スーパーロボット大戦OG Time Dive Fighters 作:舟太郎
「これは・・・ダイダル兵が止まらない!?」
帝王ダイダスことデルタ7を撃退してもダイダル兵は止まらず、ヴィレッタ達や妖機人との戦闘を継続する。
「ここまでか・・・!?」
雀王機に狙われ続けた光雀カスタムが限界を迎える。
「アリッサ会長!?」
「W17、他人の心配をしている場合か?このままでは俺たちも持たんぞ!」
他の機体もまた、ダイダルの起動兵器とバラルの妖機人との交戦に巻き込まれ、徐々に削られていく。
突如戦場の中心部に一つの人影が現れる。
「急に人が現れた!?」
「これは・・・シャドウミラーが使用していた空間跳躍の重力震反応に酷似してるなりよ!」
「だがシステムXNはもはや存在していない、そうでなくとも普通の人間が単独で転移など出来るはずがない・・・何者だ?」
現れた人物は赤い仮面で顔を隠している。
そのタイミングでアイドネウス島上空にニューヨークドミニオンから発射された巨大なミサイル、ミレニアムアタッカーが見え始める。
「あれが広域破壊ミサイル、ミレニアムアタッカー・・・この距離ではもう・・・!?」
「コール・・・ゲシュペンスト。」
赤い仮面の人物がそう口にすると、その身体が光に包まれ黒い装甲に覆われていく。
「ゲシュペンストだと!?しかしあのサイズは・・・!?」
仮面の男が纏った装甲はヴィレッタ達のよく知る人形機動兵器、ゲシュペンストのものだった。
「人間が纏ったのならエンドレスフロンティアの起動兵器とも違うようだが・・・今更あのサイズのゲシュペンストなど・・・!!?」
ヴィレッタやアクセルの疑問をよそに、ゲシュペンストが飛来する巨大ミサイルに接近し手をかざす。ミサイルは一瞬消え去り、向きを変えて再度出現、そのまま上空へと飛翔し爆散した。
「今のは・・・空間跳躍の応用か?」
「そこのゲシュペンスト、お前は一体何者だ!?」
ヴィレッタが仮面の男に尋ねる。
「・・・敵ではない、だが我々の計画が成功するまでキミたちに邪魔をされたくはない。しばらく遠くに行ってもらうよ、アウフ ヴィーダーゼン!」
ゲシュペンストを中心に空間が歪んでいく。
「これは・・・まさか!?」
アイドネウス島及びその近海に存在していた人や兵器、その全てが姿を消した。
▽▽▽
RーGUNのコックピット内でヴィレッタが目覚める。
「ここは一体・・・?」
辺りを見渡すと木々が生え渡り道らしき道が無い。
「どうやら山の中か・・・?空気が美味しい・・・この感覚、久しぶりな気がする・・・。」
ヴィレッタはRーGUNをしばらく森の中を歩きはじめる。
一人で歩いていると正面に人の気配を感じ、咄嗟に銃を構える。
「・・・・!?」
木の影から現れた男が一瞬でヴィレッタに接近する。ヴィレッタは咄嗟に銃を発射するが、男は銃弾を素手で掴み取り、その後ヴィレッタの身体を拘束する。
「なんだヴィレッタか・・・。」
「・・・・解ったのなら放してもらえる?魔傀。」
現れた男、魔魁元聖は相手がヴィレッタ・バディムだと知ると拘束を解く。
「ここは何処だ、俺たちは一体どうなったんだ?」
「と言うか貴方、ベルヴァのボディはどうしたのかしら?」
「分らん、気が付いたら元の身体で森の中に居た。」
(これも転移の影響か・・・?)
「居た、魔魁刑事・・・って、ヴィレッタ少尉!?」
少し奥から聞こえる男の声が魔傀とヴィレッタを呼ぶ。
すると十代の少年と少女が魔傀に追いついてくる。
「エイジにラン・・・魔傀と一緒に居たのね?」
「単にお前より少し先に会っただけだ。」
現れたのはアイドネウス島で共に任務に当たっていた少年と少女、叶エイジと日向ランだった。
「なんにせよ、合流できてよかったわ。」
ヴィレッタは転移後に孤立せず、仲間と合流できたことに安堵する。
「きゃー!」
森の中から悲鳴が聞こえる。
向かってみると小さな子供たちが二体のダイダル兵に追い回されている。
「ダイダル兵だと!?」「・・・間に合うか!?」
それを見た魔傀とエイジがダイダル兵に殴りかかろうとする。
「なに!?」「ぐわっ!?」
ダイダル兵はその攻撃を受け流しながら二人に対して当身を食らわせる。
「強い・・・ただのダイダル兵じゃないのか!?」
魔傀とエイジは、各々これまでにもダイダル兵と何度か交戦していたが、目の前のダイダル兵の動きはこれまでとは一線を画すものがあった。
「当然じゃよ。其奴らは儂の弟子じゃからのう。」
そこへ一人の老人が現れる。
「どういう意味だ、お前がそのダイダル兵を使役しているのか?」
ヴィレッタはそう言って咄嗟に老人に銃を向け、尋ねる。
老人は一瞬でヴィレッタに接近し、気づいた時にはヴィレッタの身体は倒れ、奪われた銃口を向けられていた。
「まだまだじゃな、お嬢さん。」
老人はそう言いながらヴィレッタから奪った銃を投げて返す。
「一体どういうつもりだ?」
ヴィレッタが再びが老人に尋ねる。
「それはこちらのセリフじゃよ、お嬢さん。いきなり襲ってきたのはお主らの方じゃろうて・・・。」
「シューたちを虐めるとボクが許さないぞ!」
「そうよ!ただじゃ置かないから!」
老人に続いて、ダイダル兵に追い回されていた子供たちもダイダル兵を庇うようにヴィレッタの前に立つ。
「待ってよ!違うの!このロボットたちは危険なんだよ!?」
ランが子供たちを諭すように伝える。
「こやつ等がダイダル兵だという事か?」
「こいつ等の事を分っているのか!?」
ヴィレッタが老人に尋ねる。
「・・・とにかく、儂らと一緒に来なさい。シュー、ゴロゴロ、子供たちを運んでくれ。」
▽
「空間転移か・・・つまり俺たちはアイドネス島とは全く別の場所に飛ばされたわけだ。」
「そういうことよ。」
一行は老人に案内され、山道を歩く。ヴィレッタは道すがら魔魁やエイジに空間転移現象の説明をする。
後ろではダイダル兵の頭の上に乗る子供たちがはしゃいでいる。
「どうなってるの?」
ランがその光景を不思議そうに見ている。
「それはおいおいわかるだろ。それよりもあの老人の身のこなし、只者じゃない。」
「ええ、さっきは一瞬の事で何をされたのか分からなかったけど・・・」
魔傀とヴィレッタは老人への警戒を示す。
「わしの名は漢緋藍。見ての通りのジジイじゃよ。」
「ハン・フェイラン?・・・そうか、アンタが・・・。」
魔傀が漢緋藍(ハン・フェイラン)という名に反応する。
「知っているの?」
「ハン一族の長老がPOSに出場したという話をハン・ジュンに聞いたことがあるな。」
「やっぱり、どこかで見た事があると思ってたんだ!」
魔界の言葉でエイジも老人がPOSの出場者だということを思い出した。
「なんじゃお主、ジュンの知り合いか?あやつにも困ったもんじゃ。一族きっての才を持っておるくせに、よりにもよって上海ドミニオンなんぞに入り浸りおって・・・挙句の果てにアームズなんぞに夢中になる始末じゃ・・・」
「アームズの何がダメなの?」
ランがハン・フェイランに尋ねる。
「ダメではない・・・じゃがあんな玩具にたよって武闘家気取りなのが気に食わん!武闘家ならば己の身体一つで勝負するもんじゃ!」
(それは結局ダメだと言っているのでは・・・?)
「ダイダル兵に拳法を教えるのは良いのかしら?」
今度はヴィレッタが心のなかでツッコミながら、疑問をそのまま口にする。
「儂ももう年じゃ、この技を受け継ぐものが必要なのじゃよ。」
「普通に弟子を取ればいいんじゃ?」
「ハン・フェイランは過去に弟子を死なせて服役していたと聞いたことがある。・・・過失だったらしいが。」
魔傀がハン・フェイランの犯歴を思い出す。
「あれは悲しい事故じゃった。悔やんでも悔やみきれんわ・・・。」
ハン・フェイランは沈痛な面持ちを見せる。
「じゃがダイダル兵ならばやり過ぎで死ぬことは無い!儂の弟子に持って来いじゃ!」
(反省の色が無い・・・)
しばらく歩くと徐々に景色が変わっていき、辺りには畑や水田が広がる集落にたどり着く。
「これは・・・ダイダル兵が畑を耕している!?」
「驚いたかね?儂も最初に見たときは驚いたもんじゃ。」
「おじいちゃんは、この村の人じゃないの?」
「フェイランでいい、ここには古い友人が住んでおってな、ちょうど訪ねてきていただけじゃ。」
ヴィレッタ達は異様な光景を見ながら村で一番大きな家へと案内される。
中ではハン・フェイランとは別の老人がお茶をすすっていた。
「こんなところに客人とはのう、これは珍しい。」
「この村は一体なんだ?あのダイダル兵共は?」
魔傀が老人に尋ねる。
「せっかちじゃの、まあ座らんか。」
老人はそう言って座布団を用意する。
「この村には若いもんがおらんじゃろう?貧しい村じゃてな、若いもんは皆町へ出稼ぎじゃ。」
「ああ、限界集落って奴だね!」
「ラン、お前な・・・。」
エイジがランの無神経な発言を窘める。
「ええんじゃよ。少し前の話じゃが、わしと孫が近くの山へ行ったとき参道で足を滑らせての、がけへ滑り落ちるところをゴロゴロに助けられたのじゃ。あのダイダル兵、ナンバー5656号、わしらはゴロゴロと読んどるがな。その時のゴロゴロたちは普通の状態ではなかった。あちこち故障し、動くのがやっとの状態だった。後で分かったことだが、故障し戦えなくなった彼らはその山にスクラップとして捨てられたそうな。そんな状態で落下しそうなわしらを掴んだために、わしらの重みで回路が引きちぎられ、ゴロゴロは悲鳴を上げておった。じゃが、どんなに回路が引きちぎられても、ゴロゴロはわしらを放さなかったのじゃ。集まってきたゴロゴロの仲間が一緒になってわしらを助け上げてくれた。」
「ダイダル兵が人助けを・・・とてもじゃないが信じられんな。」
「最後まで聞きましょう、現に彼らはこの村で生活しているのだから・・・」
「ええ~!?話が長いよ~。」
ヴィレッタが訝し気な魔傀を諭し、となりでランが項垂れる。
「次の日、わしらは村の人々と共に山へ行き、そこにあった20体ほどの動作している彼らを村へ連れて帰った。この村には幸い、三浦という引退はしたが昔はロボット工学の分野ではちょっとは名の知れた博士がいての・・・」
「三浦博士・・・たしかおじいちゃんの知り合いにそんな名前の人がいたような・・・」
「その祖父の名は何というんじゃ?」
老人がランの様子を見て尋ねる。
「あ、日向清次郎です。」
「何とお主、清次郎の孫か?ではお主がVOL細胞の・・・いや、今はいい。その博士というのは実は儂じゃ、そこのフェイランも旧知じゃぞ。わしは必至で彼らを修理した。その時じゃ、いつの間にか村のそばに置かれていたあの変なもんからダイダル兵が現れたのは!」
「この村にもダイダルゲートが!」
「すぐに行こう!」
「待たんか・・・せっかちな奴らじゃの。」
エイジとランが飛び出しそうになり、ハン・フェイランがそれを制止する。
「あのへんなもんならわしとゴロゴロたちが壊したわい。」
「あれから現れたダイダル兵はこの村を襲ってきた。じゃが、ゴロゴロたちを仲間と認識して油断しておったのじゃろう。ゴロゴロたちにあっという間に停止させられてしまった。わしらはゴロゴロたちをシューたちと呼ぶことにした。それからしばらくして村人たちが集まって話し合った。シューたちをどうするか。最初は修理をして、自分たちの好きにさせるつもりじゃったがな、シューたちがどう考えているのか聞いてみることにした。するとシューたちはこの村で我々と共存したいというんじゃ・・・」
三浦博士が話を続ける。
「共存?ダイダル兵の方から?」
「うむ、村人は数体ずつシューたちを家族として受け入れることにしたのじゃ。」
「騙されているという事は無いんですか?何かの作戦である日突然襲い掛かってくるかもしれない。」
「いや、今村を訪れているハン・フェイランはともかく、老人と子供ばかりの村でそんな事をする必要は無いだろう。」
エイジの疑問に魔傀が答える。
「それに家族に迎えると決めたとき、彼らはそれぞれの家にある装置を渡したんじゃ。心臓部だけを破壊し、シューたちを緊急停止させる装置じゃ。わしらはいつでもシューたちを破壊することができるのじゃ。」
「本物なのかしら?」
ヴィレッタが尋ねる。
「ああ、本物じゃった、最初はそれが何かわからなくてな。シューたちが何も言わないもんで、村長がたくさんのスイッチの中から一つを押してしまったんじゃ。」
「それが、心臓部の破壊スイッチだったのね。」
「信じてほしかったんじゃろ。行き場のない自分たちを・・・」
「・・・村長のドジっ子エピソードにしては重い話だね。」
「茶々を入れるな。」
今度は魔傀がランを窘める。
「村の者たちはすぐに全ての装置を集めての、そんなものはいらんと、村長の家の地下に埋めてしまった。わしらとシューたちは本当に信頼関係で結ばれてるんじゃ。」
「信じられない、こんなことが・・・こんなことがあるなんて!」
話を聞いていたエイジが嬉しそうな表情を見せる。
「後からやってきてゴロゴロたちに機能停止させられたダイダル兵はどうしたのかしら?」
「ゴロゴロに言われた通りにシステムのあるパーツを取り外してそのままほおっておいた。しばらくするとダイダル兵たちは他のシューたちと同じ行動をとるようになった。一生懸命、村のために働いて今ではもうわしらの家族じゃ。」
「その外したパーツと言うのは?」
「そうじゃのう、簡単に言うとパンドラの箱じゃな。」
「も~!そういう思わせぶりなのはもういいから!早く言ってよ!」
ランが回りくどい老人の話に辟易する。
「パンドラの箱?悪事の詰まった箱を開けてしまい世の中に悪い事を解き放ってしまったが、最後に希望だけが残ったとかいうあのパンドラの箱ですか?」
「惜しいわね、パンドラの箱に入っていた[エルピス]は必ずしも[希望]を意味しないわ。しいて言えば[予兆]、まだ見ぬ未来そのものよ。」
エイジの言葉をヴィレッタそう補足する。それを聞いたランが隣で「何も入ってないのと同じじゃん」とぼやく。
「ほっほっほ、よく知っておるの、その通りじゃが・・・パンドラの箱に詰まっていたのはやはり悪い事だけじゃ。希望など入ってはいなかったんじゃ、箱の中に残った最後の悪い事とは予知というものじゃ。ダイダル兵は行動の前に全てを計算し常に結果を予測して行動している。わしはその予測回路を外しただけじゃ。」
「なるほど、それによって彼らの中に希望が生まれた訳ですね?」
「いやいや、意味わかんないよ!なんで未来を予知しない事が希望になるの?分かった方が良くない!?」
三浦博士の言葉にエイジが納得し、ランが異を唱える。
「人は常に未来を予測しながら生きている、その大きな理由の一つは起こり得るトラブルを未然に防ぐためよ、もちろんそれだけじゃないけれどね。・・・けれど、これから発生するそのトラブルを完全に認知したうえで、同時にそれが対処不能な事態だったらどうする?」
ヴィレッタがランに問いかける。
「・・・諦める?」
「そう・・・その諦めこそが絶望よ。」
「だからこそ未来を予測、あるいはそれに準ずる能力を持つような超越者や頭の良い連中は過激な対処方法で世界を混乱させる・・・ギルリアンの言っていた制御体の危うさとはひょっとすると・・・。」
話を聞いていた魔傀が何かを思い出しながら語る。
「じゃあ、何も考えずに生きてた方がハッピーって事?」
「高性能な予測回路などがあるから絶望してしまうんじゃ。何も考えずに生きればいいと言うものでもないが、シューたちにとってはそれが希望になったんじゃ。」
「けどその希望はすぐに絶望に変わるわ。」
突如、家の中で空間が歪み、そこから銀髪の女が現れる。
「お前は・・・逢魔の沙夜!?なんでこんな所に!?」
「久しぶりね、EATERの坊や・・・」
突如、外が騒がしくなる。
「なんだ!?」
魔傀たちがあわてて外に出ると、大量の妖怪が現れ、ダイダル兵が村人を守るために戦っていた。
「あん、あなた達を見つけたのは偶然だけど、せっかく少数で行動してるようだし始末しちゃおうと思ってね・・・霊山が多いこの奥州に住む妖魔は格が違うわよ。」
遅れて外に出てきた沙夜がそう説明する。
「奥州?ってか、そういやここって何処なんだ?」
エイジが今更な疑問を口にすると、隣でランが現在地を検索する。
「えっと・・・岩手県八幡平市だって。」
ヴィレッタ達はアイドネウス島から日本の東北地方に飛ばされたのだった。
【キャラクター出典紹介】
漢緋藍 [幻影闘技]
三浦博士 [スーパーヒーロー作戦 ダイダルの野望]
【ちょっと語らせて】
今回の話は原作ゲームダイダルの野望の[シューの村]イベントがベースですが、流石におじいちゃんのトークだけで話を盛り上げるのは難しい
漢緋藍、当然ですがアームド・ファイターのハン・ジュンとは無関係です。