアインスト・ムントが砲撃を繰り出し、二人は物陰に隠れる。
「うう、数が多すぎるよ、アタシ一人じゃ・・・」
次の瞬間、アインストたちの身体が引きちぎられるように一瞬で消え去る。その跡には黄色い雨合羽を着た一人の若い男の姿があった。
「フフフ、アテファリナの言った通りだ・・・こいつ等を喰らう事で俺の中のVOL細胞が歓喜している・・・!」
「・・・何なのアイツ、これはアイツがやったの?」
アインストの残骸を見ながら衣世が現れた男に対し最大限に警戒を示す。
「あれは・・・日向サトル?EATER試験体5号・・・・」
ノーヴル・ディランが日向サトルを見てそうつぶやく
「ほう、こんな子供が俺の事を知っているのか?」
日向サトルはそのくぼんだ目でギョロリとノーヴル・ディランを見る。
「見た目に騙されてはいけませんよ、サトル。」
サトルの後ろから若い銀髪の女が現れる。
「アテファリナか・・・」
「ノーヴル・ディラン、起動兵器開発やバイオロイド研究の権威。丁度いい、[電精]ともども連れて行きましょう。」
アテファリナはそう言ってサトルに指示する。
サトルは黒い結晶を纏い、ヴォルフィードへと変身した。
「また人間が怪物に・・・コイツもさっきの奴らと同じなの!?」
ヴォルフィードを見て、衣世がそう解釈する。
「いいえ、あれはEATER・・・歪められた命。SYSTEMとは似て非なる存在・・・。」
「おしゃべりの時間は後にして貰おう。」
ヴォルフィードが二人に迫る。
「ローリングハンマー!」
衣世がヴォルフィードの懐に入り込み、ハンマーで打突する。
「・・・なんだソレは?」
衣世の攻撃を腹部で受けてもヴォルフィードはビクともしない。
「ヴォルスプラッシュ・・・」
ヴォルフィードの腕部が刃に変形し、衣世に斬りかかる。
「きゃああ!?」
衣世は咄嗟にハンマーで防御するも、その威力に弾き飛ばされ武器を手放してしまう。
「ううぅ・・・」
呻く衣世をよそにアテファリナがノーヴル・ディランに近づく。
「さあ博士、あなたも一緒に来てもらいますよ。」
「せっかくのお誘いだけど、遠慮させてもらうわ・・・」
ノーヴル・ディランはその小柄な体で衣世のハンマーを拾い上げる。
「意外ですね、そんな可愛らしい姿で無駄な抵抗を試みようと?」
「ええ、その通りよ!」
ノーヴル・ディランは全力でハンマーを振り回すと、バランスを崩したように隣にあった調整カプセルにぶつける。
「フフフ、何処を狙ってるのです?・・・もう無駄なことは・・・」
「キュオオオオオン!!!」
壊れたカプセルからゼル=ディアが飛び出す。
「あれはJ11!?・・・マズい!!」
ゼル=ディアは間髪入れずに口から炎を放ち、アテファリナに浴びせる。
「くっ・・!?」
アテファリナは咄嗟に身を引く。
「さあ、ゼル=ディア・・・」
ノーヴル・ディランがゼル=ディアに告げる。
「暴れなさい。」
「キュオオオオオン!!!」
【ちょっと語らせて】
ノーヴル・ディランを登場させようと思ったとき、宇宙と共に人生を繰り返している彼女を幼女にしようか高齢者にしようかあるいはいっそ男にしようかいろいろと迷ったのですが、この形に落ち着きました。